「はぁ~~……」
とある豪邸。そこで溜息を漏らすのは、ぼんやりと窓辺に手を置き、ゆっくりと流れる空模様を見つめる少女、相崎光。彼女はしばらくして空を見ることをやめ、代わりに机の中央に置いてある一枚の写真を手に取り、先程より深いため息を零す。
「愛実ちゃん、今どこに居るんだろう」
彼女の手に持つ写真に写るのは、ある人物と相崎との2ショット写真。窓辺から差し込む太陽の光に、片方の人物の顔はよく見えないが、光と同じくドレスを着るその人物の服装から恐らく女性だろう。その人物の名を呟き、どこか寂しそうに表情を曇らせた。
『お嬢様、そろそろ……』
コンコン、とノックし、ドア越しに聞こえる執事のセバスの声。既に身支度を済ませた彼女はそれに返事をしながらドアを開け、セバスと顔を合わせる。
「分かっています。今日から新しい学校ですよね?」
「えぇ、既に用意は済ませてございます」
家の前に停めてある車に乗り、手持つ写真を仕舞いながら彼女は新しい学校へ向け、そのまま車を走らせるのだった。
*
「和人―ッ!!」
舞台は代わり、朝早くとある家前で一人の人物の名を呼ぶ少女、木野咲。その叫び後、二秒と待たずバタンッ、とドアを勢いよく開けて飛び出す少年、若槻和人。
「咲!悪ぃ!寝過した!!ってか今何時?」
「全速力で向かえば何とか……と言うか和人、寝すぎじゃない?」
「だって昨日の旅行が楽しくてまだ余韻に浸ってる状態だったし、新しいデッキ構築とかいろいろやることたくさんでさ」
「和人らしい理由だね。まぁ馬鹿言ってないで早くしないと遅刻だよ?」
「わぁってるって!ヴェロキハルパー並みの足腰見せてやるぜ!」
「その例えが早いのか遅いのかのどちらを指してるかわからないんだけど?」
「ともかく無駄口叩かず全速力で特攻だ!」
「ちょ、ちょっと待ってよ!」
幼い頃からずっと代わらぬやり取り。遅刻免れるため、全速力で駆けていく和人に、咲きも置いて行かれまいと必死に和人を追いかけていき、二人が通う中学校を目指すのであった。
*
「おっしゃぁーーッ!ギリギリセーフ!」
チャイムの鐘終了間近に教室に飛び込む和人、その後ろで息を切らしながら、咲も教室へギリギリ入室。
「またギリギリ入室は咲と和人か、二人共遅刻してないとはいえ、ちゃんと余裕をもって登校するように」
担任の注意。和人はそれを『はーい』、と軽く聞き流し二人はそれぞれ自分の席へと座る。ちなみに担任の教師はいつも和人達の調子を見てきたので、注意した所で無駄なのは分かり切っていた。
「それでは早速授業を始めるが、その前に今日は転校生を紹介する」
担任の言葉にざわざわとした騒ぎ声が。そして教室から入室してきた転校生は、和人がよく知る人物でもあり、その人物を見た途端二人は思わず絶句。衝撃に言葉を失った。
「皆様初めまして。相崎光と言います。今日からぜひ仲良くしていただけたらと思っております」
「な、何で光がここに!?」
「あっ、和人さん!この学校だったんですか?またお会いできるなんて」
和人に気付いたのか、光がその言葉に返答すると生徒の視線は一斉に和人へと向けられる。
「何だ、和人?知り合いなのか?それなら丁度席も空いてるし、光の席は和人の後ろで構わないな」
和人の後ろに席に座り、担任はその後授業を始めようとするが、「あっ!」と何かを思い出したように。
「実は校長がこの学校でついにバトスピ部ってのを作ったらしい。興味ある奴はぜひ入部したらどうだ?」
光がここに転校してきた以上に、バトスピが好きな和人と咲にとってそれは喜ばしいニュース。誰もよりも担任の話に耳を傾け、二人がそこに入部としたいと思っているのは言うまでもない。担任は以上で話を終えて授業を開始し、好き嫌いあれ必死に勉学に励む生徒達であった。
*
「よ~し、授業はこれで終わりだ。全員気を付けて帰宅するように」
チャイムの鐘が鳴り響き、何人かの生徒達は既に荷物を纏め終えて帰宅をしている。その中で和人達は、転校してきた光に聞きたい事がある様子で。
「にしても光がここに転校するなんて驚きだぜ」
「本当。私もびっくりしちゃった」
「驚かせてすみません。私最近この街に引っ越してきたばかりなので」
「引っ越したって、何か訳あり?」
「大した事じゃないのでお話する程では」
光の話に少なからず疑問を覚える和人達。だが光は何かを思い出したように突然口を開き、その話題を逸らす。
「そう言えば、担任の先生、バトスピ部というのができたとか言ってましたが、あれって?」
「あ、あぁ……バトスピがブームになりだした頃から、この学校で噂になってたんだよ。いつかバトスピ部が出来るんじゃないかって?」
先程の事にまだ疑問を覚えつつも、その話題には詳しいのか、自信満々に胸を叩き誇らしげに自分が知ってる情報を光に話し始め、隣にいる和人もその話に半分耳を傾けている。
「後、教師達もバトスピやってて、中でも校長が一番の実力者らしいとか。だからもしバトスピ部が出来るなら校長が創始者とか、絶対その部の顧問になるとか色々噂されてる」
「へぇ~、そうなんですか」
「まっ、そんなの鈍感な和人でさえも知ってる情報だけどね」
「どういう意味だよ咲!?」
「まぁともかく放課後になった事だし、早速その部に行ってみない?良かったら光さんも」
「わ、私は……」
一瞬戸惑うような素振りを見せつつも、すぐに表情を変えて「それならぜひご一緒させてください」と頼み、和人達3人、そのバトスピ部へ向かう事に。
*
「ようこそ、入部希望者達よ!」
バトスピ部に足を踏み入れた彼等を迎え入れたのは、サングラスが目立つ中年男性で、名は板垣荒谷(イタガキ アラヤ)。この学校の校長でもあり、彼の顔を見た途端咲と和人は口を揃えて「やっぱり」と呟いた。
「あなたが校長先生?」
「いかにも転校生。俺がこの学校の校長、荒谷だ。以後宜しく」
「こちらこそ宜しくお願いします」
「それより、口挟むようで悪いけど、やっぱり校長先生がこの部の顧問?」
「まぁ一応そういう事になる」
「はは、やっぱ噂通り」
「何か言ったか?」
「いいえ何にも」
「まぁそれより入部希望者は君ら三人だな。そろそろここらで入部者が増えて欲しいものだが」
「入部者って俺ら以外に居ないんですか?」
今この場に居るのは顧問の荒谷と入部希望者の和人、咲、光の三名のみ。部屋こそ広い物の部員の姿がない部室はとても寂しい物が感じられる。
「先程からかなり大勢の入部希望者が来たが、どいつもこいつも遊び半分。一つ俺とのバトルで勝った奴を入部させるという条件を付けて、こういう状況になってな」
当たり前の話だが、バトスピ経験豊富の荒谷に勝つのは容易な事ではない。その証拠に今だ勝利者が居なく、荒谷の実力を裏付ける証明にもなる。「それでは部にならないんじゃ」という咲の意見をあえなくスルーし、自分のデッキを取り出す。
「さてお前等もここに入部できる資格があるかどうか俺が確かめる!代表者一人俺と勝負だ!」
それなら、と言うまでもなくバトルに名を上げたのは和人。和人が代表である事に咲も光にも不満はなく、それを見て微かに荒谷は口元を緩ませる。
「よし。俺の対戦相手はお前で決まりだな。それでは早速バトルと行こうか!」
「えぇ、校長と言えどもバトルは真剣勝負!手加減なしで行かしてもらうぜ!」
「その息だ。では行こうか!」
ゲートオープン解放、引き金となるその言葉と共に舞台はバトルフィールドへと移された。
*
────第1ターン。
「キッズファースト、せめてもの情けだ。先行はくれてやる」
「へっ、痛い目見ても知らないですよ。スタートステップ!」
和人先行のバトル。ドローステップを迎えて手札を5枚にし、メインステップを迎え、4つのコアと5枚の手札を見ながら戦略を考える。
「バーストセット!そしてディノニクソーLv.2を召喚!ターンエンド」
────第2ターン。
「行くぞ!スタートステップ!コアステップ。そしてドローステップ!」
引き抜くようにカードをドロー。そしてコア、手札共に5つとなる自分の場を見ながらメインステップを迎える。
「メインステップ!まずはダンデラビット召喚!召喚時効果発揮。自分の星魂を持つスピリット一体につきコアを一つリザーブに」
エメラルドが砕け、そこから現れたるは兎を思わせる小型スピリット。登場早々、ピョンピョン、と跳ねながらその召喚時効果を発揮させ、コアを一つブーストさせ、その後のアタックステップでは、アタックしてもディノニクソーの返り討ち。もしくはバーストのトリガーを引いて状況を悪くさせるのみだと判断したのか、ターンエンド宣言。
────第3ターン。
和人、手札4枚。コア5つ。
「メインステップ!ディノニクソーをレベルダウンして、オヴィラプト召喚、さらに千識の渓谷を配置。そしてアタックステップ!オヴィラプトでアタック!
「ライフで受ける」
出現早々フィールドを駆け抜けるオヴィラプト、ジャンプすると同時に近距離の火炎放射を展開されたバリアに向かって、叩きつけるように吐きだしライフを砕く。
「……!」
流石にベテランともいうべきカードバトラー。多少足を後ろに引き摺るのみで痛みによる悲鳴は上げず、リザーブに増えたコアを睨む。
「この程度ではまだまだ!どんどん攻めて来い!」
「じゃぁお言葉に甘えて行きますよ!ディノニクソー行け!」
「これもライフだ!」
オヴィラプトと同じく攻撃宣言に頷いて見せた途端に駆けだし、至近距離まで近付いての火炎放射が、荒谷のライフを砕く。
「ふっ、まだまだだ」
以前強気の荒谷に対し、和人のスピリットは全て疲労。肩を落とすディノニクソーとオヴィラプトではこれ以上何もできずターンエンド宣言。
────第4ターン。
荒谷のターン、手札5枚、コア9個。
「俺のターン!続けるぞ、バーストセット!そしてダンデラビットをもう一体、そしてタマムッシュをLv.2で召喚だ」
・タマムッシュ『召喚時効果』
ボイドからこのスピリットのLvと同じ数、このスピリットの上に置く。
再び召喚されたダンデラビットの効果が再びコアを齎し、そのすぐ後に出現したタマムッシュの召喚時効果がコアブーストに拍車を駆ける。
「さて、タマムッシュからのコア2個をダンデラビットに移動させて一体をLv.2に、そしてアタックステップ!ダンデラビットそれぞれでアタックだ」
「どちらもライフで受ける!」
先程のお返しと言わんばかりの攻撃宣言。ピョンピョン、と跳ねながら接近するダンデラビットに対し、和人はライフで受けると宣言。身を守る様に展開されるバリアも二体一片の体当たりによって破壊され、ライフを一気に二つ削られ、より強烈な痛みに思わず顔を歪ませる。
「ぐっ!」
「ターンエンドだ」
────第5ターン。
和人の手札3枚。コア8個。
「メインステップ!バーストカードを破棄して、バーストセット」
和人が破棄したバーストカードは、天翔龍刃覇。このマジックのバースト効果は相手の召喚時効果発揮後、相手ネクサスを二つ破壊する強力なマジックだが、相手がネクサスを配置する気配はなく、フラッシュ効果も使用コストが高く今の状況では使えないと判断したのか、新たなバーストカードにチェンジし、プレイを続行。
「リザドエッジを召喚し、こっから行くぜ!」
「あぁ、遠慮はいらん。全力で来い!」
「吠えろ!俺のビースト覇王(ヒーロー)!皇牙獣キンタローグベアー!Lv.2で召喚!不足コストはリザドエッジから確保、よって破壊」
出現したルビーが砕け、その場から降り注がれる炎から姿を現すスピリット、皇牙獣キンタローグベアー。背中の車輪を回転させて咆哮を上げ、今までのどのスピリットをも凌駕する迫力がフィールド全体に伝わる。
「召喚時効果発揮!BP4000以下のスピリット、ダンデラビットを二体破壊だ!」
炎を巻き上げながら再度回転する車輪。獣の唸りは紅の炎を放ちダンデラビット二体をいとも簡単に吹き飛ばし、消滅させる。
「アタックステップ!キンタローグベアー行けぇ!」
キラリ、と輝く爪を構え、その爪の隙間から覗く獲物を見つめながら特攻を開始するキンタローグ。さらに攻撃と同時に自らのアタック時効果を発揮させ、勢いよくぶん投げた斧が真っ直ぐタマムッシュを捕らえ、為す術もなく投げつけられた斧の餌食となり、タマムッシュは破壊される。
「そのアタック、後悔するなよ!相手による自分のスピリット破壊でバースト発動!風の覇王ドルクスウシワカ!!」
「なっ!」
「バースト効果により相手スピリット二体疲労!よってその恐竜二体共々疲労だ」
発動されしバーストカード、風の覇王。吹き荒れる風がオヴィラプトとディノニクソーの力を奪い、地面に凭れながら疲労してしまう二体。しかしそれのみでは終わらず、フィールドに合計コア8個以上あるため、そのまま直接召喚が可能。
「さぁお待ちかねのバースト召喚だ。神空の覇者!風と共に舞い降りよ!風の覇王ドルクスウシワカをLv.3で召喚!」
フィールド中央に巻き起こる台風、その目となる個所から現れるエメラルドが砕け、風の覇王が颯爽と姿を現し、台風を吹き払い地面に降り立つ。
「そしてキンタローグはドルクスが相手してやる」
「何の!フラッシュタイミングで五輪転生炎!コストはオヴィラプトとディノニクソーから確保」
「ムッ!」
再び飛び立ち、上空から飛来する風の覇王。それに対してのマジック使用でディノニクソーとオヴィラプトが消滅するも、五角形の炎がキンタローグを包み、BPをドルクスと並ぶ10000にまで上昇させ、その後キンタローグは飛来したドルクスをそのまま両腕で受け止め、足を掴んで地面に引き摺り下ろし、そのまま爪を振うと、覇王の身体に爪痕が刻まれ、フィールド中に悲鳴が響く。キンタローグは再度爪を振い、止めを刺そうと動くが、身体をドタバタ、と揺らして抵抗するドルクスに体勢を崩され、それを好機と見たのかここぞとばかりに渾身の力を振って、二本の角から放つ緑色の波動をキンタローグに直撃させ、爆音を轟かせながら巻き起こる爆風。その爆風から飛び出すドルクスであったが、最初の傷が元で力尽きたのか、墜落した後消滅。
「まだまだ行くぜ!相手による自分のスピリット破壊でバースト発動!双光気弾!デッキから2枚ドロー!そしてターンエンド」
「ぐっ……中々やるな」
本来キンタローグを返り討ちにするため、キンタローグのアタックに合わせてバースト発動したのだが、マジックによる相打ちは予想もしておらず、作戦の誤算に少々顔を苦々しくさせる。
────第6ターン。
荒谷のターン、手札3枚、コア14個。
「俺のターン、勝負をもっとド派手に動かすぞ!」
「来るなら来い!」
「では行くぞ!蟹座司る神、剛腕振いて現れよ!巨蟹武神キャンサード、レベル2で召喚!」
神の力を持つ12宮Xレアの一体。蟹座のキャンサード。上空に打ち込まれる星々が星座を形成。最後の星が最輝星に打ち込まれると蟹座のような紋章が浮かび上がらせ、紋章から出現したる緑の球体。そして次の瞬間、球体は風船が破裂した様に砕け去り、内部からキャンサードが姿を現し、地面に着地し、剛腕の鋏みをガキィ、と鳴らしながら和人を睨む。
「アタックステップだ!キャンサード、剛腕振え!」
ギラリ、と輝く眼光。攻撃宣言を受けると両腕の剛腕をグルグルと回しながら、襲来するキャンサード。キャンサードのアタックは2体で止められないという特殊な効果を発揮しているが、それ以前にスピリットがおらず、がら空きと化した場ではライフで受けるしかなく、目の前に出現したバリアはキャンサードの鋏の前に粉砕されてしまう。
「ぐあっ!」
残りライフ2。
「残りもすぐに貰うぞ?ターンエンドだ」
────第7ターン。
和人のターン。手札3枚、コア10個。
和人の場にはネクサスのみで、スピリットは一体もいない。ここで状況を打破せねば危うい状態である。
「メインステップ!ディノニクソー再び、そして斧武のアポロディノスを召喚!」
赤いシンボルが二つ砕け、出現したるディノニクソーとアポロディノス。地面に降り立つと共にディノニクソーの鳴き声とアポロディノスの咆哮がフィールド中に響く。
「そしてマジック!エクストラドロー、二枚ドロー後、三枚目オープン!赤のスピリットカードなら手札に!」
三枚目に開かれたカードは、ロクケラトプス。
「さらにこのロクケラトプスを召喚!アタックステップ!ディノニクソーでアタック!」
相手の残りライフは2。残り少ないライフを削るため、鳴き声を上げながら懸命にフィールドを駆けていくディノニクソー。後方のアポロディノスとロクケラトプスも斧と爪を構え、今か今かと、自分達にこれから来るであろう攻撃合図を待つ。
「まだまだ。フラッシュタイミングで絶甲氷盾!アタックステップ強制終了だ」
ディノニクソーのアタック中に発動される絶甲氷盾。フィールドに吹き荒れる吹雪がアポロディノスとロクケラトプスの足元を即座に凍らせ、二体を抑制。アタック中のディノニクソーはその吹雪を通り過ぎ、身体全体を回転させての突進をバリアにぶつけライフを砕く。
「……ッ!」
残りライフを1にまで追い詰め、攻撃を終えたディノニクソーは肩を落としながら和人の元へ戻っていくも、そのディノニクソーまでも吹雪に見舞われ、和人の場のスピリット達はこれ以上動く事ができなくなってしまう。
「タ、ターンエンド」
────第8ターン。
「ではそろそろ決めにかかろうか!」
荒谷のターン、コア16個、手札2枚。
「メインステップ、マジック!ダブルドローを使用!効果により二枚、デッキからドロー!」
「!」
ダブルドローの効果により二枚のカードを引きぬき、ドローしたカードの内一枚に手を駆ける。
「さぁキャンサード、存分に暴れようぞ!武装鳥スピニードハヤトを手札より、キャンサードに直接合体(ダイレクトブレイヴ)!」
エメラルドより現れし一羽の鷹、スピニードハヤト。鳴き声を上げながらその形状を変化させ、キャンサード合体し、キャンサードの強固な鎧に武槍鳥のパーツの一部であろう無数の槍が顔を出す。
「これが俺のフィニッシャーコンボだ。特攻を駆ける無双の覇者。貴様のライフをこいつが突き破る」
「……来るなら来い!俺はいつでも迎え撃つぜ!」
「強がりを、それならお望み通りアタックステップ!まずはスピニードハヤトの効果で色を一色指定!指定の色は赤!」
・武槍鳥スピニードハヤト『合体時効果』
アタックステップ開始時、色を一色指定し、指定した色のスピリットにブロックされた時、このスピリットは回復する。
より一層輝きを増したキャンサードの眼光が和人へと向けられ、背中に差してある槍を二本取り出し、一気に突っ込んでいく。
「ブロックすれば回復、ライフで受ければ決着。どちらを選んでも貴様に残るのは敗北だけだ!」
「まだまだ俺は負けない!フラッシュタイミングでマジック、双光気弾!!」
「!?、二枚仕込んでいたか!!」
「効果発揮によりブレイヴを破壊!勿論対象はスピニードハヤトだ!」
突っ込むキャンサードへと放たれる二つの火球。それを見るや否や、合体してあるスピニードハヤトはそれを嫌うかのようにキャンサードからすぐさま離れ、逆方向へと飛び去るも、火球から逃れる事も出来ず、追いつかれた火球の直撃によって大爆発を起こす。
「お、おのれ……!こしゃくな!!」
「キャンサードはライフで受けるぜ」
キャンサードのアタック自体を止める事はできないが、それでもブレイヴを失ったキャンサードに和人の残り2つのライフを削り切る力はない。キャンサードの両腕の剛腕が出現したバリアをいとも簡単に叩き壊すも、今だ和人のライフは1つ残っている。
「しぶとい。ターンエンドだ」
────第9ターン。
「和人、俺のスピリットは全て疲労状態。確かにお前にとってチャンスだろう。だがこのターンでもし俺を仕留めそこなったら、分かっているよな?」
「んな事心配されるまでもないですよ!絶対俺は勝つ!」
和人のターン、手札3枚。コア12個。
相手の場には疲労中のキャンサードのみで、残りライフは1。勿論和人にとってこの状況はチャンスなのだが、荒谷の言うとおり、このターンが正念場となる。必ずチャンスをものにするため、自然とカードを持つ手に力が入る。
「メインステップ、バーストセット!……出番だぜ相棒!大地揺らせ!天に羽ばたけ!激神皇カタストロフドラゴン、Lv.2で召喚!」
特大サイズのルビーが出現と同時に砕け、砕けたルビーから歪んだ何かが飛び出し、それが龍の形を形成するとカタストロフドラゴンの姿となり、後ろに鳴り響く雷鳴を背に咆哮を上げる。
“ギャオオオオオオォォォォォ────ッ!”
「キースピリットの出現か」
「へっ、行くぜ!アタックステップ!カタストロフドラゴン、攻撃!!」
「甘い!フラッシュタイミングで神速、ゴクラクチョーを召喚!」
「!」
攻撃合図の矢先に神速を発動。リザーブのコア全てを使用し、突如として出現したエメラルドが砕け、ゴクラクチョーが出現する。
「召喚時効果でボイドからコアを1つリザーブに。そしてカタストロフドラゴンのアタックは、このスピリットでブロッ──」
「ちょっと待ったぁ!ゴクラクチョーの召喚時効果発揮によりバースト発動!マジック、爆裂十紋刃!」
「何っ!?」
相手による召喚時効果発揮後で発動されるバーストカード、爆裂十紋刃。炎の十字架がゴクラクチョーへと向けられ、出現早々炎の餌食となり、ゴクラクチョーの身を炎が焼き焦がす。
「な、何だと!?」
「カタストロフのアタックは継続中!」
「ぐっ!ならばピュアエリクサーを使用!不足コストはキャンサードから確保。そしてブロック!」
・ピュアエリクサー『効果説明』
自分のスピリットを全て回復。この効果で回復したスピリットはアタックする事が出来ない。
回復したキャンサードは迫るカタストロフに剛腕の鋏を突き出すも、片手でそれを受け止め、鋏を掴んだまま翼を羽ばたかせ、キャンサードの巨体が地面から徐々に離れていき、キャンサードを持ち上げ、カタストロフはそれを空中に放り投げ、宙に舞い上がったキャンサードに向けて口を大きく開くと、特大の火球を放ち、もろに直撃を受けたキャンサードは爆発四散する。
「キャ、キャンサードが……」
「これでそっちの場にブロッカーはいない!アポロディノス決めろぉ!」
「ライフで受ける」
アポロディノスの振り下ろされた斧がバリアを砕き、バトルの幕が下ろされた。
*
「さすが和人!」
「お見事です。和人さん」
「二人共サンキュー!」
「……見事だな。若槻和人。約束通りお前等の入部を認めよう」
「ありがとうございます校長先生、にしても校長先生強いな、キャンサードの猛攻はかなり効いたぜ」
「経験は豊富だからな」
「まっ!これでバトスピ部に入部したし、入部当日から早速活動を始め──」
「それは無理だ。既に日も遅く下校時間。活動は後日。これは教師の立場として言わせてもらう」
荒谷の言葉にすぐさま窓の外に視界を向けてみればすっかり日も落ち、暗くなっている。バトルに夢中で気付けなかったのか、バトルでかなり時間を費やしたらしい。
「やべぇっ!急いで帰らねぇと!」
「早く帰らないと、親も心配してるだろうし」
「あっ、和人さん、咲さん。良かったら家まで私が送りますけど?」
「えっ?」
「丁度爺やが車で待機してくれているので」
校門前で待機しているリムジン。それを見て苦笑いしながら顔を見合わせる和人と咲であった。
*
「じゃぁ家まで届けてくれてサンキュー!」
「本当にごめんね、それじゃまたね!」
「えぇ、また」
結局二人は光の言葉に甘える事となり、二人を家まで送ると軽く挨拶を交わしながら立ち去り、二人が立ち去るのを見届けた後、どこか寂しげに表情を曇らせ、懐にしまってあるあの写真を取り出す。
「お嬢様、本日の学校いかがでしたか?」
「楽しかったです。咲さんや和人さんにも会えて」
「そうですか。ではあの方にも?」
「……いいえ、愛実ちゃんとは、まだ……」
愛実という人物の写った写真を見つめ、寂しげな表情のまま小さい声で返事を返し、それを見て執事であるセバスも、主人と同じように表情を寂しげにするも、その表情を一変する。
「お嬢様、落ち着いて聞いてください。実は愛実様がこの街の付近で見たという情報が」
「えっ!?それって本当ですか?」
「明日ぐらいにバトスピショップにでも行かれたらどうでしょう?」
「えぇ、分かってます!」
セバスの言葉に先程までの表情が嘘のように一変。大切なものを見つけたかのように目をキラキラと輝かせながら、期待を胸に抱く光。
「(ようやく会えるんだ。ずっと会いたかった)」
写真を持つ手に力が入る。和らいで行く光の表情にセバスも安心したように表情を和らげ、リムジンを走らせ、彼女は手に持っていた写真を車に置き、家へと向かう車の窓に視界を移す。
彼女のふもとに置かれてある写真に写るもう一人の人物、それは青い髪にドレス姿の一人の女性。その女性に会う事を楽しみに、期待を胸に膨らませながら光は家へと戻るのであった。