ゴジラvsビオランテ F・battle   作:サイレント・レイ

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第6話 ゴジラを怨んだプリキュア(前編)

――― 白神研究所 ―――

 

 

「…あの東京襲撃時に当時のプリキュア達がゴジラと戦ったのですか!?」

 

 白神の言葉につぼみ達は衝撃を受けていた。

 

「ああ、実際に最強の怪獣王と戦っている」

 

 “怪獣王”……此の最強の証たるゴジラの称号は嘗て昭和29年に出現した1頭目のゴジラを目撃したアメリカ人唯一の生存者の記事から来ていると言われている。

 因みに此のゴジラを目撃したアメリカ人は大黒島から出現した2頭目のゴジラの東京襲撃時にオブザーバーとしてアメリカ軍に……それもペンタゴンに呼ばれたとの噂がある。

 で話を戻して…

 

「……と言う事はかれんさんはゴジラと戦って…」

 

「否、かれんはゴジラとは戦っていない。

それ処か、あの時日本にすらいなかった」

 

 えりかの予想を白神は直ぐ否定した。

 

「…いなかった……ってどう言う事ですか?」

 

「まさかかれんは1人だけ逃げたんじゃないですよね?」

 

 かれんがいなかった事にいつきが悪い方向に予想した。

 

「それは違う。

かれんは最後まで仲間達と共にいようとしていた」

 

「では何故?」

 

「敢えて言うなら英里加の所為だ」

 

「私以外の英里加が何をしたのです?」

 

「母親としての娘を思っての行為からだ。

当時ゴジラは真っ先に東京を襲撃するとの予想を裏切ってかれんが住んでいた町の近くの原発を海自の捜索網をすり抜けて襲った。

更にその原発を破壊して核物質を奪ったゴジラはかれんの町に向かったが、その直前で海に引き上げたとの情報から不安になった英里加はかれんをフランスにいた私の所に避難させようとしたんだ」

 

 子を思う母としての英里加の行為につぼみ達も納得した様だった。

 因みに此を含めた度重なるゴジラの捕捉失敗に加えて陸自と空自が多大な犠牲を出して一様奮戦したのに反して完全に遊兵と化していた海自は後日海上幕僚長を初めとした上層部に更迭の嵐が吹き荒れた。

 

「でもかれんは仕事が多忙だったと言え、夫と共に幼少期から自分に余り構わなかった英里加達が此の時だけ仕事を全て断って戻った事もあって反発した性で最初で最後の大喧嘩を一晩中やったそうだ」

 

 

 身内の恥ずかしい出来事に白神が苦笑し、つぼみ達もそれに吊られた。

 

「…でもかれんさんはお母さんの要望を受け入れたのですよね?」

 

「ああ、何時また起こるか分からないゴジラ襲来の不安とかれんの反発から英里加が倒れてしまった上に此の事を知った仲間達にかれんが説得されて受け入れたんだ。

そこでかれんは取り敢えずフランスに一端向かう事にしたんだ」

 

「一端ってかれんは何をしようとしたんですか?」

 

 自分も似た事ををよくするのか、えりかが白神の言葉から何かを察した。

 

「かれんは先にフランスに向かって英里加達が続くのを確認したら直ぐに日本に戻ろうとしたらしい。

勿論、此は英里加達には黙ってだ」

 

 かれんが行おうとした行為につぼみ達は少し驚いていた。

 

「…だが此の決断とその時期がかれん自身を苦しめる結果にしてしまったんだ」

 

 不意に白神の表情が曇った事につぼみ達が少し戸惑った。

 

「……一体何があったのですか?」

 

「…かれんが羽田から飛び立った直後に浦賀水道を北上して東京に上陸しようとしているゴジラが発見されたんだ。

此の事で東京から脱出しようとする都民が公共機関に一斉に殺到した為に大混乱が起こって……その混乱に英里加達が巻き込まれて…」

 

「…ゴジラに襲われたのよ」

 

 言い淀んでしまった白神に変わって薫子が答えた。

 実は此の混乱は行政の完全な避難誘導のミスと更にマスコミが変に不安を煽った事から発生し、結果的に多大な死傷者を余計に出してしまったのだ。

 此の事で海自同様に警察にも警視総監以下の上層部に人柱当然の更迭の嵐が吹き荒れ、更にゴジラやそれに類似する存在に関しての報道規制が法律化していた。

 

「…それで英里加さん達はどうしてゴジラに襲われたのですか?」

 

 少し辛そうだった白神にいつきが勇気を出して質問した。

 

「…あの時、英里加達は新幹線に乗って東京からの脱出を目指していたのだが、さっきも言った様に新幹線にも人々が殺到したんだ。

鉄道側も良かれと思ってその人達を受け入れた所為で英里加達が乗った列車の出発が大幅に遅れた上に余り速く走れなかった為にゴジラに接触してしまったんだ。

しかも話によると超高層ビルが立ち並んだ場所だった為にゴジラの存在に直前まで気付かなかった所為で慌てた運転手が急ブレーキを掛けてしまった結果、列車はよりにもよってゴジラの目の前で止まってしまったそうだ」

 

 ゴジラの目の前で止まった英里加達・列車の上客を思ったつぼみ達がゾッとした。

 因みに此の列車の運転手はどうも1頭目のゴジラが東京初襲撃時にゴジラの存在に気付かなかった夜行列車がゴジラに衝突して先頭車両群が壊滅し、更に悪い事にゴジラが怒って他の車両も片っ端から破壊した為、乗客乗員の殆どが死亡した出来事(何と音と色が無いが此の一部始終を映した映像があり、此の内のゴジラが車両の1つを咥えて振り回す場面は象徴的でもあって有名)を思い当たった為に早い段階でブレーキを掛けたらしい。

 

「…そして……何を思ったのか、ゴジラは英里加達が乗る車両を掴み上げてそのまま暫く徘徊した後、その車両を投げ捨てたんだ。

勿論、50m近くの高さから落とされた以上、その車両の上客達は全員亡くなった…」

 

 白神が思わず顔を伏せた壮絶な出来事だが、皮肉な事にゴジラに襲われた唯一の新幹線となった此の列車は何と先述の夜行列車と違って、ゴジラに掴まれた車両以外の乗客達は重傷者が多数出たが、ゴジラが無視した上に高架橋で蹴りが軽減されたお陰で大した事にならなかった為に全く死者が出なかったのだ。

 只、運転手が取った行為は現在でも賛否両論{否定派は当時の列車の速度とゴジラの立ち位置から考えてそのまま走っていれば無事に逃げ切れた、賛成派は高速通過でゴジラが驚いた事で接触して脱線するか通り過ぎてもゴジラの『放射熱線』が直撃する(現に此の直前にゴジラの目の前を横切った報道ヘリが『放射熱線』で攻撃され、しかも渋滞中の高速道路に墜落した事で連鎖爆破が起きて大惨事に)可能性が大だったと主張}で……それ以前にゴジラが襲撃している地区で列車が動いていた事の方が問題視され、後日全ての鉄道会社が国の下に共同して此の出来事が二度と起こらない様にゴジラ襲撃時の列車運用のマニュアルが作成されていた。

……で話を戻して英里加達の壮絶な最後につぼみ達は言葉を失っていた…

 

「…あ、でもまだかれんさんの仲間のプリキュア達がいたのですよね?

その後、プリキュア達がゴジラをやっつけて仇を取ったのですよね?」

 

 えりかが希望的な言葉を発したが…

 

「……残念だがえりか君、確かにかれん不在のまま当時のプリキュア達はゴジラに戦いを挑んだらしいがね…」

 

「……チョット待って!

博士、まさか…」

 

 えりかが言おうとしているのを察した白神は頷いて…

 

「…そうだよ。 かれんの仲間のプリキュア達はゴジラによって逆に全滅したんだ」

 

…白神の発した残酷な事実にえりかが崩れて座り込んだ。

 

「…プリキュアが……全滅…」

 

「只、ゴジラとの交戦はプリキュアにとってタブーらしいのだがね」

 

 此の時、薫子の表情が一瞬曇ったのをつぼみ達は気付かなかった。

 

「…だが当時のプリキュア達はそのタブーを破ってゴジラに戦いを挑んだが、何故彼女達がそうしたのかは生き残りが皆無の以上はもう誰にも分からない。

何せゴジラは彼女達のパートナーであった妖精達まで殲滅したからな」

 

「…っ! そんな、妖精達までもですか!?」

 

 “妖精達の殲滅”につぼみ達は思わずシプレ達を見た。

 そのシプレ達は悲しそうにしていた。

 

「それだけゴジラとの戦いは苛烈だったと言う訳だ。

何せゴジラが自衛隊やプリキュアとの戦いの場となった西新宿は殆ど焦土と化したからな」

 

 因みにその西新宿は未だに復旧していなかったが、そのど真ん中に慰霊施設が建てられ戦いがあった日時に政府主導(天皇陛下込み)の慰霊祭が毎年行われていた。

 

「それにゴジラはプリキュアに対して極めて厄介な性質を持っているの。

そしてその性質から妖精達が襲われ、それこそがプリキュアがゴジラと戦ってはいけないタブーなのよ」

 

「…ゴジラに何があるのですか?」

 

 つぼみの質問に薫子は目を瞑って一呼吸置いた。

 

「…誕生経緯からゴジラは光に対して強烈な憎悪を感じるの。

怒りを覚えたゴジラはその逆鱗に触れた者をその身がどうなろうと必ず殺すわ。

現にゴジラの2度目の東京襲撃時にテレビ塔で実況放送していた報道陣の撮影用のフラッシュにゴジラが反応して報道陣ごとテレビ塔を破壊した事があるのよ。

だから力の本質が光であるプリキュアではゴジラを倒す処か、逆にゴジラの怒りに火に油を注ぐ危険性があるのよ」

 

 つぼみ達を驚かせたゴジラの性質は事実、かつて1頭目のゴジラが初めて日本本土に上陸した時にゴジラ研究の開祖である考古生物学者山根恭平が警察や保安隊(自衛隊の前身)に“ゴジラに光を当てるな”と進言していた。

 また此のゴジラの性質を逆に利用して西新宿でスーパーXは照明弾を用いて意図的に興奮させたゴジラが咆哮した隙にカドミウム弾を口の中に放り込んでゴジラを失神させる事に成功していた。

 只、残念ながら此のスーパーXの功績はゴジラ襲撃でのトラブルでゴジラ目掛けて発射された核ミサイルが迎撃によって成層圏での爆発した後、その核ミサイルの核エネルギーをゴジラが吸収して復活した性で水泡と化していた。

……で話を戻して…

 

「それじゃあ、プリキュアはゴジラには勝てないと言うのですか!?」

 

 えりかの指摘に薫子は俯いて暫く黙った。

 

「…核と言う人の悪しき光が生み出してしまった怪獣ゴジラ……古今東西、光を欲したり妬んだりした者達は多数いたけど……ゴジラの様に光その物に怒りを覚えるのは全く聞かないわ」

 

 ゴジラの性質を答えた薫子は何処か辛そうだった。

 

「だがゴジラと戦って苦戦している当時のプリキュア達に妖精達は希望の光を……ミナクルライトを使ったが、その性でゴジラが怒ってしまい協力した人々諸共襲われた。

そして結果、ゴジラは妖精達共々プリキュアを五人(注:厳密に言えば内1人はプリキュアではないのだが、此の事は白神と薫子は知らない)も一挙に殺したのだ…」

 

 元々つぼみ達は各々でゴジラの強大さを知っているつもりだったが、白神の話から自分達が思う以上のだと分かった様だった……そんなの知りたくなかったと思うが…

 

「…しかし彼女達の戦いは無駄ではなかった。

彼女達とゴジラが戦っている間に三原山にゴジラ誘因音波装置が完成して結果的にゴジラを撃退出来る要因を作ったのだからな」

 

「…誘因音波……ですか?」

 

 “誘因音波”の単語につぼみが反応した。

 

「機密事項になっていて私も詳しくは知らないが、ある渡り鳥の鳴き声を元にして作られたゴジラの磁性体を刺激するものらしい」

 

 実は先述のゴジラが原発を襲った後に突然海に引き返したのは、此の渡り鳥の鳴き声に反応して追い掛けたからだ。

 

「此の音波に捕まった為、ゴジラは最も実力に優れていたプリキュア達の最後の1人に重傷を負わせはしたが放置して三原山に向かってくれたらしく、結果その最後の一人が人為的に噴火した三原山の火口に落ちたゴジラを文字通りに命懸けで三原山ごと封印したんだ。

だがその1人も翌日自衛隊に火口付近で倒れているのを発見されて直ぐ病院に搬送されたが、封印の反動に加えてゴジラから受けた傷と放射能が原因で数日後に亡くなった…」

 

 白神は敢えてつぼみ達に言わなかったが、その最後の1人は傷だらけの重傷であった事よりも、ゴジラの放射能による被爆で染色体が失われた為に回復不可能と診断、その結果データ採集の為だけに1度だけ蘇生させられての数日間を文字通りに死ぬまで苦しんでいた。

 因みにゴジラ誘因音波は悪用されるのを恐れた日本政府によって最重要気密として何処かに封印された。

 

「…そんな……と言う事は、かれんさんは……両親処か妖精や仲間達までゴジラに奪われたのですか…」

 

「でも此の時かれんさんは何所で何をやっていたのですか?」

 

「勿論、かれんはフランスに到着直後に急いで東京に戻ろうとしたが、ゴジラ襲撃の混乱で羽田処か日本にすら入れなかった上、誤ってゴジラ目掛けて発射された核ミサイルの成層圏での爆発の影響で発生した電磁衝撃波の影響もあって香港で足止めを食っていたそうだ…」

 

 此で白神は一呼吸置いた。

 

「…そしてかれんが東京に着いた時には既に事は終わっていて、そこで事の次第……英里加達はゴジラに殺され、仲間達はゴジラと戦って全滅したのを知り、自分は両親を守る処か仲間達と共に戦う事すら出来ずにいたのを……自分だけ逃げたも同然の状態であったのを知った。

そして最後の1人の死に際を見届けた後、数日間部屋に引き籠って泣き続けていたよ」

 

「…そんな……そんなの……酷過ぎます…」

 

 かれんのゴジラから受けた余りの出来事につぼみは彼女の胸に抱き付いていたシプレと一緒に泣いていた。

 えりかといつきもお互い各々のパートナーを見詰めて薄っすら涙を流していた。

 

「此の事は当然ゆりさんも?」

 

「ああ、知っている。

何せゆり君が引き籠っていたかれんを説得してくれたからね」

 

「…でも博士、かれんさんはゴジラと戦わなかったのに、何故ゴジラに殺されたと言ったのですか?」

 

 どう考えても何処ぞの勢力が喜びそうなバットエンドへの続きしか予測出来なかったが、いつきが勇気を持って質問した。

 

「勿論、今からそれも話す。

此の出来事移行、かれんはたった1人でプリキュアの使命を果たしていたが、此の時から人が変わってしまったんだ」

 

「何故です?」

 

 いつきの質問に白神は少し沈黙した。

 

「…かれんは……両親と仲間達を奪ったゴジラへの復讐心に囚われて、それを成し遂げる為に全てを注いだのだ。

しかもかれんは完全に自分を見失っていて、実際にその時のプリキュアとしての戦い振りを見たゆり君の話だと酷い有り様だったらしい。

それをゆり君がかれんに咎めた所為で大喧嘩をしたらしい」

 





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