遊戯王ARC-V -エンタメデュエリストと紅白の巫女- 作:坂本コウヤ
さて、今回の話ですが、「いよいよ霊夢と遊矢が…!?」、な展開です。デュエルはなしです! 2828、8686は負けですので、ご注意ください!! ただ、僕自身こういう話を書いたことが全くないので、完全にgdgdになってて面白くないと思うかもしれません。それと、結構久々のタイトル詐欺です。宴というほど、精霊が出てないです。そこはもう、ごめんなさいと先に謝っておきます。すみません。
それでは、今年最後の『エンタメ紅白』、リアルタイムで紅白歌合戦がやってますが、気にせず行きましょう!! それでは、どうぞ!!
公園で予定していたデュエルを終え、私達は家に帰って、さっさと寝る事にした。
特に私は2戦連続(しかもうち一人は幻想郷のメンバー)でやったせいか、だいぶ疲れていた。まぁ一昨日のパチュリー戦の時みたいに、デュエル後に倒れたりしなかっただけマシだけどね。
で、帰ってそのまま部屋に入って、寝る予定だったんだけど―――
「zzz…。」
「…………。」
(き、気まずい…。)
―――私は今、遊矢の隣で寝てる。いや、正確には私の隣で遊矢が寝てるんだけど。…どうしてこうなった。
◇≡
私達は家に帰ってから、それぞれ交代で風呂に入り、その後、遊矢達には客用の布団を出して寝てもらおうと思ってたんだけど、ここでまた天子がある駄々をこね始めてしまった。
「ねぇ霊夢、ついでだから私と衣玖もここも泊ってっていいでしょう? ねぇお願い!!」
そう、コイツは紫が手配してくれた自分の家があるにも拘らず、うちの家に泊めろと言ってきたのだ。正直、フランは元々ここに来る予定だったから、布団数はギリギリ足りる、もしくはフランは早苗と一緒の布団で寝る事になるだろうと思ってたけど、この二人が増えるとなると数が明らかに足りない。そして数えてみると、案の定布団の数は足りない訳で、初めは無理だっていたんだけど、結局時間的な事もあったのと、私自身疲れていたのもあって根負けしてしまい、その場は早苗に任せて、私は自分の部屋にさっさと向かってしまったのだ。…今思えば、ここでもうちょっとねばっておけば、後の展開は回避できたのかもしれない。
で、私は自分の部屋に行くと、デュエルディスクを自分の部屋の机に置き、ささっと着替えてベットの中へと入り込んだ。ただ、どうも寝ようと思ってもまだ頭が若干冴えてるみたいで、しょうがないからと、今日のデュエルを考察する事にした。眠れないときは、基本的にこうするのが一番だからね。それでも眠れなかったら、その考察を元にデッキ調整を軽くでもすればいいし。
まずは、柚子とのデュエルね。そうね、あのデュエルはまぁ、あの子の実力を見極めるためのデュエルだったっていうのもあったけど、正直墓地落ちが酷かったわね。後、グラゴニスがなかったら、正直死んでたわね。まぁあの状況、使わなかったけど、エイリンでも突破可能だったのよね。まぁ袋叩きにされた可能性はあったけど。…もうちょっとあの子を増やしてもいいかしら。後は、墓地回収のカードを増やすっていうのもありよね。
で、天子とのデュエルだけど、このデッキ、やっぱり『サイクロン』入れるべきかしら? 正直、魔法・罠カードの単体破壊をライラやジャッジメントに任せてても、最悪防ぎきれないのよね。一応羽根帚入れてるけど、なかなか引かないし、今回みたいに、デモチェで破壊できるモンスターが絞られたらどうしようもないし。うーん、どうしたもんかしら。
と、色々考えていると、扉をコンコンッとノックする音が聞こえたので、「入っていいわよ。」と言った。すると、扉を開けて入ってきたのは―――
「よ、よう。霊夢…。」
「えっ、遊矢?」
もうすでに寝間着に着替え、気まずそうに俯いている遊矢だった。
とりあえず、そのままでいるのもなんだと思ったので遊矢を部屋の中に入れ、話を聞くことにした。この部屋の場所を知っているのは、たぶん早苗が教えたからだろうから、別に追及する意味はないわね。それにこの子の事だし、何か用がなければ来る事はないはずだ。・・・何でずっと下向いてるのか、ちょっと気になるけど。
「で、どうしたの遊矢。私の部屋に来たりして。」
「あっ、いや、その…。」
「? どうしたのよ、歯切れが悪いわね。・・・何か、言いにくい事なの?」
「いや、そういう訳じゃ――」
「じゃあはっきり言いなさい。全く、私にあんな事言っておいて、変な所で引っ込むんだから。」
「そ、そうは言われても…。いや、迷ってても仕方ないか。」
「?」
何、言うのに迷わなきゃいけない事なの? …まさか、パチュリーの事? いや、確かにあの子の説明をするとなると、私達のあれこれとめんどくさい話までしなきゃいけなくなるけど。っていうか、私とパチュリーの接点を知ってるのは、この次元の出身者だと、たぶん赤馬以外誰もいないはずだけど。
とまぁ、私が全くの見当違い(この時点では分かってない)の事を考えてると、ようやく遊矢が、閉ざしていた口を開いた。
「……ごめん、今日だけでいいから、霊夢の部屋で、寝かせてくれないかな?」
「…………ハァ?」
今、何って言った?
「だから、その…、すごく言いにくいんだけど、その、早苗達と話し合って、俺がその、ここの割り当てになっちゃったっていうか…。」
「…………。オッケー、ちょっと整理させて。」
えーっと、つまり何? 私がさっさと部屋に上がったその間に、早苗達が寝る場所の部屋割の話し合いをして、その結果遊矢が私の部屋に来たと。……って、ハアァァァァァァァァァァ?!?!?!?!?!」
「ッ?!」
「ちょっと待って、あの子達バカなの?! 私はともかく、いや私もダメだけど、百歩譲って私が大丈夫だとしても、遊矢大丈夫じゃないでしょ? ねぇ遊矢、それ誰に言われたの? 早苗ね、早苗よね!? オッケー、ちょっと待ってて!! アイツをとっととこの世から追い出して――」
「ちょっ、ちょっと待って霊夢落ち着いて!!」
「これが落ち着いてられる状況ですか?! 普通年頃の男子を女子と寝かすとか、あの子バカでしょう? っていうか柚子がよく許可したわね、そんなの!!」
「嫌だからその――」
「とにかく、アイツをとっととマクロコスモス送りにして部屋空けるから、遊矢はここで――」
「だから落ち着けって!!」
☆≡
「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ。…で、落ち着いた?」
「……えぇ。ごめん、ちょっと取り乱し過ぎたわ。」
霊夢が暴走してから数分後、俺の必死の制止で何とか彼女を落ち着かせる事が出来た。俺も霊夢も、正直この数分間何をしたんだと、何も知らない人から見たらそう言われるくらい疲れていた。もしかしたら、さっきの衣玖とのデュエルの時に行った、ペンデュラム融合の方より疲れてるかもしれない。それぐらい、お互いにバテていた。
で、今俺は霊夢の部屋にある椅子に座らせてもらっていて、霊夢はベットの上でゴロンとして、深呼吸をしていた。さっきまで暴れていたからか、肌の色は少しだけ赤くなっていて、何て言ったらいいのか、すごくもやもやした気持ちが湧きあがってきた。…何だろう、この気持ちは。今まで、感じた事がない気持ちだ。不快ではないけど、何かすっきりしないというか――
「…さっきからどうしたの、難しい顔して?」
「えっ? いや、何でもないよ。」
「…そう。」
霊夢はそういって、上半身だけ起こして、ベットに座る形で俺の方を向いてきた。そして、溜め息を一つついてから、俺にこう尋ねてきた。
「…それで、何でこうなっちゃったの?」
…たぶんここで俺が、ありのままの事を言ったら、確実に霊夢がまた修羅と化すよな。とはいえ、隠し事は霊夢に通用しそうにないし。…しょうがない。多少オブラートに包みつつ、なるべく話を穏便な方に持っていかないと。
俺は少し頭の中で考えた後、霊夢にここまでの経緯を話す事にした。
☆≡
「――って言う事なんだ。」
「……なるほどね。ハァ、全くあの子達は。」
遊矢からだいたいの事情を聴いた私は、深い溜め息をついた。まぁ、あの我が儘娘の事だから何かやらかすかもとは思ったけど、まさか他人の家で他にもやるとはね。アイツに関しては、明日の朝近くの川原に生き埋めにしておかないと(使命感)。
遊矢が説明してくれた事によると、私が自分の部屋へと上がった後、まず、誰がどういう組み合わせで寝るかの話し合いになったらしい。まぁ私はその場にいなかったから、その場の状況がどういう思惑で動いていたのかは分からないけど。
で、そんな中、『自分は一人で布団使って寝たい』と、あの我が儘天人こと天子がダダをこね出し、これには最初皆が反対していたそうなんだけど、実際今この家にいる人数を計算すると、奇数なので必然的に誰かが一人で寝ないといけなくなるという事を指摘され、結局押し切られてしまったらしい。まぁたぶん、皆そこをあえて触れないようにして、私を静かに寝かせようっていうつもりだったんでしょうけど、あの子のせいで台無しになっちゃったみたいね。
で、じゃあ改めて部屋割をするとなった段階で、別の問題が発生したらしい。最初、早苗達は遊矢と柚子を同じ部屋で寝かす予定だったらしいが、柚子は『別々の部屋にして欲しい』と言ってしまったそうなの。それも、少し俯いた感じで。て言うかあの子、まだ遊矢の事気にしてたのね。いや、それとも何か、別の事情がって考えてると、どうやら早苗と何か話したい事があるからと言う事だったらしいわ。で、柚子のその一言からどうやら早苗の表情が若干変わったそうで、結果、『この家にいるメンバーの中で、柚子の次に付き合いの長い私』と一緒に寝る事になっちゃった、と言う事だそうだ。
というか早苗、あの子絶対自分が楽しむために遊矢をこっちに放り込んだでしょ。昼間も何かそんな感じだったし、確信犯ね。全く、面倒な事をしてくれるんだから。
とは言え、今ここで部屋割りを変えてもらうのも面倒ね。しょうがない。今日だけは我慢するしかないわ。
「事情は分かったわ。しょうがないから、今日は私のベッドで寝なさい。私は床で寝るから。」
「あっ、ありがとって、えぇぇ!?」
「ん、何?」
「何、じゃないだろ?! 流石に女の子を床で寝かせるとか出来ないって!!」
「大丈夫だって。こんなの日常茶飯事だし。」
「床で寝るのが日常茶飯事なの?!(゜ロ゜;」
…何を驚いてるのかしら、遊矢は。普通床で寝るとか結構普通な気がするんだけど。もしかして、こっちじゃあんまり一般的じゃないのかしら。でも、もしそうだとしても、流石に泊まりに来てる遊矢を床で寝かせる訳にはいかないしね。一緒とか……、って、なおさら出来る訳ないじゃない!! 経験がないって言っても、わ、私だって、健全な14才の女の子な訳で…。そんな、は、はしたない事――
「…霊夢、大丈夫か? 顔、めちゃくちゃ赤いけど。」
「ふぇ?! な、ななな何でもないわよ!! と、とにかく、アンタは私の家に泊まりに来た客人なんだから、大人しく私のベッドで寝てなさい! 私の事は別に――」
「いや、そういう訳にはいかないだろ!! 床でなら俺が寝るから――」
「だ、ダメよ!! 床で寝るって、朝体のあちこちが固くなっちゃうのよ?! 客人にそんな事させられないわよ!!」
「それだったら、俺も霊夢にそんな事させられないよ!!」
「私は慣れてるから別にいいの!! アンタ、そういう事に絶対慣れてないでしょ? だったら――」
「だからダメだって!!」
私と遊矢は、互いに自分の意見を譲らず、相手を掴んではベッドの方へ押しやりを繰り返した。そんな事をするぐらいなら、さっさとベッドに二人とも入れと思うかもしれないけど、私も遊矢も、異性と寝るっていう事に抵抗があったから、その選択肢を選ぶ事が出来ず、結果としてこんな不毛な事を散々繰り返す事になってしまった。
で、そんな不毛な事を繰り返している内に、私達は段々ベッドに近づいていて、何回目かになる体勢の入れ換えをした時に、それは起こった。
――ガンッ――
「えっ?」
「霊夢? ってうわっ!?」
私がベッドに足をぶつけてしまい、その時に遊矢も私も互いを掴んで放さなかったせいで、私達は、二人揃ってベッドにダイブインする事になった。で、当然遊矢の方がベッドより遠いので――
「…………。」
「…………。」
――遊矢が私を押し倒しているような形になってしまった。私も遊矢も、あまりに互いの顔が近いこの状態に、呼吸すら忘れて、お互いの顔を見つめていた。一分、一秒が、すごく長く感じる事があるって、聞いた事があったけど、まさか、自分で体感する日が来るなんて、思わなかった。
…どのくらい時間が経ったんだろう。急に遊矢が顔をトマトみたいに赤らめながら、私から離れた。離れる瞬間、何となくだけど、少し名残惜しく感じてしまった。
「……ごめん。」
「…いや、私の方こそ、ごめんね。」
私も遊矢も、さっきまで喧嘩してた時の声が嘘みたいに、すごく小さくなっていた。その上、「ごめん」って互いに謝った後、何か言葉が続かない。…どうしよう、すごく気まずい。と、とりあえず、何か言わないと。
「ね、ねぇ遊矢。」
「な、何?」
「……一緒に、寝ましょ? もう、疲れちゃったし。」
☆≡
そして、冒頭に戻ってくるんだけど、あの時の私は、何であんな事を口走っちゃったのよ。さっきのあれで、頭がおかしくなってたのかしら。
とは言え、あぁ言っちゃった以上、撤回出来る訳もなく、私は今、遊矢と一緒にベッドで寝てる。さっき寝息が聞こえてたから、あの子はもう寝てるんでしょうね。まぁ、今日の衣玖とのデュエルで、かなり体力を消耗してたんでしょうね。精神的にも、色々くるものがあったでしょうし。
…ただ、やっぱり気まずいわね。それに、遊矢が近くにいると、自分で自分が段々分からなくなってくる。こんな気持ち、今まで感じた事がなかった。幻想郷にだって、霖ノ介さんみたいに男の人はいたし、人里にだって、私と年が近そうな男の子は何人もいた。でも今みたいな気持ちを抱く事は、今まで一度としてなかった。たぶん、私は遊矢に対して、何か特別な感情を抱いているのかもしれないけれど、それが何なのか分からないがゆえに、自分の気持ちを扱いあぐねていた。
……ハァ、このまま考えてても埒があかない気がするし、もう寝ましょうか。明日になれば、きっと、気持ちの整理だって――
☆≡
「――や。遊矢。」
「ん、んー…。」
肩を叩かれながら名前を呼ばれ、俺は寝ぼけた頭で、呼ばれた方へと体を向けた。そこには当然、この家の主で、一昨日塾の仲間として、そして、俺達の友達となった霊夢がいた。窓からさす月の光が、部屋に明かりをもたらしていて、その光を反射してうっすら蒼く光る綺麗な眼と、彼女の穏やかな顔を見て、俺はさっき寝る前に近くで見た霊夢の顔を思い出し、顔が熱くなるのを感じて、顔を背けてしまった。
「…どうしたの? 私の顔に、何かついてる?」
「な、何でもない。」
「本当に? …もしかして、さっきの事を思い出したの?」
「……。」
「…その無言は図星ね。」
「うっ…。」
霊夢に本当の事を言い当てられてしまい、俺は少しだけうめいた。
でも、正直、あの時見た霊夢の顔は、すごく、年相応な、可愛い女の子って感じだった。こんな事言ったら、本人に怒られちゃうかもしれないけど、今まで見た顔の中で、一番可愛かった気がした。いや、一番いいのは笑顔だと思うけど、あんな表情もするんだって思うと、ちょっと意外だった。今まで霊夢って、何となく俺よりも年上な感じの振る舞いが多かった気がして、年相応な感じの表情って、見た事がなかったから。
「…フフッ、恥ずかしがらなくてもいいのに。」
「いや、でも――」
「私は、さっき見た遊矢の顔、可愛いと思ったんだけどね。」
「えぇっ!?」
「…何よ、その反応。嫌だったの?」
「いや、その…、霊夢から、そんな風に言われるなんて、思わなかったから。」
「失礼ね。私だって、思った事を素直に言う事ぐらい、出来るわよ。」
「うっ、ごめん。」
「…で、遊矢はどう思ったの?」
「えっ?」
「だから、私の事、…どう、思ったの?」
霊夢は顔を少し赤らめながら、そう聞いてきた。や、ヤバい、さっきの時と違って、上目遣いでこっちを見てるからか、すごく可愛い。それに、何か目元が若干光ってるからか、ここで答えないとすごい罪悪感が湧きあがってきそうだ。
…まぁ、柚子にだって見た目の事は言う事あるし、別に、霊夢に言わない理由はないよな。きっと、霊夢だって、怒らない、よな?
「…そうだな。すごく、可愛かった、よ。」
「…本当?」
「本当だって! ちょっと、びっくりしたけどさ。」
「…そっか。ありがとう、遊矢。」
そういうと霊夢は、寝たままの状態で、俺に抱きついてきた。突然の事にびっくりして大声をあげそうになったけど、霊夢が俺の頭をギュッとして、顔を胸にうずめさせてきたせいで、そうすることはなかった。
「…私ね、遊矢に会えてよかったと思ってる。今までいろんな子達と出会って来たけど、その中でも、私の事、そんな風に言ってくれたのは、遊矢だけよ。」
霊夢は俺を抱いたまま、そう静かに語りかけてきた。心なしか、ギュッとしてきている腕の力が強くなった気がした。ただ、柚子にもそこまでの事をしてもらった事がない俺にとっては、顔がどこかで広まってる俺のあだ名のような顔になりそうなくらい真っ赤になる上に、膨らみのある霊夢の胸のせいで息が出来なくなってきていた。まずい、意識がとびそう。色んな意味で。
そんな俺の状況なんて気にしていないのか、霊夢は俺にまた語りかけてきた。
「私は、長い間一人ぼっちだったから、友達って呼べる子、特に、男の子の友達なんて、今までいなかった。だから、遊矢が初めてだったの。私の、初めての男の子の友達。」
「......。」
「だからって訳じゃないけど、私は、遊矢の事が、出会ってから、ずっと気になってたの。いや、出会ってから、と言うより、遊勝塾で、あなたが私を励ましてくれた時から、ね。あの時、私は、あなたにすごく元気をもらったわ。教える事に対して自信がなかった私とてもに、あなたは勇気をくれた。その事に、私はすごく感謝してるの。だから――」
そこまで言って、霊夢は俺を胸に埋めるのをやめ、俺の肩を掴んできた。そして、俺の顔を見つめ、目をつむって顔を近づけてきた。
(えっ、ちょっと霊夢!? まさか――)
流石に夜中だったのもあって、叫びはしなかったけど、内心で俺はひどく狼狽した。まさか、霊夢にかぎってそんな事をするとは思ってなかったから。でも、肩をガシッと掴まれていて、とても振りほどけそうにない。
つまり、そのまま霊夢が顔を近づけてくるのを黙って見ている事しか出来ない状態だった。
・・・覚悟を決めるしかないのか。そう思って目を閉じた時、この緊張状態は、意外な形で終わる事となった。なんと、俺の肩を掴んでいた霊夢の腕が、急に離れたのだ。
「・・・・・・えっ?」
急に拘束を解かれた俺は、目を開けて、さっきまで俺の肩を掴んでいた霊夢の方を見た。するとそこには、身体を起こして、右手を握りしめ、それを左手で掴んで抑える霊夢の姿があった。目を伏せていて表情は読み取りにくいけど、歯を食い縛るその感じから、何かを抑え込んでいる気がした。急な行動の変化に戸惑いを隠せないでいると、霊夢が段々腕を震わせながら、絞り出すように言葉を発した。
「・・・いい、かげんにっ・・・・・・!」
「れ、霊夢・・・?」
「私の、中、から・・・!! 出ていけえぇぇ!!」
そう叫んだ霊夢は、両腕を高く挙げながら上半身を力強く広げた。すると突然、霊夢の身体が光だし、俺はその眩しさに目を伏せ、左腕でその眩しさを防いだ。
・・・しばらくして、光が止むのを確認して左腕をどけると、そこには霊夢が、荒い呼吸をしながら、右手で胸を押さえているのが見えて、俺は慌てて上体を起こして霊夢に声をかけた。
「れ、霊夢!? 大丈夫か?!」
「ハァ、ハァ。・・・遊矢。えぇ、平気よ。」
「そっか。良かっ・・・、っ!?」
とりあえず霊夢が大丈夫なのを確認して安堵した俺だったが、 視界の隅に信じられないものが見え、慌てて視線を向けて息をのんだ。
「いったったったぁ・・・。」
「・・・えっ?!」
――そこにはなんと、俺の隣にいるはずの霊夢が、巫女服姿で頭を押さえながら、へたり込んでいたのだ。
◇≡
「――と言う事なのよ。」
「……(ポカーン)。」
「…やっぱり、そういう反応するわよね。」
俺がベットの足側にいた霊夢、正確には、『霊夢に似た別の少女』を目撃してから数分後、俺は霊夢から、今ベッドの上に座っている、霊夢に似た少女、『霊夜』について説明してもらっていた。でも、その話は俺にとっては、とてもじゃないけど、ほとんど思考がついていける話ではなかった。
「えーっと…。つまり、この『霊夜』って子は、霊夢の持つ『閃珖竜スターダスト』の精霊で、さっきまで俺と話していたのは、霊夢に憑依していた『霊夜』って子だったってこと?」
「まぁ、そう言う事よ。」
「いや、そういう事で片づけられる話じゃないだろう?! さすがに突拍子がなさ過ぎて、俺でも信じられないよ!!」
「…そうよね。確かに、急にこんな事言われても、信じられる訳、ないわよね。」
霊夢はそう言うと、少し悲しげな表情をした。それに俺は少し、罪悪感のようなものを感じて、俺たち二人の間を、さっきのベッドの時とは違う沈黙が漂った。ただ、さっきと違って、その沈黙はすぐに破られた。
「…ごめんなさい。変なこと、言っちゃったわね。」
「…いや、俺の方こそ。いきなり、信じられないとか言っちゃって。」
「何言ってるのよ。こんな事言われて、すぐに信じるのは余程のバカよ。」
「霊夢…。」
そう言う霊夢の顔は、凄く寂しそうで、悲しそうで、とても弱々しく見えた。まるで、何かに怯えているような。そんな顔にさせてしまったのが俺のせいだとはわかっていたものの、どう言葉をかければいいのか、わからなかった。どうすれば、霊夢を笑顔に出来るのか。・・・ダメだ、考えても見つからない。くそ、いったいどうしたら――
――そういえば、俺が泣いていた時、父さんや母さんは、どうしてくれたっけ。確か、頭を撫でてくれたり、抱きしめてくれたりしてくれた気が。・・・恥ずかしいけど、これしかないか。霊夢、ごめん!!
◇≡
あぁ、とうとう精霊の事がばれちゃったわね。全く霊夜ったら、余計な事をしてくれたわ。
でも、ばれちゃったものは仕方ないわ。幻想郷ならいざ知らず、ここは外の世界だ。私達の常識は基本的に通用しない。カードに精霊が宿ってるなんて話、信じてもらえる訳――
――ギュッ――
「えっ・・・?」
私が暗い思考に沈みかけていると、急に抱きしめられた。ふと少しだけ視線を横に向けると、ここ最近で見慣れた赤色と緑色の髪が見えた。
「ゆう、や・・・?」
「・・・ごめん。泣いてる霊夢を見てたら、何となく、こうしなきゃいけない気がして。」
遊矢はそういうと、私の頭を優しく撫で始め、再び言葉を紡ぎ始めた。
「霊夢には、笑顔でいてもらいたいんだ。悲しげな表情なんて、霊夢には似合わないよ。俺が、そうさせてしまったっていうのも、わかってる。だけど、それでも、霊夢には笑っていてほしいんだ。」
「・・・・・・アンタ、自分でどれだけ恥ずかしくて、身勝手な事言ってるか、わかってる?」
「うん。でも、何ていうのかな。こうしてると、何だか、自然と言葉が口から出てきたというかさ。・・・無責任だけど。」
「・・・全くよ。でも――」
――ギュッ――
「――ありがとう。おかげで、少しだけ元気が出たわ。」
私はそう言って、遊矢の腰に腕を回してギュッと抱きしめた。遊矢も、それに応えるように、より力強く、私を抱きしめてきた。――静かな沈黙。でも、それは先程までの気まずい沈黙ではなく、気持ちが和らぐ、心地のいい沈黙だった。ずっと、こうして――
――パシャッ――
「「・・・・・・ん?」」
――あれ、気のせいかしら? 何か今、カメラのシャッター音が聞こえた気がしたけど。
――パシャッ、パシャッ――
いや、気のせいじゃないわね。しかもこの聞こえてくる方向、まさか――。
そう思って目だけをベッドの方に向けると、そこにはカメラを構えながら2828する、霊夜の姿があった。
「…ありゃ、バレちゃった?」
「……。」
…なるほど。この子、確信犯ね。まぁこの展開を狙って、ここまでやったんじゃないんでしょうけど、少々灸を据える必要がありそうね。
「…ねぇ遊矢。」
「な、何?」
「ちょっとアイツと『O☆HA☆NA☆SHI』したいんだけど。」
「!? い、いいけど。」
「フフ、ありがとう。」
遊矢に断りを入れて抱擁状態から解放してもらい、私は霊夜にゆっくりと近づいていった。たぶん私、今すっごいいい笑顔を浮かべてると思う。だって、あんな事してるシーンを写真に収められたんだからねぇ。そりゃ、笑顔にもなって当然よね。
でも、何でかわからないけど、目の前の霊夜はすごく怯えたように私を見上げてガクブルしていた。おかしいわね、私別に怒ってはないわよ? コンナニモ笑顔ナンダカラ、別ニ怖ガル必要ナンカナイノニネェ。…ダケドヤッパリ、コウイウ態度ヲトルッテ事ハ、怒ッテオッケーッテサインヨネ? ナラ――
「ネェ、霊夜。」
「ご、ごめん霊夢!! その、悪気はなかったの!! 別に、最初からこれを狙ってた訳じゃなくて――」
「覚悟ハ、出来テルワネ?」
「ヒィッ?! あ、あぁぁ、いやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
◇≡
「ハハハッ、何、そんなことがあったの?」
「もう、笑い事じゃないよ!! こっちは大変だったんだよ?!」
「あぁ、ごめんごめん。悪かったって。」
あれから数十分後、私は霊夢の『O☆HA☆NA☆SHI』からようやく解放され、ライトロードの皆がいる空間に戻ってきた。絵がないからちょっと説明しにくいけど、この空間は私達が、デッキの中にいる精霊全員と集まって話したりするために作り上げた空間で、主に私とライトロードの皆が使っている空間なの。で、私は今、そこでフェリフェリ(フェリスの事)やミーちゃん(ミネルバの事)の2人と、さっきまでの事を話していたの。
「にしても、霊夢からの説教、それぐらいで済んでよかったわね。」
「確かに。いつもなら小一時間、説教をされてもおかしくありませんが。」
「それが、霊夢もなんか疲れてたみたいで。まぁ、おかげで助かったんだけど。」
「それは、あれだけデュエルをしていれば疲れますよ。それに、霊夜さんの憑依を解くのにも体力を使ってしまったでしょうし。」
「…あれ、じゃあ私のせい?」
「十中八九そうでしょう。全く、いいところだから写真撮ってきてとは言ったけど、誰もあそこまでしろなんて言ってないでしょう?」
「だ、だってあんな風に寝てたから、つい。」
「もう、霊夜さんの悪い癖ですよ。今回はこれぐらいで済みましたが、霊夢に何かあったらどうするんですか?」
「うぅ、ごめんミーちゃん。」
「いや、ミネルバに謝っても仕方ないでしょう。まぁ、過ぎたことは仕方ないし、そろそろ撮った写真、見せてよ。」
「…わかった。」
私はそういうと、カメラを取り出して、プレビューモードを起動した。もともと、これはライトロードの皆と一緒に、霊夢との思い出を記録していこうと、無煙塚から拾ってきたデジタルカメラを河童のにとりんに頼んで、修理改修してもらったもので、今では私達が、もっぱら霊夢のベストショットや、個別のツーショット、集合写真を撮るために使ってたりしてるの。この中には、霊夢が知らない間に私たちがとったものもあるけど、それを言うと本気で怒られそうなので秘密にしてる。
「…わぁお。いいじゃない、これ。」
「さ、流石にこれ、いいんですかね?」
「まぁ、もう一回とるかって言われたら、私もういいかな。」
「さすがにもう一回は、頼まないと思うよ。今回で十分、いいのがとれてるしね☆」
「これは、霊夢本人には、見せられませんね。」
「うん。」
私達が見てるのは、霊夢が遊矢君と一緒に、向かい合って寝ている写真だった。この後、もう一枚撮ろうと思ったんだけど、二人ともが寝返りを打ってしまったせいで、その後は撮れずじまいだったの。まぁ、それでも一枚だけとれたので、私としては満足している。だって――
(こんなに幸せそうな笑顔で寝てる霊夢を見れたら、もう十分だよ。)
――写真の中の霊夢は、今まで見たことがないくらい、嬉しそうな笑みを浮かべていたんだから。
◇≡
「……。」
霍青娥との話が終わってからしばらくして、私は、彼女から託された白紙のカード2枚と、あるカテゴリ名の付いたカード達を見ながら、先程の話について考えていた。
(彼女の話が本当なのであれば、この白紙のカード達は、おそらく私が、新たなステージへと踏み出すための鍵となるのでしょう…。そして、このカードたちは、霊夢の新たな力になるはず。)
白紙の2枚のカード。それを彼女は、『聖なる振り子の力を持つもの』と言っていました。となると、おそらくこのカードは、ペンデュラムカードで間違いない筈。そして残りのカード達、『ZW』のカード達は、『霊夢の希望の力をさらに引き出させるカード』。しかし、そんな強大な力を、どうして私や霊夢に渡したのでしょうか。普段の彼女であれば、奪い取ることも辞さないと思うのですが。
「…まさか、それ以外の強大な力を?」
一瞬、そんな考えが頭をよぎった。でも確かに、それならばあり得なくはない。なぜなら、大きな力に興味がある彼女とはいえ、より大きな力を持っているのならば、それをわざわざ狙う必要はない。だから、私たちにこのカードを…。ですが――
(…話している時の彼女の表情、時々ですが、まるで何かを抑えているようにも見えました。)
そう。時々垣間見えた彼女の苦痛の表情。それを思い出すと、どうも私の中では、すっきりしたこと答えが出てきません。もし、彼女が、さっき考えた通りに強大な力を手にしていたとしても、それに取り込まれそうになっているのだとしたら、とても危険な状態の筈。もし、本当にそうなのだとしたら、いえ、これ以上は考えても、意味がなさそうですね。今度会った時にでも、彼女を問いただす他、手だてはないでしょうし。私は私で、出来る事をするしかありませんね。
「ハァ、ハァ…。うまく、ごまかせたかしら。…にしても、ここまで浸食が早いなんて。私でも、もう、限界かしら。…でも、絶対にあなたたちの好きには、させないわ。…『煉獄の悪魔達』。」
どうもみなさん、お疲れ様です!! いかがだったでしょうか。
いやぁ、年内に上げようと頑張ったけど、いろいろ端折りすぎましたかねぇ。まぁ、実はあ~んな展開やこ~んな展開も色々と考えていたんですが、残念ながら文才的にきつかったです。ごめんなさい。
まぁ、今回は遊矢とスターダストの精霊である『霊夜』との初邂逅を書きたかったのと、精霊という非現実的なものが霊夢の近くにいる事を遊矢に認識させつつ、それでも近くにいるという事を霊夢に伝えるという事を描きたかっただけなので、結果的にはこれでもいいかなと思ってます。まぁ、これで霊夢との絆が深まる、かなぁ、と思ってたりもしてる駄作者がここにいますがね(笑)
さて、冒頭でも言いましたが、いよいよもう少しで、2015年も終わりですよ。いやぁ、早いものですね。今年の2月にこの作品を書き始めて、シリーズ内だとキャラ紹介含めて30話書いてるんですよね。『反逆彗星』や番外篇も合わせると、44話も書いているというね。いやぁ、もうちょっと書けた気もしますが、まぁ、来年頑張りますね!
それでは皆さん、今年も一年、ありがとうございました!! 来年もまた一年、よろしくお願いしますね!! 最後に、次から始まる新章を含めた次回予告を書いておきますので、最後まで見ていってください!! それでは、よいお年を!!
○新章&次回予告(地の文:博麗霊夢)
いよいよ赤馬との会談の場を設けた、私達幻想郷のメンバー。ただし、そこには予想外の珍客が待っていた。
「あら、霊夢。遅かったわね。」
「ちょっ、何であんたがここにいるのよ。」
「というか、アンタが出てくるってことは――」
「えぇ。実はね――」
紫の口から語られる、幻想郷の危機。そして、赤馬から提案された、私達とスタンダード次元との共同戦線。
「『融合次元』を倒し、この次元戦争に勝利するために、君たち『幻想次元』のものたちの力を借りたい。」
「…ハァ、しょうがないわね。わかった、力を貸すわ。」
共同戦線を張ることを約束した私達だったけど、その前に現れる、黒い影の存在。
「フフフ、久しぶりね、霊夢。」
「あ、アンタは!!」
「さぁ、見せてあげるわ。私の持つ、『煉獄の悪魔』の力を!!」
煉獄の悪魔を操る彼女に、圧倒され、追い詰められていく中、一人の少女の命が、はかなく消えていく。
「…霊夢、わた、し――」
「ミネルバ…。ミネルバアァァァァァ!!!」
親友である少女の命を奪われ、怒りに身を任せ、禁じられた力を解き放つ私。だがそれは同時に、私のすべてを奪う、破滅の力でもあった…。
「なんだよ、これ…。」
「霊夢のカードが、全部、真っ白に…。」
失われていく仲間達、目覚めを知らぬ少女の眠りを覚ますため、少年が選ぶ道とは…。
「彼女を目覚めさせることができるのは、たぶん、貴方だけだわ。」
「頼むよ、霊夢!! 俺はまだ、お前とまだ色々と、話したいこととかがいっぱいあるんだ!! だから!!」
次回、『遊戯王ARC-V -エンタメデュエリストと紅白の巫女-』、『霊夢覚醒篇』。
『幻想と現実の同盟! 共同戦線、始動!!』
お楽しみは、これからよ!!