時計がまだ午前8;00を指すこの時間。前に遭ったオールフィールドのようにそこにはカードバトラーの行列が……。勿論彼等がそこにいるのには理由がある。その理由は今日がチャンピオンシップ、いや覇王(ヒーロー)チャンピオンシップが開幕する日でもあるからだ。そして今か今かと大会が始まるその瞬間を待つカードバトラー達。その中には、咲やリクト、川村の姿もある。だが、なぜかその中に和人の姿だけは見えず……。
「もう何やってんだろ?和人。あいつが遅れるなんて珍しいけど」
「まぁ大会が大会だからな。準備で手間取っていたなんて理由だろ?」
先に並んでいるリクトと咲は、そんな事を言いながら和人が来るのを待っている様子。
*
『うおおおおおーーーーっ!遅刻だ!遅刻!!!』
和人の方では、まだ会場に少し離れた場所で、全力疾走を続け、会場へと足を急がしていた。リクト達が言っていたように、彼が遅れた理由は大会用のデッキ作りに時間をかけすぎた事が原因だった。全力疾走を続ける和人。そしてその甲斐あってか、ようやく会場が見え始め、ラストスパートを掛け、何とか息を切らしながらも会場に辿り着く。
「ゼェ……ゼェ……よう、やく到着」
「遅いよ和人!」
「まぁ時間はギリギリだな」
和人が来たのを見ると、リクトと咲は和人に言う。
「悪い悪い、デッキ作りに夢中になってて」
その言葉を聞いた途端「やっぱり」と言った様子で、ため息をつく。
「?、どうしたんだ二人とも?」
「「何でも」」
*
”ジリリリリィッ!”
しばらくして、ベルが響き、それと同時にドアが開くと全員会場の中へ。そして全員前へと進んでいき、参加登録の手続きを済ましていく。
『はい!若槻和人さん、木野咲さん、来道リクトさん、参加承認いたしました』
三人も参加手続きを終え、会場へと進んでいく。
「感激だぜ!!初めてのチャンピオンシップ!!」
「そうか、お前らって確かコレで初めてか」
一度チャンピオンシップを経験済みのリクトはふと辺りを見回しながら二人に……。
「大会が開幕されるまでまだ時間がある。その間、他のカードバトラーとフリーバトルしたり、トレードしたりすんのもありだぜ?それに、物販コーナーもあるしな」
後ろにある物販コーナーを示しながらリクトは言い、それに和人は何かに気づいた様子で……。
「あぁーーーッ!俺そういや最新弾まだ購入してなかった!!!」
すると和人はすぐさま行動に移し、逸早く物販コーナーへと足を急がせる。
「まったくせっかちな奴」
「あの、リクト君。リクト君は最新弾購入したの?」
「ん?俺はいい、下手にカードを組み込んだりすれば大会用のデッキが崩れるしな、お前は購入しなくていいのか?」
「う~~ん、まぁ私も購入してくる。じゃぁね!」
それだけ言うと咲も和人の後を追って、一時リクトから離れる。
「さて、俺もそろそろ準備をしないとな」
それだけ言うと、リクトは自分のデッキを握りしめながらその場を立ち去っていく。
「う~~ん」
和人は最新弾覇王編第2弾を購入し、それによって手に入れたカードを見ながら考え込んでいた。
「極龍帝カタストロフドラゴン……こいつをどうするかだな」
Mレアカードであるカタストロフを手に入れ、デッキに入れるか否かを考え込む和人。
「どう?いいカード手に入った?」
「あっ!知恵さん!?何でここに?」
「まぁ色々ね。ここの物販コーナーを任されてるから」
「へぇ~、そうなんだ」
「それより、そっちは何か大会に使えそうなカード手に入ったの?」
「手に入ったカードはこんな感じです」
「カタストロフドラゴン。コストは重いけれど、超強力なカードね」
知恵はそれを見て、興味深そうに和人を見る。
「で?どうするの?それをデッキに入れる?」
「そうですね~~」
ふとデッキを取り出そうと、懐に手を入れるが、何か違和感を感じる。
「?、何だコレ?」
違和感を感じ、それを懐から取り出すと、それは第6弾のパックだった。
「お~い、和人~~!」
「おぉ!咲!!」
そんな時、咲も和人の元へ駆け寄ってくる。
「おはよう、咲ちゃん」
「あっ!店長、おはようございます!!どうしてここに?」
「まぁ色々ね。それより早速パックを買った様子ね」
「えぇ!それに最新弾のカードだけじゃなく、この大会のためのカードも手に入ってますから!」
「風の覇王ドルクス、緑使いの咲ちゃんには強力な一枚ね」
「はい!和人もパック買ったんでしょ?何かいいの手に入った?」
ふと和人の方を覗きこみ、和人が持っている第6弾のカードが視界に入る。
「あれ?最新弾買わなかったの?」
「いや、買ったよ!こっちが最新弾で当たったカード。でもさ、前に第6弾買った時、開封せずに仕舞ってただろ?それを今日の今日まで忘れてたんだ」
「!、もう~、ちゃんと開封しなきゃだめでしょ。パックに入ってるカードが泣くよ?」
「ついうっかりしてて。でも早速開封するぜ!」
そんな事を言いながら早速そのパックを開封し、中にある8枚のカードを見る。
「!、これって!?」
その中の一枚はXレアである激神皇カタストロフドラゴンのカードが……!
「うぉぉッ!Xレア来たぁーーーーッ!!」
「!、それってBP2万の最強クラススピリットじゃない!」
「カタストロフはこれで二枚目だな」
「?、どういう事?」
「ほら、最新弾でも当たってんだろ?カタストロフ」
「!、新旧のカタストロフが揃ったって事!?」
「まぁな、こいつには運命を感じるぜ」
「で?どっちのカタストロフを入れるの?」
「問題はそれなんだよな~~」
二体のカタストロフを見比べながら考え込む和人。
「はい!二人とも、そろそろ大会も開始するし、出場者はあちらにね」
「はい!」
「う~~ん、決めた!俺デッキにはコイツを入れる!そうときまったら早速行くぜ、咲!」
「あっ!うん!!」
和人はデッキに一体のカタストロフを入れ、咲の手を掴み、急いで試合場へと急ぐ。
『みんな!ようこそ覇王|(ヒーロー)チャンピオンシップへ!セクシー?』
「「ノー!ギャラクシー!!」」
大会司会者であるお馴染ギャラクシー、彼の合言葉に全員大きな声で答える。
「えぇ~今日は何千者参加者がこの大会に参加してくれている。強者揃いのカードバトラーの中から誰が覇王(ヒーロー)となるのか!楽しみで溜まらない!本大会で勝ち残った三名が世界大会へと進む事が出来る!みんな頑張ってくれよ!」
「覇王となるのは俺だぜーーーーッ!」
「興奮しすぎ!」
和人の様子を見て少し呆れた様子の咲。
『さて本大会のルールを説明しよう。今大会は特別ルールでのガンスリガー!8連勝するまで戦い続け、一度でも負けたらそこで敗退。ルールはそれだけ。みんな詳しく分かったかな?』
「「おぉーーーッ!」」
『それでは早速!ゲートオープン!解放!!』
*
「サイゴードゴレム、オリハルコンゴレムをLv.2に、リブラゴレムをLv.3に」
「!!」
「アタックステップ、三体でフルアタック【大粉砕】、【粉砕】でデッキアウトだね」
「参りました」
一番先に8勝目を決めたのは川村劉。彼は今回サイゴードゴレムを手に入れ、よりデッキ破壊が協力となり、戦った対戦相手は全員デッキアウトで負かされていた。
「(奴も予選突破。俺も勝ち抜けないとな)氷の覇王ミブロックバラガンでアタック!フラッシュタイミングでホワイトポーション、回復させて再度アタックだ」
「ライフで!」
一度目、二度目の攻撃でライフが0となり、リクトも8勝目を終えて予選突破。
「風の覇王ドルクスウシワカでアタック!」
「ライフ!」
咲の方でも、ライフが0となり8勝目を決め、喜びに浸る。
「やっぱ最高!風の覇王!!本戦でも勝ち抜くよーーー!」
川村、リクト、咲が勝ち抜いてる中、和人の方では……。
「ディラノスでアタック!これでようやく7勝目」
まだ7勝目を終えたばかりで、今ようやく8戦目を迎える。
「よろしく!」
「ふん、この試合さっさとリタイアでもしたら?負けるのが落ちだよ?」
「?」
「俺のデッキにかかればあっという間に終わりさ」
「!、随分自信があるようだけど、勝つのは俺だ!」
お互い専用のテーブルにデッキを置き、試合を始めていく。
「行くぜ俺のターン!ディメトロドロンを転召でエクスキャリバスを召喚!」
*
第10ターン。和人の場にはアポロディノスLv.2、ディメトロドロンLv.1、ネクサス、焔龍の城塞都市、太陽石の神殿が一枚でライフは残り3。そして相手の場にはカキューソーLv.2が二体とキングゴラドンLv.3が一体で、ライフは4。そして今は和人のターンでディメトロドロンをトラッシュに移動させて、エクスキャリバスを召喚する。
「召喚時効果でカキューソーを破壊!そしてバーストをセットして、アタックステップ!アポロディノスでアタック!」
「ライフで受けてバーストを発動!」
ライフを一個リザーブに置き、その後裏向きにセットしていたバーストカードをオープンする。
「!?」
「ジークヤマトフリードのバースト効果でエクスキャリバスを破壊!!」
「ぐぅっ!俺の相棒が……!」
エクスキャリバスをトラッシュに置き、そしてその代わりに相手の場にジークヤマトフリードが出現する。
「へっへ、俺のジークヤマトフリード。こいつが場に居れば俺は無敵。さっさと終わらせてやるぜ!」
「……こいつが場に居れば無敵。まるでジークヤマトフリードに頼り切ってるような言い方だな」
「だってそうだろ?今場に居るカキューソ達なんかおまけにすぎない。ジークヤマトフリードさえいれば、バトルに勝てる」
「……ジークヤマトフリードに頼り切ったプレイング。悲しいな、お前」
「!、何だと!?お前だって一緒だろ?」
「エクスキャリバスも確かに大切だけど、他のカードだって俺には大切!デッキに入ってるディラノスや、ジークフリード、他のカードだってみんな俺の仲間だ!」
「けっ!エクスキャリバス破壊された奴が威張るな!」
「絶対この戦いでお前を負かしてやる!俺はターンエンド」
「ふん!やれるならやってみやがれ!このターンで終わらせてやるよ!メインステップ!キングゴラドンをLv.1に、そしてゴラドンを召喚してジークヤマトフリードをLv.2に!アタックステップ!」
「来るか!」
「……(このターン、バーストカードはないし、無理に指定アタックせず一気にライフをたたくか)ジークヤマトフリードでアタック!フラッシュタイミングでストームアタックを使用!アポロディノスを疲労させて、ジークヤマトフリードを回復!」
「くそっ!」
「メインのアタックだ!」
「ライフで受ける。でもライフ減少時でバースト発動!」
「!?」
「覇王爆炎撃!BP4000以下のスピリットを3体破壊!よってキングゴラドン、カキューソー、ゴラドンの三体を破壊!」
三枚のスピリットをトラッシュに送り、相手の場にはジークヤマトフリードだけが……。
「くそっ、でもまぁジークさえ残ってれば勝ちは見えてる。ターンエンド」
「俺のターン。コアステップ!ドローステップ!」
コアステップ後、和人はデッキから一枚めくり、そのカードを見る。
「……お前に会いたかったぜ」
それだけ言うと和人はリフレッシュステップを行ってアポロディノスを回復
させ、メインステップへ。
「行くぜ!アポロディノスの効果で虚神の系統を持つスピリットをコスト6に!そしてコスト2を支払って激神皇カタストロフドラゴンを召喚!」
「!」
「召喚時効果で1ドロー」
残り手札二枚のカードを見て和人は笑みを浮かべる。
「アポロディノスとカタストロフをレベル2にして、マジック!ドラゴンズラッシュを使用。これによりこのターンの間、古龍を持つスピリットがバトルに勝利すれば回復する!そしてアタックステップ!アポロディノスでアタック!」
「ライフ!」
アタックによってライフをリザーブに移し、残りライフ2。
「行くぜ!激神皇カタストロフドラゴンでアタック!【激突】発動!」
「ふん、相討ち狙いかよ?」
「いいや、フラッシュタイミングでスピリットリンク!さらにフラッシュタイミングでグレートリンクを使用!」
「!」
和人が使った二枚のマジック。まずスピリットリンクの効果はスピリット一体に【覚醒】を与え、続くマジック、グレートリンクの効果でトラッシュのコア全て、つまりトラッシュにあるカタストロフの召喚で使った2コアと、このマジック二枚で使った3コアをカタストロフの上に置き、自動的にLv.3にアップ。
「これでカタストロフはBP20000!」
「!?」
ジークヤマトフリードが破壊され、アポロディノスのLv.2、3の効果が発動。これにより自分のアタックステップで自分の【激突】を持つスピリットのバトル勝利時、このスピリットは回復。
「回復!?って事は!?」
「そっちの残りライフは2。だからマジックで回復したカタストロフとのフルアタックで勝利だ」
「……俺の負けです」
*
「うっしゃぁ!8勝目決めたぜーーーッ!」
「そんな~~、俺が負けるなんて」
『当然の結果ですね』
「「!?」」
突然の声、ふと振り向いた先には清楚でお淑やかのお嬢様のような女の子がそこに居た。
「え~と、あんたは?」
「初めまして。若槻和人さん、でしたよね?私、相崎光と申します。以後お見知りおきを」
「ど、どうも」
「用があるのは実はその男でして」
「?」
和人は対戦相手の男性を見て、不思議に思う。
「俺に、何か?」
「あなたにお渡ししましたジークヤマトフリード。返却させてもらいます」
「そ、そんな!?俺にくれたんじゃ?」
「私は一言もあなたに差し上げると言っていません。それに間違っても、他のスピリットを大切にせず、ジークヤマトフリードだけに頼り切った三流カードバトラーには差し上げません」
「!」
それだけ言うと光と言う女性は男のデッキからジークヤマトフリードを没収する。
「あの~」
「お恥ずかしいところを見せてしまいましたね。実はこれから対戦相手となるかもしれないあなたの実力をどうしても見てみたくて」
「はぁ……」
「それでこの男にジークヤマトフリードをお貸ししたんですが、どうやら渡す相手を間違えてしまったみたいで」
「……」
「でもあなたはあの男とは違う。さっきのあなたの様子を見ててそう実感させてもらいました」
「あなたも大会出場者なんですか?」
「えぇ、私も8勝して。本戦で戦う時はぜひよろしくお願いしますね」
「は、はい!」
「あなたのエクスキャリバス。それに今回あなたのデッキに加わったカタストロフ、ぜひバトルフィールドで出会いたいです」
「ま、まぁともかくお互い勝ち抜きましょう!」
「えぇ、あなたと戦うの楽しみになってまいりました。それでは」
光はその場から立ち去り、別の場所へ移動していく。
「和人~~!」
「おぉ!咲!」
光と別れた直後、入れ違いに咲が和人の元へ。
「ようやく8勝目決めたみたいだね」
「お前等と比べたら遅くなったけどな」
「はは、それよりさっきの試合見てたよ?結局、激神皇をデッキに入れたんだね」
「あぁ、エクスキャリバスと同じくやっぱこいつにビビッって感じてさ!」
デッキの内の一枚、カタストロフを取り出し、そのカードを眺める。
「今度は広々とした場所で、バトルフィールドでお前に会いたいぜ!」
カタストロフに向けて言った後、またデッキに仕舞う。
「予選を勝ち抜けたメンバーも決まったらしいし、本戦からいよいよバトルフィールドでのバトルだね」
「あぁ!本戦も勝ち抜けて!世界大会へ向かっていくぜーーーッ!!」
そう決意しながら意気込みを叫ぶ和人だった。
*
「どうだった?ダイキ、ガンスリンガーの様子は?」
「ふん、結果は雑魚ばかり。見ろよ、現にこいつだって不服な様子だ?」
ダイキと呼ばれた男は懐から、フードで身を包んだ男にカード名、コスト、そしてLv.1以外何の記述も書かれていないあるカードを取り出す。
「次からは本戦だ。精々そいつを目覚めさせるカードバトラーと出会う事だ」
「アンタの方も、この紫だけじゃなく、あと5人のカードバトラーに特別なカードを渡さなきゃならないんだろ?」
「既に次の目星は付いている」
すると男はダイキが持っているカードと同じ、記述のない白のカードを取り出す。
「見ていろ。これからだ」
それだけ言うと男たちはその場から立ち去って行った。