久々の小説更新。長らく放置してすみませんでした。ようやく書き上げる事が出来たので、ぜひ今回の話も読んでくださるとうれしいです。
アキラの大会辞退から遡ること数分前、駆けだすリクトが向かった先にいたのはタロットカードを手に、モニターを傍観しているダイキの姿があった。
「よぉ、リクト! 奇遇だな、こんな所で会うなんてよォ」
リクトの姿に気付くなり、笑いながら声を掛けるがリクトの様子を察し、すぐにダイキの表情から笑みが消えていく。
「無駄話はいらないみたいだな」
「単刀直入に聞く。ダイキ、火道アキラって奴と……」
「あぁ。多分お前の予想通り、俺とアキラは仲間って所だ」
リクトが言いきる前に、用件を理解して居るダイキはすぐにその言葉の後に、「仲間になったのは最近だがな」と付け足しながら答えた。
「最近?」
「昨日の丁度「剣刃編」が販売された時だっけかな? 急にスポンサーがアキラを俺に紹介するなり、あいつに俺の持ってた赤のカードを渡す様に言ってな」
「赤のカード。それはアブソドリューガやデュアルベルガスと同種の物か?」
「察しがいいな、その通りさ。けどまぁ俺も初めて会った野郎に簡単に渡す訳には行かない。だから実力見るためにあいつと軽くバトルしたのさ」
「勝敗は?」
「さぁな、だが俺はあいつの実力を認めて現に今、赤のあのカードはアキラの手にあるさ」
「ならお前の目的はその赤のカードを目覚めさせる事か?」
「その通り、川村との戦いならきっと目覚めるさ」
「……お前前に言ったな、「強者同士のバトルでこのカードは目覚める」って、ならお前とのバトルで目覚めたんじゃねぇのか?」
「生憎だが、俺は既にデュアルベルガスを目覚めさせてそれを所有しちまってるからな」
「どういう事だ?」
「まぁ聞けよ、デュアルベルガスやアブソドリューガ含めた6枚のカード、俺達はこいつを「ハイドカード」と呼んでる、これを目覚めさせるのは強者と戦う事と同時にハイドカード未所持者と戦う事だ」
「未所持者?」
「俺がデュアルベスガスを目覚めさせた時、お前はまだアブソドリューガを持ってなかったし、お前もアブソドリューガを目覚めさせた時は未所持者である和人とのバトルだったろ?」
「どうして未所持でなければ駄目なんだ?」
「悪魔で俺の仮説だがハイドカードってのは要するに磁石みたいなもんなんだよ、同じ極同士だと反発しちまうように、ハイドカード所持者同士がバトルすると反発し、目覚める事はない。そんな所だ」
そこまで言い終えた瞬間、突如としてアキラの大会辞退がアナウンスを通じて会場全体のプレイヤーに伝えられ、それがダイキの耳にも入った瞬間、口元を緩ませる。
「どうやら目的達成みたいだな。じゃあな、リクト。俺達の要件はここまでだ」
「待て! どういうつもりだ!!」
「どういうつもり、とは?」
足を止めると、笑いながらまるでからかっているかのような声で答え、それに苛立つように声を荒げながら言葉を続けていく。
「お前等は何故ハイドカードを目覚めさせる!? このカードに一体どんな意味があるんだ! お前等は一体何をしようしている!」
「世界征服」
「!」
即答された答えに一瞬驚いた様な顔を浮かべるリクトにすぐさま「冗談」と訂正する様に付け足した。
「アハハハハ、嘘に決まってんだろ? ちったぁ雰囲気でるかと思って言ってみたがやっぱ幼稚すぎる回答だわ! 言っててこっちが恥ずかしい」
歪んだ笑い声を上げるダイキに思わず「ふざけるな!」と怒声を上げた。
「何を熱くなってんだか? ちょっとした冗談だろ?」
「人を馬鹿にするのもいい加減にしろ! 俺が聞きたいのは──!」
「んな怖い面で聞かれようが答える気も、答えられる事もねぇよ」
「!?」
「前にも言ったろ? カード自体はスポンサーのお陰だってよ。お前にアブソドリューガを渡すよう指示したのもそのスポンサーだ」
「そのスポンサーっていうのは誰なんだ?」
「知るかよ、俺は力を得、その力を試せる相手がいりゃ十分なんだよ! それ以外の事なんか知ったこっちゃねぇ!」
「……」
「まっ、ともかく無駄話はどうでもいい、それより俺もお前に言いたい事がある。アブソドリューガ、そいつはお前の力の証だ。決して宝の持ち腐れにすんじゃねぇぞ?」
それだけ言った後、再び足を進め、呼び止めようとするリクトの言葉に今度は振り替えることなく彼は人混みの中へと消えて行った。
*
「…………」
アナウンスの放送が伝えられた数分後、ダイキと同じくして、アキラもまた手持ちのカバンを背負い直し歩き出そうと足を進めるが、行く手の先にいた和人の姿に気付くと、彼は足を止めた。
「若槻和人、一人とは珍しいな、川村達はどうした?」
「そんな事どうでもいい! アキラ、お前大会降りるって本当かよ?」
無駄話をする事無く直ぐに本題を切り出し、少しだけ怒りを込めた和人の質問にアキラはうんざりしたような溜息を零したかと思うと、何気ない態度で和人へと向き直る。
「俺が大会降りたとして、何か問題あるか?」
「この大会に参加してるみんな全員必死で大会に臨んで、勝った奴は負けた奴に恥じない様にプレイして頑張ってるんだ。なのに、お前が理由なくこんな形で止めたら、お前に負けた奴も報われねぇだろ!」
「何をしようと俺の勝手だろ? それに理由を言うとしたら、俺の目的は最初から川村愛実と戦う事だけだった」
「!?」
「目的が達成された以上、ここに留まる理由はない」
「何だよそれ! 目的がどうとかしらねぇけど、他の奴等の想いとか全部踏みにじって降りる事ないだろ!」
「勘違いしとくようなら言っとくが、俺はそもそもこの大会には飽き飽きしてたんだ。この大会のレベルの低さにな」
「なっ!?」
「目的とは別に、全国大会ともなれば少しはマシな戦いできると期待したんだが、どれも全然だ。歯応えがない、嫌、歯応えがなさすぎる」
「お前それ本気で言ってんのか!」
「気を悪くしたなら謝る。だが誤解するな、川村愛実、あいつとの勝負だけは歯応えがあった。だが楽しめはしたが川村とも決着が付き、同時に目的も達成されればもうあの大会には残る理由も、価値もなかったからな」
「つまり、川村以外は皆弱いって事かよ?」
「そうなる」
「ふざけんな!!」
アキラの発言に怒りが抑えられなかった。どのカードバトラーも各他の地域の大会を勝ち抜き、どのプレイヤーも優勝を目指し、懸命にプレイしているにも関わらず、それを全て見下したような言葉には自分が馬鹿にされてる以上の怒りを感じたからだ。
「皆この大会にどれだけ実力付けて臨んでると思ってんだよ ?お前みたいな奴がカードバトラーを馬鹿にしていい筈がない!」
「ならばお前はどうしたいんだ?」
「俺とバトルしろ !俺が勝てばその言葉を撤回してもらう!!」
和人の目付き、それをアキラはまるで気に入らないかのように皺を寄せる。
「歯の浮くような台詞の連続。その上、目だけは馬鹿正直な奴みたいに真っ直ぐ。漫画で例えるならお前は主人公が似合いそうな奴だな」
「あぁ?」
「俺はどうやら根っからの悪役なのかね ?お前みたいな奴見ると、どうも俺はイラつくんだよ!」
今まで冷淡に言葉を吐き捨てているだけのアキラだったが、その言葉には少しだけ怒りの感情が籠っていた。
「丁度奴の力を試してみたい所だったんだ、受けてやるよ。ただしやるなら当然バトルフィールドでだろ?」
「!」
「うってつけの試合場に案内してやるよ」
そのまま歩き出すアキラに、何も言わず付いて行き会場を後にして行き、その際二人の姿がふと近くに来ていた川村の目にも止まる。
「和人?」
二回戦の後に流れたアナウンスに飛び出してしまった和人を探す為に咲達と一旦別れていた彼女。和人を見た瞬間安心したように声を掛けようとするが、一緒にいたアキラと共に会場を出ていく姿を見てほっとしていた彼女の表情は一変、怪しげな雰囲気は遠目からでも感じられた。見失う訳にも行かず、咲達に知らせる事無く彼女も会場を後に、こっそり後を付けた。
*
会場を抜け、路地裏へと躊躇無く入って数分、解体して放置された建物が目立ち廃墟と言う言葉がピッタリな場所へと来ると足を止め、そこには和人達の他にもダイキの姿があった。
「あいつ! 確か前の大会でリクトと戦ってた!」
「城島ダイキ、以後宜しくな。若槻和人」
「!」
自己紹介しながら和人の名を呼ぶダイキ。それに思わず口を開こうとした和人よりも先にダイキは言葉を続けていく。
「『何で俺の名前を?』って聞こうと思ってんなら先に答え解くぜ、全国大会におまえも出場してたし、何よりリクトの知り合いだからな」
「えっ? 何でリクトが関係あるんだよ?」
「まぁちょっとした知り合いだからな。まぁ用事があんのは俺じゃなくてアキラの方だろ? 俺は気にせずどうぞ、御二人さん」
「それと」と、付けたしながらダイキは月の絵が描かれたタロットカードを出すと、和人達の後ろにある物陰に視界を向ける。
「そこのアンタも俺と一緒に観戦でもするか? そんな遠くで見るより近くの方がいいだろ?」
見透かしたようなダイキの言葉の後、物陰から川村が顔を出す。
「川村!?」
「まったく、バトルの腕だけじゃなくアンタには透視能力でもあるのかな?」
「透視能力の才能はないが、タロット占いの才能ならまぁまぁあるぜ?」
「バトルの腕はまぁまぁでないといいね」
「同感だ」
不穏な空気を漂わせながら睨み合う二人だが、川村がいる事に驚きを隠せていない和人は二人の会話を中断させるように駆け寄っていく。
「川村! お前何でここにいるんだよ! 咲達は!」
「和人が勝手に飛び出すから手分けして探してたんだよ。それで見つけたと思ったら何処かに行こうとしてるから、後付けて来たんだよ」
「そっか、悪い悪い」
「俺はいつまで茶番が終わるのを待ってればいいんだ?」
皮肉を込めた口調で睨むように言いながら、和人達も目付きを鋭くさせて身構える。
「やるんだろう? バトル、まぁ結果の見えたバトル程無駄な物はないと思うがな」
「何?」
「言いたくないが、俺が負ける可能性が全くないからな」
「へっ!どうだかな!勝負はやってみなきゃ分からねぇだろ!」
「お前が俺以上か対等の実力だったらな」
互いにデッキを持ち、中央に置かれていたステージへと足を進めるとコールを叫ぶ。
「「ゲートオープン!解放!!」」
*
「!!」
光に包まれ、真っ白に染まった視界が晴れた瞬間、思わず和人は絶句した。なぜなら今目の前に広がっていたのは今までのバトルフィールドにあった青い空ではなく今にも雷が落ちそうな真っ黒な空。さらに地面も平地ではなく所々に突き出た岩肌の目立つ荒れた荒野。今までと違う異様なバトルフィールドの光景に思わず息を呑んでしまう。
「何だよ、これ!?」
「あぁ、そういや説明がまだだったな? ここのバトルシステムは俺達のスポンサーが作った特注品でな、公式大会なんかで使われるバトルフィールドとは景色や色々変わってるんだ、でもまさかこんな景色の違いぐらいでビビったりはしないよな?」
「なっ!? 当り前だ! こんぐらいでビビってられるかよ!」
バトルフィールドの様子はモニターを通してダイキと川村も見ており、異様な光景に思わず川村も和人と同じく一瞬言葉を失った。
「どうだ? テメェ等みたいな奴等は一度も使った事も無い様な特注のフィールドは?」
「アキラはスポンサーが作ったって言ってたけど、こんなどっかのテロリストのアジトみたいな場所であんなバトルフィールドを作るなんて、アンタ達のスポンサーって結構いい趣味してるね?」
「褒め言葉として伝え解く。まぁんな話はどうでもいい、折角今は俺ら二人きりなんだ、よければ話でもしねぇか?」
「話って?」
「俺とお前が持ってるハイドカードの話だ」
「ハイドカード?」
「アキラが渡されたろ?何も記述のないあのカードだ」
「!? 何でそれを!!」
「俺もハイドカードを持ってるからさ、最も俺のは目覚め済みだがな」
「死神デュアルべルガス」のカードをちらつかせながら、川村もそれに思わず顔つきを変えた。
「まぁアキラのバトルでも見ながらゆっくり話そうぜ、多分このバトルがアキラのハイドカードのお披露目になるからな」
「!」
*
一方のバトルでは第1ターン、アキラはザニーガンをLv.2で召喚しターンエンド。第2ターン、和人はヴェロキハルパーをLv.3で召喚しターンエンド。第3ターン、アキラはザニーガンをレベルダウンさせてラッシュドローを発動。二枚ドロー後、デッキ上から二枚オープンし、【連鎖】を持つ『プテラスラッシャー』を手札に加えてエンド。第4ターン、和人はヴェロキハルパーをLv.1にダウンさせ、ツインブレードドラゴンを召喚するのみに留まり、続く第5ターン、アキラはピナコチャザウルス、ガーディアンドラゴンを召喚し、双方アタックしないまま第6ターンを迎える。
────第6ターン、和人side。
[Reserve]4個→5個。
[Hand]4枚→5枚。
[Field]ツインブレードドラゴンLv.1(1)、ヴェロキハルパーLv.1(1)。
「コアステップ、ドローステップ!」
引いたカードに一瞬顔を歪めた瞬間、アキラはそれに少し小馬鹿にした様な笑みを浮かべる。
「まったく、ポーカーフェイスという言葉を知らないのかお前は?」
「あぁ? ポーカーフェイス?」
「感情を表に出さない事だ」
「俺は別に……!」
「引いたカードに一瞬眉間に皺寄せたろ? 大方お前のデッキから察してこの状況、バーストカードでも引けてないのか?」
「!」
「図星か?」
「フン、そんなの知るかよ! とっとと続けるぜ、メインステップ! ヴェロキハルパーをLv.2にアップ、さらにカグヅチドラグーン召喚! アタックステップ!」
炎を纏う翼を掲げて現れるや否や、早速他の二体と同様攻撃態勢に入るカグヅチドラグーン、それに合わせて相手のスピリット達もいつでも来い、と言わんばかりに身構えている。
「ツインブレードドラゴンでアタック!!」
「ガーディアンドラゴン、迎え撃て」
真っ先に先陣を切ったのはツインブレードドラゴン、それを迎え撃とうとツインブレードドラゴンの前にガーディアンドラゴンが立ち塞がると手に持つ槍を勢いよく投げつけ、勢いよく投げつけられた槍はツインブレードの真横を突き抜け、一瞬外したかと思いきや、ソレはツインブレードではなく、後方で待機するカグヅチドラグーンへと向けられていたものであり、気付いた頃には時すでに遅く避ける間も無く体を貫かれ爆発を起こす。
「ガーディアンドラゴンのバトル時効果、BP3000以下の相手スピリットを一体破壊、よってカグヅチドラグーンを破壊させてもらった」
「しまった!!」
「熱くなりすぎてコイツの効果を見落としていたな」
バトル再び継続させると、ガーディアンドラゴンはもう一本、予備の槍をどこからか取り出すとツインブレードが振り下ろす二刀の刃を盾と槍で防ぎつばぜり合う。どちらも一歩も引かないが、ガーディアンドラゴンがツインブレードの腹部を蹴り飛ばし後方に退かせると、カグヅチの時と同様槍を投げ付け、対するツインブレードも二刀の刃をガーディアンドラゴンに向けて投げ付け、投げ付けられた槍は刃をすり抜け、そのままツインブレードの胸へと刺さり、一方の刃も盾で弾くがもう一刀の刃は防ぎきれずに直撃してしまい両者爆発を起こしてしまう。
「まだまだ! ヴェロキハルパーでアタック!」
「そいつはザニーガンでブロックする」
今度はザニーガンとヴェロキハルパーのバトル。先程と同じく両者のBPは互角だが、どちらもスピリットのBPを上げるマジックカードを使う気配はなくそのままバトルを継続させ、飛び上がったヴェロキハルパーが両足の爪を振い、ザニーガンの機械で構成された堅い体にガリガリ、と削って行くが黙ってやれる訳にはいかない。搭載されているスラスターを点火させ、一気に加速するとヴェロキハルパーに渾身の体当たり。そのままスピードを上げたままヴェロキハルパーもろとも壁へと激突し、互いに破壊となる。
「ターンエンド」
「序盤から早速アキラのペースか」
「当然だろう、アキラにとっちゃアイツがやろうとしてる事もお見通し。だから奴がこのターンにしようとしていた戦略を潰したのさ」
「それって手札増強しようとしていた事がお見通しだった、って事?」
「その通り! アタック時効果で何とか状況を変えようとした見たいだが、逆に状況は悪くなっちまったな」
モニターを見ながら呟くダイキの言葉は実際を的を射ていた。これまでのターンで和人の手札回りは決して良好と言える訳ではない。だからこそ和人はツインブレードやカグヅチドラグーンの効果で一気に手札を増強させようとするも、ツインブレードのアタックは些か焦り過ぎた。もしバーストカードを引いてからアタックすればツインブレードの効果でガーディアンドラゴンを破壊できており、ヴェロキハルパーではなくツインブレード、又はカグヅチドラグーンのどちらかをレベルアップしていれば、まだ和人の場はスピリットを一体残せていた。互いのライフは今だ5とはいえ、6ターン目でフィールドをがら空きにしてしまったのはとても不味い。
「でもアキラも無理に相打ちを狙ってまでブロックする必要はなかったんじゃないの?」
「分かってねぇな、アキラはスピリットを残す事よりも相手の戦略を潰す事を優先させたのさ、現にツインブレードは厄介なスピリットだからバーストをセットされる前に潰し、ヴェロキハルパーも、効果を発揮させないために相打ちに持ちこんででも破壊したのさ」
「フン、私はあんな風にスピリットを捨て駒みたいにする戦い方は嫌いだね」
「ハッ! 随分甘い事言うなぁ? 何でアキラに負けたかも知らないままで」
「どういう意味!?」
「ハッキリ言ってやる。バトスピに限らず勝負ってのは勝ちを何より優先させた奴が勝つんだ」
「そんな当り前でしょ?」
「その当り前の事をお前等は理解してねぇよ、バトスピは楽しく! スピリットは仲間! 勝負は勝手も負けても楽しい! 何て言葉は俺にとっては平和ボケした怠惰な馬鹿の戯言としか思えねぇ。勝負は負けても楽しいなんて、簡単に言えば勝ちにはそれほど拘らないって意味じゃねぇか」
「……結局何が言いたいの?」
「アキラも俺もスピリットは悪魔で駒。役目を果たさせばもう用済み。そうして次の一手に乗り変えてる、それが勝利の鉄則だからだ。そんな俺等にお前等は一生勝てねぇ。そう言ってんだ」
モニターに映る和人を一瞬視界に映すと、笑みを浮かべながらさらに言葉を続ける。
「川村、お前和人達と色々和気藹々とやってるみたいだが、そいつは悪影響だぜ?」
「!?」
「ハイドカードは勝者の道を約束するチケットと同じだぜ? まぁリクトにも手にも渡ってるが奴は勝者の道を捨てた、お前はどうだ?」
「…………」
黙り込んだままカードを取り出し、一瞬それを見つめた後またすぐモニターへと視界を戻し、バトルの行方を見守って行く。
────第7ターン、アキラside
[Reserve]5個→6個。
[Hand]7枚→8枚。
[Field]ピナコチャザウルスLv.1(1)。
「俺のターン、ブロンソードザウルス、プテラスラッシャーをそれぞれLv.1で召喚」
地面が裂け、裂けた地面から現れるブロンソードと、遥か後方から勢いよくかっ飛んでくる刃の翼を持ったプテラスラッシャーがフィールドに並ぶ。
「ピナコチャザウルスLv.1効果、このスピリットを緑のスピリットとしても扱う。これによってブロンソードの【連鎖】を発揮させる」
ブロンソードの召喚時効果は相手のネクサス一枚を破壊する効果だが、和人の場にはネクサスはない。一見不発に思えるがアキラの狙いはネクサスの破壊ではない。
「【連鎖:緑】により、ボイドからコアを一個このスピリットに置く」
「赤のスピリットでコアブーストできるのかよ」
「続けるぞ。アタックステップ、プテラスラッシャーでアタック。アタック時効果BPを+3000、さらに【連鎖:緑】、ボイドからコアを一個このスピリットに置く」
ブロンソードと同様、【連鎖】の効果でコアを増やしつつ、和人へと向け攻撃するプテラスラッシャー、ブロッカーがいない以上当然ライフで受けるのが基本。だが、和人がライフで受けると宣言した瞬間、アキラは小さく口元を緩ませながら「気をつけろよ」と呟いた。
「!?」
その意味はすぐに分かった。プテラスラッシャーが刃の翼で展開のされるライフのシールドを引き裂き、ライフが砕けた瞬間、勢いよく和人の身体は吹っ飛び、後ろの壁に大きく体を叩き付けられた。
「あが……ッ!!」
仰向けに倒され、体を起こそうにもあまりの痛みにすぐには立ちあがれなかった。喰らった衝撃はまるで表現できないほど凄まじく、手すりを掴みながら何とか立ち上がっても、まだライフの砕けた痛みはジンジン、と残っている。
「何だよ……これ……っ!」
ライフの砕けたプロテクターからは硝煙が上がる。今までアタックするスピリットによって痛みが違う事は多々あったが、先程の痛みはそれの比ではない。
「一撃目でもう苦しそうだな」
「ぐう……っ!」
「最初に言ったろ、このバトルフィールドは色々変わってるって、ライフが砕けて感じる痛みも人間が怪我をするぎりぎりのレベルまで上げられてる」
「なんの、ために!?」
「単なるゲームに本物の刺激を加えた、そういうスポンサーの趣向だ。それより辛いなら今の内にリタイアするのが利口だぞ?」
「冗談、これぐらいで、リタイヤなんかできっかよ!」
「そうか、ならもう一撃だ。ブロンソードザウルス、アタック」
「させるか! フラッシュタイミング! マジック、天翔龍刃覇!」
刃の尾を振り下ろそうと迫るが、突如ブロンソードの足下から火柱が噴き出し、炎によって焼き払われ大爆発を起こし破壊されてしまう。
「どうだ!」
「いいのか? ブロンソード如きにマジックを使って」
「何?」
「お前の戦い方はライフを打たせるやり方だろ? カウンターにしてもブロンソードではなく、ピナコチャザウルスにしていた方が効果があったんじゃないか?」
「何が言いたいんだよ?」
「ブロンソードを破壊したのは、ライフ痛みに一瞬ビビったからだろ?」
「!」
「まぁ気持ちは分からんでもないがな。あの痛みを味わうのは初めてだろ? 喰らうのを躊躇っても仕方ない。きついなら降りてもいいんだぞ?」
「うるせぇ! ビビってなんかねぇし、俺は最後まで勝負を続ける!」
見透かされた様な言葉に平気な素振り見せるが、強気な言葉とは裏腹に少しだけ体をふら付かせている和人の様子に、口元を緩ませながらアキラは「ターンエンド」とコールした。
────第8ターン、和人side。
[Reserve]8個→9個。
[Hand]4枚→5枚。
[Field]なし。
「メインステップ! バーストセット!」
「やっとお目当てのバーストを引けたみたいだな」
「まだまだ! こっからは俺も新しいカードを使うぜ! ライトブレイドラを二体召喚!」
「【強化】か」
和人のフィールドに現れる二体の白いブレイドラ。小さな翼をパタパタとさせながら相手を威嚇でもしてるかのように鳴き声を上げる。
「さらにアーチャードラゴンをLv.2で召喚!」
赤いルビーの出現と同時に砕け、大きな弓を構える龍、アーチャードラゴンが姿を出し、攻撃前から既に弦を命一杯引いており、いつでも敵を射抜く準備はできている。
「アタックステップ! アーチャードラゴンでアタック! さらにアタック時効果! このスピリット上のコア二個をトラッシュに置く事で、相手のBP4000以下の相手スピリット一体を破壊! そしてライトブレイドラ二体がいるので2チャージ追加!」
特定のスピリットのみが持つ効果【強化】、その効果は白ならばマジック等などで回復するスピリットを、青ならばデッキ破壊枚数を、緑ならば疲労スピリットの数を、赤ならば相手スピリットを破壊するBP上限を増やすと言った様なサポートに適したカードで【連鎖】と違い、単色デッキの和人にとっては相性のいい効果。鳴き声を上げながら二体のブレイドラ達が赤く光ったかと思うと、その赤い光はアーチャードラゴンの元へと移動し、矢に炎が灯ると、炎を纏わせた矢をプテラスラッシャーに向けて射られる。
「アタックはライフで受ける」
アーチャードラゴンの射た矢がプテラスラッシャーを貫き、そのままアキラへと向かっていき、展開されるライフへと突き刺さりそのままライフが砕かれる。
「ッ!」
[Life]5→4。
だがライフが砕けても痛みには慣れているのか、足を引き摺らせながらも、表情は一切崩さず、むしろ「続けるのか?」と平気そうな顔を見せた。
「……嫌、これでターンエンド」
────第9ターン、アキラside。
[Reserve]9個→10個。
[Hand]6枚→7枚。
[Field]ピナコチャザウルスLv.1(1)。
「メインステップ、黄昏の暗黒銀河を配置。さらに行くぞ」
「(来るッ!)」
「太古の地響き響かせろ! 凶龍ガンディノスLv.1で召喚」
火山が噴火するような轟音と共に大地が裂け、裂けた地面から現れるガンディノス。黒雲の空の下に現れたガンディノスはいつも以上に迫力を増している様に見えた。
「これって、川村の時と同じ!」
「アタックステップ、ガンディノスでアタック。アタック時効果でBP5000以下の相手スピリット、アーチャードラゴンを破壊し、破壊によりデッキから一枚ドロー。さらに【強襲】によりネクサスを疲労させて回復」
地面を踏み砕きながら駆けていき、目の前にいるアーチャードラゴンに対しても躊躇なく突き進みそのまま突進し空中へ放り投げると、放り投げられたアーチャードラゴンは空中で消滅してしまう。
「アーチャードラゴン!!」
「ガンディノスのメインアタックはどう受ける?」
「……ライフで、受ける!」
アキラの問いに一瞬だけライトブレイドラ達を見たが、覚悟を決めライフで受ける事を宣言するとガンディノスの大きな尾が展開されるライフに叩きつけられる。
「があぁッ!!」
[Life]4→3。
激しい痛みに何とか堪えきるも、息は荒れ、体に掛かった負担はとても大きかった。
「ターンエンド、だいぶ辛そうだな? ブロックするという手もあった筈だが?」
「へっ……なるべく、こいつら犠牲にしたくないんだよ」
「スピリット如きに情か?」
「それが悪いかよ!」
「無駄な物だと言ってるだけだ。それよりお前のターンだ、続けろ」
「何とでも言え! このバトルに勝って分からせてやる!」
────第10ターン、和人side。
[Reserve]8個→9個。
[Hand]1枚→2枚。
[Field]ライトブレイドラLv.1(1)、ライトブレイドラLv.1(1)。
「俺のターン、ブロンズヴルムをLv.1で召喚し、さらにマジック! 三札之術を使う」
「……」
三札之術の効果でデッキから二枚ドローし、三枚目にオープンしたカードは和人のキースピリットである剣龍皇エクスキャリバス。
「運のいい奴だな」
「運も実力の内だぜ!」
手札に加えるや否や、即座に手札に加えたエクスキャリバスのカードを構える。
「ブロンズヴルムを転召!」
突如ブロンズヴルムの足下から噴き上げる火柱。高温の熱を放つその火柱の中から鋭い眼光を輝かせる大きな影。
「炎纏いし龍の皇! 剣龍皇エクスキャリバス召喚!」
炎を振り払いその姿を現すエクスキャリバス。フィールドに着地すると共にその召喚時効果を発揮させる。
「エクスキャリバスの召喚時効果! BP合計6000まで相手スピリットを破壊できる! さらに2チャージ追加! ピナコチャザウルスとガンディノスを纏めて破壊だ!」
超高温の炎をガンディノス達に向けて放ち、その強力な炎を直で受けたガンディノス達は耐え切れる訳もなく、大爆発を起こすが、自分のスピリットが全滅した事に対してもアキラは以前表情は変わっていない。まるでこうなる事も予期していたように。
「(スピリットが破壊されても全く無反応、何考えてんだ?)」
バトルが進む中で何一つ顔色を変えないアキラのプレイには、次第に和人もどこか不気味な物を感じつつあった。
「ともかく考えても無駄だ。アタックあるのみ! エクスキャリバスでアタック!」
「残念だったな、フラッシュタイミングでマジック。ツインフレイムを使う」
「!」
・【ツインフレイム】/3(1)赤。
『フラッシュ効果』BP2000以下の相手スピリットを二体破壊する。
和人の攻撃宣言とほぼ同時に発動されたフラッシュのマジック。二つの火球が突撃するエクスキャリバスを余所に後方のライトブレイドラ達に真っ直ぐ飛んでいき、火球の直撃を受け二体のライトブレイドラ達は破壊されてしまう。
「しまったッ!」
「俺のフィールドを一掃した事で気が緩んだな。エクスキャリバスはライフで受ける」
自らの身体に炎を纏わせた特攻に対し、ブロッカーがいないとはいえ先程と同じく一切躊躇う事無くライフで受ける事を宣言すると、展開されるライフが砕かれた衝撃に対しても全く動じていない。
[Life]4→3。
「ターンエンド」
────第11ターン、アキラside。
[Reserve]12個→13個。
[Hand]5枚→6枚。
[Field]黄昏の暗黒銀河Lv.1(0)。
「メインステップ、ザニーガン、ダークウラノスをLv.1でそれぞれ召喚」
「さらに」、と付け足しながらアキラはさらにもう一枚手札のカードに手を掛ける。
「漆黒の獣よ、九尾の刃を振り下ろせ! 闇皇ナインテールダーク召喚」
オーロラの空から舞い降りるように現れ、足音一つ立てる事無く地面に降り立つと、狼の様な咆哮を上げる。
「これでターンエンド」
「アタックしないのか!?」
アキラの場のスピリットは既に三体、和人の残りライフも3でブロッカーもなく、勝負を決めるには大きなチャンス。それにも関わらず、アタックのチャンスを逃すアキラのプレイイングの意図がまるで読めなかった。
「(バーストを警戒してる訳でもないだろうし、一体何を狙ってんだ?)」
「どうした? 俺がアタックしないのがそんなに不服か?」
「……別に、アタックしないなら俺のターンに移させてもらうぜ」
「好きにしな」
────第12ターン、和人side。
[Reserve]10個→11個。
[Hand]2枚→3枚。
[Field]剣皇龍エクスキャリバスLv.1(1)。
「メインステップ! 大地揺らせ! 天に羽ばたけ! 激神皇カタストロフドラゴンを召喚!」
特大サイズのルビーの出現と同時に砕け、砕けたルビーから異質な物が飛び出しそれが龍の形を形成するとカタストロフドラゴンの姿となり、フィールドに並ぶ二体の龍は共鳴するように咆哮を上げる。
「召喚時効果、「古龍」を持つスピリット一体につき一枚、俺の場にはエクスキャリバスとカタストロフがいるので二枚デッキからドロー!」
「二体目のキースピリットだな」
「お前が何考えてるか分からねぇけど、こっちはガンガン行かしてもらうぜ! アタックステップ! カタストロフドラゴンでアタック!」
「ナインテールダークでブロック」
カタストロフドラゴンが放つ業火を、縦横無尽に回って避けていき、徐々に距離の差を詰めていき、一気に飛び上がると九尾の刃をカタストロフに向けて振り下ろすが、片手で軽々と弾き返し、ナインテールの尾に喰らい突くと、そのまま空中に放り投げ、火球を飛ばしもろに直撃を受けたナインテールは大爆発を起こす。
「エクスキャリバス! お前も頼む!」
「ザニーガンでブロック」
再びその身に炎を纏わせた突進を繰り出すエクスキャリバスに対し、ザニーガンはビームで迎え撃つが、エクスキャリバスは難なくレーザーを弾き返していきながら止まる事無く突き進んでいき、ザニーガンを吹っ飛ばし、消滅させる。
「ターンエンド」
────第13ターン、アキラside。
[Reserve]12個→13個。
[Hand]3枚→4枚。
[Field]ダークウラノスLv.1(1)、黄昏の暗黒銀河Lv.1(0)。
「メインステップ、イグアバギーを召喚し、さらにもう一枚」
「(来るッ!)」
「破壊の牙を突き立てろ、闇龍ダークティラノザウラーLv3で召喚」
大きな揺れと共に地割れが起き、割れた地面を突き破りながら黒い体を持つダークティラノザウラーが姿を現す。
「施しだ! 暗黒の魔剣ダークブレード召喚」
黒雲の空より降り注がれる黒い雷と共に招来するダークブレード。
「闇龍ダークティラノザウラーに合体だ」
尾で地面に突き刺さったダークブレードを引き抜き、黒炎に染まる刃を振いながら猛々しい咆哮を上げ、その迫力はフィールドを圧倒する程。
「ここで合体スピリットかよ!?」
「アタックステップ! ソードブレイヴスピリットでアタック! アタック時効果によりこのスピリットのBP以下の相手スピリット、エクスキャリバスを破壊する」
「!」
背中に突き出た刃をエクスキャリバスに向けて飛ばし、避けようとするも刃は意思を持ってるかのように追尾し、そのままエクスキャリバスの胸に突き刺さり、爆発を起こし破壊される。
「エクスキャリバス!!」
「落ち込む暇はないぞ? ダークブレードの効果、カタストロフドラゴンに指定アタックだ!」
「何ッ!?」
「俺の狙いは端からお前のキースピリットを纏めて、潰す事だ。ナインテールダークは囮にしてたとも知らずに御苦労だったな」
「だからアタックしなかったのかよ、けど、だからって自分のスピリットをまるで捨て駒みたいに」
「みたいじゃない、実際にスピリットは俺にとって捨て駒だ」
「テメェ!!」
彼の言葉に思わず拳を握り締めながら言葉を荒げるが、右手で和人を諫めるように突き出しながら、アキラは冷たく言葉を続けていく。
「文句があるなら勝負の後に聞いてやる。最もお前が勝てたらの話だがな」
「絶対勝つ! お前みたいな奴に俺は絶対負けない! 嫌、負けたくない!」
「何と言おうが、最初に言ったろ? 結果の見えたバトルだとな。フラッシュタイミング! マジック、バーストブレイク!」
「!!」
「不足コストはダークウラノスとイグアバギーから確保」
二体を犠牲にして発動されるマジック、バーストブレイク。その効果は伏せてあるバーストカードを問答無用で破棄する効果。以前リクトと対戦した際にも使われ、和人の脳裏にヤマトが破棄された時の事が浮かんでくる。
「お前のライフは3以下。この状況から考えて、そのバーストがジークヤマトフリードである可能性は高い。破棄させてもらうぞ、そのバーストを」
マジックの効果により、和人の伏せていたバーストが吹き飛び、トラッシュへと置かれる。キースピリットを一気に失えば、和人の勝利は難しくなってしまうが、トラッシュに置かれたカードはジークヤマトフリードではなく、「覇王爆炎撃」のカードだった。
「こいつは驚いた、てっきりジークヤマトフリードかと思ってたんだがな」
「へっ、バーストブレイクは既に体験済みだからな」
「まぁいい、バトルはまだ継続しているぞ?」
「!」
カタストロフが放つ火球を尻尾で振うダークブレードで引き裂きながら突き進み、カタストロフは最後に超特大の火球を放つが、ダークブレードを勢いよく突き出すと、火球ごとカタストロフを貫き、破壊する。
「カタストロフ……!」
「まだだ、ダークティラノザウラーの【連鎖】、黄昏の暗黒銀河の緑シンボルで発動させる。相手スピリットのみの破壊で、お前のライフを一つをリザーブに送る」
黒い火球を放ち、爆風を突っ切って真っ直ぐ和人へと向かい、展開されるライフへと直撃しライフが砕かれる。
「うあ……ッ!!」
[Life]3→2。
「ターンエンド」
────第14ターン、和人side。
[Reserve]12個→13個。
[Hand]4枚→5枚。
[Field]なし。
「!」
一気に形勢逆転され、再びアキラのペースに戻ってしまうが、このターン引いたカードに一瞬顔色が変わったのをアキラの目は見逃さなかった。
「メインステップ、まずはバーストセット!」
「…………」
「まだ行くぜ! ロクケラトプスをLv.1、ドラグクリシュナーLv.3でそれぞれ召喚。さらにマジック! 双翼乱舞! 効果によりデッキから二枚ドローして俺はこれでターンエンド」
────第15ターン、アキラside。
[Reserve]14個→15個。
[Hand]1枚→2枚。
[Field]ソードブレイヴスピリット(闇龍ダークティラノザウラー×暗黒の魔剣ダークブレード)Lv.3(4)。黄昏の暗黒銀河Lv.1(0)。
「メインステップ、ラッシュドロー」
二枚目のラッシュドロー、二枚ドローした後、上から二枚オープンするが、オープンしたカードはリゲインとダークディノニクソー。どちらも【連鎖】を持たないため、手札には加えられない。
「アタックステップだ」
「!」
「ソードブレイヴスピリット、アタック。アタック時効果でロクケラトプス。さらにダークブレードの効果でドラグクリシュナーに指定アタック」
アタック開始早々、刃を飛ばしロクケラトプスを破壊するとそのままドラグクリシュナーへと向かい、火炎放射を放ちながら抵抗を見せるが所詮無駄な事。一気に飛び上がると同時にドラグクリシュナーを踏みつけ、そのまま地面に押さえつける。
「フラッシュタイミングでマジック、バーストブレイクだ」
「二枚目!?」
「一枚だけかと思ったか? 生憎だがバーストブレイクはデッキに数枚積ませてもらってる」
再び発動されたバーストブレイク。動揺を隠せていない和人に今度こそジークヤマトフリードの破壊を確信し、マジックの効果でバーストカードが吹き飛ばされる。
「……へっ!」
「!?」
危うい状況の中、和人は口元を緩ませながら笑ってみせたかともうと、トラッシュに送られたカードは「爆裂十文字」。
「何!?」
「やっぱり俺の思ってた通り、二枚目のバーストブレイク持ってたな」
「……読んでいたつもりが、逆に読まれていたのか!」
「これだけじゃない! 俺もフラッシュタイミングでマジック! 救世神撃覇!!」
「!!?」
・【救世神撃覇】/4(3)赤。
【バースト:ライフ減少後】BP合計6000まで相手スピリットを好きなだけ破壊する。その後コストを支払う事でフラッシュの効果を発揮する。
『フラッシュ効果』自分はデッキから一枚ドローし、その後手札にあるバーストカードを1枚セットする。
「この場面。ダークティラノザウラーの【連鎖】を利用するのなら、お前がセットするバーストは一つだな」
「そういう事だ、俺はこのバーストをセットするぜ」
和人がバーストをセットすると同時に、ダークティラノザウラーが押さえつけているドラグクリシュナーにダークブレードを突き刺し破壊すると、【連鎖】の効果を発揮させ、和人に黒い火球を飛ばす。
「ぐわあッ!」
[Life]2→1。
ライフの砕けた強い衝撃に、吹き飛ばされそうになりながらも堪えて見せ、アキラに対して強く笑った顔を見せると、伏せてあるバーストカードを見る。
「バースト発動! 龍の覇王ジークヤマトフリード!」
「……やはりか」
「バースト効果発揮で自分のライフが3以下の時、BP15000以下の相手スピリット一体を破壊」
「無駄だ、アタックステップ中、ダークティラノザウラー自信の効果と黄昏の暗黒銀河の効果でBP+6000。破壊できる効果及ぶ範囲外だ」
ダークティラノザウラーの足下に噴き出す炎を咄嗟に後ろに下がって避わすと、炎が噴き出す地面をダークブレードで一閃。引き裂いて無理やり炎を止める。
「それでもジークヤマトフリードはバースト召喚出来る!」
「……」
「赤き剣を振いて全てを征す覇王! 勝鬨上げてフィールドに降り立て! 龍の覇王ジークヤマトフリードをノーコスト召喚!」
雷鳴轟く空を引き裂き現れる龍、炎を纏わせた剣を掲げ、天に響く豪快な雄叫びを上げる。
「……ターンエンドだ」
苛立ったように眉間に皺を寄せ、ジークヤマトフリードと和人を鋭く睨みながらターンエンドとコールした。
────第16ターン、和人side。
[Reserve]13個→14個。
[Hand]2枚→3枚。
[Field]龍の覇王ジークヤマトフリードLv.1(1)。
「メインステップ! ゴエモンシーフドラゴンをLv.3で召喚、さらにマジック! 三札之術を使うぜ」
再び二枚のカードをドローするが、三枚目に引いたカードは「双光気弾」のため手札には加えられない。
「このターンで決める! ジークヤマトフリードをLv.4にアップ!」
BP20000を誇る強大な咆哮は空気をも揺らし、それには思わずダークティラノザウラーも一瞬威圧された様にたじろいでしまう。
「アタックステップ! まずはゴエモンシーフドラゴンでアタック。フラッシュ効果発揮、自分の赤のカード一枚を破棄する事で覇王、又は雄将を持つスピリットにシンボル一つを追加させる、手札よりワンケンゴーを破棄!」
「ライフで受ける」
豪快に斧を振り回し、展開されるライフを大きく斬り裂きライフを削って行く。
「ッ!」
[Life]3→1。
「ジークヤマトフリードでアタック! 効果でソードブレイヴスピリットに指定アタック!」
「ソードブレイヴスピリットでブロック」
「フラッシュタイミングで爆覇炎神剣を使用!」
「!」
「このターンの間、覇王を持つ自分の一体に、アタック時このスピリットがBPを比べ相手のスピリットだけを破壊した時、このスピリットのシンボルと同じ数、相手のライフをリザーブに送る効果を与える!」
迫るジークヤマトフリードに対し、ダークブレードを突き出すが刃で弾き返しそのまま何度も二度三度と斬り合っていくが、徐々にジークヤマトフリードが押していき、もう一度振うダークブレードを片手で掴むと、そのまま勢いよくダークティラノザウラーごと振り回し投げ飛ばすと、そのまま特大の火炎放射をダークティラノザウラーに向けて放つ。
「これで決まりだ!!」
「……ふざけるなよ、俺が! 俺がお前みたいな奴に負ける訳がないだろうが!!」
無表情なアキラが初めて苛立った感情を剥き出しに声を荒げると、力強く一枚のカードを突き出す。
「フラッシュタイミング! アイスエイジシールド!!!」
「!」
【アイスエイジシールド】/2(1)白。
『フラッシュ』相手スピリット一体を指定する。このターンの間、指定された相手のアタック/効果によって、自分のライフは減らない。
「ジークヤマトフリードを指定だ!」
「そんなッ!?」
特大の炎がダークティラノザウラーごとアキラに迫っていくが、展開されるライフを上からさらに氷が包むように重なり、ダークティラノザウラーが焼き尽くされ大爆発を起こしてもアキラを包んでいた氷だけは一切傷ついていない。
[Life]1。
「た……ターンエンド」
勝利目前に使用されたマジック。目の前が真っ暗になるような衝撃を感じながらも止むを得ず、拳を握りながらターンエンドのコールを宣言した。
────第17ターン、アキラside。
[Reserve]18個→19個。
[Hand]2枚→3枚。
[Field]暗黒の魔剣ダークブレードLv.1(1)、黄昏の暗黒銀河Lv.1(0)。
「気に入らねぇ」
「?」
「何でお前はまだ諦めてないんだ? 単に諦めが悪いのか! それともこの状況からまだ勝てるとでも思ってるのか!」
苛立ち気味に尋ねるアキラの言葉に、和人は少しだけ強気に、また笑って見せる。
「その両方。俺は諦めが悪いし、どんな状況でも最後の最後まで勝負は分からねぇと思ってる。例えどんな状況でもな」
「……お前を見てると、どうも苛立って仕方がない」
「えっ?」
「徹底的に叩き潰してやる! メインステップ!」
アキラが手に掛ける一枚のカード、それが呼び出される瞬間、一瞬空気が変わる。
「破滅の業火を滾らせろ! 獄炎龍バーニングドラゴン、地獄の底から目覚めて来いッ!!」
火山の様にフィールドから噴き出す幾つ物火柱、あまりに高温の火柱は地面を溶かす程熱く、沼の様にドロドロとした地面から突如全体を揺らすほどの咆哮が響いて来たかと思うと、一体の巨大な龍が飛び出し、先程以上の咆哮を上げる。
「このスピリットは!?」
「初めて見るスピリットだろ? 獄炎龍バーニングドラゴン、こいつはお前が前に対戦したアブソドリューガと同類の物だ」
「アブソドリューガ!? 何でお前がその事知ってんだよ!」
「無駄話は終わりだ、バーニングドラゴンLv.3にアップし、Lv.3効果発揮、BP10000以上のスピリット全てに赤のシンボル一つを加算。さらに暗黒の魔剣ダークブレードをブレイヴ」
「!」
地面に突き刺さったダークブレードを力強く引き抜き、BPはジークヤマトフリードと並ぶ20000まで上昇する。
「アタックステップ! ダークブレードの効果でジークヤマトフリードに指定アタック」
「!」
両手で握りしめるダークブレードを力強くジークヤマトフリードに振り下ろすし、刃でそれを受け止めるが、互いのBPは20000。このままでは互いに破壊となってしまう。
「フラッシュタイミング! マジック、リゲイン!」
「!?」
【リゲイン】/4(2)白。
『フラッシュ効果』自分のスピリット一体を回復。又は、このターンの間、自分のスピリット全てをBP+3000する。
「効果により、バーニングドラゴンをBP+3000、さらにバーニングドラゴンのLv.2、3の効果発揮!」
「!?」
「自分のアタックステップ中、[獄炎龍バーニングドラゴン]以外のスピリット、マジック、ネクサス、ブレイヴの効果で自分のスピリットのBPが上がった時、自分の赤のスピリット全てのBPを+3000する。よって合計BP6000を加算」
「何て効果だよ!」
「まだだ、フラッシュタイミングでリゲイン!」
「二枚目!?」
「効果でバーニングドラゴンを回復させる」
BPが一気に上回ると、そのまま受け止めている刃ごとダークブレードでジークヤマトフリードを叩っ斬り破壊する。
「ヤマト!!」
「続けてアタックだ、バーニングドラゴン! 潰せ!!」
ダークブレードを捨て、展開されるライフに向けて強靭な両拳を叩きつけ、残りのライフを一気に破壊する。
[Life]2→0。
「うわあああああああああああっ!!」
大きな衝撃と共に、ライフが全て砕かれ決着となる。
*
元の場所へと戻り、あまりに衝撃が強かったのか、倒れそうになる和人を川村が慌てて支える。
「和人!!」
「うぅっ……うあっ!」
「さすがアキラだな。見事なバトルだったぜ、バーニングドラゴンもバッチリ使いこなしてたしな」
「ふん、どうでもいい。行くぞ」
「あぁ? 何処行くんだよ、勝ったのに随分苛々しやがって」
「どうでもいい、ともかく俺は気分が悪い」
最後に和人を一瞥しながら、舌打つとそのままその場から立ち去って行き、ダイキも後を追うとするが、何かを思い出したように川村を見る。
「今日のバトル、圧倒的だったろ? あの力を手に入れたらきっと爽快だろうぜ」
「!」
「じゃあな御二人さん。気を付けて帰れよ」
歪んだ笑い声を上げながら、ダイキもまたその場から消える様に去って行った。
「…………圧倒的な力、か」
「か、川村?さ、さっき……あいつと何話してたんだよ?」
バトルによる消耗が激しいのか、息を切らしながら途切れ途切れの言葉で川村に尋ねるが、それに対し彼女は何でもないよ、と平気な様子を見せながら答える。
「それより戻ろう、咲達も心配してるし、何より和人もどこか別の場所で休んだ方がいいだろうから」
和人の肩を持ちながら二人もその場を立ち去って行くが、川村の脳裏にはバーニングドラゴンの姿と、去り際に残したダイキの言葉だけが残っていた。
いかがでしたでしょうか第22話!
和人とアキラのバトル!
前に活動報告で、剣編の搭乗を触れた話を掻きたいと言ったんですけど、思うようにアイデアがまとまらず、中々書けないので先に次の話をかかせていただきました。
一応挿入話としてはアラタが【連鎖】や【強化】について和人達にレクチャーする話か、またはこの話でもちょっとふれたように、アキラとダイキが【連鎖】などを使いこなしながら対戦する話のどちらがいいか悩んで……(ーー゛)
あと今回登場したオリカ、獄炎龍バーニングドラゴンの効果説明!
・獄炎龍バーニング・ドラゴン/9(4)赤/古龍・獄龍。
Lv.1[1]BP9000、Lv.2[4]BP10000、Lv.3[5]BP15000。
Lv.1、2、3『このスピリットの破壊時』
このスピリットが破壊された時、このスピリットのBP以下の相手スピリットを一体破壊する。
Lv.2、3『自分のアタックステップ時』
[獄炎龍バーニングドラゴン]以外のスピリット、マジック、ブレイヴ、ネクサスの効果で自分のスピリットのBPが上がった時、自分の赤のスピリット全てのBPを+3000する。
Lv.3
BP10000以上のスピリット全てに赤のシンボル一つを追加する。
バーニングドラゴン、パワー重視の効果になってます。こんな効果持つスピリットが実際いたらいいのに(笑)結構チート的な能力かなって?って思いましたが、コストは重いしバランスは取れてるかなと思ってます。
あと多分この話が年内最後の更新になります。
来年もまたこの小説をどうかよろしくお願いします!