銀牙伝説WEED~白き牙と黒き野望~   作:卯月静蓮

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連れ去られて

 群れから追い出されて一週間、白菊達は群れの外で初めて寒い生活を過ごしていた。

 幸運にも狩猟の仕方を教わっていた白菊と信義は、ニ匹互いに力を合わせ、少ない食糧ながらも

 餌のとれない母の為に、そして自分達の為に奮闘していた。

 群れの外に出ていても、苦難の道であろうと、彼らは逞しく成長していったのである。

 例え今、どんなに苦しくても道があると、幼いニ匹は共に思い続けていた。

 

 そしてまた一週間後のことだった。

 

信義「白菊、おいで。初めて嗅ぐ匂いだ。」

 

 その日もまたニ匹は狩りに赴いていた。だんだんと行動の範囲を広げていく彼らはその日

 嗅いだことのない匂いに興味津々であった。

 

白菊「本当だ、兄さん。なんの匂いかな。」

 

信義「まだ新しい匂いだぞ。行ってみようよ、大きいご飯かもしれない。」

 

 何の疑いもなく、躊躇わず彼らはそのまま匂いを辿り走った。

 彼らは獲物の相手でまだ危険な相手を知らずにいた。好奇心が心を駆り立てていった。

 母の菊も、危険な場所ではないと思っていた。だから今までに知らない相手にはついていくなとは

 言い聞かせることはしなかった、それが仇となるとは誰が思っただろうか。

 

 

信義「居た……!お、おおきいなぁ……白菊。」

 

 自分の数倍もある生き物に、ニ匹は目を丸くして見詰めた。

 その生き物も彼らの存在に気が付いて振り向き、座りニ匹を手招いた。

 

白菊「う、うん。兄さん……なんだろう。」

 

 その生き物は人間である。聞いたことも見たことも無い、初めての人間であった。

 

信義「僕たちを見ても驚かない。何もしない……なんだか、来てって言ってるみたいだ。」

 

 一歩ずつ信義が近寄る。遅れはとるまいと白菊もつられて兄を追った。

 人間の両手がニ匹を包み、つかんだ瞬間だった。

 

白菊「な、な、なに!?」

 

 突然ニ匹は麻袋に入れられたのだ。この人間は不幸なことに手当たり次第野犬の仔を連れ去り

 血統を偽って売り捌く詐欺ブリーダーであった。  

 急な出来事にもちろんニ匹は途惑いを隠せず、ただぎゃんぎゃんと泣き喚くのみ。

 それでも人間は容赦なく、親を求めて泣く仔犬をそのまま連れ去っていった。

 

信義「白菊、大丈夫か!無事かーっ!」

 

白菊「兄さん、私は大丈夫……ど、どこ……ここ。」

 

 ニ匹が閉じ込められてしばらく経つと、突然ニ匹は人間につかまれ放り投げられた。

 ようやく解放されて喜びニ匹は逃げようとしたものの、そこは四方壁に遮られていた。

 連れ去った子犬を収容する小屋であった。粗末な小屋ながらも壁は固く、唯一の出入り口も

 鍵がかけられ、外は見えるものの鉄格子が邪魔をして出れない。

 詐欺ブリーダーの杜撰な管理は小屋の中を悪臭と、先に閉じ込められた犬達の憎悪に満ちた

 唸り声で満ち溢れていた。

 白菊達はここで異様な気配を感じ取った。しかしその気配は人間よりも巨大であり、凶悪だった。

 

黒斑「ようお前ら……新入りか。不幸なことだなァ。」

 

 まだ見た目は幼くも、鋭い眼光を放つ立耳の黒斑がニ匹の目前に現れた。

 気づくと黒斑の背後には6匹の痩せ細った幼犬が縮こまっている。

 瞬時にニ匹はこの黒斑の犬が、安心できない相手だと悟った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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