ゴジラvsビオランテ F・battle 作:サイレント・レイ
――― 白神研究所 ―――
抗体核バクテリアの開発に加入する事をヒョウメイした白神が条件に示した物は、直ぐ容認されて指示通りに翌日の朝に届けられていた。
そして現在、それ等の引き渡しが行われていた。
「…白神様、先ずはコチラが、我が四葉財閥が日本政府からの要望でお預かりしていましたゴジラ細胞でございます」
四葉財閥からの使者であるタキシードを纏った見事なカイザー髭の初老の執事が、背後のリムジンからアタッシュケースを取り出した。
そしてアタッシュケースを持ったまま開き、ドライアイスがギッシリ詰まった中央部分の瓶に入っている黒い物体…ゴジラ細胞を見せた。
「…セバスチャンさん、確認して宜しいですか?」
「どうぞ」
執事・セバスチャンから許可を得た白神は、ゴム手袋を着けると以外に重かった瓶を取ると、瓶越しにゴジラ細胞を掲げ回しながら暫く見つめていた。
その間に白神は何回か溜め息を吐いていた。
「……此れがゴジラ細胞…」
ゴジラ細胞を確認は分かっていた事であったが、実際に見るゴジラ細胞から科学者として何か好奇心を掻き立てられる不思議な魅力を感じていた。
「白神様、お分かりと思われますが、ゴジラ細胞は色んな意味で危険な物であります。
現に我が四葉財閥も此のゴジラ細胞を狙った出来事が度々起こっていましたので、どうかお気をつけて下さいませ」
「…その事は、此のゴジラ細胞関連で孫娘を亡くした事があるので、よく分かっています」
ゴジラ細胞を一旦アタッシュケースに戻して、正式にセバスチャンからアタッシュケースごと白神は受け取った。
「…それと、もう一つの物も預かっていると聞いていますが?」
「はい、それでしたら…」
白神に質問されたセバスチャンは、リムジンから別のアタッシュケースを取り出した。
そしてまた持ったまま開かれた今回の物には、資料の束とデータディスクが入っていた。
「複製でありますが、コチラが国会図書館からお預かりしました篠田博士の論文…オルガナイザーG1の資料でございます」
セバスチャンから許可を得た白神は、資料を手に取ると簡単に一枚一枚に目を通した。
「…確かに指定物に間違いありません」
流石にデータディスクは此の場での確認が出来なかったが、取り敢えず確認し終えた資料が確かな物である事から間違いがないと判断した白神は、此れも一旦アタッシュケースに戻して受け取った。
「四葉財閥の皆様には御足労を掛けました」
白神はセバスチャンに頭を下げたが、そのセバスチャンは“遠慮しないように”と手を翳した。
「では、コチラにサインを…」
「うむ………ん?」
セバスチャンから手渡された証明書にサインをしようとした白神だったが、その直前にリムジンの扉が開いたと思ったら“令嬢”の単語に相応しい少女が降りた。
「っ! ありすお嬢様!」
セバスチャンの制止を無視した少女こと四葉ありすは白神の側に近寄って来た。
「…お嬢ちゃん、どうしたんだい?」
白神は身を屈めながら、ありすに優しく言葉をかけた。
「…白神さん、どうか間違いを起こさないで下さい」
「「…っ!?」」
子供でありながら……否、子供であった故に何かを察したありすが白神への言葉に、白神処かセバスチャンまでが驚いていた。
勿論、ありすが白神が受け取った二つの物の事など知る訳がなかったが…
「どうして、そう思ったんだい?」
「白神さんから何か悲しそうなモノを感じましたの。
だから白神さんが、間違いを起こしそうだと思ったんです」
…どうやらありすは、白神の雰囲気から彼が二つの物で何をしようとしているかを何となく察した様であった。
「……ありがとう」
セバスチャンがハンカチで目を拭っていたが、白神は寂しく笑いながらありすの頭を撫でた…
――― 希望ヶ花・植物園 ―――
その頃、数日前に白神研究所から精神科学開発センターと三原山を訪れたゆりは夏期講習を終えた後、薫子の植物園を訪れて不在の主に代わって水やりをしていた。
「……はぁ…」
…水やりをしながらゆりはやたらと溜め息を吐いていたが、断じて水やりが苦である訳ではなかった。
そして最後に花々への水やりを終えたゆりは、道具を片付けると植物園の一角に向かって行き…
「……コッペ様…」
…そこに立っている、並みより長身のゆりの倍近くある、某森の妖精の様な毛むくじゃらの胸に抱き付いた。
因みに此れ(失礼)、薫子のパートナーの妖精でシプレ達(全く外見が似ていないが……三人共将来こうなるのか?)の大先輩であるコッペであった。
「…コッペ様……ゴジラが復活するかもしれないのに……私……どうしたら良いのでしょうか?」
元々ゆりは砂漠の使徒に敗北してプリキュアとしての力を失った事に悩み続けていたが、その事に加えて今回のゴジラの一件で自身が追い詰められる程に悩み苦しんでいたのだ。
しかもつぼみ達がゴジラの再封印に挑もうとしている事が、容易に推測出来る事からも尚更であった。
「…私も……三原山に行くべきでしょうか?」
ゆり自身も分かっていたが、コッペは何も答えず、いつもの通りに“ぬーぼー”としていた。
只、コッペは目を瞑ったゆりの頭を優しく撫でていた…
――― ????? ―――
「……此所は?…」
何か疑問を感じながら目を開けたゆりは、辺り一帯に白霧が立ち込めた水辺に膝下を沈めた状態で立っている事に気づいた。
「…此所は……此所は、芦ノ湖!?」
更に白霧で見えにくい地形から、自分がいるのは芦ノ湖のど真ん中である事に気づいた。
「…何故、芦ノ湖に……っ!?」
何故芦ノ湖に……しかも自分がいる場所が立っている浅い場所でない所にいる事に戸惑っていたが、前方に誰かがいるのに気づいた。
しかもその人物の後ろ姿にゆりは見覚えがあった。
「……まさか…」
…と言うより、人物の正体をゆりは察して驚き戸惑っていた。
ゆりは湖底(?)に足を取られてよたつきながら近づいた人物が気づいて振り向いたら、自分の推測が正しかった事が分かった。
「……か…かれん!!」
「…此の姿だと久しぶりね、ゆり」
その人物は……水無月かれんは何処か寂しそうに微笑みながらゆりに声をかけた。
「…ゆり、ゴジラが再び現れようとしているみたいね」
「……ええ、そうよ」
かれんの質問にゆりは少し間を置いて答えたが、両人共に表情に冷たさが出た。
「…やっと……その時が来るのね」
「…その言葉、ゴジラと戦った人達に不謹慎と思わない……?」
かれんに注意したゆりは、不意に右の湖面で何かが一瞬動いたのを感じた。
「…かれん、貴女一体何をしようとしているの?」
「今更言わなくても分かるでしょう?
ゴジラを倒すのよ」
かれんの言葉にゆりは溜め息を吐くと少しの間項垂れた。
「…ねぇ、かれん……ゴジラを忘れる事は出来ないの?」
「出来ないわよ!!」
ゆりの質問にかれんは怒鳴って返した。
「貴女も知っているでしょう!?
ゴジラは私の大切な人達を奪ったのよ!
貴女にはあの時の後悔と損失感は分からないでしょう!?」
「分かるわよ、私にも!!」
ゆりが怒鳴り返した事にかれんは驚いていた。
「…かれん、貴女が亡くなった後、私もプリキュアになっていたのだけど……私の自惚れが原因でコロンを死なせたのよ」
「……そうだったわね…」
三年前、嘗てゆりがキュアムーンライトとして活躍し、秘宝ハートキャッチミラージュを手に入れようと試練に挑む直前に砂漠の使徒に……サバークとダークプリキュアの強襲を受けたのだ。
此の戦いで
最もゆりの場合、土壇場でコッペに助けられた為に九死に一生を得たのだが、変身に必要なこころの種を損傷した事が原因で、ゆりはプリキュアに変身する事が出来なくなった。
だが何よりコロンの“仲間を作れ”等の提案を無視し続けて、更にコロンを死なせた事から出来た心の傷がゆりは現在も苦しめていたのだ
。
「…でもゆり、身を引いた貴女と違って、私は一人になっても戦い続けたわ」
かれんの指摘にゆりは何も返せず唇を噛んでいた。
「私はゴジラを許せない!!
私はどんな事をしてでも私自身の手でゴジラを倒すと誓ったわ!」
かれんが激情すると同時に、先程感じた何かが姿を見せずに二人の周囲で再び動き出したのをゆりは感じ取った。
更に何故だか周囲が突然暗くなり始めていた。
「…でもかれん、つぼみ達が近い内にゴジラに再封印を施す筈だから、ゴジラは現れない筈よ」
「……確かにあの子達なら上手く出来るでしょうね…」
ゆりの言葉を聞いたかれんは暫く目を瞑って…
「…でも残念だけどゴジラは再び現れるわ」
…そして断言した。
「……それはどう言う意味!?
つぼみ達は再封印に失敗すると言うの!?」
思わず怒鳴ったゆりに、かれんは首を左右に振った。
「そう言う、意味…じゃない…」
「……?」
此処にきて、かれんは何故か息を乱し始めた。
「…ゆり……つぼみ達が再封印を施そうとしているのとは逆に……ゴジラを再出現させようとする輩がいる、のよ………うぅ!!」
ゆりの質問に答えようとしたかれんだが、突然頭を左手で押さえながら屈んだ。
「…どうしたの、かれん………っ!?」
ゆりはかれんに近づこうとしたが、二人の間に……何か大蛇みたいなモノが遮った。
「…な、何此れ………っ!!」
目の前に現れたモノに驚いていたゆりだったが、かれんの背後に巨大な影が存在していた事に気づいた。
「…ゴジラ……いえ、違う!」
影の形がゴジラに似ていた為に、一瞬ゴジラかと思ったゆりだったが、直ぐそれを否定したが、影からゴジラに負けない禍々しさを感じる上、先の大蛇(?)の多数が水中でゆりを警戒する様に蠢いていた。
「…くぅ……消えなさい!!」
だが頭を押さえながらも何とか立ち上がったかれんが怒鳴ったら、影と大蛇(?)群は一斉に雲散霧消した。
「…かれん、今のは何だったの!?」
当然と言えるゆりの質問に、かれんは何も答えずに頭を押さえながら再び屈んだ。
「…ゆり……ゴジラが現れようとしている以上……私も戦うわ」
「何を言っているの!?
薔薇になっている貴女が、どうやってゴジラと戦うと言うのよ!?」
「…大丈夫よ……その為に必要な事を、お祖父様にやってもらっているわ。
だから……ゆり………うっ…」
最後の言葉を途切ったかれんは俯せに倒れると、そのまま水面下へ沈んでいった。
「…かれん……かれーーん!!!」
かれんの名を叫びながら近寄ろうとしたゆりだったが、その直前に突然濃さを増した白霧に包まれて…
――― 植物園 ―――
「…かれん!!……っ!?
夢だったの…?」
…我に返ったゆりは、先程までのが夢だったと自覚していた。
只、ゆりが身を任せていたコッペは、彼女が亡き友の名を叫びながら飛び起きた事に少し驚いている様だった……多分…
「…随分、寝てしまったようね」
しかもゆりはかなりの時間寝ていた為、外は暗くなりかけていた。
「早く帰らないと、お母さんが心配するわね…」
失笑したゆりは帰りの支度を始めたが、夢でのかれんとの会話……特に最後の部分に釈然としていなかった。
「…かれん……貴女は
黄泉津大神……日本古事記の始祖の女神・
「……雨……来そうね…」
しかも、ゆりの不安を煽るかの様に、濃い雨雲が雷鳴を響かせながら立ち込めていた…
ビオランテ登場まで、あと2話
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