バトルスピリッツ激震の勇者   作:ブラスト

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どうも皆様ブラストです!今回は第26話の公開!
相変わらずの駄文ですが、今回も温かい眼で見ていただければ幸いです。

それでは本編、どうぞ!


第26話『唸る宝龍! 激昂の獄炎龍!』

「アンタが、ダイキ達の言っていたスポンサーか」

 

妙に不吉な物を感じさせる笑顔、だが男の雰囲気に呑まれまいと強気に尋ね、依然男はにこやかに笑ったまま頷いて見せる。

 

「君に会うのは初めてだね。会えて光栄だよ」

 

「無駄話はいい、俺に何の用だ!」

 

「そんなに警戒しないで。私は別に君にどうこうするつもりはない」

 

勿論その一言だけでリクトが警戒を解く訳がない。男も端から分かり切っている。だがそれに構わずさらに言葉を続けていく。

 

「リクト君、君はもう一度私達と同じ道を歩まないか?」

 

「つまり?」

 

「早い話、仲間に戻れと言う事」

 

「……ふざけるな。俺は端からお前等と仲間になった事はないし、これから為る事もない。お前等みたいな奴、信用できるか!」

 

「ならば君はもう力はいらないという事か?」

 

「力ってのはお前等とつるんで簡単に手に入るもんじゃない。和人達のお陰でようやく目が覚めたよ」

 

男の言葉にまったく耳を傾けるつもりはなく、強い目で睨んでいるが、先程から隣で傍観していたアキラはそのリクトの目に、どこか不満を持つように目を鋭くさせている。

 

「もう話し合いは無駄みたいだな」

 

「!」

 

「アキラ、私はなるべく温厚に」

「アンタが話した所でこいつは何一つ聞き耳を持つ事はない、そうと分かれば俺は俺の目的を果たさせてもらうぞ?」

 

「目的?」

 

「あぁ、俺は貰いに来たんだ。お前の持っているアブソドリューガをな」

 

「アブソドリューガを!?」

 

「腑抜けとなったお前にもはやそのカードは勿体無い。俺が貰い受け、その上で今度こそ完全に奴を叩き潰す。二度とバトルがしたくないぐらいにな!」

 

憎むべき標的を思い浮かべながら、拳を強く握りしめる。

 

「それは和人の事か?」

 

「あぁ、あいつの事だ。どうせ能天気にまだバトルを続けているんだろう?」

 

「なぜ和人に拘る?」

 

「……別に拘っちゃいない。ただ目障りなだけだ。目先に落ちているゴミのようにな」

 

「まぁまぁ二人共少し落ち着け。ここはひとつカードバトラー同士、細かい事はフィールドで決着を付ければどうだろうか?」

 

一発即発のような雰囲気の二人を宥める様に割って入り、一つ提案をしてみるが、素直にそれには応じられない。

 

「ふざけるな、俺はバトルに応じるつもりは──!」

「君は確か、私の目的が何か興味を持っているそうだったね」

 

断ろうとした瞬間、男の言葉に言いかけた言葉を止め、反応して見せる。

 

「話してあげるよ、ただし君がアキラとのバトルに勝てればね」

「負ければアブソドリューガを差し出せってか?」

「まぁ私はリクト君が持ってくれたままでも構わないが、それではアキラ君が納得してはくれないからね。呑んでくれるかい?」

「…………分かった」

「良かった、では二人共早速これを使ってくれたまえ」

 

二人の手に手渡されたのは、リモコン程の大きさのある機械。これが何か聞く前に、男は素早く手短に説明してくれた。

 

「バトルフィールドへの転送装置。それを持ち運び用に小型化したものだ」

 

「アンタ、どうやってこんなものを?」

 

「バトルフィールド自体は前から作っていたからね。後はそれを携帯できるように調整すればいいだけの話さ。大丈夫、犯罪になるような真似はしていないさ。ただし、私の作ったフィールドは特別でね、普通のバトルフィールドより衝撃は倍以上だ」

 

「あぁ、一応和人や川村から聞いてる。悪趣味のバトルフィールドだってな」

 

「あはは、すまないね。私の趣味で作ったフィールドだから」

 

「まぁ別にそれはどうでもいい。ただ、俺はひとつ、バトルの前に聞きたい事がある」

 

「?」

 

「このバトル勝てば俺は情報を、アキラはカードを手に入れる事になるが、どっちが勝ってもアンタにメリットはあるのか?」

 

アブソドリューガをリクトが持ったままでも構わない、と言う事は男の目的は別にハイドカードの回収ではない。だとすれば何を思ってここに来たのか、そもそもなぜこの男はハイドカードをアキラやダイキ、そして自分に渡して目覚めさせようとするのか、それ以前に強者同士の戦いで目覚めるハイドカードとは一体何なのか、一つ考えればキリがない疑問の数々が、とても腑に落ちなかった。

 

「聞きたい事は色々あるだろう、バトルに勝った暁には、包隠さず全てを話そう。だからこそ真実を知るために、このバトル、君の全力を出してくれ」

 

 

「…………」

 

「話は済んだのか? 始めるぞ?」

 

「あぁ」

 

「それでは二人共コールをしてくれ」

 

「「ゲートオープン、解放ッ!!」」

 

どこからか取り出した機会のスイッチを押すと、二人の持つ機会が光り出し、黒く渦巻く空のバトルフィールドへと転送され、その場から光となって消える。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「で? ハンナ、結局俺がアキラを変えるってどういう事だ?」

 

和人達はと言うとバトル後、なるべく人気のない場所に連れられ、そこでハンナの話を聞いていた。

 

「ところで愛実さんは?」

 

「愛実ちゃんなら用事で少し抜けると。リクトさんも多分すぐ愛実ちゃんと一緒にこちらと合流できると思いますよ」

 

二人の姿がない事に心配だったものの、光の言葉に安心した様に頷き、ハンナの話に集中する面々。ハンナも物置きに腰掛けながら、一息付いて話し始める。

 

「兄ちゃんってさ、今は無愛想で冷たい人だけど、昔からあんなだった訳じゃないんだ」

 

「?」

 

「僕も兄ちゃんも初めはスピリットが格好良かったっていう単純な理由でバトスピを始めたんだ。様々な恐竜、ドラゴンを模したスピリット達に魅かれてね」

 

「へぇ~、それ分かるな。俺も同じ理由でバトスピ始めたし」

 

「ふふ。バトスピ始めた頃の僕等はまだ弱くてさ、それでも兄ちゃんは勝っても負けても心の底からバトルを楽しんでて、そんな姿に憧れて僕もたくさんバトルを重ねてた。けど」

 

過去を振り返りながら明るい表情で話していくハンナだったが、次第にその表情は浮かなない物になって行く。

 

「バトルを重ねて強くなる度、周りの反応は変わっていった」

 

「?」

 

「兄ちゃんは圧倒的に強くなり過ぎたんだよ。急速に強くなっていく兄ちゃんに、他のカードバトラーの反応は「あいつにはもう勝てない」、「やっても負けるだけ」とか皆諦めムードになってた」

 

「そっか、それが原因であんな風に」

 

「違う」

 

「えっ?」

 

「まだ続きがあるんだよ、兄ちゃんは周りの反応に対し、もうバトスピがつまらなさそうに辞める事さえ、考え始めた。そんな時だよ、あの男が兄ちゃんの前に現れた」

 

「あの男?」

 

「スポンサー、そう言われている男さ。そいつは兄ちゃんにこう言った。「君の様なものがバトスピを辞めるには惜しい。君がもう今のバトルに楽しむ事が出来ないのなら、新しい事に楽しみを感いてはどうだろか?」ってね」

 

「新しい楽しみ?」

 

「その楽しみって言うのが他人を徹底的に叩き潰す事。自分との力の差を知らしめる事さ」

 

「他人を、叩き潰す?」

 

「男の一言はまさに悪魔の囁きだったよ。その言葉に洗脳されたみたいに兄ちゃんは人が変わった。相手やスピリット達に対する情も捨て、あるのは相手を叩き潰し勝つためだけの戦略。もう今の兄ちゃんに昔の面影はまったくない」

 

「…………」

 

暗い表情で話し終えるハンナに、咲達も言葉を失い、沈黙のまま時間が経っていくが、何かを決意する様にハンナの肩を強く叩く。

 

「!!」

 

「結局その男の一言が原因なんだろ! 周りに自分に勝てる奴がいないから男の言葉に耳を傾けちまったなら、今度は俺が勝って、俺達の言葉に耳を傾けさせてやればいいんだよ!! 相手を叩き潰す事だけがバトスピの楽しみなんて絶対間違ってる! 次は勝ってその考えをぶち壊してやるぜ!」

 

真正面だけを見据えた和人の言葉、それはハンナにとってとても頼もしく見えた。意気込む和人に、ハンナは満面の笑みで抱きついて見せる。

 

「ちょ!? ハンナ急にどうしたってんだよ!!」

 

「嫌、つい嬉しくなってね。僕和人兄ちゃんのそういう所が好きで、そういう真っ直ぐな性格に和人兄ちゃんに期待してる」

 

「期待?」

 

「兄ちゃんとバトルした時、どんな感じだった?」

「どんな感じって、そりゃあお前の言う通り、スピリットを道具みたい扱って、とても冷たい奴だった。でも、最後は何か俺に対して怒って見せて、何か様子がおかしかったな」

 

「多分、兄ちゃんは和人兄ちゃんの事が嫌いなんだよ」

 

「そんなストレートに!!?」

 

「あぁごめんごめん、でもちゃんと聞いて。兄ちゃんはさ、和人兄ちゃんの事、個人的な意味じゃなく、自分に似ているから嫌いだと思うよ?」

 

「自分に似ているから嫌い?」

 

「正確には昔の兄ちゃんにね。バトルを純粋に、全力で楽しんでる和人兄ちゃんは昔の兄ちゃんとそっくりなんだよ。バトルして僕が勝手にそう思っただけかもしれないけどね」

 

「それはともかく、何でそれが俺を嫌う理由になるんだ?」

 

「和人兄ちゃんを見てると昔の自分を思い出すから、考えれば思い当たる様な事はいくらでもあるけど、僕は多分、兄ちゃん自身も予想していると思うから」

 

「予想? 何に?」

 

「和人兄ちゃんなら兄ちゃんを、兄ちゃん自身も自分を変える存在だと思うからこそ、じゃないかな?」

 

「?」

 

結局ハンナの話の意味を最後まで理解して居ないように首を傾げて見せる和人に、ハンナは気にする様子もなく続けていく。

 

「まぁ簡単に言えば和人兄ちゃんが兄ちゃんに勝てばいいって話だよ。僕のカードまで渡したんだから最強のデッキ組んで兄ちゃんを倒してよね」

 

「おぉ! 任せとけ。ってかそれよりさ」

 

「?」

 

「いい加減離せッ!! 苦しいッ!!!」

 

 

 

 

二人の様子に咲も光も呆れた様子で首振っているが、その光景にはどこか微笑ましい物を感じていた。

 

「ハンナ君、すっかり和人にも懐いちゃったね」

 

「ハンナ君、御兄さんの事嫌いって言ってましたけど、本当はあんな風に弟として触れあいたいのかもしれませんね」

 

「それって何か複雑だと思うけど、ハンナ君まだ幼いし仕方ないか。あぁやって和人に懐いてるのも、和人を昔のアキラって人の面影を重ねてるからなんだね」

 

「ねぇねぇ咲姉ちゃんも光姉ちゃんもさ、今から和人兄ちゃんのデッキ組むから手伝って」

 

またいつものように咲達に軽く抱きつくハンナ、それを見ていた和人は苛立ったように……。

 

「丸くなったと思ったら、お前のそういう所は改善されてねぇじゃねぇかッ!!」

 

 

 

 

***

 

 

 

 

舞台はリクト達に戻り、バトルでは第3ターンを迎え、互いのライフは5アキラはザニーガン二体。リクトはプロードファルコン二体をそれぞれLv.1で並べ、今はリクトのターン。

 

───第3ターン、リクトside。

 

[Reserve]2個→3個。

[Hand]3枚→4枚。

[Field]プロードファルコンLv.1(1)、プロードファルコンLv.1(1)。

 

「メインステップ、バーストセット。さらに」

手札の一枚を引き抜く。

 

「白銀の龍、月より出でよ! 月光龍ストライクジークヴルム召喚ッ!」

 

リクトの背後からゆっくりと現れる白い龍、口から雷が迸っており、フィールドに降り立ち、大きな咆哮を上げる。

 

「不足コスト確保で二体のプロードファルコンを破壊。そのままアタックステップだ! ストライク、行け」

 

背中のスラスターを点火させ、猛スピードで迫りくるストライクに対し、特に反応する事無く、冷たい表情のまま一枚のカードを突き出す。

 

「フラッシュタイミングで俺はディノクライシスを使うぞ」

 

「!!」

 

・【ディノクライシス】/5(2)赤。

『フラッシュ効果』BP合計5000まで相手のスピリットを好きなだけ破壊する。

【連鎖:緑】(自分に緑のシンボルがある時、下の効果を続けて発揮する)

[緑] シンボル一つだけを持つ自分のスピリット2体を回復させる。

 

「不足コスト確保でザニーガン一体を破壊。緑シンボルはないので、【連鎖】の効果は使わない。マジックのフラッシュ効果により、ストライクジークヴルムを破壊だ」

 

迫るストライクに対し、突如空を突き抜け無数の隕石が降り注ぎ、それは幾つもストライクの身体に直撃。雨の様に浴びる隕石に力尽き、地面に墜落し爆発を起こす。

 

「まさかフラッシュを警戒してなかった訳ないよな?」

 

「あぁ、ストライクの破壊は無駄にしない! 相手による自分のスピリット破壊でバースト発動!」

 

トリガーが引かれ、伏せていたカードが飛び、それを勢いよく掴む。

 

「破壊されたスピリットが白なら召喚できる、白く輝く太刀持つ誇り高き武人、魁の覇王ミブロックブレイヴァーをバースト召喚!」

 

舞い散る華吹雪。その吹雪を一閃で吹き払うと颯爽と現れる巨人。ミブロックブレイヴァーが姿を現す。

 

「ブレイヴァー、アタック! ストライクの分までお返しをしてやれ!」

 

「ライフで受ける」

 

大きな太刀で繰り出される一閃に足場は揺れ、ライフが砕け、それを見届けるとターンエンドとコールした。

[Life]5→4。

 

 

 

 

────第4ターン、アキラside。

 

[Reserve]5個→6個

[Hand]2枚→3枚。

[Field]ザニーガンLv.1(1)。

 

「メインステップ、マジック、ラッシュドローを使用だ」

 

【ラッシュドロー】/5(3)赤。

『メイン効果』自分はデッキから2枚ドローする。その後デッキから二枚オープンし、その中の【連鎖】を持つスピリット/ブレイヴを一枚手札に加える。

『フラッシュ効果』このターンの間、スピリット一体のBPを+3000。

 

オープンしたカードは『闇皇ナインテールダーク』、『イグアバギー』の二枚。ナインダークはラッシュドローの効果に該当し、手札に加えられる。

 

「そしてシュライクンを召喚。アタックステップは何もしない。そのままエンドだ」

 

「アタックしないのか?」

 

「二度も言わるな、さっさとお前のターンを続けろ」

 

 

 

 

***

 

 

 

 

────第5ターン、リクトside。

 

[Reserve]4個→5個。

[Hand]2枚→3枚。

[Field]魁の覇王ミブロックブレイヴァーLv.1(1)。

 

「要塞虫ラルバをLv.2で召喚。召喚時効果発揮で白のスピリット二体にボイドからコアを一個ずつ置く。Lv.2のラルバは白のスピリットとしても扱うので、ブレイヴァーとラルバにコアを一つずつ置く」

 

ラルバの効果でコアを潤すと、軽く手元のカードに視界を向け、それに表情を一瞬歪ませた。特に手札が事故を起こしている訳でもない。ただ浮かない表情の理由は、手札にある一枚、アブソドリューガ。

 

「(このカード、そもそも本当にこれは何なんだ? こんなカードを何故あいつが持って、それを何で俺達に渡すんだ?)」

 

アブソドリューガ、そのカードは和人とのバトル以降から一度も使っていない。試合で手札に加える事は度々あったが、使用すれば引き込まれそうになるあの感覚はもはや恐怖を感じさせられる。

 

「アタックステップだ、ブレイヴァーでアタック」

 

「ライフで受ける」

 

再び振う太刀、豪快な一閃がもう一度アキラのライフを砕く。

 

[Life]4→3。

 

「ターンエンド」

 

 

 

 

────第6ターン、アキラside。

 

[Reserve]6個→7個。

[Hand]4枚→5枚。

[Field]ザニーガンLv.1(1)、シュライクンLv.1(1)。

 

「ネクサス、黄昏の暗黒銀河を配置。さらに黒剣龍レックスビートザウラーを召喚」

 

召喚時効果で【強化】を持つスピリットを破壊する効果を持つが、ラルバもブレイヴァーも【強化】を持たず、その召喚時効果は不発に終わる。

 

「アタックステップ、レックスビートザウラーとザニーガンでアタックだ」

 

ザニーガンのレーザ、レックスビートの尻尾の一撃がそれぞれライフを砕き、通常のバトル以上の衝撃、それに加えて一気に二つのライフが削られ、思わず片膝をつく。

 

「ぐぅっ……痛みは、聞いていた以上だな」

 

「なら降りるか?」

 

「冗談、痛いからバトルを降りるなんて言い笑い物だ」

 

手摺を握りしめながら立ち上がり、息は荒れているがまだ余裕そうに表情を取り繕って見せる。

 

「ターンエンドだ」

 

 

 

 

────第7ターン、リクトside。

 

[Reserve]6個→7個。

[Hand]2枚→3枚。

[Field]魁の覇王ミブロックブレイヴァーLv.2(2)、要塞虫ラルバLv.2(2)。

 

「……メインステップ」

 

「浮かない表情だな。さっきから何を迷ってる?」

 

「『迷ってる』だと?」

 

「とぼけるな。とっくにお前の手札にあるんだろう? 宝龍アブソドリューガがな」

 

「気付いてたのか!?」

 

「俺の目は節穴じゃないからな。出すなら出せ、お前に手を抜かれては面白くもない」

 

「手を抜くだと? 俺はそんな真似」

 

「精一杯やるのと、全力を出すのでは意味が違うぞ?」

 

「!」

 

「さっき俺が何で手札に加えた闇皇を使わなかったか分かるか? お前が全力を出さない以上、俺も全力でやる必要がないだけさ」

 

「アブソドリューガが、何故俺の全力だと?」

 

「不思議そうな顔してるな、じゃぁ聞くがお前何故、アブソドリューガを手放していない?」

 

「何!?」

 

「そのカードが必要ないなら手放せばいい。何故まだそれをお前は持っている?」

 

「それは、どんな形であれ、こいつも俺のデッキに加わった仲間だからだ」

 

リクトのその言葉に、素早く「違うな」と否定した。

 

「元々それはお前が求めた力の証。今もお前は心のどこかでそいつの力を欲して居る。だからこそ、お前はまだそいつを手放していない。嫌、手放せない」

 

「違う俺は──」

 

「否定する必要はない、素直に事実を受け止めろ。まぁ否定するにしろ、受け入れるにしろ、アブソドリューガの事自体を仲間だと言うのなら、使ってやるべきじゃないか?」

 

「…………だったら使うよ! カードバトラーとして、全力を出さないのは失礼だからな!」

 

抵抗はあったが、それでもアキラの言葉に何思うのか、アブソドリューガを掲げる。

 

「冷氷なる結晶の龍よ、その輝きを晒せ! 宝龍アブソドリューガを召喚ッ!」

 

次々と地面から飛び出すクリスタルの結晶。そして中央に一際大きな結晶が飛び出し、それが砕け散るとアブソドリューガが姿を現し、宝石の様に輝く身を露わに大きく叫ぶと、辺りのクリスタルも次々と砕けていく。

 

「そいつだ! そいつとのバトルを俺は心待ちにしてたんだ!」

 

アブソドリューガの姿をしっかりと目に焼き付け、その輝く姿に笑いながら見ているアキラだが、リクトにとってアブソドリューガの姿を前に、また以前の様な自分に戻るのではないかと気が気ではなかったが、先程の仲間と言った言葉は決して嘘ではない。

 

「どうした、早く続けろ」

 

「……あぁ、アタックステップだ!」

 

疑問残りつつも、アキラの催促に慌ててプレイに戻ると、アブソドリューガで攻撃し、不満そうな対応を見せながらも、アキラへと突っ込んでいき、ライフで受けると宣言すると、バリアに喰らい突き、そのまま噛み裂き、ライフを砕く。

 

[Life]3→2。

 

「ッ!」

 

アブソドリューガの攻撃はさすがに堪えたのか、壁際擦れ擦れまで後退させられるが、ようやく全力を出すリクトに、まるでダイキの様な狂気に満ちた笑みを浮かべる。

 

「続けていくぞ、ミブロックブレイヴァーでアタック」

 

「シュライクンでブロックだ」

 

最初の太刀での大振りをギリギリ避わし、そのまま向かっていくシュライクンだったが、両手に握りしめた太刀を片手に持ち替え、向かってくるシュライクンに直接渾身の鉄拳を叩き込んで吹っ飛ばし、破壊する。

 

「ターンエンド」

 

 

 

 

────第8ターン、アキラside。

 

[Reserve]8個→9個。

[Hand]3枚→4枚。

[Field]黒剣竜レックスビートザウラーLv.1(1)、ザニーガンLv.1(1)、黄昏の暗黒銀河Lv.1(0)。

 

「メインステップ、俺も今から全力で相手させて貰うぞ」

 

ハイドカードを持っているのはリクトだけではない。目の前の怪物(アブソドリューガ)に心を躍らせながら、自らも怪物(バーニングドラゴン)を呼び出す。

 

「破滅の業火を滾らせろ! 獄炎龍バーニングドラゴン、地獄の底から目覚めて来いッ!」

 

火山の様に噴き出す火柱、マグマの様に高温の炎はフィールドを溶かし、沼の様な大地から響く大きな咆哮。次の瞬間勢いよく巨大な拳を誇る龍、バーニングドラゴンが飛び出し、先程以上の咆哮を上げ、地面に降り立ち、並び立って睨みあう宝龍と獄炎龍。

 

「まさに圧巻の光景だな、アタックステップ! バーニングドラゴンでアタック」

 

アキラの合図に、まるでグローブを付けた様な両拳を合わせながら、フィールドをゆったりと歩んでいく。

 

「フラッシュタイミングでドリームリボンを使用させてもらうぞ!」

 

「白マジックか!」

 

【ドリームリボン】/4(3)白。

『フラッシュ効果』相手スピリット一体を手札に戻す。

 

「不足コスト確保でザニーガンを破壊。効果でミブロックブレイヴァーを手札に戻す」

 

突然現れた白いリボンが、まるで意思を持ってるかのように動き出し、戸惑うブレイヴァーを即座に拘束し、そのままブレイヴァーもろともリボンは白い光と共に消滅し、ブレイヴァーは手札に戻される。

 

「くっ! ならラルバでブロックする!」

 

リクトの指示にラルバは自分の体を縮め初め、まるでバネのようにバーニングドラゴンに飛び掛かって行くが、バーニングドラゴンは飛び掛かるラルバに強烈なアッパーカットを叩き込み、要塞虫の堅い甲殻に拳の跡が打ち込まれ、獄炎龍の一撃に宙に打ち上げられたラルバはそのまま爆発を起こす。

 

「続けていくぞ、レックスビートザウラーでアタック」

 

「ライフで受ける」

 

レックスビートザウラーの攻撃を阻む者はもうなく、当然の選択。展開されたシールドに渾身の体当たり。その攻撃に思わず足を引き摺らせる。

 

「うぐっ……!」

[Life]3→2。

 

「これでターンエンドだ」

 

 

 

 

────第9ターン、リクトside。

 

[Reserve]11個→12個。

[Hand]3枚→4枚。

[Field]宝龍アブソドリューガLv.1(1)。

 

「メインステップ、バーストセット。さらにホークブレイカーを召喚して、アブソドリューガに合体だ!」

 

スピニードハヤトと同じく鳥型のブレイヴ。自らの形状を変化させ、ホークブレイカーの羽のパーツがアブソドリューガの背中に取り付くと、翼から粒子のエネルギーが噴き出し、それは翼がより大きくなった様に見える。

 

「アブソドリューガをLv.3にして、俺はこれでターンエンドだ」

 

「守りに徹するか」

 

「それが白のスタイルだからな」

 

 

 

 

───第10ターン、アキラside。

 

[Reserve]9個→10個。

[Hand]2枚→3枚。

[Field]獄炎龍バーニングドラゴンLv.1(1)、黒剣竜レックスビートザウラーLv.1(1)、黄昏の暗黒銀河Lv.1(0)

 

「プテラスラッシャーLv.2で召喚し、レックスビートザウラーをLv.2に、獄炎龍をLv.3にアップ。そのままアタックステップだ」

 

ステップ開始と共に、黄昏の暗黒銀河の効果により地竜を持つプテラスラッシャーとレックスビートザウラーにBP+3000が加えられ、力が上昇しているのを示すように赤いオーラを纏う二体だが、黄昏の暗黒銀河の恩恵受けていない筈の獄炎龍までも赤いオーラを纏っている。

 

「獄炎龍のBPも上がってる!?」

 

「獄炎龍バーニングドラゴンLv.2、3の効果。自分のアタックステップ時、[獄炎龍バーニングドラゴン]以外のスピリット、マジック、ネクサスの効果で自分のスピリットのBPが上がった時、自分の赤のスピリット全てをBP+3000する」

 

黄昏の暗黒銀河でBPが上がった事により発動される獄炎龍の効果。ハイドカードであるバーニングドラゴンもまた、アブソドリューガに決して引けを取ってはいない。

 

「行くぞ、プテラスラッシャーでアタック。アタック時効果で自分のBPを+3000。さらに【連鎖:緑】でボイドからコアを一個、このスピリットに置く」

 

プテラスラッシャーのアタック時効果により再び発動する獄炎龍の能力。圧倒的にBPが上昇していき、この時点で既にプテラスラッシャーのBPは17000。バーニングドラゴンのBPは21000、レックスビートザウラーはBP15000まで上昇しており、それは合体しているアブソドリューガ以上。

 

「バーニングドラゴンのLv.3効果、BP10000以上のスピリット全てに赤のシンボル一つを追加。よってプテラスラッシャーはダブルシンボル!」

 

「だったら合体したアブソドリューガでブロックッ!」

 

猛スピードで飛来するプテラスラッシャー。刃の翼をアブソドリューガにぶつける瞬間、瞬座に空に飛び上がり、一瞬でプテラスラッシャーの真上を取る。

 

「ホークブレイカーの合体時効果、ブロック時バトルしている相手スピリットのシンボル一つにつき、BP+5000、バーニングドラゴンの効果でシンボルが加算されてるなら、利用させてもらうぞ!」

 

現在バトルしているプテラスラッシャーはダブルシンボル。それに合わせて、合計BP10000が加算され、一気にプテラスラッシャーを上回り、真上を取ったアブソドリューガはそのまま片手でプテラスラッシャーを掴むと、そのまま地面に押し付け、プテラスラッシャーは爆発を起こす。

 

「アブソドリューガのバトル時効果、BPを比べ相手スピリットだけを破壊した時、ボイドからコアを一つ自分のライフに置く」

 

バトルフォームに失った筈のライフに再び光が灯り、回復する。

 

[Life]2→3。

 

「だったら今度はお前だ、バーニングドラゴン叩き潰せッ!」

 

「フラッシュタイミング、ウインドスポウト!」

 

【ウインドスポウト】/3(2)白。

【バースト:相手の『このスピリット/ブレイヴの召喚時効果』発揮後】

『バースト効果』相手スピリット一体を指定する。このターンの間、そのスピリットは可能ならば必ずアタックする。その後コストを支払う事で、フラッシュ効果を発揮する。

『フラッシュ効果』自分のスピリット一体を回復させ、このターンの間そのスピリットのBPを+2000。この効果で回復したスピリットはアタックできない。

 

先程ホークブレイカーの効果で上昇したBPは悪魔でこのターンの間までではないので、元のBP15000に戻っているが、ウインドスポウトの効果で白い光を纏い、先程まで項垂れていたアブソドリューガが再び立ち上がり、迫るバーニングドラゴンに向かっていく。

 

「回復したアブソドリューガでそのアタックをブロック。そしてホークブレイカーの効果発揮で、バーニングドラゴンのシンボル一つにつき、BPを+5000!」

 

プテラスラッシャーの時と同様、一気にBPが上がり、その合計BPは27000。一方のバトルでは互いに向かっていき、そのまま取っ組み合う二体の龍。獄炎龍と宝龍の激突は凄まじく、激突に生じる衝撃波に後方にいたレックスでさえも吹き飛ばされ、プレイヤー達でさえも思わず衝撃に吹き飛ばされそうになる。

 

「うぐっ……!」

「……ッ!!」

 

二体は周りにお構いなしにバトルを続けていき、互いに力強く吠えながら組み合う腕に力を込めていくが、宝龍は獄炎龍の様子に一瞬力を緩め、取っ組み合っていた手を離すと、そのまま受け流し獄炎龍の背後に回り込む。咄嗟に振り返った瞬間、宝龍の腕が獄炎龍の顔面を掴むと、そのまま飛び出していき、獄炎龍は壁に勢いよく押し付けられる。

 

「BPは宝龍の方が上だ!」

 

リクトの言葉通り、バトルはアブソドリューガ優先で進んでいる。この場面でアブソドリューガがバーニングドラゴンを破壊すれば、勝負は決まったような物。だからこそカウンターでウインドスポウトを使用したが、そんなリクトの手を読んでいたように。

 

「ならフラッシュタイミング、ラッシュドローを使わせてもらう」

 

「二枚目!?」

 

「効果により、バーニングドラゴンのBPを+3000。さらに自身の効果で赤のスピリット全てに、さらにBPを+3000!」

 

ラッシュドローの効果で赤いオーラを纏い、さらに自身の効果で纏う赤いオーラがより一層濃くなり、そのBPは宝龍と並ぶ。バトルでは顔面を掴まれながらも、ラルバと時と同様、宝龍の顎にアッパーを叩き込み、その一撃に思わず掴んでいた腕を離してしまい、宝龍が腕を離した瞬間、さらに腹部に拳を叩き込んで後方に弾き飛ばす。

 

「これでBPは互角だが、こいつ等の激突は凄まじいな」

 

バトルの光景を傍観し、まるで人事の様に呟くが、アキラの言う通り二体のハイドカード同士の激突は凄まじく、フィールドは激突の度に揺れ、元々黒く荒れていた空はより荒れているように見えた。だが二体の激突は収まるどころか、より激しくなっていく。獄炎龍はさらにもう一撃拳を叩き込むが、後ろに弾き飛ばされながらもお返しと言わんばかりに長い尾を振い、勢いよく獄炎龍に叩きつけ、予想外の一撃に仰向けに倒れる。

 

片を付けるため、止めを刺そうと飛びかかって行くが素早く立ち上がり、宝龍を受け止め再び取っ組み合う二体。二体の激突に、揺れはどんどん地震の様に激しくなり、その揺れには思わずアキラもリクトも手摺を掴み、何とか倒れないようにするので精一杯だった。

 

「ど、どうなっている!?」

 

「こんな激突、いつまでも続けられるとバトルどころじゃないぞ!」

 

リクトの言葉通り、もはやバトルどころではない。何度も激突しては吠える二体にフィールド全体があれ、辺りに電撃が迸り、空や地面が粒子化していき、全体がぼやける様に薄く見える。

 

「まさか、フィールドが……!」

「崩壊する!?」

 

呟いた瞬間、空に大きな亀裂が入り、次の瞬間大きな音と共にまるでガラスのように、フィールドは砕け、二体の龍もフィールドも、何もかも消滅する。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「「うわっ!!」」

 

投げ出される様に元の場所へと二人。一瞬の事に何が起こったのかは理解できなかったが、立ち上がるなりデッキを構えながら苛立ったように叫ぶ。

 

「仕切り直しだッ! もう一度デッキを出せ、今度こそ叩き潰してやる!!」

 

「嫌、そこまでだ」

 

「「!!?」」

 

何かの機会を弄りながら、アキラの言葉に男は否定を入れ、機械の操作を終えたのかこちらに歩み寄って行く。

 

「スポンサー、貴様どういうつもりだぁッ! 俺はこんな形で幕引きなど認めないぞ!!」

 

「駄々をこねようが仕方がない事だ。フィールド原因は察しが付いてるだろうが、ハイドカードの激突によるものだ。例え何回バトルを再開しようと、今のフィールドではまたさっきの様に崩壊してしまう」

 

「それならハイドカードを使わなければ問題ないだろうがッ!」

 

「それは無理だな。ハイドカード使い同士、ハイドカードを使ってこそ本気。ハイドーカードを出さない方が負けるし、互いにハイドカードを出さなければバトルを続行できるが、そんな手ぬるいバトルは、今の君のやり方に反するのではないか?」

 

男の言葉に返す言葉がないのか、舌打ちながら構えていたデッキを取り下げた。

 

「それにしても宝龍と獄炎龍の激突に生じるエネルギーは凄まじいな。どんな衝撃にも耐えれるように改良を重ねたが、やはりハイドカードとは私の予想を簡単に超える」

 

「なぁ、アンタ。ハイドカードについて、何処まで知ってるんだ? 嫌、このカードはそもそも何なんだ?」

 

何かの数値が表示されている機械を眺める男に、リクトは気になっていた疑問を問い詰めるが、男は嘘っぽい笑顔を崩す事無く振り返り言葉を続ける。

 

「すまないがバトルが無効になった以上、君との約束も果たせないよ」

 

「くっ!」

 

「帰るぞ、アキラ。データは取れた」

 

「……ちっ、来道リクト! この次は必ず潰すぞッ!」

 

経ち去っていく男の後を追う様にアキラも歩き出すが、「待てよ!」と呼び止めるリクトに足を止める。

 

「折角ここに弟も来てるんだ。少しくらい会ってやればどうだ?」

 

「あぁ、ハンナの事か。何で態々会う必要がある?」

 

「余計な御世話かもしれないが、あいは自分の兄が昔のように戻ってほしいみたいだった。本人はどう考えてるかは分からないが、俺はそう思った」

 

「フン、無理な相談だな、人は変わる事はあっても戻る事はない」

 

「本当にそうか?」

 

「あぁはっきり断言してやる」

 

「……俺はそう思わない」

 

「何?」

 

「俺もハイドカードを持った時、今のお前みたいになってたが、俺は和人のお陰でまた元に戻れた。だからお前も……!」

 

「笑わせるな、あんな屑、何度再戦しようが何回でも叩き潰すだけだッ!」

 

「本当にそうか? 俺じゃなく和人なら、お前に勝って、お前を変える。俺はそんな気がしてるよ」

 

「ほざいてろ、万に一つそんな奇跡みたいな事が起こりうる可能性はない」

 

今だ苛立ったように返答すると、再び歩き出しその場から消えていき、リクトも特に後を追う事無く、その場から立ち去り、その場に人の姿が無くなった瞬間、先程からその光景を見ていたのか、物陰から顔を出すダイキと川村。

 

 

 

 

「凄かっただろ、あのバトル」

 

「…………」

 

「アキラ達には内緒にしてろよ? 盗み見てたなんて知れたらまたあの毒舌男に何言われるのか、知れたもんじゃねぇからな」

 

ダイキの言葉に、先程まで難しい顔色をしていた表情を一変させ、口元を緩ませる。

 

「悪口ぐらいにビビるなんて、アンタも意外と小心者だね」

 

「忘れてたぜ。毒舌なのはどっかの兄弟に限らず、お前もだったな」

 

「無駄話はいいよ、私もあんな光景見せられたんじゃ、もういい加減決心が付いたよ」

 

「そうかい。ならもう何も必要はねぇな」

 

川村の様子に、狂気な笑みを浮かべ高笑いをしながらその場から去っていき、川村も自分のハイドカードを眺めながらその場から去っていく。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「何だったんでしょうか? さっきのは?」

 

既に日も暗くなりつつある頃、和人達も先程の宝龍と獄炎龍の激突で生じたエネルギーの影響で、異常を示す外灯を不審そうに見るが、しばらくして外灯は正常に戻り、「軽い故障みたいですね」と言う光の言葉にすっかり安心しきっていた。

 

「まぁ後で点検させますので、気にせず」

 

「光さん達も大変そうだね」

 

『おーい、皆!』

 

突然の大きな声、振り替えるとリクトの姿があり、こちらに向かって駆け寄って行き和人達と合流する。

 

「どうしたんだよ、リクト。だいぶ遅かったけど?」

 

「悪い悪い。でも何でもないんだ。一寸迷っただけだ」

 

「えっ!? リクト君がなんて珍しい」

 

「まぁあまりに広くてな」

 

アキラとの事は伏せておいた方がいいと考えたのか、本当の事は言わず適当な嘘を苦笑いしながら話し、和人達も特に疑う様子もない笑いながらリクトの話を聞いている。

 

「それよりリクトさん、愛実ちゃんとは会いませんでした?」

 

「川村か? 嫌、俺は見てないぞ」

 

「そうですか……」

 

「光さん、良かったら私達も探そうか?」

 

「いえ、大丈夫です。多分用事が長引いてるだけでしょうし、それよりもう夕暮れ。もしよろしければ車で皆様をお送りしますよ?」

 

「そういえばすっかり暗くなったな。今から歩いて帰ったら遅くなるし」

 

「そうだね。折角だから甘えちゃおっか」

 

「俺もいいのか?」

 

「はい大丈夫です。よければハンナ君も送りますよ?」

 

「う~ん、僕はこの近くだから送ってくれなくても大丈夫だよ。まぁ咲姉ちゃん達や和人兄ちゃんと別れるのは辛いけど」

 

ハンナの言葉に咲は嬉しそうに笑っているが、隣にいる和人はまたさっきの様に苦しい程抱きしめられるのではないか、と一瞬背筋を振わせた。

 

「なんてね、またいつでも会えるからね。それじゃぁね!」

 

「あ、あぁ。それじゃあまた明日な」

 

安心する様に一息付きながら、ハンナと別れ、お互いの姿が見えなくなるまで手を振り、その場から立ち去って行く。

 

 

 

 

「さてと、急いで帰らないと」

 

和人達と別れ、駆け足で帰路へと向かっていくが、パークの入り口手前まで差し掛かった瞬間、「ハンナ君」と自分を呼ぶ声に、足を止め、辺りを見回すとそこに川村の姿があった。

 

「愛実姉ちゃん!! どうしたの、急にいなくなるから心配してたんだよ?」

 

「ごめんね、色々用事が長引いてね。それより和人達は?」

 

「皆なら光姉ちゃんが送るって行っちゃったよ」

 

「そうなんだ。ハンナ君もこれから帰り?」

 

「まぁね」

 

「なら帰る前に私と一勝負しない? バトルフィールドも用意できるし」

 

彼女の提案に対し、嬉しそうに反応して見せるが既に遅い時間帯に言葉を詰まらせる。

 

「でも、もう遅いし」

 

「御願い。一勝負だけ、私と付きあってくれたら嬉しいな?」

 

「!! うん、喜んでバトルするよ!」

 

笑顔を向ける愛実の表情に即答すると、ありがとうと、ハンナの頭を撫でながら礼を言い、早速バトルを始めると、互いにコールし、フィールドへと舞台を移す。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「行くよ! 合体したスターブレードでアタック!」

 

「フラッシュタイミングで絶甲氷盾! 攻撃はライフで受ける」

 

バトルはあっという間に終盤まで差し掛かり、現在ハンナのライフは1、フィールドにはシャイニングソードと合体したスターブレード、ウォルフドラゴン、ダークスクアーロが並び、対する愛実のフィールドにはスピリットもネクサスもなく、何とか絶甲氷盾でハンナのアタックステップを終わらせるが、スターブレードの攻撃にライフを残り一つにまで追い詰められる。

 

「幾ら愛実姉ちゃんでも、さすがにバトルでは容赦しないよ」

 

「うん。それでいいんだよ、全力でやるからこそ、このバトルには意味がある!」

 

「?」

 

その言葉の意味を理解できていなかったが、あまり深く考えずハンナはそのままターンエンドとコール。続く彼女のターン、ドローステップを迎え、引いたカードはアキラから渡されていた4枚目のハイドカードであり、そのカードが彼女の手札に加わった瞬間、うっすらと青色に光りだす。

 

「ハンナ君、バトルを受けてくれてありがとう」

 

「えっ!? ど、どうしたの急に改まって、バトルぐらいなら喜んで受けるけど」

 

「でもこれで決めるよ」

 

手札に持つ一枚、それが呼び出された瞬間フィールドに突如として起こる荒波、そして巻き起こる荒波から見える大きな影。そしてその影からとても大きな咆哮が響き渡る。

 

「な、何!? あのスピリットは?」

 

「悪いけど、これで決着だよ」

 

その言葉と共に、荒波から飛び出す一体のスピリット。それが何なのか、まったく訳が分からないまま、そのスピリットはハンナの最後のライフを砕き、決着となる。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「あ~、ビックリした。愛実姉ちゃん強いな~」

 

「ありがとう。でもハンナ君も中々だったよ?」

 

バトルを終え、衝撃を感じながらも普段と変わらず、楽しげに会話する二人。嫌、気になる事を感じながらも、ハンナは気にしてない様に普段通りの様子を取り繕っていた。

 

「ね、ねぇ愛実姉ちゃん。最後に呼び出したあれ、一体なんだったの?」

 

「フフ。何でもないよ。それよりバトルしてくれてありがとう、これはお礼だよ」

 

ハンナの手を持ち、その手に一枚のカードを握らせ、そのカードを確認すると、それはこれまで彼女がキースピリットとして扱ってきた「霊峰魔龍ヤマタノヒドラ」のカードだった。

 

「えっ!? このカード、Xレアじゃ!?」

 

「もういいんだよ。そのカード、私にはもう……必要ないから」

 

吐き捨てるように言う彼女の顔が一瞬、まるで氷のように冷たく見えた。何かぞっとするような物を感じながらも、ただ黙って立ち去っていく彼女を見送ることしか、ハンナにはできなかった。




いかがでしたでしょうか?今回の話!見どころはやっぱり宝龍と獄炎龍のバトルでしょうか?だいぶシリアスメインの話で、アキラとリクトのバトルを未決着で終わらせてしまいましたが、玉にそう言うのもありかな(目線逸らし)
今だアルティメット環境に突入していないこの小説ですが、アルティメットの登場はいつごろできるのか(汗)もしかしたらできないかも……(大汗)

第26話、いよいよバトルスピリッツ激震の勇者も半分以上書いて、かなりのシリアス展開!そして、新たなハイドカードの影、次回登場予定ですので、どのようなスピリットで、どのような効果なのか次回をこうご期待笑

そして次回とは別に、後で活動報告である重大発表をしたいと思いますので、そちらもご期待ください!
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