久々の投稿申し訳ないです。結構予定が立て込んでてなかなか続きを掛けない事が残念で仕方なかったです。でもこうしてようやく新話を投稿で来てとてもうれしいです。季節は夏、夏休みシーズン、皆様どうお過ごしでしょうか?
この小説が少しでも夏のあました時間の暇つぶしにでもなれば幸いな限りです。今回でいよいよ30話!緑のハイドカード登場!?
最後まで読んでいただけると嬉しい限りです。
廃墟にある一台のバトルフィールド、決着が付いたのか転送台から戻るハンナとアキラ。悠々とデッキを仕舞うアキラだが、それとは対照的にハンナは息も荒れ果て、足元もふらつき、次の瞬間その場に突っ伏してしまう。
「完了だな」
***
「おっはよー!」
いつもと同じように朝早くからバトスピショップに顔を出す和人、少し遅れる様に咲も後からやってくる。
「和人、おはよう。相変わらず早いね」
「おっす、咲!」
適当な挨拶を済ませる二人、だが何かを思い立ったようにデッキを取り出す咲。
「ねぇ和人、早速だけど一勝負やらない?」
「お前から誘ってくるなんて珍しいな」
「別にいいけど」と付足し、特に気にすることなく早速バトルしようとデッキを構える二人、だがどこか咲は辺りを気にするように軽く周りを見渡す。
「(これぐらいならあまり人目には付かないね)」
「咲?」
小声で呟く彼女の様子に少し疑問を持つ和人だったが、「何でもないよ」、と平気そうな様子を取り繕う。
「それじゃぁ早速──」
『和人さん!!』
遮る様な突然の声、振り返った先には血相を変えて慌てた様子の光があり、彼女の様子に二人共急用である事は察した。
「光、こんな早くから一体どうしたんだよ?」
「あの、実はこれ」
光に手渡された封筒、中には一枚の紙が入っておりその紙には次の様に描かれていた。
『火道ハンナの身柄は今こちらで預かってる。場所はこちらで指定している。それ以外の事は言う必要はないだろう』
「何だよ、これ」
「……イタズラかと思ったんですが、ハンナ君と連絡が取れないので信憑性は高いと」
「そんな……!」
咲も和人も勿論動揺を隠せていない。
「お願いします。二人とも協力してください、何かあってからじゃ」
「光さん落ち着いて、まだこの手紙通りと決まった訳じゃ、それに誰かに知らせた方が」
「でも、何かあってからじゃ遅いし、他言してもしもの事があったら」
「……その場所に行けばいいんだろう、速いとこ行って、ふざけた犯人はとっちめねぇと」
真っ先に「行くぞ」と封筒を受け取り指定された場所に駆けだす和人、咲も後を追う様に駆けだし、光は川村とリクトにも伝えに行くらしく和人達とは反対側へ駆けだしていく。
「はは、今回の作戦。少し雑すぎやしねぇか」
「大丈夫、そこまで大事になるほどじゃないさ、ただ今回が最も重要だからね。あまり手段を選んでられないってのが本音かな」
「まぁ何でもいいさ、どの道、今回でアンタとの契約も終了だ。最後くらい付き合ってやるぜ」
「ふふっ、まぁ君等はただ自分の欲望のまま動けばいいだけさ」
光や和人達の姿を物陰から見届けるダイキとフードの男、そんなやり取りをしながら二人もどこかに向けてその場を後にした。
***
「ここか、指定した場所って」
「その筈だけど」
指定場所はとある神社、境内を駆け昇り切って神社の前まで辿り着くと辺りを見渡す二人、そこへ川村やリクトも二人に追い付き、合流する。
「リクト!」
「よぉ、事情は光から聞いてる。ハンナが誘拐されたって?」
「あぁ。それより光は?」
「光なら俺達に伝えた後、最悪な状況にならないよう対策を立てるからって、俺達が先に来たんだ。それより当の犯人は?」
『ようやく来たか、思ってたよりも遅かったな』
犯人とハンナを探す彼等に奥から聞こえる声、声の方角に視界を向けると底には柱に凭れかかったアキラの姿があり、その隣には仰向けに眠った様子のハンナの姿があった。
「アキラ!!」
「若槻和人、お前に会うのは割と久々だな」
「そんな話はどうでもいい、お前が犯人なのかよ!」
「態々でかい声出さなくても状況を察せるだろ」
怒りを露わに声を荒げる和人に、相変わらず冷淡に言葉を吐き捨てるアキラ。勿論和人と同じように川村やリクト達も黙ってはられない。
「アキラ、お前一体何の目的があってこんな真似を!」
「そうだよ、ハンナ君に何したのさ。自分の弟に対してこんな真似して、アンタは兄として、それ以前に人として正気なの!」
「好き勝手言ってくれるが、俺は何も手荒なまねはしていない。強いて言うならこいつとバトルしただけだ」
「バトル?」
「あぁ、このバトルステージでな」
後ろを指差すとそこにはダイキ達の縄張りで使っていたあの特殊なバトルステージと同じものがあったが、以前のものと比べて所々違う点が多々あった。
「まぁバトルで受ける衝撃は今までのよりさらに強力になってるがな」
「!!」
以前川村とバトルした時、彼女もまたそのステージの影響による疲労に眠ってしまった。恐らくハンナも同じ様にアキラとバトルし、その影響を受けたのだろう。
「衝撃を受けるレベルが違うとは言え、バトル自体での衝撃が強力なのはこいつも承知済み、そしてバトル自体も互いの同意の上、そこまで非難される言われはないぞ?」
「……ならハンナを連れて帰る」
「あぁ、別に勝手にすればいい、だがそれは俺個人としては、だけどな」
「!?」
「今から条件を言わせてもらう。今からこのバトルステージを使ってバトルしろ、それがお前等にハンナを渡す条件だ」
「何!?」
「アンタふざけてんの!? アンタみたいな奴にハンナ君を簡単に任せる訳ないじゃない」
「悪魔でも俺は兄だ。弟を連れて帰る事にとやかく言えるか?」
「ッ!!?」
アキラの言葉に返す言葉はなく口籠ってしまう川村、「それなら」とデッキを構えながらアキラに突っかかって行く。
「なら俺がバトルする! それなら文句はないだろ」
「あぁ、だがお前だけじゃない。もう一人お前等の内の誰かとバトルしろ」
「何!?」
「人を呼び出しておきながらアンタも何もしないつもり」
「依頼なんでな、それにお前等の持つハイドカードと戦うのは興味あるが、生憎前の一件のあるしな。また中断されちゃ興醒めだ。そしてお前とのバトルに関しては論外だ」
和人を見ると小さく舌打つ。アキラの要求に当然、素直に受け入れ難いが、だからと言って簡単に拒んで引く事も出来ない。そんな中。
「なら、私が和人とバトルする。それでいいよね?」
「咲!?」
バトルする事に立候補したのは咲。彼女の突然名乗り出て来た事に動揺を隠せなかった。
「何言ってんだよ、咲! 分かってんのかよ、このバトルは!」
「分かってる。けど、今まで見ていたから。だからこそ愛実さんやリクト君にもまた同じ思いをさせる訳にはいかないじゃん」
「けど!!」
「グダグダ言ってる暇あるのか、時間稼ぎにつもりなら俺は」
「「「!」」」
先に対する疑問が募っていくも、あまり迷ってる暇もない。やむを得ず、バトルフィ-ルドに立つ二人。
「こんな状況じゃなきゃお前とのバトル、楽しめるのにな」
「そうだね。けど迷ってる暇もないでしょ。それに大丈夫、決着ならすぐつけてあげるから」
「えっ!?」
「ハンナ君のためにも早く始めよう」
「あ、あぁ」
「「ゲートオープン界放ッ!!」」
咲の様子を不審に思う中、彼女にリードされる形でバトルフィールドに舞台を移す二人。異様なバトルフィールドの光景にも、戸惑う事無く咲の先行からバトルは始まって行く。
────第1ターン、咲side。
[Reserve]4個。
[Hand]4枚→5枚。
「メインステップ。カッチュウムシをLv.1で召喚、さらにバーストセット。これでターンエンド」
───第2ターン、和人side。
[Reserve]4個→5個。
[Hand]4枚→5枚
「メインステップ。俺もバーストセット、さらにゴエモンシーフドラゴンを召喚」
肩に担ぐ斧を掲げながら現れるゴエモンシーフドラゴン、その登場にすぐさまアタックステップを宣言し、それに対し全く慌てる様子なく斧を構え攻撃態勢に入る。
「どんな形でもバトルなら全力だぜ、ゴエモンシーフドラゴンでアタック!」
「ならフラッシュタイミングで【神速】!」
「やっぱり来たか!」
ゴエモンシーフドラゴンの攻撃に、待ってたと言わんばかりの【神速】。だが、咲が【神速】を使う事は和人も予想して居なかった訳ではない。
「カッチュウムシの維持コストしか使用してないから、当然神速用にコアを残してると思ってたぜ、けど最初のターンじゃ使えるコアは限られる。マッハジーみたいなスピリットじゃ反撃はされないぜ!」
「私の手に【神速】あるって事、当然把握してるよね。けど、和人が予期してるその上を行かしてもらうよ?」
「?」
「マーバチョウを神速召喚、召喚時効果発揮、このスピリットをお互いのアタックステップ中に召喚した時、リザーブにコア1個を置く」
召喚時効果でコアが増えるものの悪魔でリザーブにコアを置く効果なのでマーバチョウ自身にコアは置けず、Lv.1のマーバチョウではゴエモンシーフドラゴンには太刀打ちできない。
「ゴエモンシーフドラゴンのアタックはカッチュウムシでブロックするよ」
自慢の一本角を掲げ、ゴエモンシーフドラゴンに立ち向かうカッチュウムシ。その角をゴエモンシーフドラゴンに突き付けようと迫っていくも、カッチュウムシの角を片手で掴んだかと思うとそのまま足元にカッチュウムシを叩きつけ破壊する。
「相手による自分のスピリットの破壊後でバースト発動、コーカサスリョフビートル!」
「!」
「バースト発動後、系統「覇王」、「雄将」を持つスピリットがいる時、このスピリットを召喚できる。私の場には「雄将」を持つマーバチョウ。よって条件はクリア」
最強と謳われる武将、呂布の名を持つスピリット、コーカサスリョフビートル。等身程にまである槍を軽々と振う大きなその姿は、最強の名に申し分ない。
「最初からこれを狙ってたのか」
「勿論。私だって全力だからね。どうする、続ける?」
「……いやターンエンド」
────第3ターン、咲side。
[Reserve]3個→4個。
[Hand]2枚→3枚。
[Field]マーバチョウLv.1(1)、コーカサスリョフビートルLv.1(1)。
「メインステップ、バーストセット。コーカサスリョフビートルとマーバチョウの二体共Lv.2にアップ、そのままアタックステップ、コーカサスリョフビートルでアタック! アタック時でこのスピリットにBP10000を加算」
「ライフで受けるぜ!」
アタック時効果により元々強力な力を誇るリョフビートルはその力をさらに高め、繰り出す突きの一撃に、プレイヤーを守るバリアに一瞬で風穴を開け、その衝撃がプレイヤーを襲う。
「ライフ減少時でバースト、絶甲氷盾ッ!」
「今回は序盤で使ってきたんだ!」
「終盤でのバーストセットは安易すぎるからな。警戒される前に使うだけだぜ。効果発揮でボイドからコア1個をライフに追加する」
和人side。
【Life】4→5。
「なるほどね、私はこれでターンエンド」
────第4ターン、和人side。
[Reserve]5個→6個。
[Hand]3枚→4枚。
[Field]ゴエモンシーフドラゴンLv.1(1)。
「メインステップ、バーストセット! そしてゴエモンシーフドラゴンをLv.2にアップして、ネクサス暗雲射す鬼ヶ島をLv.2で配置。そのままアタックステップ!」
「!」
「暗雲射す鬼々島のLv.2の効果発揮、系統「戦竜」を持つ自分のスピリット全ては相手のスピリットに指定アタックが出来る。よってゴエモンシーフドラゴンでマーバチョウを指定アタックするぜ」
「マーバチョウでブロック」
マーバチョウ目掛け、直接肩に担いだ斧をまるでブーメランのように軽々と振り回して飛ばし、素早い斧を裂け、追撃しようと火炎放射を放つもそれも何とか回避し、一気に背後まで回り込み反撃しようと突っ込むが、ゴエモンシーフドラゴンの尾がまるで意思を持つように背後のマーバチョウの動きを捕らえ、振り下ろす尾はマーバチョウを叩き落とし破壊する。
「相手による自分のスピリット破壊でバースト発動、双光気弾!」
「!?」
「デッキから2枚ドロー、さらにコーカサスリョフビートルをLv.1にしてフラッシュ効果、相手のネクサスを破壊する」
マジックから放たれる二つの火球、それは配置されたばかりの鬼々島へと直撃。全焼した鬼々島はその場から消滅する。
「甘いよ、マーバチョウもバーストのための囮。二度も同じ手に掛かるなんて警戒が足りないよ?」
「咲?」
マーバチョウは囮、そう言った彼女の台詞に一瞬引っ掛かった。何時もの彼女なら言う筈はない。今朝の事と言い、咲の様子に少しずつ不信感を感じつつあった。
「俺はこれでターンエンド」
────第5ターン、咲side。
[Reserve]5個→6個。
[Hand]4枚→5枚。
[Field]コーカサスリョフビートルLv.1(1)。
「メインステップ、ネクサス魔王蟲の根城を配置。さらに猪人ボアボアを召喚してバーストセット、そのままアタックステップ行くよ、猪人ボアボアでアタック!」
アタックと共に自身の効果で青の光を纏いレベルが上がり、力が上昇する。
「さらに緑のシンボルを条件に【連鎖】発揮、コア1個をこのスピリットに置き、そしてメインアタック!」
「ライフで受ける」
重量級の鉄球を軽々と振り回し、和人に向けて真っ直ぐ鉄球を飛ばし、展開されたバリアに直撃し、重量級の一撃に砕かれてしまう。
和人side。
【Life】5→4。
「魔王蟲の根城の効果、【連鎖】を持つスピリットがライフを削ったので、ボイドからコア1個をリザーブに追加」
「うぐッ、やっぱここでの衝撃はキツイ。けど、ライフ減少時バースト発動、ハンゾウシノビドラゴン! 効果発揮により、相手のスピリット、ネクサスの色一色につきコア1個しか置かれていないスピリットを一体破壊。対象はコーカサスリョフビートル!」
衝撃に耐え抜き、発動させるバースト。カードの発動と共にフィールドに突如巻き上がる土煙、それに紛れハンゾウシノビドラゴンが姿を現し、現れるなり背中に担いだ手裏剣を真っ直ぐ飛ばすと、土煙の中でもコーカサスの位置を把握しているように手裏剣は真っ直ぐコーカサスリョフビートルを斬り裂き、手裏剣の一撃を受け大爆発を起こす。
「まだまだだよ、相手によるスピリット破壊でバースト発動! 風の覇王ドルクスウシワカ!」
「何っ!?」
「バースト発動時、相手のスピリットを2体まで疲労。よってハンゾウシノビドラゴンは疲労させ、その後自分のコが合計8個以上ならこのスピリットを召喚できる!」
放たれる風が地面に降り立ったばかりのハンゾウに集い、その風に力奪われ片膝をつき、さらに中央に竜巻が巻き起こり、その中央にエメラルドが出現する。
「疾風となりし覇王よ、全てを薙ぎ払う嵐となれ! 緑の
ボアボアのコア一つと、リザーブのコア二つを維持コストに確保すると、エメラルドが砕け、周りの竜巻を振り払うと颯爽と地面に降り立つウシワカの姿。カードに手を置き、当然ウシワカも次に自分のする事が何なのか察して居るのか、翼を広げ、既に攻撃の体制に入っていた。
「さらにアタック行くよ、風の覇王ドルクスウシワカでアタック!」
「俺だって負けてらんねぇ、フラッシュタイミングで救世神撃覇!」
追撃で一気に攻め込む咲。だが和人も黙ってやられっぱなしには行かない。反撃と言わんばかりにフラッシュでのマジック。流石に予想外だったのか、マジックの発動に一瞬動揺の顔を見せた。
「効果により、デッキから1枚ドロー。さらに手札にあるバーストカードを一枚セットできる! そしてドルクスのアタックはライフで受けるぜ!」
頭部の角をバリアに突き刺しライフを破壊し、より強力な衝撃に思わず仰け反ってしまうも、それでも堪えて見せ、減ったライフに笑みを見せながらバーストに視線を置く。
和人side。
【Life】4→3。
「ライフ減少時でバースト発動! 龍の覇王ジークヤマトフリード!!」
「自慢のキースピリット、もうすっかり使いこなしてるね」
「まぁな、バースト効果! 自分のライフが3以下ならBP15000以下の相手スピリットを一体、悪いけど風の覇王ドルクスウシワカを破壊し効果発揮後このスピリットを召喚するぜ!」
地面より噴き上げる豪炎が風の覇王を焼き尽くし、炎により消滅。
「赤き剣を振いて全てを征す覇王! 勝鬨上げてフィールドに降り立て! 龍の覇王ジークヤマトフリードをバースト召喚ッ!」
上空に広がる黒雲、その雲を真っ二つに両断し、姿を見せる一体の龍。背後に鳴り響く雷鳴を背に、剣を掲げて大きな唸りを上げる。
「あはは、それでこそ和人だよ! だからこそ和人に勝ちたいんだよ!」
「!?」
出現するジークヤマトフリード、その姿を見ながら面白そうに笑う咲。自分のキースピリットを破壊されたにも関わらず全く動揺する気配はなく、自分のキースピリットが破壊されている事に全く動じていない咲に不信感はより強くなっている。
「咲、お前何か今日変だぜ? どうしたんだよ?」
「どうもしないよ、私はただバトルに全力を出してるだけ。和人もそうでしょ?」
「そうだけど、でも!」
「なら余計な話はバトル後良いよね、私は今全力で和人に勝ちたい! それ以外の事はどうでもいいからね!!」
「本当にどうしたんだよ咲!? もしかして、お前も!?」
嫌な予感が的中した。何時もと明らかに違う様子の咲、それはリクト達の時と同じ。確証はないが、咲もまたハイドカードの影響を受けているのは明白だった。
「……咲の奴まさか」
「嘘でしょ? 何で咲が、それにいつ!?」
和人と同じくモニターを見ているリクトや川村も当然咲の様子に原因は分かっている。今だハイドカードの存在は確認してないものの、それでも既にハイドカードを使用している経験から二人にとって咲がハイドカードの影響を受けてる事に確信が持てる。
「アキラ、私達にバトルを強制させたのはもしかしてこれが狙い?」
「当り前だ。俺自身はお前等のぬるい戦いを見たいとは思ってない、ただ俺がこのバトルで見たいと思ってるのはお前等の察してる通り、咲の持ってるハイドカードの存在だ」
「なら咲にいつハイドカードを?」
「……知りたいか、理由ならこのバトルが終われば教えてやる。嫌、教える必要すらないかもな?」
「どういう意味?」
「バトルが終われば嫌でも分かるって意味だ」
川村の質問に軽く笑いながら応え、アキラの言葉の真意が理解できていないものの、今はバトルの方が気になり、モニターに視界を戻す。
────第6ターン、和人side。
[Reserve]5個→6個。
[Hand]1枚→2枚。
[Field]龍の覇王ジークヤマトフリードLv.1(1)、ハンゾウシノビドラゴンLv.1(1)、ゴエモンシーフドラゴンLv.2(2)
「メインステップ、ジークヤマトフリードをLv.3に、さらにハンゾウシノビドラゴンをLv.2にアップ! そのままアタックステップだ!」
「バーストせずに、アタックステップなんてさすがにバーストが切れたみたいだね?」
序盤から激しいバーストの応酬、だが後半になって流石に手札も少なくなり、仕掛けるバーストも咲の言う通り尽きてしまう。
「構わねぇ、一気に押し切るだけだ! ジークヤマトフリードでアタック! フラッシュタイミングでゴエモンシーフドラゴンの効果発揮! 手札のライトブレイドラを破棄して「覇王」の系統を持つジークヤマトフリードをダブルシンボルにする!」
「ライフで受けるよ!」
ヤマトの握る剣に、より強い炎が込められ、そのまま勢いよく剣を振り下ろしバリアを一撃で粉砕しライフを二つ破壊する。
咲side。
【Life】5→3。
ライフが一気に削られ、和人同様、強い衝撃が咲を襲う。衝撃に半端下がりながらも、まるで何もなかったように平気な素振りを見せる。
「(あの衝撃、まったく効いてないのかよ!?)」
「まだ続けるの? それとももう終わり?」
「ッ!」
表情に変化は見られないものの、さすがに衝撃自体は咲にとっても辛い筈。攻撃し続ける事に多少抵抗はあるものの、それでも咲の目を覚ます為にも負ける訳にはいかない。
「お前のためにも、さっさと決着付けさせてもらうぜ! ゴエモンシーフドラゴンでアタックッ! フラッシュ効果、手札の焔竜の城塞都市を破棄して、ゴエモンシーフドラゴンをダブルシンボルにする!」
咲の場にはブロッカーがなく、ライフは残り3。ダブルシンボルにしたゴエモンシーフドラゴンとハンゾウシノビドラゴンの攻撃が通れば咲のライフは全て破壊できる。決着を急ぐようにゴエモンシーフドラゴンを突っ込ませ、ゴエモンシーフドラゴンも斧を構えながら果敢飛び出していく。
「もう決着なんて、つまらないよね? フラッシュタイミングでリザーブのコア全て使って、ゴクラクチョーを神速召喚ッ!」
「また神速!?」
「召喚時効果、ボイドからコア1個をリザーブに追加。さらに追加されたこのコアを使ってフラッシュタイミング、ブルトサリフ!」
・【ブリトサリフ】/2(1)緑、マジック。
自分のトラッシュにある[ブリトサイフ]1枚は『自分のエンドステップ』に手札に戻る。この効果はターンに1回しか使えない。
【バースト:相手の『このスピリット/ブレイヴの召喚時』発揮後】
自分のスピリット一体を回復させる。その後コストを支払う事で、このカードのフラッシュ効果を発揮する。
『フラッシュ』
このターンの間、スピリット一体をBP+2000する。
「ゴクラクチョーにBP+2000加算。そしてゴクラクチョーでブロック」
目の前の突如出現するゴクラクチョー、だが少しも慌てる様子なく肩に担いだ斧を構え、ゴクラクチョーも自分の翼をまるで武器の様に構え、互いの相手に斧と翼をそれぞれ振り下ろし、攻撃は両者共々斬り裂き、互いに消滅する。
「ぐっ、しまった!!」
「ゴエモンシーフドラゴンさえ倒せばもうスピリットをダブルシンボルにする事はできないね。嫌、それ以前に効果を使うだけの手札がもうないか」
「っ!」
咲自身も手札を使い切ったものの、それは和人も同じ。ハンゾウシノビドラゴンだけでは咲のライフを削り切る事は出来ない。勝負を急いだ結果は自分を不利にしまっただけ。警戒が足りなかったことが悔やまれる。
「ターンエンド」
────第7ターン、咲side。
[Reserve]11個→12個。
[Hand]0枚→1枚。
[Field]猪人ボアボアLv.1(1)、魔王蟲の根城Lv.1(0)。
「メインステップ。マジック、フォースドロー。効果によって手札が4枚になるまでドロー、さらに魔王蟲の根城、猪人ボアボアをLv.2に、アタックステップ、ボアボアでアタック!」
アタック時効果でレベルが上がると共に、緑シンボルを条件に連鎖を発揮しコアが一つボアボア自身に追加される。
「Lv.3となっているボアボアのBPは8000、ブロッカーのハンゾウシノビドラゴンじゃ防げないよ?」
「勝てなくてもいいさ、ハンゾウシノビドラゴンでブロックする」
ボアボアは再度鉄球を振り回し、ハンゾウシノビドラゴンへ飛ばし、手裏剣を投げつけて反撃するが鉄球は手裏剣を弾き飛ばしながらそのままハンゾウシノビドラゴンへ直撃し、吹っ飛ばされてしまう。
「ハンゾウシノビドラゴンの破壊時効果発揮、自分がバーストをセットして居ない時、このスピリットをバーストとしてセットできる!」
ハンゾウシノビドラゴンは吹っ飛ばされながらも倒れる事無く印を結んで術を唱えると、その場から消え去り、ハンゾウシノビドラゴンのカードはバーストとしてセットされる。
「ただでは破壊されないって訳ね、エンドステップ時、ブリトサリフを手札に戻してターンエンド」
────第8ターン、和人side。
[Reserve]9個→10個。
[Hand]0枚→1枚。
[Field]龍の覇王ジークヤマトフリードLv.1(1)。
「メインステップ、白煙の大山脈を配置!」
「へぇー、新しいネクサスだね」
「さらにジークヤマトフリードをLv.3にアップでアタックステップ! ジークヤマトフリードでアタック! アタック時効果発揮、バーストセット中のアタック時効果でボアボアを破壊だ!」
ハンゾウシノビドラゴンをバーストセットしている事で発動するヤマトの能力。大きく火炎放射を吐きつけるとボアボアはその身を焦がし爆発を起こす。
「当然そう来るよね、けど当然読んでたよ! フラッシュタイミングでマッハジーを神速召喚ッ!」
「また神速か!」
「継続中のアタックはそのままマッハジーでブロック!」
行く手を遮るマッハジーをヤマトはすぐさま剣を振り下ろし両断し、破壊するが咲のライフを削る事は叶わず、苛立つように剣を握る手に力が入るも、止むを得ず後退し戻って行く。
「ふふっ、幾ら頑張っても尽きかけの手札で行う戦略なんて簡単に読めるよ」
「……それでも勝つだけだ!」
「勝ちたいのは私も同じだよ、その思いのために私は力を手に入れた!」
「その力ってのはどういうものか分かってんのかよ! 川村達だって!!」
「そう、愛実さん達もあのカードのお陰で力を手にした。そしてその力をさらに超えていく和人のバトルをずっと見てきて、私は和人のバトルに憧れ、勝ちたいと夢見てた」
「違う! そんな力に頼らなくたって、川村達やお前も十分強いじゃんか! それに昨日だってお前は俺に勝っただろ!」
「生温いバトルに勝った所で、私は満足できないんだよ!! 本気でやり合ってこその勝利に意味がある!」
「咲!!」
「余計な話はしたくない、速くバトル続けて!!」
「ッ……! ターン、エンド」
完全に和人の言葉に耳を傾けるつもりはない。咲の気迫に押される様に、ターンエンドとコールした。
────第9ターン、咲side。
[Reserve]11個→12個。
[Hand]4枚→5枚。
[Field]魔王蟲の根城Lv.2(2)。
「メインステップ、見せてあげるよ、私の望んだ力を!」
「!」
「森羅の力をその身に宿し、己以外の全てを切り裂く王! 剣双鬼刃・我王牙、召喚!!」
大地が揺れ、フィールド全体に突如として巻き起こる巨大な竜巻。ドルクスの時よりもはるかに巨大な竜巻、竜巻は天に向かって上昇し続け空へと繋がると、まるでそれを道の様に舞い降りる一体のスピリット、眼光を輝かせ両手に持った巨大な大剣を振い、周囲の竜巻を打ち消し、その姿を現す。
「これが、お前の力ってのかよ」
身の丈程の巨大な二本の大剣、甲冑を纏った様な体を持ち、外観は般若を思わせる様な見た目を持つスピリット、その迫力に和人だけでなく、モニターを見ている川村達も衝撃を隠せていない。
「我王牙の召喚時効果、自分のスピリット一体を指定して、そのスピリットのLvが一つ上になるようボイドからコアをそのスピリットの上に置ける。当然、私が指定するスピリットは我王牙自身。よってLv.2になるようにコアを3個このスピリットの上に置く」
レベルが上がりさらに力が上がった様に剣を構える我王牙、その姿をヤマトはしっかりと目に焼き付け、剣を構えて警戒している。
「来るか!」
「いいや、これでターンエンド」
「何っ!?」
不敵に笑いながら攻撃する事無くターンを終える咲。準備がまだ整っていないのか、それともこちらの出方を見る気なのかは分からない。しかし、一瞬でも油断すれば唯では済まない事は直感的に理解していた。
────第10ターン、和人side。
[Reserve]6個→7個。
[Hand]0枚→1枚。
[Field]白煙の大山脈Lv.1(1)、龍の覇王ジークヤマトフリードLv.3(5)。
「メインステップ、三札之術を使うぜ」
「ようやくドロー系のマジックが来たね」
「まぁな。効果でデッキから二枚ドロー、さらに三枚目をオープン、赤のカードなら手札に加えられる!」
三枚目に引いたカードを表向けにし、そのカードはアサシンドラゴン。赤のスピリットのため問題なく手札に加えられる。
「このアサシンドラゴンをLv.2で召喚。そのままアタックステップだ! ジークヤマトフリードでアタックッ!」
攻撃と同時に再びヤマトのアタック時効果が発揮され、我王牙に向けて特大の火炎放射を放ち、直撃を受け大爆発が起こる。
「よっしゃ! これで倒した!!」
爆炎を見ながら我王牙を倒した事に一安心、だがほっとしたのも束の間、安心しきった和人の表情を前に、咲はまた不敵に笑って見せた。
「……倒せた、本当にそう思ってるのなら滑稽だよね?」
「!?」
爆風が晴れる頃、目の前にあったのは聳え立つ巨大な大樹の姿。先程の炎の直撃を受けたらしき個所は、少しだけ焦げている程度でヤマトの豪炎をものともしておらず、我王牙は大樹を盾に、全くの無傷。
「何で、破壊できない!?」
「我王牙の効果、このスピリットが相手効果の対象になった時、フィールドのコア3個をトラッシュに送る事で、その効果を無効にできる。だからヤマトの破壊する効果は無効になったんだよ」
「……なら、指定アタックで我王牙を直接倒す!!」
ヤマトは剣を構えながら一気に急降下し我王牙に迫り、視界の邪魔となる目の前の大樹を切り倒し、迫るヤマトを両手の剣を交差させて受け止め、ヤマトを弾き返す。BPはヤマトが13000に対し、Lv.1に下がった我王牙のBPは6000。咲の手札にはBPを上げる事の出来るブリトサリフが残っているも、それでもまだBPの差は圧倒的。
「フラッシュで神速発動、魔王蟲の根城の効果でのノーコストで召喚する!」
「このタイミングで神速!?」
「行くよ、速効特攻、
槍を掲げながら駆け飛び現れるハーキュリーの姿、新たな敵の姿に警戒するヤマトだが、我王牙は現れたハーキュリーに対し、剣の切っ先を向ける。
「何を!?」
「ここからが我王牙の真骨頂だよ、相手スピリットとのバトル時、自分のスピリット一体を破壊する事で、破壊したスピリットのBPをこのスピリットに加算しこのスピリットを回復させる!」
咲が我王牙の効果を説明し終えたと同時に、そのままハーキュリーを背後から一突き。
「!!?」
背後の一撃に避けられる訳も無く、剣は無慈悲にハーキュリーの身体を貫き、突然の味方からの攻撃、そして何より自分の主人の指示が信じられなかったのか、動揺をしきった様子で弱々しく咲の方を振り返り、まるで何故だと問いかける様な眼だった。しかし我王牙はそのまま剣を引き抜き、力尽き消滅するハーキュリー。ハーキュリーを貫いた剣には、まるでその力を奪い取った様にオーラが纏われており、オーラの纏った剣を掲げ、そのまま勢いよく飛び上がりヤマトに迫り、片方の剣をヤマトに振り下ろし、咄嗟に剣を盾に受け止めるも、あまりの力に受け止めきれず、地面に叩き落とされ、我王牙はもう一方のオーラの纏う剣を構えながら墜落したヤマトに迫って行き、宙にいる我王牙に火炎放射を放つも、剣は炎さえも両断しながら突き進み、そのままヤマトを剣で切り裂き、その場で大爆発が起こる。
「ヤマトッ!?」
「バトル終了時、このスピリットを回復」
キースピリットの破壊に思わず前に乗り出す。キースピリットの破壊に当然堪えるが、それ以上にキースピリットだった筈のハーキュリーを簡単に犠牲にした事が和人にとっては何より許せなかった。
「咲、ヤマトを倒す為に、その為だけにハーキュリーは犠牲になったのか?」
「そうだよ。唯この為だけに使い捨てた。嫌、使い捨てる為だけに使ったって言った方が的確かな?」
笑ってそう言った彼女に対して黙ってられなかった。拳を握る手により力が入る。
「ふざけんじゃねぇッ! ハーキュリーだって、お前の大切なスピリットだろ! 仲間だろ! お前まで、お前までそう思わなくなっちまったのかよ! 咲!!」
「……大切な仲間、そんな物どうでもいい。私はただ欲しいんだよ、どんなバトルも勝ち続けられる力を、勝利の証が!!」
「そうしてまでお前は勝利が欲しいのかよ?」
「当たり前だよ、勝利のためならスピリットも捨てる覚悟が、今の私にはある」
「そんなもん覚悟でも何でもねぇッ! それを俺がこのバトルで証明してやる!!」
「へぇー、キースピリットを倒されたこの状況からどうやって?」
「まだバトルは続いてる、ならバトルが続く限り勝つチャンスは幾らでもある。そのスピリットをぶっ倒して、俺は絶対このバトルに勝つ!!」
「虚勢も和人ぐらいになれば立派だけど、実現できなきゃ意味なんてないよ?」
────第11ターン、咲side。
[Reserve]12個→13個
[Hand]3枚→4枚。
[Field]魔王蟲の根城Lv.2(2)、剣双鬼刃・我王牙Lv.1(1)。
「メインステップ。バーストセット。さらにダークミツジャラシを召喚、召喚時効果でコア1個をこのスピリットに追加、さらにもう一体シノビチュウヒをLv.2で召喚、召喚時効果発揮でアサシンドラゴンを疲労させる!」
「この前と違う効果!?」
自身にコアを追加させる効果と、相手を一体疲労させる効果の二種類を持つシノビチュウヒ、アサシンドラゴンに向けて風を飛ばし、直撃を受け、片膝をついてしまう。
「これでこっちの攻撃を防ぐ手段はないね」
「(白煙の大山脈の効果が発動するけど、咲の場にBP3000以下のスピリットがいなきゃ使えねぇ)」
「当然、和人のバーストはハンゾウシノビドラゴンだって分かってるからね。アタックステップ、我王牙でアタックッ! さらにフラッシュで神速、黒蟲の妖刀ウスバカゲロウを直接合体!」
「ソードブレイヴ!?」
「魔王蟲の根城の効果で、神速に支払うコストはブレイヴでもノーコスト!」
片手の大剣を投げ捨て、天より降り落ちる妖刀に持ち替える我王牙、その姿に満足する様に笑って見せる咲。だが、その姿は和人にとってはあまりにも禍々しかった。
「アタックはライフで受ける!」
「ウスバカゲロウの効果は、アタック時相手はバーストを発動できない。ライフで受けてもハンゾウシノビドラゴンの効果は使用できないよ!」
「だったらフラッシュタイミングで、ファイアーウォール!」
「!?」
「アサシンドラゴンを破壊する事で、相手のアタックステップを強制終了させる! アサシンドラゴン、ごめん!」
アサシンドラゴンの身体に炎が止まり、それは横に燃え広がっていき、継続中のバトルでは、和人のライフ目掛けて、大剣と妖刀を振り下ろし、展開されたバリアを破壊する。
和人side
[Life]3→1。
「うああああっ!!!」
これまで以上の強い衝撃、思わず後ろに吹っ飛ばされ、その衝撃に直ぐに立ち上がる事さえ難しく感じた。衝撃を受けた体を庇うように支えながらしばらくしてようやく立ち上がる。
「(ここまでの衝撃、これもあのカードの影響なのかよ!)」
「だいぶ辛そうだね、まだ続ける?」
「……当り、前だ! どんな状況でも最後まで続ける。ファイアーウォールの効果で、アタックステップ強制終了!」
燃え広がっていく炎は壁のように咲のスピリット達の行く手を防ぎ、咲にこれ以上攻撃する手段はない。
「……ターンエンド」
────第12ターン、和人side。
「スタートステップ、コアステップ」
「手札は一枚も無い。それでも和人はやっぱり諦めるつもりはないんだよね?」
「さっきも言ったろ、俺は最後まで続ける。そして勝つ! でなきゃお前の目も覚ませられねぇ!」
「……そういうの、唯の御節介でしかないって、分かってる?」
「どう言われたって言い。俺は、それでも元のお前に戻ってほしい!」
「元に戻るも何も、私はとっくに目が覚めてるよ」
「勝負に勝つためなら何だっていのかよ! そんな奴じゃなかったじゃねぇかよ!」
「だから、私は和人に勝ちたい、それが私自身の本心なの! カードバトラーにとって勝つ事に執着して何が悪いの?」
「やるからには俺だって勝ちたい。けど、それが全てじゃねぇだろ! 俺達も元々バトスピで出来た絆だろ!」
咲やリクト、光や川村。それにハンナもバトスピを通して関わり、繋がる事が出来た。その事を思い返しながら、拳を強く握りしめ必死に叫ぶ。
「このバトルで俺は絶対お前を元に戻す! 俺は、俺は俺の好きなお前に戻ってほしんだよ!」
「!!」
「このターンで絶対決める! ドローステップ!」
絶体絶命の状況、だがこの状況でもまだ勝つ可能性ある、デッキに入っている唯一のカードが和人の脳裏に浮かび、この瞬間、そのカードを引く事だけしか考えず、その一枚を引き当てるためにデッキからカードをドローする。
[Reserve]12個→13個。
[Hand]0枚→1枚。
[Field]白煙の大山脈Lv.1(1)。
引いたカードを確認した瞬間、明らかに和人の表情が変わる。
「メインステップ、白煙の大山脈をLv.2にアップ! そしてバーストセット中、手札にあるこのカードはコスト7として扱う」
「何を!?」
「行くぜッ! 紅蓮の龍の魂を受け継ぎ、今再びこの地に現れろ! 虚龍帝カタストロフドラゴン、Lv.2で召喚ッ!!」
もう一体のカタストロフドラゴン、天より降り注ぐ豪炎、それはまるで炎の雨。炎の光がフィールドを照らし、空を裂き、虚龍帝カタストロフドラゴンがその姿を現す。
「これがお前に勝てる唯一キースピリットだ、アタックステップ行くぜ!」
「ふん、大型スピリット一体出した所でこっちのブロッカーは三体。しかもライフ3、それでどうやって逆転できるって言うの?」
「あぁ、スピリット達を信じてるから、そしてそれに絶対スピリットは応えてくれる! アタックステップ! 白煙の大山脈のLv.2効果発揮!」
・【白煙の大山脈】/5(3)赤、ネクサス。
Lv.1(0)、Lv.2(3)。
Lv.1、Lv.2
相手のスピリット/マジック/ブレイヴの効果で自分のスピリットが疲労した時、疲労したBP以下の相手スピリット1体を破壊する。
Lv.2『お互いのアタックステップ』
自分のスピリットが2体以下の間、系統:「古竜」を持つスピリットすべてを、そのスピリットが持つ最高Lvとして扱う。
「そして虚龍帝カタストロフドラゴンでアタック!さらにアタック時効果発揮! デッキの上からこのスピリットのレベルと同じ枚数をオープン、そのスピリットが【激突】を持つなら、ノーコストで召喚できる!」
「都合よく召喚できるとでも!?」
「言ったろ、俺はスピリットを信じるだけだ! 効果発揮でデッキから3枚オープン!」
カタストロフドラゴンの効果で、3枚のカードが開かれていく。一枚目、「武槍鳥スピニードハヤト」、二枚目、「焔竜の城塞都市」、そして最後の三枚目が開かれる。
「(頼む……! 応えてくれ、俺のスピリット達!!)」
最後に開かれるカード、それはもう一体のカタストロフドラゴン、「激神王カタストロフドラゴン」のカード。
「まさか!?」
「来たぜ、激神王は【激突】を持つカード! よってノーコストで召喚するッ!!」
虚龍帝はまるで何かを呼び起こす様に大きくフィールド全体に轟く程の咆哮を上げ、その咆哮にフィールドは揺れ、地脈さえも刺激し、大地から炎が噴き上げる。
「大地揺らせ、天に羽ばたけ! 激神王カタストロフドラゴンを召喚ッ!!」
大地から振り上げる炎を一瞬で払う影、巨大な翼が見えたかと思うと次の瞬間地面を突き破りながら激神王が飛び出し、フィールドに並ぶ二体のカタストロフドラゴン。
「この状況から、一気最強クラスのスピリットを二体も並べるなんて!!」
「激神王の召喚時効果発揮ッ! 自分の場にいる系統:「古竜」を持つスピリット数だけ、一枚ドロー、よって2枚引く!」
「いい気にならないでよね、その召喚時効果発揮後でバースト発動ッ! ブリトサリフ!」
「!」
「バースト効果により、疲労状態のスピリットを1体回復させる。よって我王牙を回復させる! さらにコストを支払って我王牙にBP+2000!」
咲に手札はなく、彼女の伏せたバーストがトラッシュから戻ったブリトサリフである事は分かり切っていたので驚く事はない。我王牙が回復してもそれに構う事無く、虚龍帝の攻撃を継続させる。
「我王牙でブロック!」
両手に持った妖刀と大剣、両手の爪で互いの相手を斬り合う両者。合体した我王牙のBPはブリトサリフの効果を合わせ、BP17000、対する虚龍帝のBPは20000。力の差はリードしているのだが、それでも咲は余裕の表情を保っている。
「忘れた訳じゃないよね。我王牙の効果発揮! 相手スピリットとのバトル時、自分のスピリット一体を指定し、破壊することでそのスピリットのBPを加算!」
「!?」
「シノビチュウヒを指定して破壊、シノビチュウヒのBPを加算!」」
虚龍帝の力に押され始め、後ろに後退させられながらも、後方にいたシノビチュウヒに対し、ハーキュリー同様、残酷に刃で貫き、その力を刃に奪っていく。
「咲!!」
「もう止まらないよ! これで我王牙のBPは23000! 逆転したね!」
再びBP差を上回ると、我王牙は虚龍帝を押し返し、後ろに弾き返していき後退させる。
「これで返り討ち、我王牙の力で私は和人を超える!」
「超えさせねぇ、超えたらお前はもう戻らなくなる。だから、俺は絶対負けない!」
「何を言っても無駄だよ、これで終わらせる!」
我王牙は二本の剣を地面に突き刺し、虚龍神の足下から突如大樹が飛び出し、体を貫こうと襲うが、一切怯む事無く飛び出す大樹を両手で掴むと、そのまま大樹を叩き折る。だが我王牙はそれに気を取られている隙をつき、虚龍帝の頭上まで大きく飛び上がると、二本の大剣を構え、そのまま剣を突き立てんと向かっていくが、迫る我王牙に対し、一本を避けるも、もう一本の刀が獲物を逃がさず、切っ先がそのまま貫き、得物を仕留めた。確かな手応えを感じる我王牙、だが次の瞬間、視界に映ったのは剣の切っ先を咥えてとめている姿が映った。
「なっ!?」
「フラッシュで五輪転生炎、その効果で系統;「古龍」をBP+4000、これでまた逆転したのさ!」
「馬鹿な!? さっきまで手札がなかったのにどうやって……!」
そこまで言いかけた瞬間、先程、激神王の効果でカード引いていたことを思い返し、気づいた様子の咲に和人は笑って見せる。
「そうさ、さっき引いた二枚のうちに来たんだよ。マジックがな!」
「どこまで運がいいの!」
「運なんかじゃねぇ、スピリットを信じてたから応えてくれた。カタストロフが引き当ててくれたのさ!」
「……ッ!!」
「行っけぇーーッ! カタストロフッ!」
咥えた剣ごと我王牙を引き寄せ、そのまま咥えている口を離すと同時に我王牙に勢いよく文字通り体当たりでの激突、我王牙を大きく宙に跳ね上げると、追い打ちを掛ける様に巨大な火球を放ち、火球は我王牙を直撃し、中に爆風が広がっていき、爆風の中からウスバカゲロウが落ち、地面に突き刺さる。
「わ、私の力の証が……!!」
「あれは本当のお前の力じゃないッ! 今目を覚まさせる!! 激神王でアタック! 【激突】の効果発揮、さらに【激突】を持つスピリットのアタックで虚龍帝を回復!」
「だ、ダークミツジャラシでブロック!」
「ブロックしたスピリットがコスト5以下ならこのスピリットは回復だ!」
「ぐっ!」
止めようとしたダークミツジャラシだったが、激神王が翼を羽ばたかせて起こす風圧に簡単に吹き飛ばされそのまま消滅。
「ブロッカーはもういない! 虚龍帝で再度アタック! 効果発揮!!」
再びオープンされる三枚のカード、一枚目は「キンタローグベアー」、二枚目は「カグヅチドラグーン」、そして三枚目は「剣龍皇エクスキャリバス」。
「一体目カグヅチドラグーンを召喚、そしてさらに二枚目、カグヅチドラグーンを【転召】!」
現れたばかりのカグヅチドラグーンの身体から噴き上げる炎、そして炎の中に見える巨大な影。
「炎纏いし龍の皇! 剣龍皇エクスキャリバスをLv.2で召喚!!」
炎を振り払い、火の粉に身を輝かせながらエクスキャリバスが現れ、勇ましく吠え、一方のバトルではカタストロフドラゴンがすぐそこまで迫ってくる。
「メインアタックッ!!」
「ライフで、受ける!」
虚龍帝はそのままバリアに向かって火炎放射を超至近距離で放ち、あまりに高熱の炎はバリアを溶かし、ダブルシンボルにより二つものライフが一気に破壊される。
咲side
[Life]3→1。
「これで終わりだ、エクスキャリバスでアタック!!」
「ライフで受ける!!」
炎を身に纏わせそのまま猛スピードで咲へと向かい、展開されたバリアに激突し、最後のライフを破壊する。
「うああああああああッ!!!」
ライフが無くなり、勝負に決着が付く。和人自身もバトルの影響か、満身創痍ながらも、震える手を必死に上げ、Vサインを見せる。
「俺の、勝ちだッ!」
勝利のVサイン掲げ、和人の勝利を祝福するように三体の龍達は一斉に咆哮を上げる。
***
決着が付き、元の場所に戻る二人。だが、既に互いに限界だったのか倒されそうになり、二人を慌ててリクトと川村が支える。
「おい、大丈夫か?」
「さ、さすがにちょっと疲れたかな」
心配そうに尋ねるリクトに軽く苦笑いしながら応えると、和人に視界を向ける。
「和人、ありがとう。しっかりと和人の言葉は届いてたよ」
「良かった。元に、戻ったんだよな?」
「うん。後さ、さっきの言葉、あれ……」
「?」
「その、「俺の好きなお前に戻ってほしい」、ってあれ、どういう意味、なのかなって」
「!!」
恥ずかしがるように尋ねる咲に対し、和人もあの時の発言を思い出したのか途端に顔が赤くなり、思わず口籠ってしまう。
「そ、それはその……あの時は夢中だったって言うか、べ、別に変な意味じゃなくてさ」
「そ、そうだよね、変な事聞いたね」
和人と同じように顔を赤くする咲だったが、またすぐ表情を暗くさせる。
「ごめんね、和人。私も、リクト君達の様にただ勝ちたいとしか、それしか考えられなくなってた。自分のスピリットも他の皆も何も見えてなかった」
「……あんま気にすんなよ、やるからには勝ちたいのは俺も一緒だ、けど今度は本当のお前とバトルしたいけどな」
「……ありがとう和人。私もまた、和人とバトル……したいよ」
そう言い終えた途端、事切れたようにそのまま目を瞑り意識を失う。
「咲!?」
「……大丈夫、寝ているだけだ。あのバトルフィールドの影響だろう。多分ハンナも同じ影響だ」
リクトの言葉に安心した様に一息つきながらも、直ぐに表情を変え、和人達は奥にいるアキラに対し睨むような視線を向ける。
「要求通り、バトルは決着したよ。ハンナ君は返してもらうからね」
「好きにしろ、俺もあのハイドカードが興味の対象だったが、負けるとは興醒めだ」
アキラに対して今だ警戒した様に睨んでいるも、今はこの場を後にする事が優先だと考え、ハンナを運ぶとその場を後にしようと帰路の方角へ振り返る。
『嫌、悪いがもう一勝負付き合ってもらうよ?』
突然の声、振り返った先にいたのはフードを被ったあの男と、ダイキの姿があった。
「あいつは!!?」
「誰だ?」
『和人君とは初対面だったね、初めまして、私の彼等のスポンサー、ダイキやアキラ達の持つハイドカードを渡した者だ』
「なっ!?」
「まぁ余計な話はいいか、用件だけ単刀直入に言わせてもらうよ、君たちにはぜひもう一勝負、付き合ってほしいんだ」
「何ッ!!」
スポンサーのとこの言葉に警戒する様にデッキを構えるも、既に和人にまだバトルできるだけの余力はない、和人を庇うように川村とリクトが前に出る。
「こんな時にまた仕掛けるなんて、ちょっと卑怯なんじゃない?」
「さすがに和人君に二連戦しろなんて無理強いはしないさ。君達の実力なら誰でも申し分ないさ」
「そりゃどうも。で、肝心のバトル、私に負ける相手はどっち? ダイキ、それともアンタ自身がやる?」
自分がやるとでも言いたげに前に出る川村、相変わらずの口調で挑発する彼女だが、それにはスポンサーもダイキも不気味に笑っている。
「随分な御挨拶だね、けど相手は私でもダイキじゃないさ」
「!?」
「出ておいで、君のバトルは彼女だそうだ」
「「「!!!」」」
スポンサーの言葉に物陰から姿を見せる一人の人物、その姿に和人やリクト、川村の3人は一瞬にして言葉を失う。信じられないとでもいう様に震える声で、その人物を示しながら……。
「な、何であんたがここに!?」
「……どうもです、皆さん」
「どういう事なの、光!!!」
川村達の目の前に立ったのは、その言葉通り相崎光だった。
いかがでしたでしょうか?第30話!前回と続けて和人vs咲、今回は若干のプレイスタイルが逆になったという感じでしょうか?中々白熱したバトルが書くのが難しいです。
今回登場したハイドカード、剣双鬼刃・我王牙!
効果は以下の通り!
・【
Lv.1(1)BP6000、Lv.2(4)BP10000。
Lv.1、Lv.2『このスピリットの召喚時』
自分のスピリット一体を指定し、そのスピリットのLvが一つ上になるようボイドからコアをそのスピリットの上に置く。
Lv.1、Lv.2『このスピリットのバトル時』
相手スピリットとのバトル中、自分のスピリット一体を指定し、そのスピリットを破壊できる。この効果発揮後、破壊したスピリットのBPをこのスピリットに加え、バトル終了時このスピリットは回復する。
Lv.2
このスピリットが相手の効果の対象になったとき、フィールドのコア3個をとラッシュに置く事で、その効果を無効にする。
以上が我王牙の効果です。トール+フォンニードみたいな感じとなっております。チートすぎるような、ないような(笑)
とにかくチートになりすぎないように考えました。とはいえ、最近の現環境では何か昔と比べてチートすぎるスピリットも増えてきた気がしますが。ヨルムンガルドとか、クロムリゼルファーとか!!(ほぼ白)多分、この小説を現環境に合わせて、ハイドカードも登場させたらハイドカードの能力が翳むかもなんて笑
また次回も読んでくださると幸いです。次回は最後のハイドカードが!?
次回もぜひよろしくお願いします。