今回は巧が死んだ日の回想です。
木場・三原・海堂と協力してアークオルフェノクを倒してから半年が過ぎた、7月のある日。
巧はまるで近所のコンビニに行ってくるかのように、夕飯前にフラッと外出した。
真理と啓太郎は特に気にする様子もなく、先に夕飯を済ませて自分の時間を過ごしていた。
しかし深夜になり、流石に心配した2人は、巧の捜索を始めた。
まったくあの男は、こんな時間まで何処をほっつき歩いているんだ。まさに反抗期の子を持った親の気分である。
まぁアイツなら、万一のことがあっても大丈夫だろうけど。だって、アイツは・・・。
しばらく近所を探してから公園にたどり着いたとき、人影一つ見当たらないこの場所を啓太郎はすぐに立ち去ろうとしたが、真理は見逃さなかった。
ベンチの上の大量の灰と、それにまみれた巧の衣服を。
2人には、この灰が巧であるとすぐにわかった。
オルフェノクは灰と化して死ぬ。巧の戦いを何度も見てきた2人にとっては常識だった。
そして、出会ってしばらくは知らなかったが、今でこそ気にはしていないつもりだったが、巧はオルフェノクだったのだ。
真理は涙が止まらなかった。
あんなに嫌いだったのに、大嫌いだったのに・・・。口が悪くて、性格も悪くて、不器用で、無愛想で、意地っ張りで、猫舌で・・・猫舌で・・・。
巧の嫌いなところを次々と思い浮かべるが、本当は真理も気づいていた。
自分が巧のことを、大好きになっていたことに。
第一印象は最低最悪そのもので、何度も喧嘩をしたが、それでも巧は強くて意外と優しくて、いつも自分を守ってくれた。
嫌いなところに比べたら、好きなところなんてほとんど浮かんでこない。しかしそれでも、真理は巧のことが大好きになっていた。
隣をチラッと見ると、啓太郎も号泣していた。涙と鼻水で顔はグチャグチャになり、正直、かなりカッコ悪い。
「たっくん・・・。たっくぅん・・・!」
巧のことを親しみをこめて「たっくん」と呼んでいた啓太郎も自分と同じ気持ちなのだと、真理は察した。
その後、2人は家から空き瓶を持ってくると、中に巧の体を構成していた灰を詰め、衣服とともに持ち帰った。
「まったく、こんなに汚しちゃって・・・」
啓太郎は悲しそうな、それでも何処か嬉しそうな表情で、巧が最後に着た衣服を、深夜であるにも関わらず洗濯し始めた。
「なんで、なんで勝手に行っちゃうんだよ・・・」
せっかく綺麗になった洗濯物をまた汚してはいけないからと、涙と鼻水を止め、仕事モードの男の顔になっていた啓太郎は、衣服に向かって言った。まるでそれを、巧だと思っているかのように。
巧はきっと自らの死を悟り、真理と啓太郎に迷惑をかけぬよう、一人での最期を選んだのだろう。少年時代からずっと一匹狼タイプだった、巧らしい決断だった。
しかし、啓太郎は悔しかった。
だって、お別れも言えないなんて、寂しすぎるじゃないか。
だって、人間の未来を守って自分を犠牲にして、更にお礼も言わせないなんて、そんなの、カッコよすぎるじゃないか。
ズルいよ、たっくん。
我慢していたけれど、巧のシャツに、一粒だけ涙がこぼれた。
2年前、巧の死を知った真理と啓太郎の話でした。
きっと巧なら、こんな死に方をするんじゃないかなって。
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