ストライク・ザ・ブラッド ~焔の意志を継ぐ者~ 作:クッキー
紗矢華もこれから出てくる予定です
姫柊雪菜は憂鬱であった
いつもの凛とした眼に力強さが感じられず、やたらとため息ばかりしていた
帰り道にそんな彼女を心配に思った古城が問いかけた
「どうかしたのか、姫柊?」
「あ、いえ、別に…」
「いや、大丈夫ならため息吐いたりしないだろ。悩み事があるなら聞くぞ」
「えっと…実は…」
「実は?」
「兄が絃神島に来るって報告があって…」
「え!? 姫柊って兄貴がいたのか?」
「ええ、正確には獅子王機関にいた頃に兄として慕っていた人ですけど」
「へぇ、そりゃ会うの楽しみだな。久しぶりに家族に会えるんだろ?」
「いえ、ちょっとその人…性格に難があるといいますか…」
「悪い奴なのか?」
「べ、別に悪い人じゃないんですよっ?!」
「じゃあいいじゃねぇか」
「だから…もういいです…」
人の言いたい事を理解してくれない古城に腹をたてたのか、雪菜はそっぽを向いてしまった
「おい、どうしたんだ?本当に」
「…た~んっ」
ふと古城の耳に男性の声が入ってきた
人間の数倍の聴覚を持つ吸血鬼にはよくあることだが、不思議に思えたのがその声が男のものであるはずなのにやたらと甘ったるく、からみつくような声だったからだ
(なんだ?この声…って誰かこっちに向かってきてないか?)
古城の目にこっちにもの凄いスピードで向かってくる男が見えた
「…きた~んっ♪」
「この声っ!?」
「姫柊、なんか人がこっちに向かってるんだが…」
姫柊雪菜は旋律する。とうとう『彼』が来てしまったのだと…
貴方「ゆきた~んっ♪久しぶり~♪」ダキッ
『彼』というのは間違いなく姫柊雪菜の兄、姫柊
焔は物凄いスピードで雪菜に近づき、そのまま正面から抱きついた
「ちょっ!?お兄ちゃんっ!?いきなり抱きつかないでよ!!」
(お兄ちゃん!?)
普段の雪菜からは予想もできない呼び方に古城は戸惑う
「ゆきた~んっ!!元気だったかい?一緒にハグハグしよう!!愛を確かめ合おう!!そしてそのままベッドインしよう!!」スリスリッ
雪菜に抱きつき、頬ずりしながらとんでもない事を口走る男
繰り返す、この男は姫柊雪菜の『兄』である
「い…いい加減にしてくださいっ!!」
CLASHッ!!
漫画の効果音みたいな一撃が炸裂し、焔が殴り飛ばされる
そのまま数メートル先に墜落した焔は何事もなかったかように立ち上がった
「アイタタッ…どうしたの?ゆきたん?反抗期かい?」
「ゆきたんって言わないでください!!大体、私は今任務中ですよ!!」
「はっはっはっ、例え任務中でもゆきたんはゆきたんだ。オレの世界一可愛い妹には変わりはない」ドヤァ
「お、おい、姫柊…コイツって…」
今までポカーンとしていた古城がようやく言葉を口にする
「だから会いたくなかったんです…この人、こういう人だから…↓↓」
「姫柊雪菜の兄、姫柊焔です。ゆきたんに手出したら殺すからそのつもりで♪」キランッ☆
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「…でコイツはどこの馬の骨だい?」ニコニコ
焔が雪菜の隣に座る古城を指差して言う
場所は変わって近くの公園、なぜなら『このまま立ち話もなんですし、飲み物でも買ってどこかで落ち着きましょう』と雪菜が提案したからだ
「あ、ども。えっと第四真祖の暁古j――」
「あー、第四真祖ね。あのゆきたんが監視の任務任されてるっていう」
「知ってたのかよ!?」
「いや、まあ、状況見ればなんとなくわかるでしょ」
(どうやら、コイツ性格はアレだけど、話は通じるヤツらしいな…)
「コホン、焔さん。彼は第四真祖の暁古城先輩です」
「ゆきたん、焔さんなんて酷いなぁ。いつものように『お兄ちゃん』って呼んでもいいんだよ?なんなら『おにいたん』でも可」
「いつの話をしてるんですか?!大体、私は『おにいたん』なんて呼んだ覚えはありませんっ!!」
「でも呼びたいでしょ?」
「いえ、まったく、これっぽっちも」ジト目
「あっ…ダメ…その眼…なんか興奮しちゃうから…///」
「というわけで先輩、わかりましたか?私がなぜ憂鬱だったか」
「あ、ああ。まあなんとなくな(こりゃ、アレだわ。姫柊も困るわ…)」
「というか焔さん、なんでこんなトコに来たんですか?最後に聞いた話だと、任務で北海道に行ってたんじゃないですか?」
「ああ、それ速攻終わらせてきた。だって愛しのゆきたんが危険極まりない魔族特区に行ったっていうんだもの」
「あのですね…私はここに遊びに来てるわけじゃないんですよ」
「わかってる、わかってる。ってかオレもゆきたんと同じ任務だし」
「へ?」
「まあ三聖のババア共に無理言って同じ任務にしてもらったんだわ。それにそこの第四真祖が眷獣に目覚めたって聞いたし、抑止力は多い方がいいだろ?このバカ真祖、力使い切れてないみたいだし」
「そ、それはそうですけど…」
「悪かったな、力使いきれてなくて…」ケッ
「ちなみにそこのバカ真祖、言っておくがウチのゆきたんに手出したら消し炭にするからな」
そういって焔は手に持っていたコーヒー缶を一瞬で跡形もなく焼き尽くした
「わ、わかってるよ」
というもののおそらく雪菜の血を吸った事がバレたら古城は殺されるであろう
大切な妹を血の従者にしかけたという理由ならこのシスコンバカ兄(古城主観)がキレるには十分な理由だと古城はこの数十分で理解していたのだ
「あー、にしても熱ぃなぁ…本土の方がまだ涼しいぞ。というわけでゆきたん、水着になろうかb」
「なんで私が天下の往来で水着を着なくちゃいけないんですかっ!!」
「オレが見たいからに決まってるだろ!!」
「さも当然のように言わないでくださいっ!!」
「はぁ…ま、今日はとりあえず挨拶に来ただけだから、帰るわ」
「そうですか、じゃあ先輩。私たちも帰りましょう」
「お、おう。わかった」
そして古城の自宅のマンションに向かって歩くこと数分
「どうして、私たちについてくるんですか?焔さん」ピキピキ
雪菜が若干キレ気味に焔に尋ねた
「え?だってオレの家、ゆきたんの家だし」
「んなっ!?」「なんでですか?!」
ほぼ同時に驚く二人、しかし焔は気にする様子もなく話を続けた
「いやぁ、獅子王機関も資金不足らしくてね。マンション二つも借りられねぇんだってさ」ニヤニヤ
嘘だ、この笑顔は絶対嘘ついてる笑顔だ
ということを二人はほぼ同時に理解していた
だって愛しの妹と二人暮らしがうれしくてニヤニヤしてるのが見え見えだからだ
「まあ、資金不足じゃ仕方ないよな。だからオレも『ゆきたんは年頃だろ!!』って言って反対したんだけど、三聖のババア共が納得しなくてさぁ」ニヤニヤ
「はぁ…」
「だ、大丈夫か、姫柊」
「大丈夫です。ちょっと立ちくらみがしただけです…」
「というわけでゆきたん、一緒にハチミツよりも甘ぁ~い生活を送ろうか♪」
この日から焔が雪菜宅に居候(同居)するわけになったのだが、初日に雪菜にスキンシップを求めすぎて家から叩き出されたのは言うまでもない
更新不定期なんで、その辺はご了承ください