父は亡くなった。
しばらくして母も亡くなった。
私は1人になった。
物心がついたときには父がいなかった。
父はいなかったが、母がいつもそばに居てくれたので寂しさは感じなかった。
太陽のように暖かい母が私を包み込みこんでくれた。
物心がついてしばらくして、母に父のことを聞いてみた。
母は語ってくれた。
二人の馴れ初め。
プロポーズの言葉。
私を産んだ時の父の反応。
あまり家にいてくれない父と喧嘩したこと。
嬉しそうに懐かしむように話す母は美しかった。
亡くなった父を今でも愛していることがヒシヒシを伝わってきた。
「カリファにもきっとラスキーのような素敵な人が現れるよ」
「そうかなー?」
「私に似て美人さんなんだからきっとよ。だからちゃんと女を磨いときなさいね」
「分かったから恥ずかしいからやめてママ」
「うふふふ」
こんな幸せが毎日続くと思っていた。
でも幸せが終わりを迎えてしまった。
母が病気になった。
島で一番の医者に見てもらっても、どうにもならないと言われてしまった私は目の前が真っ暗になった。
しかし母は変わらなかった。
変わらずに暖かさを私にくれた。
一年が経ち、母は自分が死ぬ少し前に今まで秘密にしてきたことを少しだけ私に聞かせてくれた。
父がCP9という世界政府直下の諜報機関に所属していたこと。
母自身も政府の人間だったこと。
上司に呼ばれ、オハラに出動したこと。
そこで出会った母娘に共感したこと。
時の上司や海軍の高慢で強引なやり方に耐えられなくなったこと。
父が命を代償にして、オハラの娘を逃がしたこと。
母も仕事をやめ、島を出て遠くに引っ越し、子育てに専念したこと。
色々話してくれた。
それから少しして、1人にしてごめんねと謝りつつも笑って母は逝ってしまった。
私は1人になってしまった。
母が亡くなってしばらくして、気持ち悪い感じの男性が来た。
「お前がラスキーの1人娘だな?」
「誰ですかあなた?セクハラですよ」
「確認しただけで!?…まあいい俺様の名前はスパンダムだ。お前がカリファだな?」
「ストーカーですか?セクハラですね」
「違うって言ってるだろ!?お前の親父の上司の息子だ」
「あなたが誰かはわかりました。何の御用でしょうか」
「お前を俺様の部下に「お断りします」」
言うだけ言って扉を閉めた。
ドンドンと扉を叩かれたけど、無視した。
父を奪った政府や海軍なんて真っ平ゴメンだ。
自分達が絶対の正義だと思っているような人の仲間になるのなんかゴメンだ。
しかし、私の気持ちなんか関係ないと言わんばかりに毎日毎日スパンダムの部下が家に来た。
母と生活していた家を出るのは嫌だけど、母と暮らしたこの家をあいつらに汚されるのはもっと嫌だ。
小舟を買い、島を出た。
島を出てしばらくすると体調不良になり、意識を失った。
目を覚ますと、私はベッドに寝ていた。
知らない男の人が私を覗きこんでいた。
セクハラですよ、なんて言ったけれど、この男の人からは嫌な感じは全くしなかった。
話すのが楽しい久しぶりに思った。
何故そうなのかは全くわからない。
まあ顔はかなり好みだけれども…。
…よくわからない。
男はライという名前だった。
ライは何も言わない私に優しくしてくれる。
口癖になってしまったセクハラという言葉に笑顔を返してくれる。
ライの暖かさは母に似たようなものがあった。
ライは薬草汁と私にくれた。
苦かったけど、私の心は温まった。
何故か安心して眠ることができた。
焚き火の音で目を覚ますと辺りは暗くなっていた。
体調は良くなったが、好きなだけここに居ていいよというライの好意に甘えた。
ライとの生活が始まった。
強さを知り、修行をつけてもらうようにもなった。
私はいつしか彼に惹かれていた。
彼の暖かさが、優しさが、顔が、声が、逞しさが、全てが愛おしく感じる。
彼はいつもそばに居てくれる。
私は1人じゃなくなった。