バトルスピリッツ激震の勇者   作:ブラスト

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皆さまお久しぶりです。ブラストです。まずは半年近くの更新なし、失礼いたしました。原稿を溜めていたPCが壊れ、一から作り直すのも面倒で、正直打ち切りを考えていましたが、諦めるに諦めきれず時間をかけ、さぼりながらも(←)今回ようやく最新話を公開できて私自身が一番喜んでます(笑)

時間掛けた割には毎度の事、駄文と自己満の小説ですが読んでくださると幸いです。
今回はタイトル通り、最後のハイドカード!ぜひその力をご覧ください!


第31話『最後のハイドカード! 逆雷狼の雄叫び』

 

 

 

 

 

「どういう事なの! 光!!」

 

川村達の前に立つ光、ダイキやアキラたちといることに当然動揺を隠せていない。

 

「見てのとおり、私もこちら側についたんです」

 

「どうして!」

 

「この力の為、とでも言っておきましょうか?」

 

彼女が取り出したのは見たこともない黄色のカード、「逆雷狼フェンリルドガルム」と書かれたそれは見た瞬間、ハイドカードだと簡単に予測できた。

 

「既に目覚め済み、一体いつから!?」

 

 

 

 

「彼女とコンタクトを取ったのはずっと前だよ、ハイドカードを渡したのも私だ」

 

そう言いながら前へと出るフードの男。光もそれを否定することなく、男の言葉に頷いて見せる。

 

「どうして?」

 

「力が欲しい、この人は私がそう思ってるのを察してくれたんです」

 

初めて会った時のことを思い返しながら、さらに光は続けていく。

 

「勿論、最初は戸惑ったんですけどね、けど私ずっと見てたんです。愛実ちゃんやリクトさんもハイドカードを使ってバトルしている姿を!」

 

「!」

 

「だから私も欲しかった。強力な力を! 圧倒的な力をね!」

 

「そういう事だ。此奴が自分で臨んだ結果さ、そして今回の事も全て計画したのも此奴自身だ」

 

「!?」

 

信じられない、信じたくないと思う和人達だったが、その期待を裏切るように、彼女は笑いながらダイキの言葉を肯定するように頷いた。

 

「ダイキさんの言う通りです。咲さんにハイドカードを渡し、そしてここまで皆さんを誘導したのもすべて私が計画した事です」

 

「な、何でそんなことを!!」

 

「ハイドカードを完全に手に入れる為、私は協力しているだけです。そして咲さんとのバトルのお陰で私のハイドカードも目覚め、ここに連れてきたのは絶好の練習場だからです!!」

 

「要するに、俺達でそのハイドカードを試すために!!」

 

「そういう事です。和人さんには察しがいいですね」

 

「……そんな事の為に咲やハンナを巻き込みやがって、絶対……許さねぇ……ぐっ!」

 

「「和人!」」

 

咄嗟にデッキを構えるが、咲とのバトルで既に疲労困憊の和人にとってもう連戦できる状態ではなかった。

 

「大分無理してるみたいですね。そんな状態で私とやろうっていうんですか?」

 

「当たり前────」

「和人待って」

「!?」

 

制止するように手を突き出して前に立つ川村。

 

「私がやる。そんな疲労困憊でやっても負けるだけだよ」

 

「川村……!」

 

「何てね、でもバトルは譲ってもらうよ」

 

「愛実ちゃんがやるんですか? まぁ私は誰でもいいんですけどね」

 

「アンタの目を覚ましてやるのは親友としての私の役目だからね」

 

「意気込んでも無駄ですよ、誰がやろうと結果は決まってますからね」

 

互いにデッキを構え、そして叫ぶ。

 

 

 

 

「「ゲートオープン、界放ッ!」」

 

二人の宣言と共に舞台はバトルフィールドへと移され、二人のバトルの行方を心配そうに見守る和人達、それとは裏腹にダイキ達は嬉々とした様子でバトルを傍観している。

 

 

 

 

────第1ターン、川村side

 

[Reserve]4個

[Hand]4枚→5枚

 

「メインステップ。ランマーゴレムをLv.1で召喚、続けてネクサス、崩壊する戦線を配置」

 

「いきなりのネクサス、デッキ破壊の準備ですね?」

 

「当然、これでターンエンド」

 

 

 

 

────第2ターン、光side

 

[Reserve]4個→5個

[Hand]4枚→5枚

 

「メインステップ。ニジノコを二体、Lv.1、Lv.2で召喚」

 

七色の体色を持ち、そしてまるで胴体の短い蛇のようなスピリット、ニジノコ。一体はその身に一瞬赤いオーラを纏い、もう一体は紫のオーラを纏っている。

 

「バーストセット。私はこれでエンドです」

 

 

スピリットを呼び出し、最後にもう一手、バーストをセットしターンエンド。

 

 

 

 

────第3ターン、川村side

 

[Reserve]3個→4個

[Hand]3枚→4枚

[Field]ランマーゴレムLv.1(1)、崩壊する戦線Lv.1(0)。

 

「メインステップ。バーストセットして、ロコモゴレムをLv.2で召喚!」

 

「早速出ましたね、粉砕スピリット!」

 

「えぇ、でもそれだけじゃない。行くよ! アタックステップ、ロコモゴレムでアタック! アタック時効果で【強襲】ネクサスを疲労させて回復!さらにもう一つ【粉砕】の効果発揮!」

 

崩壊する戦線から青い光が灯り、それに呼応するようにロコモゴレムにも同じ光が集う。

 

「まだだよ、【粉砕】の効果発揮、ロコモゴレムのLvと同じ枚数、さらに崩壊する戦線の効果で2枚追加し、計4枚のカードを破棄!」

 

ロコモゴレムの身に宿った光をそのまま衝撃波のように撃ち出すと、光のデッキから4枚ものカードをトラッシュに送る。

 

「Lv.2のニジノコでブロックします」

 

「(Lv.1のニジノコを残した!?)」

 

デッキ破棄を受けても少しも動じず、冷静にブロックの指示。だがあえてレベルの低いニジノコにブロック指示を出す光に当然違和感を覚える。バトルでは、機械仕掛けの体を動かし進撃するロコモゴレムを阻もうと、体を這わせ飛び掛かるニジノコだが、ハエを叩き落とすかの如く剛腕でニジノコを弾き落とし、そのまま消滅。

 

 

「相手に自分のスピリット破壊でバースト発動! 双光気弾!」

「!」

「効果により、デッキから2枚ドロー。さらにコストを支払って、追加効果! 相手ネクサス一つを破壊します!」

 

発動されたバーストカードから撃ち出される二つの火球。それは崩壊する戦線に直撃し、直撃を受けたネクサスは全焼し、文字通り炎によって崩壊し消滅。

 

 

 

「レベルの低いニジノコを残したのは、双光気弾の使用コスト確保のためか!」

 

ニジノコの最大の利点はレベルにより自身の色を自在に変えられる点。元々の黄色に加え、Lv.1なら赤のスピリットとして、Lv.2なら紫のスピリットとして様々な色として扱える。だからこそ先程赤のスピリットとして扱われていたニジノコを残し、そして双光気弾の使用コストを確保。抜け目ない彼女のやり方により一層警戒しなくてはならない。

 

「さぁ続けますか?」

 

「舐めないでよね、回復してるロコモゴレムでもう一度アタック! 【粉砕】の効果で2枚破棄!」

 

「今度はライフで受けますよ」

 

光side

[Life]5→4。

 

再びデッキを破棄しながら進撃を開始するロコモゴレム、その剛腕を振るい、展開されたバリアを粉砕し、光のライフが削られ、その衝撃に後ろに足を引きずらせるも、咲の時と同様、痛みに対し動じる様子は微塵もない。

 

 

 

「こんな物ですか? まだまだ攻めてきてくれてもいいんですよ?」

 

「……アンタ、そこまでして力が欲しいの? そこまで拘る必要があるの?」

 

「愚問ですよ。カードバトラーが力を求めて当然じゃないですか、それに私は力のない自分自身に満足できないんですよ!」

 

「違う、ハイドカードは力の証なんかじゃない! 本当は光もそれに気づいてるでしょ!」

 

「分かりませんよ、ただ私は求めるだけです。理屈じゃなく、心の底からね!」

 

「……ッ!」

 

ハイドカードに魅せられた者は異常な程固執する。ダイキやアキラ、リクトに咲、そして自分もそうだったように光も例外ではない。だとしたら恐らく説得は無駄だろう。光の様子に歯噛みしながら彼女はバトルに集中し直し、ターンエンドとコール。

 

 

 

 

────第4ターン、光side。

 

[Reserve]5個→6個

[Hand]4枚→5枚

[Field]ニジノコLv.1(1)

 

「メインステップ。天使スピエルをLv.1で召喚、さらにネクサス、聖ミカファール大聖堂を配置します」

 

眩い程の光を放ちながら出現するネクサス。

 

「このネクサスの効果、愛実ちゃんならわかりますよね?」

 

「……青の対するメタカードってところ?」

 

「察しが良くて助かります」

 

 

・【聖ミカファール大聖堂】/5(3)黄色、ネクサス

Lv.1(0)、Lv.2(2)。

Lv.1、Lv.2

お互いのデッキは破棄されず、スピリット全ては効果で疲労しない。

Lv.2『お互いのアタックステップ』

系統:「天霊」を持つコスト5以上の自分のスピリットが相手によって破壊され、自分のトラッシュに置かれたとき、自分はデッキから2枚ドローする。

 

青デッキにとって、相手のデッキを破棄しデッキアウトにして勝利するやり方が最も主流。だが、ネクサスによってお互いのデッキを破棄できなくなった以上、もはや青の特性を殺されたと言っても過言ではない。川村自身は表情を崩していないが、対処策がなければ確実に戦い方を変えざるを得ない。

 

「さてこれでデッキアウトによる敗北は無くなりました、この状況、今どういう気持ちですか?」

 

「相手に感想尋ねるなんてらしくないね、それにどうもしないよ。メタカードを出されたぐらいで負け確定するような軟なデッキ構成はしてないよ」

 

「フフッ、安心しました。それでこそハイドカードを使う価値がある」

 

「!?」

 

光の言葉にすぐ警戒を強く川村だが、光は笑いながら「安心してください」と言葉を続けていく。

 

 

「心配しなくてもその出番はまだまだ先ですよ、それにまだ準備がありますからね」

 

「準備?」

 

「えぇ。続けますよ? バーストセット、さらにニジノコをLv.2にアップし、獄獣ガシャベルズを召喚。不足コスト確保で、ニジノコをレベルダウンします」

 

紫の瘴気がまるで沼のように広がり、そこから這出る骸と化した獣、ガシャベルズが姿を現す。

 

 

「紫のスピリット!?」

 

「えぇ、一筋縄じゃありませんから。アタックステップ! 天使スピエルでアタック!」

 

手に持った杖を構えながら突っ込むスピエル。だが、そのアタックを好機と言わんばかりに反応して見せる。

 

 

「相手によるアタック後でバースト発動! コジロンドゴレム!」

 

宣言と共に発動するバーストカード、突っ込むスピエルの前に出現する青のシンボル、そして内側からの斬撃がシンボルを破壊し、コジロンドゴレムが現れる。

 

「バースト召喚完了、そしてアタックはそのままコジロンドゴレムでブロックさせる!」

 

躊躇いながらも攻撃を仕掛けるスピエルだが、結果は見るまでもなく明らか。コジロンドゴレムは天使スピエルの攻撃に剣で受け止め、そのままスピエルを弾き消滅させる。

 

「ターンエンドです」

 

 

 

 

────第5ターン、川村side

 

[Reserve]2個→3個

[Hand]2枚→3枚

[Field]ランマーゴレムLv.1(1)、ロコモゴレムLv.1(1)、コジロンドゴレムLv.1(1)

 

 

 

「コジロンドゴレムをLv.3にアップしてアタックステップ!」

 

「来ますか!」

 

「勿論そのつもり! 例えデッキ破壊ができなくても戦い方なら幾らでもある! コジロンドゴレムでアタック!」

 

粉砕の効果は使えないものの、それでもアタックそのものは封じられるわけではない。果敢に光へと突っ込み、剣を構えながら駆け出し、そのまま斬撃波を撃ち出す。対して光は全く動じる様子なく、ライフで受けると宣言し、斬撃波はそのまま展開されたバリアに直撃し、光のライフを破壊する。

 

光side

【Life】4→3

 

 

削られたライフの衝撃に後ろに後退するも、手で覆うように表情を隠し口元を緩ませたかと思うと静かに伏せていたカードに視線を置く。

 

「自分のライフ減少時でバースト発動、ラウンドテーブルナイツ!」

 

「!?」

 

「バースト効果により、私のトラッシュにあるコスト5以下のスピリットカードを召喚できる、私はトラッシュから冥犬ケルルべロスをLv.2で召喚、不足コスト確保のため、ニジノコは破壊します」

 

ラウンドテーブルナイツ、その効果によりフィールドに振り落ちる一本の剣、その県が地面に突き刺ると、すぐに砕け散り、砕け散った剣からガシャベルズと同じ三つ首を持ち、黄色らしく童話に出てくるような獣、ケルルべロスが現れる。

 

「ここでケルルベロス!?」

 

一見メルヘンな見た目だが、その見た目とは裏腹に厄介な能力を有している。その事は勿論川村も把握しており、だからこそ、この場面で出されたことに対し、動揺せずにはいられなかった。

 

「青デッキが得意のデッキ破壊を封じられた以上、私のライフを狙いに来るしかない。だからこそ対策を用意しやすいんですよ」

 

「そのスピリットが何でトラッシュに!」

 

「お忘れですか? このスピリットをトラッシュに送ったのは愛実ちゃん自身ですよ?」

 

「!」

 

第3ターンでデッキ破棄をした瞬間、破棄したカードの中にケルルベロスが含まれていたのだろう。彼女はそれが破棄されたのを見越して、ラウンドテーブルナイツを仕掛けた。

 

「まさか最初から読んでいたってこと?」

 

「当然です、それよりターンエンドですか?」

 

「……えぇ、ターンエンド」

 

 

 

 

────第6ターン、光side。

 

「スタートステップ、そしてこの瞬間! 冥犬ケルルベロスのLv.2、Lv.3の効果発揮!」

 

ケルルベロスは突然吠え始めたかと思うと、その身から鎖が飛び出し、それは真っ直ぐコジロンドゴレムへと向かい、抵抗しようと刀を振り翳すも全く通じず、鎖はコジロンドゴレムを拘束する。

 

「ケルルベロスの効果、相手のコスト6のスピリットをそのままの状態で自分のフィールドに移す。よってコジロンドゴレムはこのターン、私のスピリットとして扱えます」

 

「!」

 

数あるカードの中でケルルベロスだけが持つ唯一無二の能力、それは相手スピリットを自分のスピリットとしてコントロールできる効果、鎖に拘束されたコジロンドゴレムは抵抗する力がなくなったのか、眼光から光が消え失せ、そのまま冥犬ケルルベロスに引き摺られ、自分の隣までコジロンドゴレムを移動させると、鎖を戻し再び吠え、その声に反応するようにコジロンドゴレムの眼光が再び光り、立ち上がると川村に対し敵意を見せるように刀を構え、その眼光はケルルベロスの支配下であることを示すかのように黄色く輝いている。

 

「コジロンドゴレム!」

 

「これだけじゃありませんよ、さらにドローステップ時、獄獣ガシャベルズの効果発揮、自分の場にBP8000以上のスピリットがいる時、ドローする枚数を1枚多くします」

 

ガシャベルズもケルルベロスも共にBP8000には満たないスピリット、だがケルルベロスの効果でコジロンドゴレムはこのターン、光のスピリットとして扱われ、さらにコジロンドゴレムのBPは9000。ガシャベルズの効果を満たし、2枚のカードを手札に加える。

 

 

[Reserve]4個→5個。

[Hand]2枚→4枚。

[Field]冥犬ケルルベロスLv.2(3)、獄獣ガシャベルズLv.1(1)、コジロンドゴレムLv.3(4)、聖ミカファール大聖堂Lv.1(0)

 

 

「メインステップ、獄獣ガシャベルズをLv.3にアップ。そしてアタックステップ! コジロンドゴレムでアタックしますよ!」

 

「ライフで受ける!」

 

容赦なくコジロンドゴレムに攻撃指示、一気にフィールドを駆け抜けていき、そのまま展開されたライフを刀で両断し、破壊する。

 

「うあッ!!」

 

川村side。

【Life】5→4。

 

 

「如何ですか、自分のスピリットに攻撃される気分は?」

 

「ほんと最悪な気分だよ!」

「あははは、ついでにデッキ破壊でのお返しもできたら良かったのですが、聖ミカファール大聖堂の効果はお互いを対象にしている以上、仕方ないですね。続けていきますよ、ガシャベルズでアタック! さらにフラッシュタイミングでデッドリィバランス!」

 

「!」

 

「効果によりお互いのスピリットを一体破壊、私が指定するのは当然コジロンドゴレム!」

 

「ッ! ランマーゴレムを指定」

 

互いのスピリットが紫の炎に包まれ、ランマーゴレムとコジロンドゴレムの二体は消滅。自分のスピリットが二体消滅した事に対し、悔やむように拳を握り締めながらも気を取られている暇はない。ガシャベルズはいつの間にか目の前まで迫り、展開されたバリアに三つ首がそれぞれ噛み付き、バリアを噛み裂き、ライフを破壊する。

 

川村side

【Life】4→3。

 

「これでイーブン、いや私のほうが押してるんですかね? ターンエンド」

 

余裕の態度を見せるように笑って見せながらターンエンドのコール。

 

 

 

 

「ッ! 川村が押されてるなんて」

 

まだ咲とのバトルによる疲労が残ってるも、リクトと共に川村達のバトルの行方を見守る。

 

 

「ルナアークカグヤをキースピリットにしていたデッキとは全然違う。デッキ破壊を封じられた上に、光にはまだハイドカードっていう切り札もある。この勝負厳しいかもな」

 

「……」

 

「けど、ハイドカードは川村も持ってる。使えば或いは」

 

「リクト!」

 

和人と同じくリクトもバトルの行方を見守りながら、冷静に戦況を呟くが、リクトの言葉を否定するように首を振って見せる。

 

「川村は絶対ハイドカードを使わねぇ。ハイドカードを使って勝ったとしても多分光には何も伝わらない。だからこそ、絶対ハイドカードを使う訳がない!」

 

「……そうだったな」

 

和人の言葉に、安心するように肯定するも、その言葉がダイキ達にも聞こえていたのか、可笑しそうに笑って見せる。

 

「川村がハイドカードを使わない? よくそんな無責任な事言えたもんだぜ、カードバトラーが力を求める。その純粋な欲の闇をお前は知らなさすぎる」

 

「何を!?」

 

「力がなけりゃ求めるしかない。求める力がそこにあるなら手を伸ばすだけだ。それが代物でも、どんな代償を掛けても、俺たちは求める。俺やアキラだってそうだ。光も、川村も、それにリクトお前だって例外じゃねぇだろォ!」

 

「まぁそこまでだよ、ダイキ」

 

「「!」」

 

ダイキの言葉を止めるように右手を突き出すフードの男、それに対し警戒して見せる和人とリクト、だが男は二人の警戒を他所に落ち着いた様子。

 

「私達が討論しても結果は出ない。このバトルで二人がどういう答えを出すのか、結果は見届ければ分かることさ」

 

男の言葉に周りは一斉に静かになる。見届ければ分かる。男のその言葉に全員ただバトルの行方を見守るだけだった。

 

 

 

 

────第7ターン、川村side

 

[Reserve]7個→8個

[Hand]3枚→4枚

[Field]ロコモゴレムLv.1(1)

 

「メインステップ。バーストセット、ランマーゴレムをもう一体Lv.1で召喚。ロコモゴレムをLv.2にアップ! さらに聖者の木の実を配置」

 

「ネクサスですか」

 

「アタックステップ! ロコモゴレムでアタック!!」

 

「ネクサスの効果で【粉砕】の効果は発揮されませんよ?」

 

「それでも【強襲】の効果は使える! 聖者の木の実を疲労させてロコモゴレムを回復!」

 

デッキ破壊こそ封じられたものの攻撃そのものは有効。ロコモゴレムは再び光に向けて剛腕を振るい、ライフを破壊する。

 

 

光side

[Life]3→2。

 

「ターンエンド」

 

 

 

 

────第8ターン、光side。

 

[Reserve]3個→4個。

[Hand]3枚→4枚。

[Field]冥犬ケルルベロスLv.2(3)、獄獣ガシャベルズLv.3(4)、聖ミカファール大聖堂Lv.1(0)

 

 

「冥犬ケルルベロスをLv.1にダウン、そしてネガケルベロスをLv.1で召喚!」

 

三体目のケルベロス、機械で構成された体に三つ首を持つ白のスピリット、ネガケルベロス。場に出た三体の獣達は共鳴するようにそれぞれ独特な鳴き声を上げる。

 

「紫の次は白のスピリット、だいぶ混色デッキにしてきたね」

 

「えぇ。ですが、需要はありますよ。特にこの状況でネガケルベロスは、愛実ちゃんにとっては最もまずいんじゃないですか?」

 

「!」

 

「気づかないとでも思ってます? 青デッキが得意の粉砕を封じられた以上、打つ手立ては単純になる。だからこそ、対処も容易いんですよ。場には聖者の木の実とトラッシュに破壊された崩壊する戦線、ということは当然、キースピリットであるヤマタノヒドラの召喚準備!」

 

「!」

 

「お見通しですよ、愛実ちゃんのやりそうなことなんて」

 

ネガケルベロスはバトルするだけでBP8000以上のスピリットを手札に戻す効果、さらに黄色シンボルを条件とする連鎖の効果を持ち、その効果は相手のBPに関係なく、相手スピリット一体のブロック又はアタックのどちらかをそのターン封じてしまうこと。川村がヤマタノヒドラを出すことを予期して、彼女はそのメタカードと成り得るネガケルベロスを呼び出したのだ。

 

「はぁ、こんなにあっさりとはガッカリです。せめて早く楽にさせてあげます。獄獣ガシャベルズでアタック」

 

「……ライフで受ける」

 

 

獄獣ガシャベルズはその牙でバリアを噛み裂き、ライフを砕く。

 

川村side

[Life]3→2

 

 

自分の手を読まれ、光の言葉が本当なのか黙り込んでしまう川村だったが、ガシャベルズの一撃にライフが削られた瞬間、衝撃と痛みに表情をゆがませながらも、待ってたと言わんばかりに笑って見せる。

 

「……待ってたよ、ライフを削りに来てくれるのを!」

 

「?」

 

「聖者の木の実の効果でボイドからコア1個追加。さらに自分のライフ減少時でバースト発動! 雷神轟招来!!」

 

「!?」

 

「バースト効果によりコスト4を指定! 指定したコストのスピリット全て、さらにロコモゴレム支払ってフラッシュ効果を使用、コスト5以下のスピリット一体! よって三体のケルベロス達を破壊するよ!!」

 

 

発動するバースト共に、空に出現する黒雲。上空を覆うように黒雲が広がったかと思うと、光のスピリット達目掛けて降り掛かり、落雷は三体のスピリット達を直撃し、雷の一撃に耐え切れず三体とも爆発を起こす。

 

 

「雷神轟招来、流石にそれは予期できませんでしたね」

 

「当然、私の先を読むことをあえて見越した上での対策だからね。さっき自分で言ったよね? デッキ破壊を封じられた以上打つ手立ても単純になる。ならその逆も同じ! 対処の仕方もまた単純になってしまうって事!」

 

互いの手の読み合い、しかしやはり一枚上手だったのは川村。

 

 

 

 

────第9ターン、川村side

 

[Reserve]9個→10個。

[Hand]1枚→2枚。

[Field]ランマーゴレムLv.1(1)、ロコモゴレムLv.1(1)、聖者の木の実Lv.1(0)。

 

「メインステップ、バーストセット。行くよ、光!」

 

「やはりここで来ますか!」

 

「抗う敵を捻じ伏せる伝説の力、歴史を塗り替え現れよ! 霊峰魔龍ヤマタノヒドラ、Lv.2で召喚ッ!」

 

不足コスト確保のため、ランマーゴレムが消滅すると、大きな地鳴りと共に突如隆起する一角の山、だがそれは山ではなく、山のように巨大なヤマタノヒドラの姿。八首を持ち、強大な迫力を放ちながらヤマタノヒドラが姿を現す。

 

「ヒドラ決めるよ! アタックステップ! ヤマタノヒドラでアタック、さらに【強襲】の効果発揮! 聖者の木の実を疲労させて回復!」

 

山のように巨大なヤマタノヒドラが進撃するその姿は圧倒的威圧感を与える。だが、その進撃に対しても光は怯むことなく、むしろ笑って見せた。

 

「フラッシュタイミングでバキュームシンボルを使用します!」

 

「ここでマジック!」

 

・【バキュームシンボル】/4(3)マジック、白。

『フラッシュ効果』色を一色指定する。このターンの間、相手のスピリット全ては指定したシンボルを一つ失う。この効果は「自分のターン」では使えない。

 

「当然私が指定するのは青、そしてアタックはライフで受けます」

 

ロコモゴレムとヤマタノヒドラはそれぞれシンボルを失い、アタック自体は継続してるためヤマタノヒドラはそれに構うことなく、光のライフに攻撃し、バリアに八首全てが突進するが、シンボルを失ったヤマタノヒドラにライフを削ることはできず、バリアは壊れず、光のライフもそのまま。

 

「ッ! バトル終了時効果で、トラッシュの崩壊する戦線を再配置。そしてターンエンド」

 

川村のスピリット達は強襲を持つが、アタックそのものに効果がなければ、何度攻撃を仕掛けても意味はない。予想外の相手の手に一瞬動揺を隠せなかった。だがまだ彼女の優勢であることは変わりない。落ち着きを取り戻すように冷静にコールした。

 

 

 

 

────第10ターン、光side。

 

[Reserve]11個→12個。

[Hand]2枚→3枚。

[Field]聖ミカファール大聖堂Lv.1(0)。

 

「(フフッ、やっと来ましたか)」

 

このターン、手札に加えたカードを見た瞬間、光の表情が変わったのを川村は見逃さなかった。

 

「さて、そろそろ私のキースピリットの出番ですかね」

 

「……ハイドカード、だね」

 

「ご名答、そしてこれが最後のハイドカードの姿ですよ!」

 

6枚目のハイドカード、それが自分の手にある事を示すように手札の一枚に手を掛ける。

 

「駆け巡るその姿は雷の如し! 雷雲を呼び起こす孤高の獣! 逆雷狼フェンリルドガルムを召喚!」

 

再び空に現れる黒雲、唐突に雷がまるで雨のように降り注ぎ、雷は光のフィールドを隠すように降り注ぎ、それはまるで雷のカーテン。連続して降り注ぐ雷は全体を照らす程の光となり、その光に川村は勿論、モニターを見ている全員、視界が真っ白となり、視界が元に戻るころ、目の前に映ったのは、青白い体表と額に黒い三日月を刻んだ狼、フェンリルドガルムがその姿を見せる。

 

 

 

 

「はっは! ついに出たか! 黄色のハイドカードが!」

 

モニターも見ているダイキ達もフェンリルドガルムの姿に喚起して見せ、和人達はそのスピリットの姿にこれまでと同じ、もしくはそれ以上の威圧を感じている。

 

「あれが、光のハイドカード! あれのせいで!」

 

「……随分和人君はハイドカードについてはお気に召してない様子だ」

 

「!」

 

和人の態度を察してか、フードの男は静かに語り掛ける。

 

「当たり前だろ、ハイドカードとかのせいで、リクトも川村も咲も皆おかしくなってた。光もだって、あんなの俺たちの知ってる光じゃない!!」

 

「……確かに、カードの影響を受けているかもしれないのは否定しない」

 

「!」

 

「悪魔でかもしれないだけどね」と付け足しながら、さらに男は続ける。

 

「だが君だって知らなかっただろう? 彼らが皆、本当は心のどこかで力を手にしたいと考えていたことを、だからこそハイドカードを受け入れたんだ」

 

「それは……!」

 

「君もバトラーなら強くなりたいと思うことぐらいはある筈だ。ハイドカードはあくまで手段の一つ、そしてそれは非難される事かい?」

 

「……ッ!」

 

男の言葉に反論する言葉が見つからないのか、一瞬口籠ってしまう和人だが、それに対し、リクトは和人の背中を軽く叩く。

 

「!」

 

「乗せられるな。お前が言ったんだろ? 力だけが全てじゃないって」

 

「リクト」

 

「川村だって今はお前と同じ考えで、光と向き合ってるんだ。なのに俺達に説教した当の本人がそんな調子でどうする?」

 

 

「……来道リクト、お前随分腰抜けになったな」

 

リクト達の様子に、アキラは気に入らないように言葉を吐き捨てたかと思うと、そのまま和人のほうを睨む。

 

 

「はっきりしてきたよ。やはり若槻和人、俺はお前が嫌いだ」

 

「!」

 

「あのバトルが終わった後は、次は俺がお前を潰してやる!」

 

次と言いつつも、その気になれば今すぐにでもやるかのようにデッキを構えながら睨むアキラ。だが、それを手を突き出してフードの男が制止させる。

 

「アキラ、そんなに取り乱すのは君らしくないんじゃないか?」

 

「……五月蠅い、俺は冷静だ」

 

「ふふっ、だが今回の目的は最後のハイドカードの観測、つまりこのバトルの結果を見届けること。余計な事は支障をきたしかねないと思ってね、忠告しただけだ」

 

「いらん心配だ、元より目的は理解している」

 

 

「(目的?ハイドカードの観察だと? こいつらは……嫌、少なくともこの男が考えてることが俺にはわからない)」

 

ダイキやアキラは悪魔でハイドカード、力を手にすることが目的。だがフードの男は違う。そもそもハイドカードを渡したのは彼であり、そして分かっているのはそのカードを観察しているだけ、何が目的なのか全く分からない事に、不安感を覚えていた。

 

 

 

 

「さぁ、ハイドカードの力存分に引き出しますよフェンリルドガルムの召喚時効果発揮!」

 

一方のバトルでは、ハイドカードの姿に嬉々とした様子を見せながら高らかにその効果を宣言する。

 

「!」

 

「フェンリルドガルムは召喚時、自分又は相手のトラッシュにあるマジックカード一枚を指定」

 

「自分と相手!?」

 

「指定するカードはさっき愛実ちゃんが使ってた雷神轟招来を指定、そして指定したマジックカードのメイン、又はフラッシュ効果をコストを支払わずに発揮させる! フラッシュ効果を使用でコスト5以下のロコモゴレムを破壊!」

 

「!!」

 

フェンリルドガルムが吠えると同時に、天より突如降り注ぐ落雷、それはロコモゴレムに直撃し、破壊される。

 

 

「ッ!! 自分だけでなく、他人のマジックカードまで使用できるなんて反則でしょ」

 

「フフッ、素晴らしいでしょ、私のハイドカードの力。でもまだこれはほんの一部。これからたっぷりその力を全て見せてあげますよ! アタックステップ、そのままフェンリルドガルムでアタック! さらにフラッシュタイミングでアグレッシブレイジを使用!」

 

「!?」

 

「その効果は自分のスピリット一体に激突を与える。当然、それはご存知ですよね?」

 

川村自身も使用した事もあり、忘れる訳がない。だがブロックを強制しても元々全体的にBPの低い黄色のスピリット。それはフェンリルドガルムも同じであり、現在Lv.1のBPは5000。対するヤマタノヒドラのBPはその倍以上の1100。バトルすれば当然、勝敗は目に見えているが、光は構うことなくそのままアタックさせ、フェンリルドガルムもその指示に躊躇う事無く突っ込んでいく。

 

「わざわざBPの低いスピリットに激突を与えてまで強制バトルを仕掛けるなんて、当然何か企んでるんだよね?」

 

「そう思いますか?」

 

「(もしかして、破壊時効果? それともスピリットとのバトルで発動する効果?)」

 

フェンリルドガルムがどのような効果を持っているのか、それは今そのカードを手にしている光にしか分かってはいない。当然BP差を気にせずアタックさせたのには理由があるからこそだが、幾ら考えたところで彼女にはそのアタックを止めることはできない。

 

「……ヤマタノヒドラでブロックするよ!」

 

ヤマタノヒドラはその巨大な体をまるで壁のようにして立ち塞がり、フェンリルドガルムはそれに対し、自らの体に纏わせている電気を放電させ、ヤマタノヒドラに放つが、やはり力の差は歴然なのか、放たれた雷を受けてもヤマタノヒドラはビクともしない。

 

 

「随分フェンリルドガルムの効果を気にしてるみたいですから、先にネタ晴らししますよ」

 

「?」

 

「このカードには特に破壊時効果や、スピリットとのバトルに干渉する効果を持ってる訳でもありません」

 

「なら何で?」

 

「何でって……それは私の手に別の手があるからですよ!」

 

川村の言葉に、満面の笑みを浮かべながら答えると手札の一枚を掴む。

 

 

「フラッシュタイミングでマジック! サンダーブランチを使います!」

 

「効果により、ヤマタノヒドラのBPを2000に変更!」

 

「しまった!?」

 

「これでBPは逆転です。フェンリルドガルム!」

 

突如降り注ぐ落雷、雷に打たれ力の減少したヤマタノヒドラはその場に項垂れ、その隙を見逃す筈がなくフェンリルドガルムは雄叫びを上げて、再びヤマタノヒドラに対し放電。だがその威力は先程の比ではなく、強力な雷がヤマタノヒドラの体を焼き焦がし、雷に打たれ断末魔を上げながら消滅してしまう。

 

「ヒドラッ!」

 

「まだですよ。この瞬間、フェンリルドガルムは真の力を使えます!」

 

感傷に浸る間もなく、フェンリルドガルムは再び雄叫びを上げ、天に向かって雷を放つと、巨大な落雷がフィールドに目掛けて降り注ぐ。

 

「一体何を!」

 

「言ったでしょ、ここからがフェンリルドガルムの真の力だと、フェンリルドガルムはバトルで破壊した相手のスピリットを自分のスピリットとして扱えるんです」

 

「なっ!?」

 

「当然この効果の対象は先程破壊したヤマタノヒドラ!!」

 

落雷がフィールドに落ち、その衝撃に呼応するように激しく起こる揺れ。そして地面を突き破り、ヤマタノヒドラが再び姿を現すが、主人である川村に対し、完全に敵意を向けている。

 

「そんな、私のスピリットが……!」

 

「アハハッ、ねぇ今どんな気持ちですか? 自分の最も信頼するスピリットがこうして敵として現れるんなんて! もはや絶望しかありませんか?」

 

甲高い笑い声を上げながら、嬉々として語る光。彼女の言う通り自分のキースピリットが敵として現れる絶望は計り知れない。だが、彼女はまだ諦めた様子はなく、俯いた顔を上げて目の前を向き直る。

 

「まだ終わってない! 相手による自分のスピリット破壊でバースト発動! 双光気弾!!」

 

「!、愛実ちゃんもデッキに入れてるんですね」

 

「効果発揮で2枚ドロー、さらにコストを支払ってフラッシュ効果! 相手のネクサス、つまり聖ミカファール大聖堂を破壊!」

 

放たれた火球が光の場のネクサスを焼き尽くし破壊。ネクサスがなければヤマタノヒドラは強襲を使うことができず、ヤマタノヒドラ一体だけでは、ライフを削りきることはできない。

 

「仕方ありませんね、ここはターンエンドです」

 

 

 

 

────第11ターン、川村side。

 

[Reserve]12個→13個。

[Hand]2枚→3枚。

[Field]聖者の木の実Lv.1(0)、崩壊する戦線Lv.1(0)。

 

「メインステップ、ランマーゴレムをLv.2で召喚。これでターンエンド」

 

「打つ手なし。と言ったところでしょうか?」

 

「……」

 

「フフッ、なら次の私のターンで決めてあげますよ」

 

 

 

 

────第12ターン、光side。

 

[Reserve]11個→12個。

[Hand]0枚→1枚。

[Field]霊峰魔龍ヤマタノヒドラLv.1(1)、逆雷狼フェンリルドガルムLv.1(1)。

 

「私のターン、双翼乱舞を使用します。効果により2枚ドロー。そしてニジノコをLv.3で召喚。さらにヤマタノヒドラとフェンリルドガルムをLv.2にしてアタックステップ! まずはヤマタノヒドラでアタックしますよ!」

 

「……ランマーゴレムでブロック」

 

光の指示に対し、フィールドを揺らし、咆哮を轟かせ突き進むヤマタノヒドラ。その攻撃に対し、一瞬戸惑いながらも、ランマーゴレムにブロック指示。ヤマタノヒドラは向かってくるランマーゴレムを一飲み。

 

「ヤマタノヒドラの効果、聖ミカファール大聖堂を場に再配置。ここまでですね、自分のスピリット同士で潰し合った感想はどうですか?」

 

「……ッ!」

 

「まぁでも、余興はここまでで終わりにしましょうか、フェンリルドガルムでアタック!」

 

「ライフで受ける!」

 

フェンリルドガルムの牙がライフを噛み裂き、破壊する。

 

 

川村side。

[Life]2→1。

 

「聖者の木の実の効果でコアを一つ追加」

 

「今更コアブーストしても無駄です。これで終わりですよ! ニジノコでアタック!」

 

残るライフ目掛けて駆けるニジノコ。既に勝負は決した、そう確信する彼女であったが、まだ川村は諦めた表情を一切見せることなく、フラッシュタイミングと宣言。

 

「まだ終わらせない! フラッシュタイミングでマジック、アイスエイジシールド!」

 

「!」

 

「ニジノコを指定。そしてニジノコのアタックじゃライフは減らせないよ!!」

 

展開されるライフをまるで盾のように氷が覆い、ライフに突進するニジノコだが、氷の壁の前に弾かれ、ライフを削ることは叶わなかった。

 

「……往生際の悪い。でも次はないですよ? ターンエンド」

 

 

 

 

────第13ターン、川村side。

 

「スタートステップ。コアステップ、ドローステップ……!」

 

引いたカードに彼女は一瞬固まった。ハイドカードの一枚、海帝獣オルガウェーブを引いたことに。

 

[Reserve]15個→16個。

[Hand]1枚→2枚。

[Field]聖者の木の実Lv.1(0)、崩壊する戦線Lv.1(0)。

 

「……」

 

オルガウェーブのカードを見つめたまま動く気配がない。何を思っているのか、彼女の様子にモニターを見ている和人達も心配そうに見守る。

 

「いつまでじっとしてるんですか? もしかしてもう戦意喪失ですか?」

 

「……嫌、生憎私も誰かさんの諦めの悪さが映ったみたいでさ。まだまだ勝負は諦めてないよ!」

 

和人とのバトルを思い返しながら、オルガウェーブのカードを視界から外し、光に対し笑って見せる。

 

「?」

 

「マジック、ストロングドローを使用! 効果で3枚ドロー、そして2枚破棄する」

 

4枚の手札の内、彼女は迷うことなく選んだカードを前に突き出して見せ、そのカードに光やモニターを見ているダイキ達も動揺を隠せていなかった。

 

「私は、爆砕轟神掌ともう一枚、海帝獣オルガウェーブを破棄!」

 

「なっ! ハイドカードを捨てるなんて……! もはや勝負を諦めたんですか!」

 

強力なハイドカードを自ら捨てたことに動揺と怒りを隠せていない光だったが、それでも川村は何一つ後悔する様子はなく、笑いながら言葉を続けていく。

 

「これも誰かさんの言葉でさ、ハイドカードは私自身の力なんかじゃないって言われて、気づいたんだよ。紺のバトルは、アンタの目を覚ます為にも私自身の力で勝利しなきゃならない。だからこそ、ハイドカードなんかじゃなくて私自身の力で勝たなきゃいけない!」

 

「綺麗言を……!」

 

「綺麗言と決めつけないでよね! さっきも言ったよ、まだまだ勝負は諦めてないって!」

 

力強く言い放つと手札の一枚に手をかけてそして叫ぶ。

 

「輝く闘志を持つ王よ! 光の拳で全てを砕け!! 戦輝神ゼルドナーグをLv.3で召喚ッ!!」

 

地面に亀裂が走り、亀裂から差し込む光、そして地面を突き破り現れるゼルドナーグ。自身の力を見せつけるように拳を地面に叩き付け、衝撃にフィールド全体が揺れる。

 

「さらに最後の一枚! 海深く眠りし闇の剣! 激流と共に来いッ! 深淵の巨剣アビスアポカリプスをゼルドナーグに直接合体ッ!!」

 

背後で水流を巻き上げながら起こる竜巻。広々としたフィールドが一瞬に水に浸り、そのままアビスアポカリプスが降り落ち、それをゼルドナーグが片手で掴み取ると、ソードブレイヴであるアビスアポカリプスを掲げる。

 

「アビスアポカリプスの合体時、相手はフィールドと同じ色のマジックとバーストしか使えない」

 

「ッ!」

 

「アタックステップ、ソードブレイヴスピリットでアタック! アタック時効果発揮でデッキから5枚。さらにゼルドナーグ自身の【強化】で6枚破棄!!」

 

「忘れたんですか? 聖ミカファール大聖堂の効果で、お互いのデッキは破棄されない。例え【強化】を発揮していようとも、私のデッキを1枚でも破棄できませんよ!」

 

再度拳を地面に叩きつけて繰り出す青の衝撃波。だが聖ミカファール大聖堂が放つ黄色のオーラがバリアのように衝撃波を防ぎ、打ち消してしまうが、それを見た瞬間、光はある事を思い出し、思わずハッとさせられてしまう。

 

「気づいたね。ゼルドナーグの効果はデッキ破棄だけじゃない。このスピリットの効果発揮時、相手のデッキを一枚も破棄することができなかった時、このスピリットはターンに3回まで回復できる!」

 

「ぐっ、聖ミカファール大聖堂の効果を逆手に取るなんて……!!」

 

「ソードブレイヴスピリットはダブルシンボル、ライフを2つもらうよ!」

 

「まだです! フラッシュタイミングでリブートコードを使用します!」

 

「!」

 

本来ならアビスアポカリプスの効果で白のマジックであるリブートコードは使えない筈だが、Lv.3のニジノコは白のスピリットとして扱われる為、問題なくリブートコードは使用できる。

 

「不足コスト確保でニジノコから確保し、全てのスピリットを回復。アタックはニジノコでブロックします!」

 

阻もうと一直線にゼルドナーグに向かうニジノコだが、ゼルドナーグは軽くニジノコを蹴り、消滅させる。

 

「もう一度、ソードブレイヴスピリットでアタックッ! 効果により回復!」

 

「フェンリルドガルムでブロックします!」

 

フェンリルドガルムが雄叫びを上げると、空に雷雲が起ち込め、ソードブレイヴスピリットに対し一斉に落雷を落とす。だが、それをアビスアポカリプスの一振りで全ての落雷を打ち消す。落雷が通じないとみると、フェンリルドガルムは直接ソードブレイヴスピリットに襲い掛かり、迎え撃とうと振り下ろす剣の一撃を牙で食い止め、そのまま弾きアビスアポカリプスを落としてしまう。直ぐ足元にあるアビスアポカリプスだが、それを拾おうとする一瞬の間もなく、フェンリルドガルムは武器の失ったゼルドナーグに食らいつかんと牙を突き立てる。だが、片腕を盾代わりに牙を受け止め、痛みに怯みながらもゼルドナーグはそのままがら空きとなった腹部に渾身の拳を打ち込み、フェンリルドガルムを遥か上空に突き上げる。

 

「決めろッ! ソードブレイヴスピリット!」

 

足元のアビスアポカリプスを拾い、そのまま墜落するフェンリルドガルムを一閃。フェンリルドガルムを切り裂き、切り裂かれたフェンリルドガルムは爆発四散する。

 

「……私の、ハイドカードが……ッ!!」

 

フェンリルドガルムの末路に一瞬悔しそうな表情を浮かべるが、しばらくしてその表情はまるで安心したように、次第に柔らかな物に戻っていく。

 

「行くよ、ソードブレイヴスピリットでもう一度アタック!」

 

「……ここまでですね、ヤマタノヒドラ、あなたをブロッカーにはしません。あなたにも迷惑をかけてごめんなさい」

 

「!」

 

それだけ言うと光はヤマタノヒドラのカードに手を掛ける事無く、ソードブレイヴスピリットのアタックに対し、彼女は攻撃を受け入れ、ソードブレイヴの一撃が残りのライフ2つを破壊し、決着をつける。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

バトルが終わり、先のバトル同様、二人も相当疲労が溜まってる様子だが、それに構う事無く光の下へと駆け寄る川村や和人達。

 

「愛実ちゃん、皆さん、ごめんなさい。随分迷惑をかけてしまって」

 

「目が覚めたみたいだね」

 

「……はい。愛実ちゃんの言葉しっかりと届いてました。なのに未熟なばっかりに何も見えなくなってしまって」

 

「気にしないで、私も人の事言える立場じゃないし。元に戻ってくれて嬉しいよ」

 

「ありがとう、ございます」

 

ハイドカードの影響下から解放された様子の光に和人達も安心して見せるが、その様子を気に入らないのか……。

 

 

 

 

「何だってんだよ! 折角面白いもんが見れると思ってたのに、最後のハイドカードもこの様だ! テメェ等のごっこ遊びには心底呆れさせるぜ、あァ?」

 

「今回に限ってだが、俺も同意見だ。揃いも揃って甘く生温い」

 

今度は自分達が戦うとも言いたげに、出来を構えるダイキとアキラ。二人の態度に和人も怒りを隠せず、立ち上がってデッキを構え、今すぐにでもバトルを始めようとするが、二人の間にフードの男が立ち塞がる。

 

「「!!?」」

 

「スポンサー、テメェなんの真似だ!」

 

全員が戸惑いを隠せなかったものの、男の様子にダイキ達は苛立ったように声を荒げる。

 

「フフフッ、どうもしないよ。ただ余興が終わったということだ」

 

「何を言ってやがる? 最後のハイドカードが目覚めた今、もうテメェとの協力関係も終わりなんだよ」

 

「そうさ。今まで私に協力してくれてありがとう。ダイキ、アキラ、君達のお陰で私は目標を達成できた。そしてもう、君達は用済みだ」

 

「「「「!!」」」」

 

男の言葉の後、突如ダイキやアキラ、そして光、川村、リクト、咲、それぞれのデッキから一枚のカードが飛び出し、輝きながら飛び出したそのカードはハイドカードだった。

 

「なっ!?」

 

「俺達のカードが!」

 

「アハハハハ……ッ! 遂に揃ったのだ! 「死神デュアルベルガス」、「宝龍アブソドリューガ」、「獄炎龍バーニングドラゴン」、「海帝獣オルガウェーブ」、「剣双鬼刃我王牙」、「逆雷浪フェンリルドガルム」、6枚全てのハイドカードが!!」 

 

男の周りに集う全てのハイドカード、何が起ころうとしているのか全く状況掴めず、ただ混乱するばかりだった。

 

「一体何が!!」

 

「ハハハハハハッ!! ようやく私の世界へと帰れる!」

 

吹き荒れる強風に男のフードが捲れ、白髪と片目の傷跡が特徴的な素顔が露わとなる。

 

 

「ここまで私の計画に貢献してきてくれた君達へのささやかなお礼だ。全員招待するよ、エデンへとね」

 

「「「うわああああああああッ!!」」」

 

辺り一帯が見えなくなるほどの光がその場を包み、光が消える頃には全員の姿がその場にはなかった。

 

 

 

 

 




如何でしたでしょうか?第31話、最後の最後でかなりの急展開。今後どうなるのかこうご期待ください。期待に添えられるよう精進します!

そしてさっそく、今回登場したハイドカードの能力を紹介。効果は以下の通り。


・【逆雷狼(げきらいろう)フェンリルドガルム】/6(2)黄色、想獣・獣雷。
Lv.1(1)BP5000、Lv.2(2)BP6000。
Lv.1、Lv.2『このスピリットの召喚時』
自分、又は相手のトラッシュにあるマジックカード一枚を指定し、指定したマジックのメイン、又はフラッシュの効果をコストを支払わずに使用できる。この効果はターンに1回しか使えない。

Lv.1、Lv.2『このスピリットのアタック時』
このスピリットがBPを比べ、相手のスピリットだけを破壊した時、そのスピリット上のコアを持ち主のリザーブに戻し、その後そのスピリットをこのゲームの間、自分のスピリットとして使用する。この効果で使用しているスピリットが2体以上いる場合、このスピリットのアタック時効果は発揮されない。


以上な効果となってます。冥犬ケルルベロスというカードを見て、もし相手の場のカードをずっと自分のスピリットとして扱えたら面白いという考えから生まれたオリジナルスピリットとなってます。チートすぎないかなというのはどのハイドカードでも悩みの種です(;´・ω・)←


でも黄色でもこんなスピリットが登場したら黄色デッキ組んでみたいかなとは思います。現環境ではゼクスデッキや紫、赤を主流に使ってます。ゼクスならジエンドとゼクス、紫ならムドウ、赤ならレオンランサーとソウルドライブを楽しく使ってます(笑)次回もぜひ読んでくださるとうれしい限りです。
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