ゴジラvsビオランテ F・battle 作:サイレント・レイ
――― 白神研究所 ―――
日暮れから降り始めて豪雨となった夜、白神は二つの指定物を受け取った直後から、顕微鏡を使って解凍したゴジラ細胞を調べていた。
最も既に半日以上も経過していたにも関わらず、目的の物を見つけられないでいる白神は苛立っているのか、何度も目を通している資料が……特に最初の一枚が皺だらけになっていた。
「…っ! 此れか!」
…だがそれも漸く見つける事が出来た様であった。
実際は資料とパソコンを確認して間違いはないと結論付けていた。
「……此れがオルガナイザーG1…」
白神が顕微鏡越しに見つめるオルガナイザーG1は“それ程の物か?”思ってしまいそうな、“人”の形をした細く、ふにゃふにゃしている物であった。
だが此のオルガナイザーG1こそが最悪最強の怪獣ゴジラの再生機能であり、現に白神が細胞組織の一部を意図的に傷つけたら、オルガナイザーG1が直ぐに破損箇所を元通りに再生させた。
そして回避派の筆頭でもある発見者大野雄二博士のオルガナイザーG1の発表で、元々高価であったゴジラ細胞を更に爆発的な物価上昇を起こさせたのだった。
只、日本国内では殲滅派による大野博士の学会追放等の陰謀で、オルガナイザーG1はあまり認知されていなかった。
……で話を戻して…
「…ん? 雨が降っているのか。
派手に雷もなっているな」
今までオルガナイザーG1の捜索に集中していて、摂取しようとした時の今になって、外で雷鳴を伴った豪雨が降っている事に気づいたが、直ぐ職務に戻って慎重に器具を操作してかなりの数のオルガナイザーG1を取り出していた。
只、その間に雷鳴がひっきりなしに鳴り響き、まるで白神に「作業を止めろ」と言い続けている様であった…
だが白神は雷鳴を気にせずに続けて、オルガナイザーG1を必要分量を取り出し終えて、汗だくになった額の汗を拭いながら大きな溜め息を吐いた。
更に白神は研究室の棚の一つに向かって、奥にしまっていたアタッシュケースを取り出した。
「……まさか、此れを使う事になるなんてな…」
自分自身に失笑した白神はアタッシュケースを開いて……嘗て自分が作り出すも二度と使わないと封印していた液体の化学物質を全て取り出して混ぜ合わせていた。
最強に先程取り出したオルガナイザーG1を混ぜた後、出来上がった液体を特大の注射器で全て吸い上げた。
「…よし、出来た」
思った通りの物が出来た事を確認した白神は、液体入りの注射器を持ってアクア・カレンの所に向かった。
「かれん、お前が望んだ物が出来たぞ」
白神は注射器を見せながらアクア・カレンに声を掛けた。
だが肝心のアクア・カレンは硝子ハウスこそ修復されていたが、薔薇その物が最後の一輪だけになっていた上、その一輪も花弁が気持ち黒ずんでいた為に何処か元気が無さそうに見えていた。
だからこそ白神は急いで注射器をアクア・カレンの注水タンクに射し込んだ。
後は注射器の液体をタンクに入れるだけの簡単な事なのだが、白神は注射器を持ったまま硬直していた上、息を激しく乱して物凄い汗を出していた。
「……ふん!!」
…そして意を決して注射器の液体をタンクに入れ、直ぐ注水ポンプを動かした。
ポンプは問題なく動いてアクア・カレンに液体入りの水が注がれていったが、その直後に雷光が眩しい位に輝き、僅かに遅れて特大の雷鳴が轟いた…
――― 同・入口 ―――
アクア・カレンに処置を施した翌朝、数時間の仮眠を取ってアクア・カレンが問題なく回復していっているのを確認した白神は、約束通りに抗核バクテリアの開発に参加しに筑波の研究所に向かう為の身支度をしていた。
「…あら、白神君」
…で、その支度を終えて外に出た白神は薫子達と出くわした。
「薫子さん、今日はどうしたんだい?」
「かれんちゃんが峠を越えれそうだと伝えたら、つぼみが行きたいと言ってね」
薫子に同調したつぼみは「はい!」と元気よく伝えた。
…只、いつきは兎も角、えりかは見るからに眠そうにしていて、彼女の右肩に乗っているコフレに呆れられていた。
「私の事は気にせず、かれんの所に行ってきなさい」
白神の許可を得たつぼみは無意識にえりかの手を引っ張って走り出そうとしたが…
「…え!? ちょっ!!」
「「あ、危ない」」
「…でしゅ」
…気が抜けていたえりかの足が縺れて派手に転けた。
しかも不幸な事に右肩に乗っていた為にコフレも巻き込まれて“車田落ち”を決めていた……地面は抉ってないよ…
「ああ!! すみません!! えりか! コフレ!」
必死にえりかとコフレに謝っていたつぼみだったが、立ち上がったえりかが笑いながら許した≒コフレは伸びたままだが…)後、そのえりかと共に騒ぎながらアクア・カレンの所に向かっていった。
「…しかし博士、よくかれんさんが助かりましたね」
「ああ、奇跡的に感染しなかった一輪があった上、何とか治療薬が作れたからな。
只、その為に私は此れから筑波の研究所に行く事になったがな…」
白神のいつきへの返事……特に最後の苦笑しながらの部分に薫子が反応した。
「…筑波……貴方、抗核バクテリアの開発に加わりに行くの?」
「ああ」
「何故、急にそんな事を?
博士はあんなに嫌がっていたのに」
「…国に私が開発に加わる代わりに、かれんの治療薬を作るのに必要な希少物を提供してくれる様に頼んだんだ。
だから約束を守らないといけないからな」
「……貴方、何を頼んだの?」
白神に薫子といつきが怪訝な表情をした。
「て事は暫く帰ってこれないわね」
「じゃあ、かれんさんはどうするのですか?」
「大丈夫だ。 自動で水がやれる様にしてある」
「いえ、そう言う訳じゃ…」
いつきは因縁深いゴジラ関連の開発に加わる事に、かれんはどう思っているかを言いたかったのだが、白神にはぐらかされてしまった。
…でその間に、つぼみ達が帰ってきた。
「…あ! 二人共、お帰り。
かれんさんはどうだった?」
「うん、一輪だけになってたから少し寂しくなっていたけど、元気みたいだったよ!」
えりかのいつきへの返事に、薫子も嬉しそうにしていたが…
「…博士、かれんさんなんだか変でした」
「……つぼみ君、どう言う事だ?」
シプレと何か悩んでいたつぼみに白神だけでなく、薫子といつきも反応した。
「かれんちゃんが何か言ったの?」
「いえ、何も答えてくれなかった上に……何か……雰囲気が変わっていたの」
「もう、つぼみ!!
しっかり説明してくれないと、全く分からないじゃない!」
「はう~…ご免なさい」
呆れているえりかにつぼみは俯きながら謝っていたが、白神が一瞬顔が引き吊ったのを薫子は見逃さなかった。
「……白神君…」
「…ん、迎えがきたようだ」
薫子が白神に何かを尋ねようとしたが、悪い(?)時点で白神の迎えの車がやって来た。
そして白神達の前で停車したその車から古き良き絶滅危惧種(或いは既に絶滅種)“大和撫子”の単語が似合う腰元まで伸びた黒髪の女性を初めとした白衣を纏った者達が降りた。
「筑波からの迎えか?」
「はい、私は国立物理化学研究所の雪城ほのかです」
女性…ほのかは一礼しながら白神に名乗った。
「…ああ、あの物理学者の伊集院研作の所のか。
それに雪城ほのか……“和製キュリー夫人”と言われる程の若き天才だと、此の隠居人の所にまで聞こえているよ」
「光栄です、博士」
白神の言葉にほのかは嬉しそうに頬を赤らめていたが、直ぐに真顔に戻った。
「博士、直ぐに筑波に向かいますので、早くお乗り下さい」
「…?それ程の危機的状況だと言うのか?」
白神の質問にほのかが頷いたが、白神の背後のつぼみ達は不安そうに各々の目線を合わせていた。
「すみませんが、博士は私と共に途中でヘリに乗り込んでもらいます」
「…分かった」
白神の了承を得たほのか達は、直ぐに白神の荷物を次々に車から詰め込んでいた。
…でその間に、白神は薫子達に振り向いた。
「見ての通り、私は暫く留守にするが、薫子さん達はどうするんだ?」
「私達は小田原を観光したら、一旦希望ヶ花に戻るわ」
「ああ、その方が良いだろう……今、伊豆大島は自衛隊と関係者以外は立ち入れないからな」
最後の部分はほのか達に聞こえない様に、白神は小声で薫子に呟いたが、ほのかは彼等に気づかれない様に目線を向けていた。
「…それじゃ、時が来たら私が手配しておくから」
「ええ、それじゃ、また」
「「「博士、気を付けて下さい」」」
つぼみ達に別れを告げた白神は、ほのか達の所に向かっていった。
「…それで抗核バクテリアの開発は何処までいっているのだ?」
「それが、かなりの遅れが出ていまして…」
「…現在は此処までしか進んでいません」
早速、白神はほのか達から抗核バクテリアの資料を受け取りながら状況説明を受けていた。
「……もう始めてるよ…」
「学者ってそんなものだと思うよ」
「だからって今からしなくてもねぇ…」
白神達に怠け癖のあるえりかが呆れていた。
「えりかは不真面目なのですよ……?」
えりかに注意しようとしたつぼみだったが、何故かほのかが自分達を見つめているのに気づいた。
「…博士、残りの説明は車内でしますので、早くお乗り下さい」
「ああ、すまん」
…だが、ほのかはつぼみ達に微笑みながら頷くも、彼女達には何も言わずに白神に乗車を促した。そして車に乗り込んだ白神は、走り出す直前につぼみ達に手を振り、つぼみ達も白神達が乗った車を見えなくなるまで手を振って見送った。
「…さて、私達もそろそろ行きましょう」
「えぇ~…もうチョット休んでから行こうよ、お婆ちゃん」
「でも博士は研究所に戸締まりをしたから、此所じゃ何も出来ないよ」
「だってぇ~…」
「だっても無いです!!」
駄々を捏ねるえりかが最終的にコフレに怒鳴られた為につぼみ達に笑われていた。
…だが、つぼみ達は知らなかった。
『…う……うう……』
一つは此の時からアクア・カレンのかれんの心の苦しさを表すかの様に小刻みに震えていた事を…
それと同時に不気味な鼓動を出し始めていた事も…
そしてもう一つは…
「良し、白神博士は行った様だな」
「ああ、予定通りに今夜行くぞ」
「しかし、あの二人の少女、まだ青いが中々だな」
「おいおい、お前そう言う好みだったのか?」
……遠くからつぼみ達を……否、白神研究所を見続ける者達がいた事を…
感想・御意見お待ちしています。
原作では薔薇の花弁から採った細胞をゴジラ細胞を混ぜて、翌日には花が咲いていましたが、“幾らなんでも無理があるだろ”と思ったので、本作ではこの様な形にしました。
さあ、皆さん、いよいよ次回、その時です。