ドラゴンボールIF   作:通りすがりの筋肉

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バーダック達が敗れ、第一次ベジータ紛争は、集結した

バーダックは囚われ、トーマ達も、処刑の時を待つ事しか出来なかった

その頃、ラディッツは?


親子の絆

 

 

 

 

バーダックが、戦いに敗れたその日、革命軍の半数は死に、残り半数は、捕らえられた

バーダックは、公開処刑までの間、ずっとジャコ星人の糸に、縛られていた

 

 

『くっ・・・・』

 

 

 

この糸は、相手の気を吸収し、強度を増す

バーダックは、気のほとんどを吸収され、意識を保つだけで精一杯だった

腕力で引きちぎる事はおろか、気で吹き飛ばす事も、変身する事も出来なかった

 

 

『な、情けねぇ・・・・』

 

 

 

バーダックは、己の不甲斐なさに、身を震わせた

己の浅はかさのせいで仲間は死に、生き残った仲間も、明日処刑される

今の自分の強さに、絶対的な自信があった

それが、このザマだ

悔やんでも悔やみきれなかった

 

 

『すまねぇ・・・・』

 

 

今できたのは、ここにいない仲間に、懺悔する事だけだった

 

 

 

 

『バーダック・・・・』

 

『・・・・』

 

 

その頃ギネは、バーダック処刑の報を聞き、心を痛め倒れた

ラディッツは、そんな母の世話をしていた

 

 

『どうすんだよ、親父・・・・

サイヤ人を変えるんじゃなかったのか?』

 

 

ラディッツも、あの偉大な父が処刑されるなど、信じられなかった

そして、父と共に戦い、父と共にサイヤ人を変えると言いながら、何も出来ない自分を歯痒く思っていた

 

 

『・・・・くそっ』

 

 

ラディッツは、またバーダックとよく修行した岩山に行った

そこで一人、歯痒さを忘れるために修行した

 

 

『ふっ‼︎

やぁ‼︎

でやぁ‼︎』

 

 

修行を始めて三時間ほど経った

すると、近くに置いていたスカウターから、通信を知らせる音が聞こえた

 

 

『ちっ、誰だよ

お袋か?』

 

 

ラディッツは、しぶしぶ通信に出ると、相手はいきなり大きな声で話しかけてきた

 

 

『ラディッツ‼︎

お父さんが負けて、明日処刑されるって本当なの‼︎⁇』

 

 

キーーーン・・・・

 

 

いきなりの大声に、ラディッツは耳鳴りを覚えた

 

 

『セロリか・・・・

あぁ、本当だよ・・・・』

 

 

相手は、セロリだった

正直、ラディッツはバーダック処刑の報を聞かされ、すぐにでもセロリに会いに行きたかった

だが、父親の事で女の子に泣きつく事など、ラディッツのプライドが許さなかった

だから、向こうから連絡をくれたのは、とても嬉しかった

 

 

『そんな・・・・

お母さん、大丈夫?

ラディッツも、落ち込んで・・・・

るよね、ごめん・・・・』

 

『いや、大丈夫だ

お袋は、流石にショックで倒れちまったよ』

 

『そうだよね・・・・

ラディッツは、何してるの?』

 

『いつもの所で、一人で修行してるよ』

 

『そっか・・・・

ねぇ、私も行ってもいいかな?』

 

『えっ⁉︎』

 

会いたいと思っていた相手から、会いに行ってもいいかと言われて、ラディッツは内心、ドキドキしていた

 

 

『ダメ、かな?』

 

『い、いや!

別にかまわないそ!』

 

『よかった!

じゃあ、すぐに行くから!』

 

 

セロリとの通信が終わり、ラディッツはまた修行を始めたが、全く身が入らなかった

こんな時に不謹慎だと、子供心に思ったが、それでもこの胸の高鳴りを止められなかった

 

 

 

修行を再開して10分程で、セロリは来た

急いで来てくれたのか、少し汗をかいていた

 

 

『ごめん、待った⁉︎』

 

『い、いや

ずっと修行してたから・・・・』

 

『そっか、良かった』

 

 

ラディッツは修行を中断し、岩場に腰掛けた

セロリも、その隣に座った

 

 

『お母さん、大丈夫そう?』

 

『さぁな・・・・

いつ起き上がるやら・・・・』

 

『そぅ、だよね・・・・』

 

セロリは、心底心配そうな表情をした

つくづく、珍しいサイヤ人だなと、ラディッツは思った

まぁ、こんな純情な少年の様な気持ちになるラディッツも、珍しいサイヤ人ではあるのだろうが

 

 

『お父さん、明日・・・・

・・・・処刑、されるんだよね?』

 

『あぁ・・・・』

 

『もう、どうにもならないの?』

 

『・・・・』

 

 

ラディッツは、どうにもならないだろうと思ったが、口に出せなかった

父のした事は、テロ行為以外の何でもない

父は、完全にテロリストなのだ

とても許されるとは思えない

ラディッツはそう思ったが、セロリを余計に心配させるし、自分もそれを認めたくないために、口に出せなかった

 

 

『やっぱり、サイヤ人を変える事は、出来ないのかな?』

 

『セロリ・・・・』

 

『私、ラディッツのお父さんなら、きっとやれるって思ってたのに・・・・』

 

 

ラディッツは、セロリの辛そうな表情を見ると、堪らない気持ちになった

だから、こう口走った

 

 

『セロリ、親父はまだ負けてないぞ』

 

『えっ?

でも、今は捕まって・・・・』

 

『まだ生きてる

昔、親父が言ってた

生きてるうちは、まだ負けじゃないって

それが、サイヤ人だって』

 

『ラディッツ・・・・』

 

『だから、親父はまだ負けてない

それに、親父は言い出したら曲げない男だ

やると言ったらやる』

 

『でも、どうするの?』

 

『俺が・・・・』

 

 

ラディッツは一瞬、言葉を呑み込もうとした

だが、己に喝を入れて、言葉をつづった

 

 

『俺が、親父を助け出す!』

 

『えぇっ、ラディッツが⁉︎』

 

『あぁ!』

 

 

セロリは、また心配そうな表情をした

ラディッツも一瞬だけ、言ってしまったと思ったが、それでもやるんだと、思い直した

 

 

『でも、どうやって?

相手は、ラディッツのお父さんも捕まえちゃう様な人達だよ?』

 

『下手に考えるより、シンプルな方が、やりやすい

なに、何とかする』

 

『わ、私も手伝うっ!』

 

『なっ⁉︎』

 

 

心配性のセロリからすれば、ラディッツ一人に危険な事をさせるのが嫌だったのだろう

それがわかったから、ラディッツはセロリの申し出を断った

 

 

『いや、俺一人で十分だ

セロリは何もしないでかまわない』

 

『で、でも・・・・』

 

『大丈夫だ

俺は、あのバーダックの息子なんだぞ?

これくらい、何でもないさ』

 

『ラディッツ・・・・』

 

 

セロリは、この日一番の、不安気な表情をした

しかし、意を決したような表情に変えて、言った

 

 

『わかった、ラディッツを信じるよ』

 

『お、おう!///

ありがとうよ!///』

 

『うんっ!///』

 

 

その後、少し話をして、セロリは帰って行った

ラディッツは、もう少し修行してから帰ると言い、その場に残った

 

 

『(あぁは言ったが、大丈夫かな?)』

 

 

ラディッツは、不安な気持ちで一杯だった

だが、やると言ったからには、やらねばならない

 

 

『(いや、何を怖がってるんだ俺は!

自分でも言っただろ⁉︎

俺は、あのバーダックの息子なんだぞ!

やれない事はない!)』

 

 

ラディッツは、己に喝を入れ、不安な気持ちを振り払うように、修行した

 

 

 

 

そして、バーダック達革命軍の、公開処刑の日は来た

ラディッツは、この日、自分もテロリストの仲間入りだなと、少し自嘲気味に笑った

 

 

『(親父、今日、俺はあんたを超えてやる!)』

 

 

ラディッツは、まだ起き上がれないギネに朝食を用意した後、決意に満ちた顔で、処刑場所に向かった

 

 

 

処刑場所は、ベジータ王子の城の近くだった

囚われた革命軍の皆は、鎖で繋がれ、周りには見張りのサイヤ人が大勢いた

バーダックは、未だジャコ星人の糸にしばられ、今にも息絶えそうな、苦しげな表情をしていた

処刑は、まずバーダックから行われるらしい

その後、残りの全員は一気に焼き払うらしい

いつものベジータなら、こんな事はせず、あの戦いの後、すぐにでも処刑するだろう

だが、今回、公開処刑をするのは、自分に逆らう者はこうなると言う、見せしめだ

いくらベジータでも、いちいちテロリストの相手をするのは面倒なので、出来れば今回で最後にしたかったのだ

 

 

『それではこれより、反逆者バーダックの、処刑を始める‼︎』

 

 

ベジータの声に応えるように、ベジータ派のサイヤ人は声を上げた

バーダックの処刑方法は、身体の端から徐々に心臓に向かって、気功波で貫くと言う、残虐な方法だった

 

 

『ちっ、何も出来ねぇで、終いかよ・・・・』

 

 

バーダックは、いかにも悔しそうな顔をしていた

あれだけの大口をたたいてこのザマでは、あの世で仲間に合わす顔がない

ギネやラディッツ、そして、カカロットにも、何もしてやれなかった

その事が、最大級の後悔として、バーダックに降りかかった

 

 

『無様だな、バーダック

いくらフリーザを倒しても、ただ突っ込んで来るだけの貴様では、俺の相手にならなかったな』

 

『へっ、流石だぜ、王子様よぉ・・・・

まさか、その歳でここまで見事に王子をやれるとはなぁ・・・・

俺の完敗だ、好きにしろ・・・・』

 

『では、望み通りにしてやる‼︎』

 

『がぁぁぁ⁉︎』

 

 

ベジータの指先から発せられた気功波が、バーダックの右脚を貫いた

そして左脚、両の太股、右腕、右肩、左腕、左肩と、順に貫き、遂に、横腹まで貫いた

 

 

『おっとすまん

次は心臓を撃つつもりだったんだが、狙いが外れちまった』

 

『くっ・・・・

へっ、ノーコンがよぉ・・・・

次は、外すなよ?』

 

『そうだな、しっかり狙わなくてはな・・・・』

 

 

ベジータの指先が、バーダックの心臓に向いた

ラディッツは、ここまで必死に耐えた

すぐにでも飛び出したいのを、血涙を流さんばかりに耐えた

だが、まだだ

まだ、動く時じゃない

もう少し、もう少し・・・・

 

 

『では、これで終わりだ

今から、死んだ仲間の所へ送ってやる』

 

『へっ、そうかい・・・・』

 

『死ねっ‼︎』

 

 

ベジータの指先が、光り始めた

その瞬間、ラディッツは動いた

 

 

『(今だっ‼︎)』

 

 

 

 

 

 

 





こんにちは、セロリです

ラディッツ、私、信じてるよ

ラディッツなら、きっとみんなを助けられるって

だからお願い

無事に帰って来て

次回

ドラゴンボールIF

第二次ベジータ紛争

よろしくね!

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