「イタタタ・・・」
尻が二つに割れる、なんてベタなギャグが頭に浮かぶ。なんとなくこんな事を考えている奴が他にもいるような・・・そう思いながらも回りを見渡す。
えーと、少なくともここはさっきのデパートではないよな?なんだか変な雰囲気だしなんか石畳の通路が続いているし、あのテレビは何処に繋がっていたんだ?
「というか、鳴上はどこに・・・?」
「ハ、ハヤトー・・・?」
声がするほうに振り返るとクラレットが尻餅をついてへたりこんでいる。痛みのせいなのか若干涙目になっていた。
「大丈夫かい?咄嗟に掴んじゃったけど」
「お尻が若干痛いです。なぜか石畳だし・・・というかいきなり掴まないで下さい・・・昨日も同じやり取りしませんでしたか?」
「ああ、ごめんごめん」
謝りながらクラレットの腕を掴み、助け起こす。ちょっと可愛かったと思ったのは内緒の話だ。
「・・・なんか変な事考えていませんでしたか?」
こちらを睨みつけながら不機嫌そうに言う。す、鋭い・・・ってそんな事やっている場合じゃなかった。
もう一度辺りを見渡す。見れば見るほど訳がわからない。そもそも、なんでテレビに入れたんだ?おかしいだろ。
「俺たち、さっきテレビから入ったんだよな?」
「え、そうなんじゃないですか。というかハヤトが入っていって私もなぜか掴まえられて・・・というかテレビってそういうものじゃないんですか?」
「テレビにそんな機能あってたまるか。というか前も同じことを考えて頭からゴンとやったのを忘れたのか?」
「あ」
思い出した、と言わんばかりにクラレットが目を見開く。
あれは初めてテレビを見せた時の事だ、今話題のアイドル、『かなみん』が踊っているのを見て驚いたクラレットが「この女の子はどうやってこんな箱の中で踊っているのですか!?興味深いです!!」といって頭から入ろうと頭部を強打して、涙目のクラレットの頭を冷やしながら宥めたものだ。
「し、仕方ないじゃないですか!『あの世界』ではてれびというものが存在していないわけですし!大体この世界は未知の物が多くて・・・」
子供のように(><;)←こんな感じにさせながら訴えるクラレット。まあ、確かにそうだけどさ・・・困った。
「とりあえず、これからどうしよう?」
「はい?」
何言っているのか理解できない、といった表情でクラレットがこちらを見つめ返す。
「何って、ナルカミ君を追うのでは?」
「うーんそうなんだけど・・・」
ドォーーーン!!
「うわっ!!」「っ!!」
突然、後ろの方から轟音が聞こえた。すぐさま俺たちは真顔に戻して音のした方向を見る。
まるで何かが爆発したような音が聞こえた。意外と近いぞ、とそんなことを考えていると遠くの方で光が見えた。
「・・・あの光は」
クラレットが驚いた様子で呟く。その理由は聞かなくてもなんとなく分る。
「なんか、見覚えのある光じゃないか?」
「そうですね」
険しい顔をしながらクラレットが同意するように頷く。
「ですが『アレ』はもう使えないはず。だってあのとき・・・」
と、言いかけたところで光が消えて、またさっきのと同じような轟音が響く。そしてその瞬間また同じような光が立ち上る。今度は轟音は聞こえなかった。
「なんだか嫌な予感がします・・・」
「行こう!!もし今のが俺たちの知る『アレ』だったら・・・!!」
互いに頷きあい、光と轟音がした方へ俺たちは走っていく。
数十分前
「やっぱり、この町にもテレビの中の世界が・・・」
テレビの中に入って降り立った場所は、俺の知るあのスタジオのような場所とは全く異なっていた。
無機質な石畳、目の前に何処までも広がる通路、そして何より・・・。
「霧が、まったく出ていない?」
八十稲羽のテレビの世界と違ってまったくと言っていいほど霧が見当たらなかった。この分なら眼鏡を使うまでも無く進む事が出来そうだ。だが、いつシャドウが潜んでいるとも分らない。油断は禁物だ。
ひとまず、まずはここはどんなところか把握する必要があるな。
「これは・・・」
通路をしばらく真っ直ぐに歩いていくと、目の前に現れたのは・・・。
「門・・・か?」
まるで中世の城・・・いや、古い神殿・・・いや、凱旋門か?とにかく門だ、巨大な門が、不気味にそびえたっていた。
「一体誰がこんなものを?」
その呟きに答えるもの当然ながら誰もいない。まあ、そもそも俺の知っているテレビの世界だって誰が作ったんだよって話だけど。大方シャドウの仕業なんだろうけど。
はたして、安易に潜っていいものなのか?門の中から漂う空気は明らかに嫌な予感がする。というよりこんな得体の知れないものにいい予感はするほうが無理なんだが。
「中に入った瞬間、シャドウの群れが待ち受けている・・・なんてことは無いよな?」
改めて武器が無い事に心細さを感じる。いくら『能力』があるとしてもやはり丸腰では心許ない。
せめて、皆がいてくれたら・・・脳裏に特捜隊のメンバーの顔が次々と浮かぶ。
いやいや、今更何を言っているんだ俺は。そんな事は百も承知でここまで来たのではないか、それも皆には内緒にして。
昨日の『マヨナカテレビ』が思い出される。あれが誰なのか俺にはわからない。だが、『マヨナカテレビ』が関わっているとしたら、放っては置けない!
去年の事件は解決する事はできても、そもそも『マヨナカテレビ』とはなんなのか知ることは出来なかった。もしかしたら今回、それが判明するのでは!?もし仮に被害者がいるとしたら、それも助け出す!!たとえ自分の命を危険にさらしてでも!
いつの間にか汗ばんでいた手に活を入れるように思い切り握り締める・・・よし!
覚悟を決めて門へと足を動かす。
なんとなくコツコツという音がやけに大きく感じられる・・・気のせいだろうか?
門にたどり着くまでの時間がやけに長く掛かったような気がする。わずか数秒の音なのに。そして門をくぐる。
意外と中はひんやりとしている。緊張で背筋が寒くなっているだけではないと思いたい。
心臓が大きく動いている。ドクンドクンと言う音がこちらの耳にまで聞こえてきそうだ。
門の出口まであと5歩。シャドウの気配は感じられない。あと4歩。
あと3歩、2歩、あと1歩、0歩・・・
カンっ!!
っ!!足元に金属音が響く!驚きのあまり心臓が止まりそうになった。
何か硬いものが突き刺さったような・・・恐る恐る足元に視線を向ける。
「!これは!」
自分の足元にあるものに、驚愕のあまり目を大きく開かせる。
剣だ。足元に剣が突き刺さっている。石畳の隙間に剣の切っ先が突き刺さるように嵌っている。
「一体何処からこんなものが・・・?!」
そう呟いた時だった。
『・・・久シ振リダナ、ココヲ訪レル者ガアラワレヨウトハ』
突然無機質な声があたりに響く。見回しても姿が見えない。
「!!誰だ!!姿を現せっ!」
瞬間、夥しい殺気が自分に向かって放たれるのを感じる。姿は見えない、だがいる・・・!感じる・・・!足元に突き刺さった剣を引っこ抜き、どこから襲われてもいいように油断無く構える。
『久々ノ挑戦者ダ、失望サセテクレルナヨ・・・』
再び辺りに声が響き、上空より突然光が発生する!
「ゲレゲレッー!!」
奇妙な声・・・いや鳴き声が響いた?と思った瞬間自分のすぐ側に突然落雷が発生する!
危ない!!すぐ側で発生した落雷に驚き、「うわっ!」と思わず叫びながら後ろに下がる!
「ゲレレーーー!!」
再び聞こえてきた声に視線をそちらに向ける。
「・・・なんだあれは!?」
『ソレ』は、あまりにも現実離れしている存在だった。これまで非現実な状況と向き合ってきたが、それらとは別の意味で非常識な『生物』だった。
先ほど光が発生した場所に存在している『モノ』・・・黄色い身体を持った奇妙な生物?がこちらを見下ろしていた。
「さっきの落雷はコイツが!?アレも『シャドウ』なのか!?」
「ゲレッー!!」
こちらの言った事を理解しているのかいないのか、自分なりの返答をする黄色い物体。心なしか不機嫌そうだ。
よ、よくわからないがこのままではまずい!とりあえず何とかしなければ!
「と、とりあえず・・・ゲ、ゲレゲレ?ゲレッー・・・」
なんとなく気持ち的に攻撃をやめてくれとゲレゲレ言ってみる。これで通じれば儲けものなんだが。
「ゲレッー!」
「分るわけ・・・ないよな」
相手もなんか返してくれてるみたいだが伝わろうが伝わらないが理解できなければ何の意味も無い。ですよね。
『コチラヲマ前ニシテソノ余裕・・・ナカナカ剛胆ナ奴ヨ・・・』
そんな事をしていると、再び謎の声が当たりに響く。
「さっきから何を言っているんだ!?隠れてないで出て来たらどうだ!?」
相変わらずゲレゲレ言っているこの黄色い物体がいるだけで、声の持ち主は現れない。
と思いきや・・・
『歓迎スルゾ、気骨アル挑戦者ガコノ『無限回廊(ムゲンカイロウ)』ヲ訪レタコトヲ!!』
再び謎の声が響き渡った瞬間。『ソイツ』は・・・いや、『ソイツ“ラ”』は現れた。空気から突然現れたように。
「!!なんだお前たちは!?」
思わず叫び声をあげる。だれだってそうする、現に俺もそうした。この光景を目にすれば誰だって上げるに違いない。
前方に10人前後の男がこちらを見据えていた。そのどれもが顔からは感情らしい感情が感じられず、ただ無機質にこちらを見据えていた、そんな気がする。
だが、もっと奇妙だったのが彼らの纏っている服装や持ち物だった。
何人かはどこかの宗教団体のようなローブを着こみ、宝石のついた杖を手にしている。その残りは重装、軽装の鎧を着こんで、剣、槍、弓、斧なんかをそれぞれ持っている。まるでRPGの世界から・・・もしくは『だいだら』で購入しましたと言わんばかりの装備だった。こんな格好で外に出たら一発で捕まるか職務質問されるに違いない。
「お前たちは何者だ!?シャドウではないのか!?なぜいきなりこんな事を!?」
と、こちらが言いきらないうちに左斜め近くにいる魔法使い風の男の一人が杖を掲げる。なにやらブツブツ呟いたかと思えば上空に光が浮かぶ。さっきと同じ光だ。
「嫌な予感ビンビン丸だな・・・」
そんな言葉が漏れる。意外と自分にはまだ余裕さが残っているらしい。この時点まではだが・・・
しかし、次の瞬間、俺の中から余裕さが音を立てて崩れ去ってしまった。
なぜなら次に出てきたのは、さっきの黄色い生き物ではなく大小無数の・・・。
「剣!?」
直剣、曲刀、槍、それぞれが白い輝きを発しているその姿は、気品さや荘厳さえ感じられる。
・・・これらをただの芸術品として捉えることが出来ればの話だが・・・。
そして予想通り、それらの剣全てが一斉に切っ先をこちらに向ける・・・そしてこちらに向かってくる!それも高速で!
「なっ!?・・・くっ!」
驚きながらも白い刃物あられに、向かっていくように走り出す。こういうときは下手に避けようとするより突っ込んでいったほうが被害が少ない。回避しきれない剣は持っている剣で弾く。
そしてそのまま魔法使い風の男に駆け寄り、その助走を利用して鳩尾に飛び蹴りを食らわす。呻き声もあげずに男は仰向けに倒れていった。
「意外と肉弾戦に弱いんだな。それはそれで助かったけど・・・ん?」
ふと、倒れている男のローブ姿に目をやる。
『一人だけ・・・事情聴取で妙な事を言っていたそうです・・・・・・『自分は、この世界とは『違う世界』に飛ばされてきた。そこでは自分は妙なローブを着た連中に人体実験されてきた・・・』と証言したそうです』
昨夜の直斗の話を思い出す。そういえば、目の前にいる男の他にもローブを着たものがいる。
何か、関係があるのか?
ふと、倒れている男の周辺になにか転がっているのが見えた。
紫色と灰色の何かのようだが・・・。
「なんだ?」
不審に思いながらも警戒しながらそばまで近づき、転がりでてきた『それ』を慎重に手に取る。
頼むからいきなりゾンビみたいに起き上がってくるなよ・・・。
「これは・・・石か?」
見たことも無いような・・・『石』・・・なのか?とにかくよく分からないが、表現するとしたら石というほうがぴったりくるような気がする。
加工されたダイヤモンドのような形をした紫色の石が、自分の手の中でにかすかに光を放っている。よく見ると石に奇妙な文様が浮かんでいる。
男から転がり出てきた他の石を見てみるとどれも同じような物で、それらにも似たような文様が浮かんでいた。
「これは・・・一体・・・・!!」
背後から殺気を感じて、とっさに持っていた剣を盾にするように構える。瞬間、襲い来る金属音と衝撃。
今度は両手剣を持った鎧姿の男と鍔迫り合いする形になった。迂闊だ、すっかり戦いの最中だと言うことを忘れてしまっていた。今のでやられていてもおかしくはなかった。
軽い火花が飛び散り、ギリギリと金属同士がぶつかる不協和音が耳に響く。
「さすがに得物が大きい物との鍔迫り合いじゃ分が悪いか・・・グハッ!!」
瞬間、横手からすごい勢いで何かがぶつかってきた。衝撃に耐えられず自分の体が転がっていく。
ゲホッ、ゲホッ!と咳き込みながらぶつかってきたものに視線を向ける。
「今度はなんなんだ・・・?」
「ムイムイ!」
「なんだあれは!?ペンギン?」
飛行帽にゴーグルをかけたペンギンのようなものが敵対心を込めた視線でこちらを見る。どうやらさっきぶつかってきたのはコイツらしい。
こんな状況じゃなければ愛嬌のある奴と言って撫でてやりたい位なんだが・・・菜々子や完二が見れば喜びそうだ、なんて場違いな言葉が頭に浮かぶ。
「ムイムイーー!!」
!!またこっちに突っ込んでくる!!見た目に反してなかなか力が強い奴だ。また何度も喰らえばたまったもんじゃないだろう。立ち上がって迎撃の態勢をとろうとするが・・・。
「ぐっ・・・足が・・・」
さっき受けた衝撃のせいか、うまく足が動いてくれない。腹部に強い衝撃を受ければ足に来るとかなんかの漫画で呼んだ気がするが、そうやら本当らしい。
そうこうしている間にもさっきのペンギンもどきがこっちに高速タックルをぶちかまそうと迫ってくる。
「くそっ・・・」
悪態をつきながら更なるダメージを覚悟した・・・。
「ごめんよ『テテ』!異界の友よ、俺の声に応えてくれ!!」
瞬間、声が響いたと同時にそのペンギンに落雷が落ちる。
「ムイイっ!?」「っ!?」
もろに落雷を受けたペンギンは叫び声を挙げながらブスブスと煙を立ち上らせながら目をバッテンさせて気絶する。と同時に光に包まれたかと思いきや跡形も無く消えてなくなった。
「行きなさい!『ブラックラック』!!」
最初とは別の声が場に響く。女の人の声だ。また光が現れたかと思うとまた別の何かが現れた。
今度は赤い帯に包まれた黒いローブのようなものに白い顔をした何かが、ぎゅうぎゅうづめになっている存在が現れる。それだけでもなにか不吉な気配を漂わせている。
「『黄泉の瞬き』!!」
叫ぶと同時にブラックラックと呼ばれた存在はそれぞれの顔の目が光った瞬間黒い波動・・・?のようなものを、さっきまで俺と鍔迫り合いをしていた鎧男に向けてはなつ。鎧男は断末魔の叫び声を挙げ、その場から消滅した。
「消えた!?・・・それに今のは・・・」
そう思った瞬間、今度は自分の体が光に包まれる。するとさっきまでの痛みが消えて、活力が漲ってくる。この光は・・・
「ディア?いやディアラマ?なんか違うような・・・?
「大丈夫か!?鳴上!?」
最初のに響いた声が俺を呼んでいる・・・というかこの声って・・・いや、まさか!?
声のしたほうに顔を向ける。
「新堂さん!?」
「なんとか・・・間に合ったようだな・・・」
肩で大きく息をしながらこちらをほっとした表情で見つめる。
「ええ、間一髪で間に合ったようですね・・・」
もう一つの女性の声がすぐ横手に聞こえる。新堂さんがいると言う事は・・・・。
「っ!クラレットさんまで!?」
「なんだか妙なところで会いましたね。『リプシー』で怪我を治してみたんですが他に痛みは?」
にっこりと笑いながらこちらを見るクラレットさん。その側では羽が生えた愛くるしい姿のやつが宙を浮いていた。リプシー・・・とはコイツの事か。
『どんだけキュートなんだコラァ!!』ふと完二のそんな叫びが聞こえたような気がした。
「ええ、おかげさまで・・・って二人とも、どうしてこんな所に!?それにさっきのは一体?」
「それはこっちも聞きたいよ!さっきお前がテレビに入って行くのを偶然見かけて、そのままついて行ったら俺たちもテレビの中に吸い込まれて・・・」
なんだって!?今なんと!?
「見て・・・たんですか!?っていうか近くにいたんですか!?というか二人とも『テレビの世界』にはいれたんですか!?」
「というか一体どんな状況なんだ、これは!?さっきなぜか転がっていた『サモナイト石』があったから『召喚術』で偶然お前を助けられたんだけど、なんだってお前が襲われているんだ!?」
「・・・なんですって?」
新堂さんが興奮気味に話している。サモ・・・ナイト石?召喚・・・術?
「それになんなんだこいつ等は!?というかなんで『召喚術』が使え・・・」
「ハヤト!!」
新堂さんの言葉を遮り、クラレットさんが叫ぶ!新堂さんが敏感に反応して、別の鎧男の剣撃を「うわっ!」といいながらかわす。
「こんの・・・!」
さっきクラレットさんが倒した鎧男が持っていた両手剣を拾い上げ、鎧男に対してお返しと言わんばかりに斬撃をお見舞いする。よくあんな身長で振り回せるものだ。
切られた鎧男はさっきの男と同じように「オオッ・・・」と呻き声を挙げながら消滅する。
というか、武器を使うのに手馴れてないか?
「鳴上!聞きたいことは一杯あるが下がっていてくれ!ここは俺たちに任せろ!!」
「新堂さん!?ちょっと!?」
俺の制止の声も聞かずに別の敵に向かって走り出す新堂さん。右手には灰色の石を持ちながら。
「行くぞ!クラレット!!」
「はい!ハヤト!」
互いに頷きあい、それぞれ別の敵に向かっていく。
「タケシー!!」
クラレットが叫ぶとまた別の何かが現れる。最初に見た黄色い奴だ。
「『ゲレレサンダー』!!」
クラレットさんが叫ぶと黄色い奴―――タケシーと呼ばれた奴が最初に自分にしたように敵の一人に向かって落雷を落とす。
「駄目押しに・・・『シャインセイバー』!!」
トドメと言わんばかりに新堂さんがまた何かを呼び出す・・・さっき俺がやられた剣じゃないか。それらは今度は俺ではなく弱った敵に対して容赦なく飛んでいき、ソイツを消滅させる。
「あと大体七体です!!油断しないで・・・」
その時、別の杖を持った奴がなにやら詠唱を始めているのを偶然見つけてしまった。その矛先には・・・クラレットさん。
「!危ない!!」
俺の叫びもむなしく、クラレットさんの体がその男の放った衝撃波をモロに受けてしまい、蹴っ飛ばされたサッカーボールのように吹っ飛ばされてしまった。
「クラレット!!」
新堂さんが思わず叫び、駆け寄ろうとするが、別の二体の鎧男に道を阻まれる。これではクラレットさんの元へ行けない!
「クソ!!」
新堂さんが悪態をついて武器を構える間にも、杖男は更なる追撃をかけようとあの黄色い奴を呼び出し力を集中させる。またあの雷をぶつける気だ!
「くっ・・・」
クラレットさんが苦しそうに声を漏らす。このままではやられる!!助けなければ!!
そう思って駆け寄ろうとする・・・しかし間に合うのか!?
暗い思考が頭をよぎりそうになったその時。
『我は・・・汝』
声が・・聞こえた。
「この声は・・・!」
『汝は・・・我』
再び声が聞こえる。
ああそうだ、すっかり動転して忘れていた。
ここがあの場所と勝手は違うのかもしれないが、知った事じゃない・・・。
『汝、己が双眸を見開き・・・』
さあ、ここからが本番だ!
『今こそ発せよ!』
精神を集中させて、右手を高く掲げる。
「ぺ」
俺の周りに青い光が発する。
「ル」
杖男の詠唱が終わったようだ。クラレットさんに向かって電撃が走る!!
「ソ」
新堂さんがなにか叫んでいる。
「ナ」
けど、もう大丈夫。
「ペルソナッ!!!!」
カードを、握りつぶす!!
電撃が、はじけ飛ぶ。
ダメージを覚悟して目を瞑っていたクラレットさんが、いつまで経っても来ない電撃を不審に思い、恐る恐る目を開く。
そしてすぐに、その目が驚愕で見開く。
「・・・・・え?」
「こ、これは・・・・?」
遠くで鎧男を相手していた新堂さんも、驚きの声を漏らしていた。
クラレットさんに攻撃していたはずの相手が、逆に吹き飛ばされて消滅している事と、もう一つ。
クラレットさんを守るようにして立っていた、俺のペルソナ・・・『イザナギ』に対して!
「イザナギ!」カッ
俺が叫ぶのと同時に、イザナギが新堂さんの相手をしていた鎧男に対して『利剣乱舞』を放つ。複数回刻まれた鎧たちは呻き声も上げるまもなく消滅した。
「行くぞ、イザナギ!」
湧き上がる興奮で自然と笑みを浮かばせながら次の目標へ向かう。