ゴジラvsビオランテ F・battle 作:サイレント・レイ
――― 厚木 ―――
此の時、黒木が部下達を引き連れて訪れた厚木の自衛隊基地の大型格納庫中に何かのっぺりした大型機械物が鎮座していた。
だが一見ひ弱そうな此は自衛隊が総力を上げて開発された超兵器であった。
「御覧頂いている此のスーパーX2は既に実用段階に入っております」
此所・厚木基地に派遣されている自衛隊の士官…寺沢健一郎が説明している此の超兵器こそが嘗てゴジラを迎え撃ったスーパーXの後継機であった。
「スーパーXは前機とはの主な違いや改良点は?」
「最大の相違点は前機の装甲がチタンであったのに対し、此の機体には新開発の超耐熱合金TA―32を採用していますので遥かに耐熱性が向上しています。
また、潜水行動が可能となりゴジラ追跡能力も遥かに向上しています」
寺沢の説明にある“耐熱性の向上”とは、ゴジラの『放射熱線』に対しての事であった。
「…見た処コックピットらしき物が見当たらないのだが?」
「それは此の機体は無人機だからです。
スーパーX2は技術向上によって遠隔操作が可能となりました」
寺沢の言う通りなのだろう、確かにスーパーX2の機体の上にアンテナも内臓したコントロール装置らしき物が乗っかっていた。
「確かスーパーX2には前機には無い超兵器が搭載されていると聞いたが?」
「…此方へ」
寺沢に率いられて黒木達は数階上のスーパーX2が見渡せるコンピューター室に案内された。
そして寺沢の同僚である河井弘美がパソコンの一つを操作すると、スーパーX2の機首が左右に開いた内部に光輝く眩い物があった。
「…アレがそうなのか?」
「はい、アレがスーパーX2最大の武器であるゴジラの『放射熱線』をより強力に収束して反射するファイヤーミラーです。
ファイヤーミラーは合成ダイヤモンドで作られていますのでTA―32さえも超える耐熱性を持っています」
河井からファイヤーミラーの説明を受けながら確認した高官達は感銘の声を漏らしていたが黒木は軽く頷いただけだった。
「しかしゴジラの『放射熱線』のデータが少ない為にファイヤーミラーが実際に反射出来る事に不安あるそうだが?
スーパーX2はメーサーが非搭載であるしな」
黒木の指摘に河井だけでなく寺沢までがウッとした。
「……確かにメーサーの非搭載の問題はかなり期間揉めました。
ですが残念ながら消費電力に余裕が無い上に機動力とファイヤーミラーを優先したので大きく嵩張る上に重いメーサーは諦める事になりました」
「その点に不安がありますが、通常兵器のみでも十分戦力になります」
一様フォローが入ったが、元々遠隔操作の代償に消費電力の殆どを消費する上に機敏性不安を抱えるスーパーX2は重く凄まじく電力を消費するメーサー兵器を設計上は搭載は可能だがやむを得ず諦めたのだった。
此の為にスーパーX2が装備する通常兵器はミサイルに大型バルカン砲と魚雷の三つのみと言う何処か貧弱そうな感じが取れた。
まして前機スーパーXがメーサーを初めとしたロケット砲、ミサイルランチャー、大型バルカン砲、榴弾砲、特殊弾加農砲と“空飛ぶ要塞”と言うべき重装備だったのだから尚更であった。
只、切り札がファイヤーミラーであるだけ前機が活動停止狙いのカドミウム弾であった事を考えればマシではあったが、その前機はカドミウム弾が底を着いた後は通常兵器のみで獅子奮迅の戦いを一様していた。
「ですが黒木統幕議長、スーパーX2に不安要素があるのは確かですが、此の機体はゴジラを撃退出来ると自分達は信じています。
その為に我々は一丸となって此のスーパーX2を作り上げたのですから…」
寺沢と河井だけでなく何とかスーパーX2をフォローする部下達に反してどうも黒木は余りスーパーX2を信用していなかった。
と言うのもスーパーX2はファイヤーミラーの生成金属を初めとしたブラックボックスが多数あり、それ等が自衛隊の長たる統幕議長である筈の黒木にさえまともな説明が無かったからだ。
「更に通常部隊も戦力の底上げにも成功しています」
実際にゴジラ襲撃以降、日本政府がスーパーX2を含む対ゴジラ兵器の開発及び生産を各社に補助金等を出していった結果、自衛隊の大幅戦力強化に繋がった。
但し此の戦力強化の割合は殆どが陸自で空自はそれほどではなく、海自に至ってはほぼ皆無であった。
因みに此の自衛隊の戦力強化に中国と韓国で一部の民間団体が反対運動を行っていたが、全体的には反対する何処か全くの無反応……どちらかと言えば賛成的であった。
此は日本がゴジラによって壊滅した後に自分達の所にゴジラが来るかもしれない恐怖からであり、何と此の副作用で日本との歴史認識問題がトントン拍子で解決へ進んでいた。
勿論、此は中国と韓国の両政府が強制的に自国民を抑え込んだ為であったが、何とも都合の良い話である。
まぁ、此の事は中国と韓国の自国民達は反発したり遠巻きに皮肉っていた。
「現在ヤングエリートの中からスーパーX2の操作員を育成出来ており不安は余り無いと思われます」
寺沢に部下のフォローもあって黒木が一様納得した。
「…此でハード面の対ゴジラ兵器は大丈夫だな。
後はソフト面はどうだ?」
「申し訳ありません。
そちらは人事に問題が…」
――― 白神研究所 ―――
所変わって此の時、つぼみ達は白神研究所を再び訪れていた。
「…つぼみ、随分楽しそうだね?」
「そう? そう思うのいつき?」
…いつきに指摘されていたが見るからにウキウキしているつぼみがシプレまでに凄い目で見られていた。
勿論、つぼみの目的はアクア・カレンであり、本来此所に来るのは薫子だけの予定だったのだが、つぼみが無理に同行を申し出て、それにえりか達が引き摺られる形になっていたのだ。
「しかし本当につぼみは花が好きだよね」
「本当にそうよ…」
いつきは兎も角、小田原のファッションショップを訪れたかったえりかは少し不満そうだった。
でなんやかんやで白神研究所に到着したのだが、素人でも高級感が感じ取れる黒い車が止まっていた上に…
「…悪いが帰ってくれ!!」
…不意に白神の怒鳴り声が聞こえてきた為につぼみ達は思わず目線を合わせた。
そしてその間にも時折白神の怒鳴り声が聞こえ続けていた。
「どうしたんだろう、白神博士?
あんな大声を出して…」
「そんなの僕にも分からないけど」
「…博士……はかれんさんの所にいるみたいですよ」
此の場に留まるのも居間に行くのも何だったので、取り敢えずつぼみ達は白神の声がする所に向かった。
そしてアクア・カレンの硝子ハウスの前で自衛隊の高官やパリパリの高級背広を纏った男性達に背を向けている白神がいた。
彼等は拒否を続ける白神を必死に説き伏せようとしていた。
「分かって下さい白神博士。
此のプロジェクトは日本の……否、世界の存亡が掛かっていると言えるものなのです」
「駄目なもの駄目だ。
私以外の者を当たってくれ」
見た処、どうやら高官達の提案に白神が仕切りに断っている様だった。
「ですがどの科学者達も此のプロジェクト……抗核バクテリアの開発には白神博士、貴方しか出来ないと口を揃えて言っているのです」
「私も随分見込まれたものだな」
「それに実際に博士はかつてチェルノブイリの原発事故を嘆いて放射能を除去する植物と微生物の論文発表と開発を行っていたではありませんか。
その技術と経験があれば…」
高官の言葉に白神がムッとした。
「随分古い物を持ち出したがアレは失敗しているのだよ。
アレは私自身の手で幕引きを行っている」
取り敢えず白神達の会話を気付かれない様に隅で聞いていたつぼみ達が白神の拒絶振りに疑問を感じていた。
「ねえ、何で博士はあんなに拒否しているのかな?
結構名誉な事だと思うんだけど…」
「うん、あんなに自衛隊の偉い人達が頭を下げているのにね」
つぼみ達は白神を察しれないでいたが、思い当たる事がある薫子だけは暗い表情をしていた。
「…博士、考え直して下さい。
今の現状だとゴジラが再出現する可能性が高いのです。
その事に備える為にも抗核バクテリアを作る必要があるのです」
「そうです。 幸い博士は短期間ですがゴジラ細胞の解析をしていられましたし…」
「それだからだよ!」
“ゴジラ”の単語を聞いた白神の何かが切れた。
「此のプロジェクトにはゴジラが関わっている!
それだと私は尚更参加出来ない!」
「否、しかし…」
「…私はね……家族をゴジラに殺されたのだよ!!
それも一度だけでなく二度もだ!
世界がどうなろうともう私は知った事ではない。
私には此の薔薇さえ有れば良いのだ。
悪いが帰ってくれ!」
怒り浸透の白神はアクア・カレンを見詰めた。
「博士…」
高官の一人は何とか引き下がらないでいたが、もう一人に肩を掴んで顔を左右に振って諦めろと示した。
そして高官達は渋々引き上げたが、つぼみ達に気付いて敬礼を出ていった。
「…見苦しい処を見せてすまないな」
つぼみ達に振り向いて詫びを入れた事から白神は彼女達の存在にかなり前に気付いていた様だった。
「いえ、良いのよ白神君」
「博士、今の自衛隊の人達は?」
「…彼等は特殊戦略作戦室の者達で私に抗核バクテリアの開発に私を勧誘しに来たんだ」
「…抗核バクテリア?」
「博士、抗核バクテリアってのは?」
「自衛隊が開発しようとしている細菌兵器の一種でな、文字通り核エネルギーを無害の物に作り替える物だ」
「核エネルギーを……ですか?」
「ああ、そうだ」
白神の説明をつぼみといつきは何とか理解出来ているみたいだが脇のえりかは理解出来ずに頭から湯気を出してチンプラカンプンな表情をしていた。
「…でも何で自衛隊がしかも博士に依頼を?」
「それはさっきも自衛隊の者達が言っていたが、私は昔放射能を除去する植物や細菌を作っていた上に……私がゴジラ細胞を解析した事があるからだ。
皮肉な事だが抗核バクテリアを開発するには核エネルギーで動くゴジラの細胞を分析する必要があるからだ」
「…それでですか。
確かに放射能をエネルギー源にするゴジラに有効でありそうですね」
「…でもそんなのが作る必要がある程にゴジラ再出現の可能性が今あるのですか?」
ゴジラ再出現の危険性を知ってつぼみ達三人は驚いていたが、薫子は何処か苦しそうな表情をしていた。
しかも…
「…博士、さっき家族をゴジラに殺されたって。
まさかかれんさんは……ゴジラに殺されたのですか?」
…えりかの質問はつぼみといつきも気になっていたのか、白神の返事を待っていた。
その白神は薫子と目線を合わせていた。
「…そう言えばお祖母ちゃん、三原山に何をしに行ったの?
それもゴジラと何か関連があるの?」
つぼみを何かを察して白神と薫子は頷き合って何かを決心した。
「…まだアレ等の出来事を話していないのだね?」
「……ええ…」
「…此の際だ。 つぼみ君達に全てを話そう」
「ええ、そうね」
「…話してくれるのですね。
かれんさんの身に何が起こったのを…」
「…ああ、話すよ。
英理加やかれんに起こった悲劇を……そしてもう一つ。
プリキュアである君達に話さなければならない事………ゴジラとプリキュアには浅からぬ因縁がある…」
思わずつぼみ達処かシプレ達にも目線を合わせた白神は目を閉じて一呼吸を置いた。
「……かつてのゴジラ襲撃時に西新宿でかれん達のプリキュアチームはゴジラと戦った…」
その時、アクア・カレンが何処か悲しそうな気配を出したのをつぼみは感じた…
感想・御意見お待ちしています。
今回初登場の寺沢ですが本来は中の人が同じ雨宮修ですがPIVIXでの“vsキングギドラ”に少し合わせるつもりで変えました。