銀牙伝説WEED~白き牙と黒き野望~   作:卯月静蓮

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絶望か希望

信義「あなたは……そして此処は?」

 

 信義が恐る恐る黒斑に尋ねる。途端、黒斑は大声で笑い突然壁を蹴り飛ばした。

 

黒斑「俺は黒斑って呼ばれている。ここを仕切ってるのさ……ここはな。人間ってやつが

   俺達を連れ去ってろくに食わせねぇで生かしてる。時折俺達を連れ去った人間じゃねぇ奴が

   ここにいる奴を連れ去っていくが。どこに行ったのかはしらねェ。」

 

信義「でれないのか……」

 

黒斑「できたら苦労しねぇよ。外に出れるのは人間に呼ばれた時だけさ……」

 

 落胆しうなだれる信義を尻目にして、黒斑が再び笑った。

 

黒斑「まぁ。死にたくなかったら人間に襲いかからねぇ方がいい。その日は飯がこねぇ。

    あと、俺の言うことは絶対な。お前らが反抗しなかったら平和なんだからヨ。」

 

 不安な表情を浮かべお互いに顔を見合わせるニ匹。何とも言えず、黒斑の言うことに

 従うことしかできなかった。

 

信義「ろくに飯を食わせないでで生かしておいて、か。皆をどこへ連れていく気なんだろうな。」

 

 信義が小声で呟いた言葉は、誰にも届かず黒斑の笑い声にかき消されていった。

 

 

 朝に人間が一日一回の食糧を与えに小屋に入るものの、すぐに鍵をかけられて外に出ることは

 できなかった。そして少量の食糧は身体の大きいものから食べるために信義と白菊が食べる分は

 ほんのわずかしかなかった。

 日増しに衰え痩せ細るニ匹。理不尽でも黒斑の言うことには反抗できず、ニ匹は耐える日々が

 続いた。

 

 精神力と生命力はニ匹の仲で燃え上がらせ、見事に一週間僅かな水と食料で生き続けた。

 とある日の夜のことだった。寝ている最中に、ニ匹は些細な物音に気付いた。外からである。

 ふと懐かしい香りに空腹も忘れて、出入り口に駆け寄る。月明かりに照らされて、見えた。

 

信義「母さん!」

 

 菊である。ニ匹は皆を起こさないように小声で母に話しかけた。

 菊は柵の隙間からニ匹を代わる代わる舐め、再会に涙する。

 

菊「あぁーっ……ニ匹とも、よく無事だったねぇ……こんなに痩せ細ってしまって……」

 

 声を震わせる母を見て、ニ匹は緊張し続けていた心をほどき、耐えていた涙を流した。 

 

白菊「母さん、あまり大きな声で言えないんだけど。あまり食べられないんだ……出れないし。」

 

菊「そうか……おいで。」

 

 柵の隙間から乳を差し出し、ニ匹に授乳させ続けた。人間のいない僅かな時間でもニ匹に

 とっては貴重なご飯だった。

 

白菊「母さん、母さんも痩せてるけれど……食べてる?」

 

菊「ええ、食べてるわよ……大丈夫。これでも獲物くらいはとれるわ。」

 

 数日が経ち、菊の容貌も痩せ細っているように感じた。行き来する彼女の足取りも次第に

 よろめいていたようである。

 

菊「信義、白菊……心配してくれてありがとうね。また会いましょう。」

 

 この日も菊は人間の目を通り抜けてやってきた。周囲を再び確認し、慎重に走る菊。

 白菊達は母が帰ったことで再び休息に入った。また母が来てくれる。僅かな喜びを待って。

 

 

 

 

 

 

 

 

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