バトルスピリッツ激震の勇者   作:ブラスト

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第17話『魔龍vs覇王 導きのバースト!』

「よっしゃぁ!今日も絶好調だぜ!」

 

朝早くから賑わうバトスピショップ。本日日曜日に行われるバトスピショップもあるからなのか、今日は一段と客足も多く、その中で一際目立つのは、勝利にガッツポーズを上げている少年、和人。

 

「和人、練習の方は絶好調みたいだね」

 

賑う人混みの中、和人に声を駆ける一人の少女、木野咲。

 

「おっ!咲、お前も来てたんだ?」

 

「うん、私だけじゃなくリクト君もあそこに来てるよ?まぁリクト君は今日のショップバトル参加しないみたいだけどね」

 

咲が指差す先にいるリクトの姿に「へぇ~」と反応を見せるも、本日開催されるバトスピショップに参加しないと聞いて、残念そうに「えぇ~」と肩を落として見せる。

 

「そんなにガッカリしない。リクト君の代わりに私が居るじゃない?」

 

「えぇ~?」

 

「その反応、どういう意味を示してるのかな?」

 

「ま……まぁとにかくもうすぐ始まるし!もっともっと練習!!」

 

「ちょっと待ってよ!」

 

表情とは裏腹に、全く笑っていない咲の眼に冷や汗を募らせ、すぐさま話を切り替え、逃げる様に物販コーナーへと足を進める。

 

「あっ!和人君おはよう。やっぱ今日の大会参加に来たんだ」

 

そんな和人の姿を見るなり真っ先に声を駆けてくるのは店長である村井知恵。和人もおはよう、と知恵に挨拶を交わすが、その直後自動ドアが開き、入店する一人の人物。

 

「おっ!川村、お前も来たんだ?」

 

「何だ和人か、やっぱり君も居たんだね」

 

涼しげに返答する中世的な顔立ちの少年、川村劉。

 

「んだよ?その言い方?まぁいいけど、それより最近俺のデッキ絶好調なんだ!今日のイベント勿論川村も参加すんだろ?だからもし対戦する時は今日こそお前に勝ち星を上げてやる!」

 

「ふ~ん、意気込むのはいいけど、前みたいなバトル結果になったら笑えないよ?」

 

「へっ!どうかな?前は負けたけど、新しく強化したこの新デッキで勝ってやるぜ!新しく仲間になった俺の新しい相棒も早く実戦で使いたいしな」

 

デッキケースから取り出す一枚のカードに川村も一瞬目の色を変える。それがどのようなカードであれ、今までの和人のキースピリットであるエクスキャリバスやカタストロフ等と同等、あるいはそれ以上のカードである事は簡単に理解できる。

 

「新しい相棒ねぇ~、まっ、デッキ強化してるのはこっちも同じだし、もし戦う事になったらこっちも新しい相棒を紹介する事になるかもね?」

 

「?」

 

その言葉に和人も驚く様な反応を見せるも、逆にその言葉に闘志を燃やす。

 

「上等だ!お前がどんなスピリットを使おうと戦って勝つ!それだけだ」

 

お互いに退かず、自信満々な様子で自分の勝利に意気込む二人。だがそこへ見計らったように入店する一人の少女、相崎光。

 

「あら?いらっしゃい」

 

光が入店した事に気付いたのか、光の姿を見るなり「お~い!光!」と挨拶し、光もそれを礼で返すが、和人の隣に居る川村の姿を見て、何か信じられない物を見つけたように表情を変え、そのまま真っ直ぐ川村の方へと向かうと、次の瞬間勢いよく川村に抱きつき、抱きつかれた本人は勿論、それを見ていた和人や知恵も驚いたような表情を浮かべる。

 

「!、!!?」

 

「やっと会えたね!愛実ちゃん!!」

 

「!?、ど、どうしてその名前を!」

 

二人の様子に知恵も和人も驚きを隠せておらず、川村もまた自らの事を愛実と呼ぶ光に動揺を隠せていない。

 

「川村と光、二人って知り合いか?でも愛実って一体誰の事だよ?」

 

「和人さんもやっぱり御存知なかったんですね。川村愛実、それが彼女の本当の名前なんです」

 

「川村愛実って……その名前じゃまるで女みたいな名前じゃんか?」

 

「……和人さん、勿論愛実ちゃんは正真正銘女の子なんです。川村家財閥の令嬢」

 

「えっ!?」

 

光の入れ知恵に先程以上に驚いているのは言うまでもなく、知恵もまた川村が女の子である事は知っているものの、川村が光と同じ正真正銘のお嬢様である事は初耳以前にそのこと自体を夢にも考えておらず、和人と同じ、あるいはそれ以上に動揺し、二人はすぐさま川村の表情を見るも、川村は目元深くまで被った帽子を外すと、隠れていた少し長めの青髪が露わとなり、恥ずかしいのか赤く表情を染めている。

 

「……今まで隠してたけど川村劉じゃなく、川村愛実が私の本名」

 

「う、嘘!?」

 

あまりに動揺が大きいのか、思わず絶句。文字通り言葉を失ってしまい今になってもなおこの状況を整理できない程。

 

「本当なのかよ?つーか知恵さんは川村が女の子って知ってたのか!?」

 

「まぁね。チャンピオンシップの時に川村君が女の子だって分かったから」

 

「何で教えてくれなかったんだよ?それに川村こそ何で今の今まで男の振りしてたんだ?」

 

和人の問いに黙って知恵の方を向くと、そのまま静かに口を開く。

 

「弱いって思われたくないから、それが愛実の名を、女の子としての自分を捨てた理由」

 

「愛実ちゃん、あの時もそれだけ言い残して消えたよね?」

 

「…………」

 

「黙ってないで何か言ってよ?私は……」

 

「ごめん。まだ心の整理が出来てないんだ。少しだけ一人にさせて!」

 

この場に留まるのを限界と感じたのか、逃げる様に一旦その場を後にし、光はそれに追い掛けようと足を進めるもすぐにその足を止め、ただただその後姿を見つめる。

 

「愛実ちゃん……」

 

寂しげに表情を曇らせ、そんな光に対し和人は頭に残る疑問を整理しようと、口を開き光にある事を尋ねる。

 

「あのさ光、俺まだ今一状況整理が出来てないんだけど、一つ聞かせてくれ。光と川村はどういう関係なんだ?」

 

「……私と愛実ちゃんは幼馴染で、昔からよく二人で遊んでました。いつも仲良しで愛実ちゃんと居て本当に幸せだった。でも、愛実ちゃん昔からよく「女だから弱い」とか、「お人形」とか言われてて、お嬢様って立場からより一層周りから見られるそういうイメージは強かったんです」

 

「……」

 

「私はよく愛実ちゃんを庇ってたんですが、愛実ちゃんにはその時の事がよっぽど応えてたみたいで、数日後に「弱い自分を変える」とだけ残してどこかに行方をくらまして」

 

「それが川村劉としてのルーツって事か?」

 

「……はい。私は愛実ちゃんと別れたくなくて、絶対に連れ戻そうとこの街に引っ越してきたんです。愛実ちゃんを捜すために」

 

「引っ越して来たって言ったけど、目的はそのためだったんだ」

 

「はい。そしてようやく愛実ちゃんと再開できた。だからこそ私、何としてでも愛実ちゃんを連れて帰りたいんです。昔みたいにまた二人で……」

 

「川村も川村で、光も光で、二人共色んな事があったんだな。でもそういう事なら俺、力になるぜ!カードバトラー同士、力になるのは当たり前だし」

 

「和人さん、ありがとうございます」

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………」

 

同じ頃、川村もまた光と同じくどこか寂しげに表情を曇らせるが、そんな彼女に声を駆ける一人の影。

 

「もしかして……川村さん?」

 

「さ、咲!?何でここに?」

 

「やっぱり川村さんだよね、びっくりした。だって一瞬違う人かと思うぐらい見違えちゃったから」

 

「あの……その……」

 

「にしても、川村さんって女の子だったんだ。和人じゃないけど、こうやってじっくり見てもまだ信じられないよ」

 

「あんまりじろじろ見ないで……恥ずかしいんだから」

 

「あっ、ごめんごめん。にしても川村さんそっちの方が断然いいんじゃ?どうして男の恰好なんかしてたんですか?」

 

「自分を変えるため……だからかな」

 

「?」

 

「話せば少し長くなるんだけどね?」

 

 

 

 

 

 

 

「へぇ~、光さんと川村さんって知り合い同士だったんだ」

 

「まぁね。それで話に戻るけど、私さ、幼い頃からよく「女だから弱い」とか言われててさ、それが堪らなく嫌で……光がよく助けてくれたんだけど、守られてる自分が周りの言うように弱いと思えてきて、守られるのも嫌になって、そんなときであったのがバトスピでさ。始めた内から連戦で、バトスピならこんな自分を変えられると思った。だから弱い自分を捨てるために、川村劉に名前を、自分を変えるためにこの街に来た」

 

「……そんな事が」

 

川村の過去を自分の事の様にように考えて表情を暗くさせているが、川村は大きくため息を零し、どこか残念そうにまた口を開く。

 

「でもまぁ、自分が女であることを光に見破られて、それをみんなに知られてまた昔みたいになるんじゃないかって、動揺してる自分が未だにいる。光とも今まで長い事離れて、やっと再開できたにも関わらず面と向かって話すのになぜか抵抗。挙句「一人にしてくれって」って言って逃げちゃって……結局昔のままなんだよ、最近は弱い自分を変えた気でいたけど、結局はまだ……」

 

「弱い強いかなんてまだ分からないじゃないですか?」

 

「?」

 

「嫌うまく表現できないけど、強さなんて簡単に人が見据えられるものじゃないし、私が大切だと思うのはその人がどう努力するとか、どんな思いを持っているのか……つまりその、強さっていうのは外見じゃなくて、自分の心、内面でようやく分かるものじゃないんですか?」

 

「心ね……」

 

「まぁ私が昔、知恵さんに言われた言葉なんですけど」

 

「フフ、だと思った。そんな言葉そっちから出る訳ないもんね」

 

「なっ!んな言い方ないじゃないですか!」

 

「はは、ごめん。でもこうやって話して少し元気づけられた。お陰で少しだけ勇気をもらったよ。今度は逃げずに面と向かって光と話してみるから」

 

「頑張ってくださいね、川村さん」

 

「もう「愛実」でいいよ、私もこれから「咲」って呼ぶから」

 

「じゃ、じゃぁ愛実ちゃんで」

 

「別に呼び捨てでも……まぁ咲の好きなようにすればいいけどね。それじゃぁ」

 

明るさの戻った彼女の表情に安心した様子で、立ち去る彼女の後姿をしっかりと見送る。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの、光……」

 

「!、愛実ちゃん!!」

 

しばらくして光達の元へと戻るが、本人は先程の諍いから会話に多少の躊躇いを持っているか少々不安げに声を掛けるも、光はその事を気にしてる様子はなく、そんな彼女の様子に少し安心したのか、一息つき口を開く。

 

「さっきはごめん。でも今度は面と向かって話そうと思うんだ」

 

「……私も愛実ちゃんとは話しておきたい事があるんです」

 

「?」

 

「唐突なことかもしれないんですけど、愛実ちゃんを連れて帰ります。元の街に!」

 

「!?」

 

「急な話かと思うんですけど、私はずっとそのために愛実ちゃんを捜してました。こうやって会って、連れ戻すために」

 

「……突然そんなこと言われてもできる訳ない。私はまだ、この街に残りたい」

 

「まだ「強さ」ってものを求めてるんですか?」

 

「分からないけど、元々それが始まりだからね」

 

「なら、今日の試合でその「強さ」ってのを私に見せてください。私に、愛実ちゃん自身の強さを証明してください!」

 

「お、おい!光も川村も一旦落ちつけよ!」

 

仲裁に入ろうとする和人に構わず、川村も光に対して……。

 

「いいよ。今日のショップバトルで自分の強さを証明する。だからもし今日の試合で負ける様な事があったら、その時は潔く元の街に帰る」

 

「約束ですよ。必ず連れて帰りますから」

 

頷いて見せる川村の様子に、光はそのままその場を立ち去り、光が立ち去るとすぐさま和人は形相を変えて川村に詰め寄る。

 

「何であんな事言ったんだよ!もし負けたらお前、帰らなきゃならないんだぞ!」

 

「もしかして心配してるとか?」

 

だがそれに対し、当の本人は至って冷静な様子で、まるで「心配する必要ない」とでも言うように落ち着きを払って言葉を続ける。

 

「勝てばいいだけの話でしょ?そしたら簡単さ、誰にも負けない。勿論和人にもね」

 

「……そう言う事なら、俺も手加減はしないぜ?戦うとなれば全力勝負、それがカードバトラー同士の礼儀ってもんだろ?」

 

「ふふ、まぁ戦うときは試合でね」

 

先程の経緯を気にしている様子もなく、そんな川村に和人も安心したのかいつも道理の様子で接し、それに多少の笑みを零すと川村も和人も互いに勝つことを目標にしながら、その場を立ち去って行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

「では、只今よりショップバトルを始めまーす!」

 

知恵の号令と共に既に参加登録を済ませた観客達はデッキを構えながら専用の台座へと座り、試合を始めていき、白熱した熱狂に包まれていく。

 

「あれ?リクトさん?」

 

「ん?確か光、だよな?お前も来てたんだ」

 

「はい、リクトさんも来てたんですか。今日のショップバトルには参加されないのですか?」

 

「俺は見学ってところだ。たまには実戦より見学の方が得る物が多かったりするからな。それよりお前も見学なのか?」

 

「はい、今日は少し見ておきたいものがあるので」

 

「?」

 

一方のリクトと光は後方で白熱したバトルを行うカードバトラー達の試合の観戦に専念し、川村と和人、咲の三人は悠々と勝ち星を上げていき、そんな彼等を見てふと疑問に思ったのかリクトは……。

 

「和人と咲はともかく、もう一人、あの子も中々強いみたいだな」

 

「リクトさん、彼女を御存知ないんですか?」

 

「逆に誰なのか知ってるのか?」

 

「あれ、愛実ちゃん……じゃなくて、川村さんなんです」

 

「はぁ!?冗談だろ!?」

 

案の定リクトも和人達動揺、川村の事実に関しての動揺はとても大きく、本人を再度確認してなお信じられない程。

 

「今までの川村からは想像できないな」

 

「……色々あるんですよ。それに今日の試合で愛実ちゃんの覚悟を見なければなりませんから」

 

「?」

 

一方の試合の様子では続々と勝ち進んでいき、川村は咲に決勝にコマを進め和人も、咲とのバトルに勝利し決勝へと駒を進める。

 

「和人おめでとう。私の負けだよ」

 

「はは、でも俺も苦戦したぜ、咲もデッキ強化したんだな」

 

「まぁね。でも新デッキに入れた新しいキースピリットは来なかったけど」

 

「?」

 

「まぁそんな話はともかく、次決勝だよね」

 

「あぁ、次の相手は川村」

 

「……一応光ちゃんから事情は聞いた。でも何があっても和人はただバトルするだけ、でしょ?」

 

「あぁ勝負は常に真剣勝負だぜ」

 

「頑張ってよね、応援してるから」

 

「あぁ!応援サンキュー!」

 

意気込む和人達。決勝の舞台はすぐに準備され、デッキを構えながら和人と川村は部隊へと足を進める。

 

「また再戦することになったね、しかも下手したらこれが君とできる最後のバトルかもしれない」

 

「……俺だってまだお前とは一緒に居たい。けど、さっきも言った通り、勝負は勝負。真剣勝負をやるだけだぜ!」

 

「当たり前。お互い本気で戦うから自分の強さを証明できる。手加減何かしたらこっちが許さないよ!」

 

「二人共準備はオッケーかな?」

 

「「はい!」」

 

「それではコール宜しくね、ゲートオープン!」

 

「「界放ッ!!」」

 

光に包まれ真っ白となる視界。ようやく視界がはっきりした頃には既にバトルフィールドの中へと舞台を移していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

────第1ターン 川村side

 

「スタートステップ」

 

[Reserve]コア4個。

[Hand]手札4枚→5枚。

[Field]なし。

 

川村先行でバトルの幕が切られ、ドローステップで増えた手札の5枚とリザーブの4つのコアを見ながら次のステップを行う。

 

「メインステップ!バーストセット。続けてネクサス、聖者の樹の実を配置」

 

配置されるは背後に出現する赤く染まった一本の大木、聖者の樹の実。

 

・【聖者の樹の実】/4(2) 緑。

Lv.1、2『相手のアタックステップ時』

相手スピリットによってライフが減った時、ボイドからコア一個、自分のリザーブに置く。

Lv.2『相手のメインステップ時』

相手がマジックを二回以上使用した時、メインステップを終了させる。

 

「!、緑のネクサス?」

 

「これでターンエンド」

 

出だしからいつもと違うプレイングを行う川村。緑のコアブーストを取り入れた彼女が狙っているものは簡単に察しがつく。

 

「(リブラゴレムやサイゴードゴレムなんかの高コストスピリット!)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────第2ターン 和人side

 

「(相手がコアブースト狙ってるなら、その前に勝負を決める!)スタートステップ!」

 

[Reserve]コア4個→5個。

[Hand]手札4枚→5枚。

[Field]なし。

 

「メインステップ!バーストセット!そしてヴェロキハルパーをLv.3で召喚」

 

赤いルビーが砕けた後に出現する小型の恐竜、ヴェロキハルパー。鋭い爪を構え、尻尾を振りながら鳴き声を上げる。

 

「アタックステップ!ヴェロキハルパーでアタック!」

 

「ライフで受ける」

 

小さな見た目からは想像もできない程の大ジャンプで一気に川村まで迫ると、出現される光の壁に両足の爪を突き立てる様に蹴りつけ、その攻撃にライフが削られる。

 

「っ!」

 

[Life]5→4。

 

「ヴェロキハルパーのLv.2、3の効果発揮でデッキから一枚ドロー!」

 

「ふん、構わないさ。ライフ減少時によって聖者の樹の実の効果発揮。ボイドからコアを一個リザーブに、さらにそれに伴いバースト発動!」

 

これまでの静粛から一転。突如としてオープンされる一枚のカード。

 

「ライフ減少によってロックアラディンをバースト召喚!」

 

青く輝くサファイアが出現早々に砕け去り、ロックアラディンが出現し、フィールドに現れるとすぐさまその目の色を輝かせる。

 

「ロックアラディンの召喚時効果発揮により、手札にあるネクサスカード一枚をノーコストで配置可能。よって聖者の樹の実をもう一枚、手札より配置!」

 

背後に並び立つ二本の大木。だが、ロックアラディンの召喚に意味があるのは川村に限った事ではない。

 

「召喚時効果いただき!相手の召喚時効果発揮でバースト発動!」

 

「!」

 

和人の方でも沈黙を保つバーストカードがオープンされ、それが手に収まる。

 

「ドラグクリシュナーのバースト効果、このスピリットカードを召喚する!翼広げフィールド駆けろ!ドラグクリシュナー、Lv.2で召喚!不足コストはヴェロキハルパーから確保」

 

脱力したように肩を落とすヴェロキハルパーだが、突如として“バサバサッ”と鳥の羽ばたくような音と共に、空より飛来する炎に包まれし一体の翼竜、ドラグクリシュナー。地面に降り立つと同時に身に纏う炎を振り払い、覇王の名に恥じない咆哮を上げる。

 

「その後、手札のバーストカードをセット。俺はこれでターンエンド」

 

「もうターンエンド宣言とは、聖者の樹の実のコアブーストを恐れた?」

 

「別に、んなの俺の勝手だろ?」

 

「強がらなくてもそっちの狙いは読めてるよ。大方ロックアラディンをレベルアップさせたくないから、極力コアを増やさないようにしてるんでしょ?」

 

「!」

 

「気付いてないとでも思った?ロックアラディンがLv.2になれば厄介なスピリットだからね」

 

「るせぇ、ともかくそっちのターンだぜ?」

 

「分かってるよ」

 

先程の言葉に反応を見せた和人の様子から、大方川村の読みは当たっているだろう。だとすれば恐らく和人が狙うのは、ロックアラディンの排除。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ロックアラディンの効果って、確か」

 

「あぁ、Lv.2になればネクサスを疲労させる事で相手のスタートステップ中にバーストカードを確認する事が出来る。だから和人はできるだけ早く、ロックアラディンを取り除きたいのさ」

 

観客席では咲やリクト達はバトルの状況を冷静に解説しているが、二人のバトルの行方を見守る中でリクトは……。

 

「(やはり状況は川村優勢なのは当然か。だがいつか越えなきゃならない、川村をいつか俺は……)」

 

「リクト、君?どうしたの?」

 

「……い、いや!何でもない。ついぼーっとしてな」

 

「へぇ~、リクト君でもそんな事あるなんて珍しいね。まぁともかくぼーっとしてちゃ大事な場面見逃しちゃうかもよ?」

 

「あ、あぁ。そうだな」

 

 

 

 

 

 

 

 

────第3ターン、川村side

 

再びバトルフィールドに舞台は戻り、川村が第3ターンを迎え、メインステップまでの準備を済ませる。

 

[Reserve]5個→6個。

[Hand]2枚→3枚。

[Field]聖者の樹の実Lv.1(0)×2、ロックアラディンLv.1(1)。

 

「メインステップ!バーストセット。さらにツンドッグゴレムをLv.3で召喚!」

 

「やっぱり出てきたな、粉砕スピリット!」

 

再びバーストが伏せられ、そのすぐ後にフィールドに出現する二つ目のサファイア。ロックアラディンの時と同じように砕け去り、砕けたサファイアから出現するツンドッグゴレム。

 

「アタックステップ、ツンドッグゴレムでアタック。粉砕の効果でデッキを三枚破棄するよ?」

 

「くっ!」

 

特定のスピリットが持つ効果【粉砕】。攻撃合図と共に唸りながら背中の砲台を目の前の標的に向けられ、砲台から青き波動が放たれたかと思うと、それはまるで風の様に和人の場を吹き抜け、デッキから3枚のカードを弾き飛ばすとそれをトラッシュへと送る。

 

「ライフで受けるぜ!」

 

粉砕のみでツンドッグゴレムのアタックは終わらない。フィールドを駆け抜け、和人に一気に接近するや否や超至近距離で現れた光のバリアに砲撃。衝撃にライフが砕け、痛みに多少の表情を歪ます。

 

[Life]5→4。

 

「ちぃっ、だけど俺のライフが減ったからバースト発動だぜ!」

 

「来るか……」

 

再びオープンされるバーストカード、そのカードはハンゾウシノビドラゴン。

 

「行くぜ!勝利呼び込む忍者ヒーロー、ハンゾウシノビドラゴンを召喚!」

 

バースト発動と共に響くダダダッ、と何かが駆け抜ける足跡。その足音にツンドッグゴレムは耳を傾けているが、徐々にそれはツンドッグゴレムから遠のき、逆に後方で待機しているロックアラディンに近づいてきたかと思うと、足音がピタリッ、と止まると同時に地面から飛び出す足に蹴りあげられ、ハンゾウシノビドラゴンが姿を現す。

 

「バースト効果発揮でコアが一個しか置かれていない相手スピリットを破壊。よってロックアラディンを破壊だぜ」

 

止めを刺すが如く背中に担ぐ手裏剣を真上のロックアラディンに投げ付け、それを直撃で受けたロックアラディンの末路を見届けると和人の場へと戻って行く。

 

「……やっぱりバースト効果での破壊を狙ってきたね。読み通りだったよ!」

 

「!?」

 

「相手による自分のスピリット破壊でバースト発動!」

 

伏せられるバーストカードがオープンされ、バーストカードのオープンと共に突如としてフィールドの中心で輝く光。

 

「マジック、クラッシュザバビロン。効果発揮によりハンゾウシノビドラゴンを破壊する」

 

・【クラッシュザバビロン】/4(2) 青。

『バースト効果:相手によるこのスピリットの破壊後』

このバースト効果発動時に破壊されたスピリットのコスト分、相手スピリットを好きなだけ破壊する。その後コストを払う事でフラッシュ効果を発揮。

『フラッシュ効果』系統「覇王」「雄将」を持つ自分のスピリット全てをBP+4000。

 

光から放たれる幾つもの閃光、それはまるで雨のように降り注ぎ、忍びの名を持つハンゾウと言えどそれはとても避けられるような物ではなく、一発、二発、三発と全身にその閃光を浴びる様に喰らい、ハンゾウシノビドラゴンは倒れる前に爆発四散する。

 

「お互いにヒーロースピリットの損失。でも損害的にはそっちの方が多かったんじゃない?」

 

「まだまだこれから!ガンガン攻めるだけだぜ!」

 

「強がるのはいいけど、こっちも全力で勝たせてもらうよ?」

 

「あぁ。でも俺だって勝ちたい。まだまだ勝負はこれからだ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

────第4ターン、和人side

 

[Reserve]2個→3個。

[Hand]3枚→4枚

[Field]ヴェロキハルパーLv.1(1)、ドラグクリシュナーLv.2(3)。

 

「俺のターン、ネクサス、暗雲射す鬼ヶ島を配置!」

 

・【暗雲射す鬼ヶ島】/3(2) 赤

Lv.1、2:自分のスピリット/マジックの効果で相手スピリットを破壊する時、破壊できるBP+1000する。

Lv.2:系統「戦竜」を持つ自分のスピリット全て、相手スピリットを指定してアタックできる。

 

「さらにマジック、三札之術を使用!」

 

・【三札之術】/5(3) 赤。

『バースト効果:自分のライフ減少時』

BP4000以下の相手スピリット一体を破壊。その後コストを支払いメインの効果を使用する。

『メイン効果』デッキから二枚ドロー後、三枚目をオープンし、赤のスピリットカードなら手札に加える。

 

「おっ!」

 

三枚目に引いたカードに思わず表情が変わり、それを見逃す筈もなく警戒するように表情を厳しくさせる。

 

「何かいいカードでも引いたとか?」

 

「まぁな、三枚目に来たカードは激神皇カタストロフドラゴン、よって手札に!」

 

「へぇ~、ここでエースの激神皇か」

 

「続けるぜ、バーストセット!アタックステップ、ヴェロキハルパーでアタック!」

 

「ライフで受ける!」

 

再びヴェロキハルパーの連続蹴りがバリアに炸裂し、ライフが砕かれる。

 

「お前もだ!ドラグクリシュナー、行け!バーストセット中、「覇王」を持つスピリットのアタックでデッキから一枚ドロー」

 

「これもライフ!」

 

今度はドラグクリシュナーが咆哮を上げながら飛来し、口から放つ火炎放射をバリアに叩きつけて接近し、熱されたバリアに突進。バリアと共にライフも砕かれ、ヴェロキハルパーとは比べ物にならない痛みが襲う。

 

「うあッ!」

[Life]4→2。

 

「どうだライフ残り二つ!」

 

「フルアタック。まぁバーストもブロッカーもない状態じゃ最善の一手かもしれないね」

 

「言ったろ、俺は絶対勝つ!」

 

「まだ勝利宣言は速いよ?ライフは残り2になった分、聖者の樹の実の効果で大量のコアブーストが出来たからね。それよりそっちはターンエンド?」

 

「……あぁ」

 

相手が何を企んでいるにしても、スピリットが全て疲労している状態では何もできない。やむを得ず、自分のターンを終え、第5ターンを迎える。

 

 

 

 

 

 

 

 

────第5ターン、川村side

 

[Reserve]9個→10個。

[Hand]1枚→2枚。

[Field]聖者の樹の実Lv.1(0)×2、ツンドッグゴレムLv.3(4)。

 

「メインステップ、ハンドリバースを使用!」

 

「来たか、緑マジック!」

 

・【ハンドリバース】/5(3) 緑。

『メイン効果』自分の手札全て破棄後、相手と同じ枚数になるようデッキからドロー。

『フラッシュ』スピリット一体のBP+3000。

 

「手札の柱岩の海上都市を破棄して、デッキから5枚ドロー」

 

これまで幾度となく川村が使用した緑マジック、ハンドリバース。手札切れ寸前の状態からのマジック使用の意味はとても大きく、一気に増大した手札を見ながら勝利を確信した様に笑みを浮かべる。

 

「俊星流れるコロッセオ、崩壊する戦線を連続で配置。さらにバーストセットして、ツンドッグゴレムをもう一体、Lv.3で召喚!」

 

「(ネクサスにスピリット、随分と固めるな)」

 

「これでターンエンド」

 

「!?、アタックしないのか?」

 

「準備は整ったからね。無理に攻撃して場を崩す必要はないのさ」

 

「(何を企んでいる?)」

 

 

 

 

 

 

 

 

────第6ターン、和人side。

 

[Reserve]3個→4個

[Hand]5枚→6枚

[Field]暗雲射す鬼ヶ島Lv.1(0)、ヴェロキハルパーLv.1(1)、ドラグクリシュナーLv.2(3)

 

「おっ!」

 

ドローステップで引いた一枚のカード、それに思わず和人の表情も変わりそれに川村も警戒するように目の色を変える

 

「何か来たみたいだね」

 

「へっ!烈光閃刃のカードを破棄。そして新たにバーストセット!」

 

「(バーストを変えてきたか)」

 

「続けるぜ、ツインブレードドラゴンを召喚!」

 

出現した赤きルビーの崩壊と共に現れる二本の剣を掲げし竜、ツインブレードドラゴン。ドラグクリシュナーやヴェロキハルパー達と並び、対戦相手である川村を睨みながら、その時を待つかのように剣を研ぎ澄ませる。

 

「アタックステップ!ツインブレードドラゴン!行け!アタック時効果で一枚ドローして、さらにバーストセット中のアタックでBP4000以下の相手スピリット、ネクサスの効果で破壊する上限を+1000し、よってBP5000以下のツンドッグゴレムを破壊!」

 

合図と共に大きな巨体に見合ない素早い動きで川村へと接近していき、ツンドッグゴレムは阻もうと背中の砲台をツインブレードに向けて放つも、歩みを止める事無く片方の剣で砲撃を受け止め、空いた右手の剣でツンドッグゴレムを叩き潰すように振り下ろし、砲台もろとも機械で構成されたツンドッグゴレムの身体を意図も容易く破壊する。

 

「!」

 

「さらにメインアタックだぜ!」

 

「ライフで受ける!」

 

爆風からキラリ、と輝く一筋の光。次の瞬間爆風より一本の刀が飛び出し、それは一切の触もなく川村の前に出現したバリアへと突き刺さり、さらにツインブレード自身ももう一頭の刀を両手に握りしめ、展開されるバリアを一閃、一刀両断し、ライフが砕かれる。

 

「ぐあっ!」

 

[Life]2→1。

 

「どうだ!残りライフ一つ!」

 

「言っただろ?準備は整ったって、聖者の樹の実の効果でコア二つを追加。さらにライフ減少時でバースト発動!絶甲氷盾!」

 

「なっ!しまった!!」

 

「ライフを残り2に回復。さらにコストを支払って相手のアタックステップ強制終了」

 

[Life]1→2。

 

フィールドを凍て尽くす猛吹雪、壁の様に出現する氷河がスピリット達の行く手を遮り、これ以上の行動を阻む。

 

「ターンエンド」

 

 

 

 

 

 

 

 

────第7ターン、川村side。

 

[Reserve]コア12個→13個。

[Hand]1枚→2枚。

[Field]聖者の樹の実Lv.1(0)×2、崩壊する戦線Lv.1(0)、俊星流れるコロッセオLv.1(0)、ツンドッグレムLv.3(4)。

 

「メインステップ、マジック!ストロングドローを使用。手札から3枚ドロー後、二枚のカードを破棄!」

 

崩壊する戦線と柱岩の海上都市の二枚を破棄。それを見て和人は先程のハンドリバースと同様トラッシュにネクサスを送っている様子の川村に若干の疑問を持つ。それが気のせいなのか、或いは予感が的中して居るのか……。

 

「下準備完了、そろそろ行くよ?抗う敵を捻じ伏せる伝説の力、歴史を塗り替え現れよ!霊峰魔龍ヤマタノヒドラをLv.3で召喚!」

 

特大サイズのサファイアが突如として現れ、それが粉々に砕け去るとフィールドの中央に聳える一角の山。山の大きさは広々としたフィールドのスペースさえも埋め尽くしかねない程の大きさを誇り、巨大な山から突如として輝く幾つもの光、ではなく眼。岩の様な足や首が山から離れ、ヤマタノヒドラがその姿を露わにし、フィールドのスピリット達をも凌駕するその迫力に思わず息を呑む。

 

「不足コストはツンドッグゴレムをLv.2にして確保。どう?これが私の新キースピリット。ヤマタノヒドラさ」

 

「こ、こいつのために聖者の樹の実を使ってのコアブーストだったのかよ」

 

「勿論。じゃぁそろそろお待ちかねのアタックステップと行こうかな?」

 

「来るッ!」

 

「アタックステップ。ヤマタノヒドラでアタック。アタック時効果により相手は手札からマジックカードを使用できない、さらに強襲発動!聖者の樹の実を疲労させて回復。ヤマタノヒドラよ!道を切り開けッ!」

 

「ら、ライフで」

 

「させないよ?フラッシュタイミングでアグレッシブレイジを使用!」

 

「!?」

 

・【アグレッシブレイジ】/3(2) 赤

『フラッシュ効果』自分のスピリット一体に【激突】を与える。

 

「不足コストはツンドッグゴレムから確保して破壊。そして【激突】の効果により強制ブロックしてもらうよ!」

 

「ぐっ、ヴェロキハルパーでブロック」

 

当然の事ながらヴェロキハルパーがヤマタノヒドラの相手になる訳もなく、バトルも一方的なもので逃げ惑うヴェロキハルパーの小さな体を八頭の内の一つが丸呑みにし、破壊する。

 

「バトル終了時、トラッシュのネクサス一枚を配置できる。よってとラッシュにある柱岩の海上都市を配置」

 

「!、このためにトラッシュにネクサスを集めてたのかよ!」

 

「さっきから言ってただろ?下準備は完了だって、ヤマタノヒドラでもう一度アタック。強襲により、俊星流れるコロッセオを疲労させて回復」

 

「ぐっ、ドラグクリシュナーでブロック」

 

今度はドラグクリシュナーがバトルの対象となり、逃げる事無くヤマタノヒドラの身体に火炎放射を浴びせるも、岩の様な体を持つヤマタノヒドラ前には所詮蚊に刺された程にも感じない。空を飛びまわるドラグクリシュナーも、八頭の首を前にすぐさま捕まり、ドラグクリシュナーをそのまま地面に叩き付け、耐え切れずにドラグクリシュナーは爆発を起こす。

 

「バトル終了時効果により、トラッシュにある崩壊する戦線を再度配置。そしてヤマタノヒドラ、3度目のアタック。強襲により柱岩の海上都市を疲労させて回復!」

 

【強襲:8】を誇るヤマタノヒドラを前に、残りのライフも全て削られかねない。絶体絶命の状況はもはや見るだけで分かる。なのにこの状況に対しても和人には笑みが浮かび、「ライフで受ける」と宣言すると、八頭の首全てが和人の前に展開される小さなバリアに一斉突進。あまりに衝撃に思わず後ろに弾き飛ばされる。

 

「がぁぁっ!!」

 

[Life]4→3。

 

「残りライフ3つ。ヤマタノヒドラはあと6回アタックできる。もう終わりだね?」

 

「…………いいや、そうでもないぜ?」

 

「?」

 

「勝負は最後の最後まで分からない。行くぜ、ライフ減少時でバースト発動!」

 

バーストのトリガーが引かれ手に収まる一枚のカード。それに呼応するかのように空は一瞬にして雷雲となる。

 

「これって?」

 

「自分のライフ減少時、残りライフ3以下ならバースト発動。よって!俺のバーストカードをジークヤマトフリードのバーストを発動させるぜ!!」

 

「そのカードは!!」

 

「驚いてるみたいだな、続けるぜバースト効果によりBP15000以下を破壊」

 

「無駄だ、Lv.3のヤマタノヒドラのBPは16000。だからバースト効果は……!」

 

そこまで言いかけた途端に和人が配置してあるネクサスカードに気付く。ツインブレードドラゴンの時と同様、ジークヤマトフリードが持つバースト効果もスピリットの効果に分類する。と言う事はそこから分かる事はただ一つだった。

 

「へっ、暗雲射す鬼ヶ島の効果で上限を+1000。よって16000以下の相手スピリット。ヤマタノヒドラを破壊するぜ!」

 

突如として天より降り注がれる豪炎。それはもはやドラグクリシュナーの様な炎の火ではなく、岩の様な身体を誇るヤマタノヒドラでさえもその身を焼き焦がされ、八頭の首全てが地面に垂れるとそのまま消滅してしまう。

 

「効果発揮後、このスピリットを召喚!赤き剣を振いて全てを征す覇王(ヒーロー)!勝鬨上げてフィールドに降り立て!龍の覇王ジークヤマトフリードを召喚!!」

 

雷鳴の止まない空を突如として引き裂いて現れる一体の龍。翼を羽ばたかせてゆっくりと舞い降り、その手には炎を纏わせた剣が握り締められている。

 

「覇王Xレア!?」

 

「これが俺の新しいキースピリット。新しい相棒さ!」

 

「……ターンエンド」

 

 

 

 

 

 

 

 

────第8ターン、和人side。

 

[Reserve]7個→8個。

[Hand]4枚→5枚。

[Field]暗雲射す鬼が島Lv.1(0)、ツインブレードドラゴンLv.1(1)、龍の覇王ジークヤマトフリードLv.1(1)。

 

「メインステップ、ジークヤマトフリードとツインブレードドラゴンを共にLv.3にして、アタックステップ」

 

「…………」

 

相手の場にはバーストもスピリットもなければ、手札さえもなくこの時点で勝負の結果は明白。手札にあるカードももはや不要と考えたのか、スピリットのレベルアップのみで次のステップへと迎える。

 

「アタックステップ、ツインブレードドラゴンでアタック」

 

「ライフで受ける」

 

二刀の刃で光のバリアを叩き斬り、破壊されたライフの衝撃が本人にも伝わる。

 

「ッ!」

 

[Life]2→1。

 

「……ジークヤマトフリードで」

 

後はジークヤマトフリードの攻撃で決着が着く。だが残り一つのライフを砕く事は川村の負けに繋がる。そうなればもう川村に会うのがこれで最後になるかもしれない、そう考えると思わず攻撃に躊躇ってしまうも、川村はそんな和人の心情を察し……。

 

「さっさと攻撃しなよ?遠慮なんかしないって言ってたのは和人でしょ?」

 

「分かってる。でも!」

 

「……情けで勝てたって全然嬉しくない。そういう事は君が……和人が一番分かってくれてると思ったけど?」

 

「……」

 

「それに最後のバトル相手が和人で私、良かったと思ってる」

 

「?」

 

「素直に私と向き合ってくれたり、バトルでも正面からぶつかってくれたり、この街に残りたいって思う理由は和人が、皆が居るからなんだよ」

 

「川村」

 

「そう思えてきたのに今さら、自分の思いを撤回するような真似はしないでよね?何があってもそれを受け入れるだけなんだから」

 

「……分かったよ。ジークヤマトフリード!最後のライフを砕け!」

 

合図と共に翼を羽ばたかせると、目の前に展開されるバリアも紙きれの如く意図も容易く両断し最後のライフを砕き、決着が着く。

 

 

 

 

 

 

 

 

「和人君優勝よ!本当におめでとう」

 

勝負後早々に和人の勝利を祝福する知恵。カードバトラー達も優勝した和人に歓声を上げるも、和人本人はどこか浮かない顔で、知恵に対し適当に返事を返すが、和人の様子を察し川村は軽く和人の肩を叩く。

 

「痛ッ!」

 

「浮かない顔。和人らしくないよ」

 

「んなこと言ってもさ」

 

「私は満足なんだよ?最後とはいえ、力の限りバトルできたんだから。和人とのバトルで本当に私自身も決心が付いた。本当にありがとね」

 

「…………」

 

「また会えたらいいね。それじゃぁ、私は行くから」

 

『まだ必要ないんじゃないんですか?』

 

「「!?」」

 

口を挟みながら横入りする光。二人の動揺を余所にそのまま言葉を続ける。

 

「愛実ちゃんの強さ、確かに見せてもらいました。私にもはっきり伝わりましたよ」

 

「でも私、勝負に負けて」

 

「強さなんて勝ち負けが全てじゃない。そういうもんじゃないですか?それに私も折角和人さん達に会えて、この街を離れるのは寂しいですし何より愛実ちゃんにまたこうして一緒に居られるんですからそれで満足です」

 

「そ、それじゃぁ?」

 

「はい。この街に居ます。私も愛実ちゃんも」

 

にこやかに言葉を返す光に思わず、川村も笑ってしまい和人や咲は光の言葉に思わず「やったぁー!」と大きな声を上げる。

 

「よかったね。愛実さん!」

 

「本当だぜ、また川村とバトルできるんだからな」

 

「和人も咲もありがとね。でもまたハイテンションな空気に付き合わなきゃいけないのはため息ついちゃいそうだけどね」

 

またいつもと変わらない様子の川村に、和人も咲も笑みを浮かべ、バトスピショップはまた和人達の声で賑やかとなる。

 

「(和人もついに川村を超えた。その点俺はどんどん置い抜かれて……)」

 

唯一リクトは和人達の輪に加わらず、ただ自分のデッキを見つめ直すと何かを決断した様にその場を立ち去る。

 

 

 

 

 

 

 

 

「よっしゃぁ!川村も問題解決した事だし、早速もう一回バトルだぜ」

 

「はぁ~、さっきバトルしたとこでしょ?いい加減疲れたんだけど?」

 

「まぁまぁそれが和人さんのいいとこですから」

 

「和人は言い出したら聞かないし」

 

「光も咲も私を休ませる気なしか。まぁいいけどね。今度は私が勝つし」

 

「それじゃ行くぜ!」

 

「「ゲートオープン!界放ッ!!」」

 

賑やかな彼等の、カードバトラー達のバトルは今日も続けられる。

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