ゴジラvsビオランテ F・battle 作:サイレント・レイ
――― 総理官邸 ―――
権藤達が白神研究所に到着するとのほぼ同時刻、黒木は数人の部下達を引き連れて緊急の呼び出しがあった首相官邸を訪れていた。
そして部下達を廊下に待機させて会議室に入室した黒木を、彼を呼び出した片桐と官房長官円亜久里、そして黒木の上司である防衛大臣醍醐直太郎が待っていた。
「黒木統幕議長、お呼びと聞き、ただ今到着しました」
「…御掛け下さい」
亜久里達に敬礼した黒木だったが、大事な時期に呼び出された為に僅かに不満が出ていたが、亜久里はそれを無視して黒木を座らせると自分達も座った。
「……統幕議長、大事な時期に呼び出して申し訳ありません」
そして亜久里は真っ先に頭を下げた。
「…実は今朝方に此れが届いたのです」
亜久里が紙を差し出して、それを黒木は受け取って目を通した。
「……『我々は、砂礫の使徒である』?」
「どうやら今国内の一部を騒がせている不審団体・砂漠の使徒に偽装したかったらしい」
相手側の手違いを指摘した醍醐に全員が苦笑した。
「…ですが問題は続きです」
「……『日本政府は本日中に西新宿で回収した全てのゴジラ細胞を引き渡す事を要請する』…」
続きのを見た黒木は思わず読むのを一旦止めた。
「…『もし此れに従わない場合、我々は貴殿方が嘗てやった様に三原山を人為的に噴火させてゴジラを解放する』……ふん!」
読み終えた黒木は、鼻を鳴らしてその紙を前に軽く投げ捨てた。
「統幕議長、貴方は此れをどう思ってます?」
「…大方、真犯人は中国の奴等でしょう」
黒木に亜久里達は“同感”と頷いた。
「どうやらあの自己中ども、まだゴジラ細胞を売らなかった事を恨んでいるみたいだ。
奴等がなんとしてでもゴジラ細胞を手に入れようとしているのは分かっていた事だがな」
片桐の言葉に黒木達は苦笑した。
だが此の一方的な因縁は嘗てのゴジラの東京襲撃前に、そのゴジラに原潜を沈められたロシアを筆頭にアメリカと中国が、日本国内での核兵器使用許可を求めたのを、日本が拒否した事から始まった。
後に名総理と呼ばれる三田村清輝の非核三原則を元にした堂々とした主張にアメリカとロシアは承諾したのだが、中国だけはナアナアに答えた事(とある政府高官が「北京でも躊躇わず使う」との発言があったらしい、真偽は不明だが朝鮮戦争時に毛沢東が似た発言をした前科がある)が禍根となった。
そして実際問題、中国は西新宿のゴジラ目掛けて核ミサイルを発射してしまい……此れにアメリカが奇跡的に気付いて通報した事もあって迎撃には成功して直接的な被害は無かったが、折角スーパーXがカドミウムで昏睡したゴジラが此の影響で目覚めてしまい、ゴジラとスーパーX(&プリキュアx6)の戦いで西新宿が灰塵と化してしまった。
しかも中国は此の出来事を“現場の独断”か“ゴジラに偽装工作船が襲われた為の事故”だと主張して、肝心の日本への謝罪をしなかった上、後日中国国内でとある機関誌がゴジラが東京を襲撃した事を喜ぶ記載をした事(流石に此れは中国邦人の多数が都内で死傷した為に内外から非難されて自爆、中国駐日大使が謝罪会見をした)もあってゴジラ細胞の売却を拒否したのだった。
此れにはアメリカとロシアが西新宿の一連の出来事全てを中国に擦り付けた上、フランスが日本を口車に乗せてゴジラ細胞を事実上中国から奪った事もあった。
此の為にゴジラ細胞を獲得したアメリカ、ロシア、フランス、そして日本がゴジラ細胞の研究から次々に恩恵を受けていた為、中国は躍起になってゴジラ細胞の獲得を目指していた。
で話を戻して…
「ですが、中国が三原山を噴火させる可能性は余り無いでしょう」
「だが黒木君、実際問題先日から伊豆大島の状態からだと無視出来ないだろ?」
痛い処を突かれて黒木が軽い呻き声を出した。
実は先日から伊豆大島の守備隊が音信不通になっていた上、伊豆大島沖に配備していた潜水艦隊までがそうなっていた為、海自が急遽Pー3Cを早朝から多数飛ばして捜索をしていた。
その結果、浮上して漂流している潜水艦隊全てを発見したのだが、問題なのはその潜水艦隊を潜入調査したら乗組員全員が何所にもいなかったのだ。
勿論、伊豆大島も同様の状態であろう事が簡単に予測出来た為、黒木は部下達と横須賀艦隊と厚木航空隊の出撃の検討を此所に呼び出させる迄やっていたのだ。
「しかし伊豆大島の現状もそうだが、問題は此れの真偽だ」
「無視すべきでしょう。
三原山の人為噴火には、かなりの爆薬が必要です。
設置も含めて、とても一夜で出来る程のではありませんから」
黒木の言葉に亜久里達が安堵の息を吐いた。
「……それよりも総理は?
外務大臣もいませんし…」
黒木の質問に亜久里が気まずそうに目を背けた。
「……総理は野党の対応に追われている」
「馬鹿な!?
ゴジラが復活する危険性があるのですよ!」
亜久里に代わって答えた片桐に黒木はギョッとし、日本が想定している最悪の出来事……意図的にゴジラ災害が引き起こされて日本の安全が脅かされるかもしれないのに、その対応をしに来ない総理に黒木が思わず怒鳴った。
「…総理は……否、政府はゴジラを楽観視している」
「しかも悪い事にアメリカ大統領が来日している上、ブルースカイ王国の王室一家も国賓としての来日が近いですから。
外務大臣もそれ等の事で手一杯ですので、中国に抗議なんか出来ないのです」
「…帰国して貰うのは出来ないのですか?」
もしアメリカ大統領なり、ブルースカイ王室一家がゴジラに殺されでもしたら、日本は世界から全ての信頼を失う事になるのだから、黒木の求めも当然である。
勿論そうなったら、時代が時代なら、自衛隊と国会議員は揃って切腹しなければならない。
「その事は既に伝えています。
ブルースカイ王国は我々の為に王女の病気との嘘の理由で延期をしてくれたのですが、アメリカは自己責任を持つと言って聞かなかったのです。
元々、アメリカ大統領は急に来日しましたしね」
アメリカ側が拒絶している以上、黒木達にはどうする事も出来なかった。
だが黒木が何かを言おうとが、その直前に廊下で待機していた部下が慌てた様子で断りを入れながら入室して、黒木に耳元で何かを囁いた。
黒木が驚きながら聞いている間、別扉から入室した書記官から亜久里が何かを受け取りながら報告を聞いていた。
「……先程伊豆大島を警戒しているPー3Cから国籍不明潜水艦が伊豆大島の近くで浮上して三原山にミサイルを撃ち込んだとの緊急報告が入りました」
「「「…っ!!」」」
黒木の報告に醍醐と片桐が思わず立ち上がり、亜久里が苦虫を噛み締めていた。
「…ですが、火口内に着弾したミサイルは炸裂はしなかったそうです」
今度のは片桐と醍醐が安堵の息を吐いたが…
「…が、厄介な事にその撃ち込まれたミサイルはどうもD02だそうです」
「っ! D02だと!?」
…“D02”の単語を聞いて二人揃って顔を青くした。
只、亜久里は知らないらしくキョトンとしていた。
「まさか、先月アフリカで盗まれたアレか!?」
「……おそらく…」
醍醐の質問に黒木は悔しそうに頷いた。
「何ですか、そのD02とは?」
「我々自衛隊が知崩れ等の土砂災害用に開発したコンピュータ制御式の削岩弾です。
此の為、D02は射程が極めて短いと言う短所がありますが、硬い岩盤を簡単にぶち破る事が出来ます」
「……つまり統幕議長、それが使われたと言う事は…」
「はい、炸薬量によっては……例えば
勿論、これくらいは中国の技術で改造する事は可能です」
黒木の返答に亜久里は唇を強く噛んだ。
「……統幕議長、その事で追加連絡が先程の入ったのです」
亜久里は部下から受け取った紙を黒木に手渡した。
「しかも悪い事に、四葉財閥から保管していたゴジラ細胞を全て盗まれたとの連絡も入りました」
見事なまでの“泣きっ面に蜂”になりかけている現状に黒木が顔をしかめた。
「…『日本政府も我々が本気である事は、もうお分かり頂いたであろう。
たった今、我々は三原山を噴火させる準備は出来上がった。
賢明な判断が出来るのであれば指定物を譲渡して頂きたい。
尚、時間と場所は…』…っ!」
読み終えた黒木は慌てて腕時計を確認した。
「…もう時間がない!!」
黒木の言葉に亜久里達も青くなった。
「黒木君、今すぐに三原山に部隊を派遣してD02を回収するなり解体するなり出来ないのか!?」
醍醐の質問に黒木は悔しそうに左右に首を振った。
「駄目でしょう。
D02は火口深くに着弾している上、地中深くに潜っている筈です。
時間もない上に三原山の現状が分からない以上、もうどうする事も出来ません」
“万事休す”その言葉通りの現状に誰もが黙ってしまった。
「…ですが、まだ手はあります。
時間内に相手から起爆装置を奪えば回避出来ます」
黒木の提案に亜久里達三人は目線を合わせて頷きあった。
「最後のゴジラ細胞が筑波にあったな。
黒木君、それを奴等に渡そう」
「ですが、アレを渡したら抗核バクテリアの開発に支障が出ます」
ゴジラ解放と言う最悪の事態を浮かべた黒木が醍醐に反論した。
「心配するな。
此処は僕を信じて指示通りに動いてくれ」
「……分かりました」
笑みを浮かべる醍醐に黒木は渋々従った……と言うより、従うしかなかった。
「…では、私は此の事を総理に伝えに行きます」
片桐はそう言うと、直ぐに退室した。
「…それと円官房長官、念の為に関東沿岸に避難令を発令しましょう」
「前のゴジラ災害の反省から早めに出すのですね?」
亜久里に黒木は頷いた直後、再び黒木の部下が……しかも慌てた様子で入室した。
「…統幕議長、至急防衛省にお戻り下さい!」
「……どうした?」
「神奈川県から自衛隊の出動要請が入りました」
「神奈川県から?」
神奈川県からの出動要請に黒木だけでなく、亜久里と醍醐までが首を傾げた。
「…ああ、そう言えば確か神奈川警察から協力要請が出るかもしれないと言っていたな。
それなのか?」
「それもそうですが、此れは一様別件です。
どうも芦ノ湖で何かがあったそうです」
「……分かった、詳細は移動中に聞こう。
では後はよろしく」
取り敢えず、黒木は亜久里と醍醐に断りを要れて退室した。
「…では私達も各々の職務に戻りましょう」
「はい」
黒木を見送った亜久里と醍醐も各々に退室し、醍醐は一人廊下を歩きながら携帯を取り出して電話を掛けた。
「…もしもし、醍醐だ……おう、ちゃんと生きているな。
…冗談だよ、怒るなって……それより大至急用意して欲しい物があるんだ。
…そうだ、アレだ……えっ、もう用意しているのか!
じゃあ、手筈は此方でやっておくからな。
…頑張れよ、御家再建が懸かってるからな」
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