ピクニック隊長と血みどろ特殊部隊   作:ウンバボ族の強襲

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戦闘シーン中編です。














phase29 虚ろな勇気

 

 既存の神機では感応種と戦闘を行うことはできないとされている。

 

 適合率の高い第二世代のゴッドイーターが神機を使用したケースが、イタリア支部で報告されているが、それ以外ではほとんど対処ができず、遭遇した際はスタングレネードなどで視覚および聴覚の遮断後、離脱することが推奨されている。

 

 

 ……というのが現在採用されているマニュアル戦術だった。

 

 

 

「……で、ターゲットは私ってことですかー……!」

 

 

 

 オリガは目の前に降り立ったアラガミを凝視する。

 

 オペレーターはシユウ種と言っていた……たしかにそうだろう、と思う。基本的な骨格、構造はシユウによく似ている様に見えた。

 

 妖鳥と美姫。

 

 その二つを組み合わせたような女神。

 どこか余裕を見せるように妖女は蠱惑的に微笑う。

 

 

 ……だから、こちらも笑い返す。

 

 

 

 

「気に入らない……余裕ですかそうですか。ちょっと色っぽいからって調子乗らないで下さいね……オジ様フェチにはロリ属性で攻めるという手段もあるんですから……!」

 

 

 

 神機が重かった。

 動かなくなる……とは聞いていたが本当らしい。

 元々それ程扱いは上手い方じゃなかったが……今は本当に鉄の塊になってしまったかのようだった。

 

 コレ詰んだなぁ、とオリガは一瞬だけため息をつく。

 

 

 

 

 

 

「来なよ……おばさん? …………後悔させてあげる」

 

 

 

 

 恐怖の淵。今にも決壊しそうなハリボテの勇気。

 

 上等だ、と思った。

 

 どうなるにしろ、最後の最後まで足掻き切ってみせる。

 

 ……それが……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   ▼▼▼

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『オリガさん、感応種と交戦中……!? ってどう考えても無茶です即退避してください!! ブラッド各員に通達、至急オリガさんと合流を! 撤退支援を!!』

 

 

「……あー……やっぱ……こうなっちゃったんだ……」

「ど、どどどどどうしましょう副隊長……!?」

「うん……本当ね……どうしようね……うん……」

 

 

 本日の討伐対象:コンゴウ

 

 実際:上記にプラス、無限湧き小型種、ヤクシャ、ヤクシャラージャ……そしてシユウ感応種。

 

 フランさんから送られてきた情報によると、現在交戦中のシユウの感応種は、既に確認がされており『イェン・ツィー』であるらしい。

 ハッキリ言って、今やっと色々なことが頭の中でつながった。

 

 狂いまくるレーダーは故障していたわけではなかった。

 『年代物』であることが災いし……結果、見事にイェン・ツィーの感応派にアテられて狂っていた、ということが真実。そう考えるとコンゴウ種を測定しただけでも大したものだろう。

 そう……歴戦のレーダーは最期まで己の使命を全うしたのだ……。

 

 

 

 

 じゃない。

 

 

 こうなった状況下で、とても心配な人が居るのでそっちに周波数を合わせてみる。

 

 

 

『ちょ……アーサーさん駄目だってばー! 無理しちゃ駄目だよ! アーサーさんだって酷い怪我なんですよーー!』

『オリガ!! 待ってろ今行く!!!!』

『駄目ですっ!! …‥ハッキリ言うけどアーサーさん行っても何の役にも立たないよ!? 第一世代機は全部対感応種戦じゃ停止するんだよ!? それにここからじゃオリガちゃんのところまで行けないよ……』

『……っ! ……オリガ! 頼むから返事しろ……!』

 

 

 ナナちゃんが上手く止めているらしい。

 が、恐らく時間の問題だと思った。今はまだ冷静に他の助言を聴くだけの余裕があるっぽいアーサーさんだが……切羽詰まると人間どうなるか全然、全く、皆目見当がつかない。

 特に、アーサーさんは出撃前から再三言っていた。二度と失いたくない、失う訳にはいかない――と。

 生半可な決意ではない以上、どうゆう行動にでるか分からない。

 

 

 

『お、おい……感応種とは、確か皆マトモに戦えないんだろ……!?』

『……』

 

 

 ロミオ先輩の張り詰めた口調とド正論。

 ロミオ先輩がブラッド歴だけなら隊長に次いで長い、だからこそきっと分かっている。

 

 今、感応種と戦える神機を持つゴッドイーターが……つまり、私たち『ブラッド』の誰かが救援に行くべきだ、と言いたいことも良く分かる。

 

 

 

 だが、今戦力はかなりの広範囲で分散中。

 

 つまり、今誰かが動けば、誰か一人が孤立することになる――と。

 

 

『……アーサーさん五月蠅いですー……聞こえてますそんな連呼しなくていいです…………。はぁ……ったい……こちらオリガ生きてますです………………けっこーギリギリで……』

 

「……オリガ……ちゃん……」

 

 

 かなり苦しそうなオリガちゃんの声を通信機が拾う。

 ……神機の動かない状況であの子はどうにか戦っている。

 

 

 

『おいオリガ! さっさと逃げろ! 戦わなくていい!! 逃げて生き残ることだけ考えろ!!』

『いやそれ……本気ッスかアーサーさんー……ぐっ……!』

『おい!?』

 

 血を吐くようなアーサーさんの叫びが鼓膜を叩く。

 聞いてるこっちが……辛くなるような声だった。

 

 

 

『そんな奴放っておいて逃げろよ!! 逃げてくれよ……! 早く……!!』

『……いや、無理ですって。だ、だって……。

 

 

 

 

 

 

 ……ここで私が逃げちゃったら……誰がコイツと戦えばいいんですか……?』

 

『……』

 

 

『コイツを野放しにすれば、これから色々喰い漁りますよ……そしたらまた……折角作った装甲壁……無駄になっちゃいます……』

『……!』

 

『だから……一分でも一秒でもコイツを引きつけておきますから! だから――』

 

 

 ブツリ、とそこで断線した。

 

 

 

 

 

 迷いが無かった、と言えば嘘になる。

 

 ……それどころか、直前まで私は迷いまくっていた。

 オリガちゃんを現時点で距離的に救援に行けるのは……私か、シエルちゃんのどっちかだ。どっからアラガミが湧いてくるか全くわからない以上、誰かがこの戦闘ポイントに残留する必要がある。

 神機の特性上、残るべきなのは遠距離狙撃やステルスモードを使用できるスナイパー型のシエルちゃんが残った方が良い。だから消去法で、私が彼女を助けに行くべきになる――。

 

 ……だけど、そこで一瞬迷いが生じた。

 

 

 

 そこまでして、あの子を助けに行く必要があるのか……と。

 

 

 

 確かに、オリガちゃんは良い子だと思う。優しいし、仲間思いで……オッサン好きな。ちょっと異性の趣味が変わっているだけの可愛い子だと思う。

 

 

 でも……それは同じブラッドの仲間を危険に晒してまで助けるべき、なのかと。

 

 

 個人的にはすぐにでも助けに行ってあげたかった。何もない状況なら、迷うことなく飛び出していったかもしれない。勇気だとかそんなものを考えている余裕さえなく……本当に脊髄反射レベルで。既に前科もある。

 

 

 

 だけど、今は、副隊長として任命された事実が重くのしかかった。

 

 副隊長という立場なら……考えるべきなのは、『他部隊』のオリガちゃんのことじゃない……。

 

 ……だけど……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……そこまで考えて、私は気付いた。

 

 

 そう、私はあくまで副隊長。

 

 ……『副』隊長。

 

 

 

 

 ……そう、私は副隊長だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ブラッドー04からブラッドー01へ!! 許可を願います!」

 

『こちらブラッドー01』

 

 

 コールサインブラッド‐01。接続先は、ジュリウス・ヴィスコンティ。

 つまり、ブラッド隊長。

 

 

「これよりブラッドー04は、戦闘域で感応種と交戦中の現地の一般ゴッドイーターの撤退を支援してきます! 

 ――許可を!」

『……ちょ……おい、待て唯!? そしたらシエルが……』

 

 ロミオ先輩が慌てるように口を挟む。

 そんなことは、百も承知だ。横でシエルちゃんが怯えたみたいに息を呑む。

 

「ですから隊長。戦力の再編成を進言します! 現時点で行動可能な特別編成δ班を分割、αと合流させて交戦範囲を拡大し、戦線の維持を」

 

 言っていることはメチャクチャだと我ながら思う。

 ……驕ってるわけじゃない、むしろ逆だ。この状況下でシエルちゃんを守ることはできない。

 だから、隊長とロミオ先輩に彼女を任せたい。

 

 今のところコレが私のはじき出した一番それっぽい解答だった。

 

 

 

「自分はこの部隊の中で唯一『感応種』との交戦経験があります。またアラガミへの切り札、ブラッドアーツを習得しています……よって対感応種討伐部隊である特殊部隊『ブラッド』の有用性を一番証明できる確率が高いと思われます! だから……!」

 

 ……口から出た言葉は誰が喋っているのかと思う程、自信満々な論理を組み立てた。

 全部出まかせのハッタリだ。

 ……確かに感応種との交戦経験はある。でも、『アレ』を交戦と捉えていいのか……自分でもあまり自信が無い。ブラッドアーツも習得はしているけど……未熟もいいところだし、毎回発動できる保証はない。

 『血の力』はまだ不明。

 

 本当にこんな状態で戦えるのか……自分でも分からない。自信なんてない……何より、私だって怖い。

 

 

 

 

 

「……信じて下さい……!」

 

 

 

 

 

 それでも、ただひとつ。

 

 諦めたくはない、意志だけはある。

 

 

 ――――死にたくはない、でも……死なせたくない。

 

 

 

 

 

『……ひとつだけ訂正する。感応種との交戦経験があるのはお前だけじゃない』

 

 

「……そ、ソウデシター」

 

 

 今訂正するところですか、それ。

 

 確かにあの時、隊長も居たような……でもってロミオ先輩も一撃与えてた様な。というかそう言えばブラッドの初期メンバーは全員マルドゥークと面識あるような……。

 

 ……緊張しきってたところにまさかの一撃。ぷつっと張り詰めていた何かが切れた。

 通信機越しに隊長がいつもみたいに笑った……ような気がした。

 

 

 

 

『ブラッドー01了解。当該作戦域の離脱を許可する……派手にやって来い、唯』

 

「04了解。……期待に応えます」

「あ、あの副隊長……!」

 

 シエルちゃんが不安げにこっちを見た。

 ……凄く怖いだろうな、と思う。ごめんなさい、と心の中で謝っとく。

 

 

「ブラッドー06はこのポイントを離脱。特別編成αと合流し、ブラッドー01の指揮下へ入って下さい。

 ……理論上、ステルスモードを多用すればアラガミに捕捉はされない……すごく怖いと思うけど、お願いします」

 

「……」

 

 シエルちゃんは少しだけ迷ったようなそぶりを見せる。

 よくよく考えてみたらシエルちゃん、ブラッドとしてはコレがまさかの初陣なんだ……。

 ……初陣で、ステルスモードでアラガミの中を単独突破せよとの上官命令……。

 ……私だったら間違えなく半べそになっているよな……と我ながら命令が鬼畜すぎることを再確認。

 

 けど、シエルちゃんは強かった。

 

 覚悟を決めたように頷く。

 

 

「……了解しました。……副隊長、ご武運を!」

 

 

 ……うん、カッコイイ……カッコイイよ、シエルちゃん……。

 

 

 

 

 ……是非見習いたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

『オリガちゃん、聞こえますか!? 今行きます!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 











すみません次回に続きます終わりませんでしたぁああああ!!(クリムゾンヘル土下座)


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