鯖の味噌煮はそんな好きじゃない(仮題)   作:Snowbird

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第4話

 

「…ちょっと、いいか?」

 

俺が一夏と話をしていると、頭の上で懐かしい声が聞こえた。

 

「おー、久しぶりほーちゃん」

 

「……箒?」

 

「久しぶりだな。それとハル、『ほーちゃん』は止めてくれ」

 

 

その声の主は六年ぶりに会う幼馴染みだった

 

 

『篠ノ之箒』

 

 

俺たちが通っていた道場の娘。その姿は記憶の中のモノよりも大分大人っぽくはなっているが、その顔を赤くする所も彼女のトレードマークだったそのポニーテールも昔のままで、改めて彼女が篠ノ之箒なんだと感じた

 

 

「廊下で良いか? 」

 

 

そして一夏の事が好きな女の子。現に今も俺よりも一夏の方を向いて話している

 

 

「俺は後で良いから、一夏話してこいよ」

 

「えー、ハル兄も一緒で行こうぜ」

 

「バーロー、二人一緒に言ったら時間が足りなくなんだろ?だから俺は後で良いよ」

 

 

だからこそ、俺は少しばかし強引に、一夏と箒を二人っきりにさせようとした。一夏は少し不満げな顔を見せたが、素直に頷くと箒に連れられて廊下へと歩いていく

 

命短し恋せよ乙女ってね

 

 

 

 

 

 

 

その後、教室に戻ってきた一夏が千冬姉に出席簿で叩かれたり、授業中、一夏が全部わかりませんって言って山田先生をドン引きさせたり、参考書を古い電話帳と間違えて捨てた発言をして千冬姉に出席簿で叩かれたりして、なんやかんや過ぎた

 

あれ、一夏関連の事しかなくね?

 

 

「ちょっと、よろしくて?」

 

 

そんな事を考えていると、またもや頭上から声が降ってきた

 

 

「あ?」

 

「へ?」

 

 

「まあ、なんですのその返事は?この私が折角話し掛けて差し上げたというのに!!」

 

 

俺達が返事が気に入らないのか、あからさまに怒りを顕にする金髪の女子

 

こういう手合いの奴は好きじゃない

 

前にも話したと思うが、この世界は女尊男卑が主流となっている。ISという最強の″兵器″を乗れる女性ばかりが優遇されるという風潮は女の傲慢さを加速させた

 

女性至上主義

 

今の世の中では当たり前の思想

 

そして、

 

 

「はっ?誰だよお前」

 

 

俺が最も嫌いな奴だ

 

 

「なんですの、その口の聞き方は?そもそも私を知らない?イギリス代表候補生で名門オルコット家当主であるセシリア・オルコットを?」

 

「そんな狭い世界の中でしか生きてないような奴なんか知るはずねーだろ。大体、大口叩きたいなら代表になってモンドグロッソで優勝してから叩きやがれ代表候補生様よ」

 

 

その言葉にオルコットは更に顔を赤くする。多分もう少しでISを展開して俺を殺しにかかるだろう。でもそれでも俺は睨み付けるのを止めない

 

こんな奴が居るから、こんな奴がISを使うからー

 

俺とオルコットの間に剣呑な空気が流れる

 

 

 

その空気に圧されて教室に、嫌な雰囲気が満ちる

 

そんな嫌な雰囲気の中、一夏が俺に話し掛けてきた

 

 

「なあ、ハル兄。代表候補生ってなんだ?」

 

その瞬間、皆ずっこけた

 

目の前のオルコットも、かくいう俺も机に頭から突撃していた。あまりの弟の無知っぽさに呆れてだ

 

「い、一夏?それは本気で言ってるのか?」

 

「うん、知らん」

 

「し、信じられませんわ。信じられません。極東の島国というのは……」

 

 

オルコットは頭が痛そうにしている。ごめん、なんかごめん

 

 

俺はせめてもの贖罪として代表候補生とは、と言うことを愚弟に教える事にした

 

 

「良いか、一夏?代表候補生ってのはそのまんまの意味で国を代表するIS操縦者、その候補生として選出されるエリートの事だよ」

 

「そう、エリートなのですわ!本来なら私と同じクラスに居ること自体幸運な事なのですわよ!」

 

 

「そうか、それはラッキーだ」

 

 

まるで少しもラッキーとは思ってないような物言い。一夏も案外内心キレてんのかな。いや、あれは天然か

 

お、オルコットが青筋を立てている

 

 

「あ、あなた、そんな事でよくこの学園に入れましたわね。男性でISを操縦出来ると聞いてましたから、少しは知性を感じられる方かと思ったらとんだ期待はずれですわね。

 

まあ、でも?私は優秀ですから、分からない事があれば泣いて頼まれたら教えて差し上げてもよくってよ?なんせ私入試で唯一教官を倒したエリート中のエリートですから」

 

 

そう言って自慢気に胸を張るオルコット

 

え、教官倒したん?あの人相手に?人類最強に?

 

 

「あれ?俺も倒したぞ、教官」

 

「な、なんですって?わ、私だけと聞きましたが?」

 

「女子では、ってオチじゃないのか?」

 

「あ、あなたは!?あなたはどうなんですの!?」

 

 

一夏の教官倒した発言にショックを受けたのか、オルコットが半ばヒス気味に俺を問い詰めてくる

 

いや、俺もショックなんだが

 

「お、俺は条件付きで勝ちを得た」

 

「あ、あなたも倒したって言うの!?」

 

「いや、相手のシールドエネルギーを4分の1まで減らして勝ちっていう条件で、ギリギリで勝ったから実質は負けだよ」

 

「そ、そうですわよね。条件付きなら仕方がないですわ」

 

 

「いや、千冬姉相手とか無理だろ。むしろお前らどうやって勝ったんだよ」

 

 

多分最初から遠距離を捨てて近接一本で挑んでなければ、俺は完璧に負けていたと思う。あの人は剣だけで世界を取った程の人だ。戦ってきた相手には遠距離を得意とする人もいた筈だし、そういう人達を相手に千冬姉は勝ち進んで世界を取ったんだ

 

だからこその世界最強

 

そんな人に使った事もない武器を使ってどう勝てる?

 

逆にどうすれば確率を上げられる?

 

その考えた末が剣だった。俺達姉弟は幼い頃から剣を振っていたんだ。ならば余計な雑念を捨てて近接一本で挑んだ方がまだ勝てる可能性はあると云うものだ

 

 

その結果が条件付きのギリギリの辛勝だったが

 

 

実技試験の際の事を思い出しながら、俺は教官が千冬姉で条件付きのギリギリの辛勝だった事を伝えると二人は何故か驚いていた

 

むしろ、教室にいる皆が驚きの表情でこちらを見ていた

 

え、入試の教官って千冬姉じゃないの?

 

「あ、あなたお、織斑先生に勝ったって言うの?」

 

「お、おう。そうだけどお前らも千冬姉じゃないの?」

 

「わ、私は山田先生でしたわ」

 

う、ウソでしょ、と崩れ落ちるオルコット。その横でなんでハル兄だけ千冬姉なんだ?

 

 

え、これ俺が可笑しいの?

 

 

 

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