銀牙伝説WEED~白き牙と黒き野望~   作:卯月静蓮

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怨讐

 今、克義達は困惑していた。目前の大きな群れが克義達に近寄りつつあるからである。

 見たことも無いくらいの、克義の群れをはるかに凌ぐ数の群れである。

 

「そこの一番前に居るお前……お前は繁義の弟、克義で間違えないな。」

 

 おそらくボスらしき犬が克義の前に歩み寄り、問いかけた。

 実兄の名を知る彼に克義は驚愕した。

 

克義「ああそうだ……でも何故お前、俺の兄の名前を……」

 

 その言葉を聞くと、黒いボス格の犬は口元を歪ませた。 

 

「……忘れたとは言わせないぜ、久しぶりだなぁ克義さんよ。」

 

 克義とボス格の犬の視線がぶつかり合う。

 強烈なぶつかりはお互いの闘争心を燃やした。

 

克義「誰だ、誰なんだお前は……!」

 

慶「まだ思い出せないかい……3年前にお前が殺し損ねた(けい)だよ。克義叔父さん。」

 

 瞬間、克義が衝撃を受けたように表情を一変させた。

 

克義「お前、まさか。生きてたのか……」

 

 更に驚きを隠せない克義は一瞬よろめきかけた。

 そんな様子を見て慶は嘲笑し言い放つ。

 

慶「ああそうだよ……俺は地獄から戻ってきたのさ。」

 

 慶と呼ぶ男は再び克義を凝視した。

 そして周囲を見渡し、克義の仔である4兄妹を見て一度深呼吸をした。

 目が赤く燃え上がる瞬間を、目前に居る克義の仲間達、4兄妹は見逃さなかった。

 

慶「俺はお前達を復讐しに戻ってきた……!俺の両親は、仲間はお前達に殺されたからな!」

 

 地域一帯に響き渡るほど、慶は強く吠え怒鳴った。

 それを合図に慶の群れはぐるりと円を描くように克義の群れを取り囲んだ。

 

 慶、生後3歳3ヶ月。彼は数奇な、悲惨な過去を背負い生きてきた一匹であった、

 

 かつて4年前までは克義の兄、繁義が老いた父に代わり群れをおさめるリーダーだった。

 実力者であり誰からも親しまれる存在だったが、ある日繁義は群れから追放させた。

 その理由は繁義が山賊の群れに密通していると判明したからであった、

 ゆくゆくは山賊の首領となりこの群れを吸収するのではないかという危惧があり

 噂が広まると繁義は一匹群れから出ていかざるを得なくなった。

 しかし、これは克義の陰謀であった。

 克義は常日頃により父や仲間に愛され続ける兄の繁義を羨み続けていた。

 繁義が山賊達と出会い親しくしている様子を偶然見かけた克義は兄を陥れる機会とみて

 兄の心情を知らず、父に密告したのであった。

 それから兄に変わり群れを統治した克義ではあったものの、未だに繁義を陰で慕う者を

 知り、自信の群れの指揮に揺らぎが生じると感じると彼は即座に兄の抹殺を目論(もくろ)んだ。

 名目上は山賊の一掃として克義は数匹の精鋭と共に彼はその時既に結婚していた実兄でさえも

 その兄の嫁も殺害したのであった。

 その時、兄の仔も容赦なく殺していったが、たった一匹だけ片目を奪われただけで致命傷には

 至らず、逃亡した山賊達に咥えられ繁義の仔として唯一生き残った。

 慶、生後三ヶ月の齢であった、

 

 それから三年後、成長し山賊の首領となった彼は敵の克義が仔を儲け、自身と同じ年頃に

 なったと知り、今日決起したのであった。

 

 

 

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