ゴジラvsビオランテ F・battle 作:サイレント・レイ
――― 白神研究所 ―――
白神と薫子からかれんの身に起こった悲劇を聞いたつぼみ達はその後を示す物があると言う部屋に案内された。
そしてつぼみ達が入ったのを確認した白神が部屋の灯りを点けると、そこには大量に並び積み上げられた段ボールが存在していた。
「…博士、開けても?」
「ああ、その為に此所に連れてきた」
白神から許可を得たつぼみ達三人は取り敢えず目の前にあった一つを開いたら…
「っ!?」
「嘘!」
「何で!?」
…その中に本がびっしりと入っていた。
だが問題はそれ等の本のタイトルの全てに“ゴジラ”か“Godzilla”のどちらかの単語が入っていた。
その本の一冊をいつきは手に取って簡単に目を通した。
「…いつき?」
つぼみの目線を気にせず、いつきは次々に本を取っていた。
「……やっぱり此れ等の本はゴジラ関連の研究書や論文書だ」
容易に予測出来た事だが、いつきの言葉につぼみが絶句していた。
「つぼみ! いつき!
他のもみんなゴジラのだよ!!」
更に此の間に他の段ボールを可能な限り開けて確認していたえりかにつぼみといつきが振り向いた。
「…と言う事は此所にあるのは全部ゴジラの物なのてすか!?」
「ああ、そうだよ」
つぼみの質問に白神は頷いた。
「どう言う事ですか!?
何故、此れ等を集めたのですか!?」
かれんがゴジラから受けた仕打ちを考えれば、えりかの質問は最もであった。
「えりか君、此れ等全ては私が集めたのではないのだ」
白神の言葉につぼみとえりかはお互いの目線を合わせ首を傾げた…
「…かれんさんですね……此れ等はかれんさんが集めたのですよね?」
…その二人が驚いたいつきの言葉に白神は肯定した。
「何故です!?
何故かれんさんは此れ等を集めたのですか!?」
「…ゴジラか倒す為ですよね?」
つぼみの質問に白神ではなくいつきが答えた。
そして白神もいつきに頷いた。
「ああーーもう!!
分かんない!!」
理解出来ないえりかが頭を掻きむしりながら叫んでいた。
「孫子曰く“敵を知り、己を知らずんば百戦危うい”……かれんさんは此の前者を実行しようとしていたのですよね?」
いつきの指摘につぼみも納得した様だったが、えりかは頭から白煙を上げてフリーズしていた…
「実の処、ゴジラは意外に分からない事だらけなんだ。
だから復讐心からゴジラの研究していたら逆にゴジラの魅力に飲み込まれる者が多数いるんだよ」
実際に此の手に陥った学者で有名なのが林田信と篠田雄二の両博士であった。
勿論、両者は世界的に有名なゴジラ研究の第一人者であった。
「……だが残念だが、かれんは此の手に陥ってくれなかったがな…」
もし自分もかれんと同じ仕打ちをゴジラから受けたら同じ様になるかもしれないと思ったのか、いつき達三人は何も答えなかった。
「…白神君、やっぱりそれが三原山の封印の補修がされていなかった事に繋がるのね?」
「ああ、あの封印の現状が正にあの時のかれんの心情を表している。
かれんは自分の手でゴジラを倒そうとしていたが、それにはゴジラが封印を破らなければいけなかった。
だがそれは命懸けでゴジラと戦って結果的に封印に至った仲間達の意思を踏みにじる事になる。
その反する事にかれんが出した答えが三原山の封印に何もしないと言う行為だった。
只、此れはかれんが日本から離れて活動拠点をフランスに置いていた事もあるかもしれないがな。
それに私に黙ってアメリカに単身渡って長期間何かをしていたしな…」
白神の言葉に質問した薫子も“やっぱり…”と顔に出していた。
「…ゆりちゃんはもしかしたら此の頃のかれんちゃんの現状を見ていたから仲間を作らなかったのかもね…」
「ああ、かれんとゆり君のプリキュアのコンビ……実現していたら砂漠の使徒をとっくに撃退していたかもしれないしな。
かれんの心情も変わっていたかもしれないし…」
実現しなかった事に薫子と白神が特大の溜め息を吐いたが、つぼみ達はそれを黙って見ていた。
「…でもゆりさんがプリキュアになる前にかれんさんは亡くなったのですね?」
「そうだよ、えりか君。
皮肉な事にゴジラ襲撃から翌年かれんは英理加や仲間達がゴジラに殺されたその日にフランスの爆弾テロに巻き込まれて亡くなったのだ」
「…っ!! あの爆弾テロにですか!?
かれんさんはあのフランスが中東でテロ殲滅戦を始める切っ掛けになった事件に巻き込まれたのですか!?」
いつきに白神は頷いた。
「…でも博士、あの事件はイスラム過激派がやった筈じゃなかったのですか?
アレの何処にゴジラとの関連があるのですか?」
いつきの疑問を聞いた白神は一旦つぼみ達三人を一人一人順に見渡した。
「…君達はあの爆弾テロを何処まで知っているかね?」
逆に返された白神の質問をつぼみ達三人は理解出来ずお互いの目線を合わせていた。
「…中東やアフリカでやりたい放題をやっている欧米諸国への警告だと聞いていますが?」
いつきの言葉に白神は溜め息を吐いた。
「…いいかね、此れは当事者しか知らない秘密事項だ。
私も関係者であったタトプロス君から後日聞いたから分かったのだが…」
白神が一息置き、つぼみ達が息を飲んだ。
「…あの爆弾テロは……本当は日本がフランスに極秘に売却したゴジラ細胞を標的にした出来事だったのだよ」
「「…っ!?」」
「ゴジラ細胞!!? でも何故なんてすか!?」
「ゴジラは恐るべき怪獣だが、逆にその並外れた生命力を解析したいと思う学者や組織が多数いるのだよ」
実は此れは日本政府がゴジラ対策を決める際に頭を痛める問題に繋がっており、ゴジラ殲滅を目指す一派(抹殺派)とゴジラを研究して事前に特定して人的被害を回避しようとする一派(回避派)との決して分かり合えない対立があった。
山根博士と博士の娘と恋仲であった尾形秀人との対立から始まったと言われる此の問題に常に日本政府と自衛隊は振り回されていたのだった。
只、現在は現総理の懐刀である片桐光男と言う官僚によって抹殺派が牛耳っていた。
「実を言うと日本が数回に及んだゴジラの襲撃から比較的短期間で復興出来た理由の一つは襲撃後に日本が回収したゴジラ細胞を極秘に売却して獲得した莫大な資金があったからなんだ。
此の為、各国はゴジラ細胞を得る為に日本政府に色々やり、更にゴジラ細胞を得た国や企業への潰しや研究阻止が行われている。
現にあの襲撃後に西新宿でゴジラ細胞を巡って銃撃戦が行われたからな…」
白神が述べた銃撃戦(通称・西新宿銃撃事件)は各国の特殊部隊だけでなく、ヤクザやマフィアまでもが入り乱れての凄まじいものとなった為に“小さな第三次世界大戦”と言われていた。
因みに此の事件に自衛隊も僅かに巻き込まれたが、各国が争った物以上のゴジラ細胞を回収しただけでなく、破壊されたスーパーX(アメリカも寄越せと言った軍事機密の塊)の回収にも成功していた。
「……じゃあ、まさかあの爆弾テロは…」
「…アレは実際の処はアメリカか中国……大方前者だと思われるが、イスラム過激派に擬装してやったと一部から言われている。
最もフランスは知ってか知らずかは分からないが、口封じ同然で殲滅戦をやったらしい」
因みに後日、此の内の一つ“アメリカが見せかけた”との情報を知った他の組織からアメリカは報復を受け、アメリカもまた長い長いテロとの戦いに身を置く事となった。
「しかもゴジラが三原山に封印された為にゴジラ細胞の価値が爆発的に上がった性で世界各国は闇ルートまで使って手に入れようとしている。
まあ実際問題、学者である私もゴジラ細胞にそれだけの価値がある事をよく分かるがな…」
白神が失笑していた。
「でもかれんさんは本体じゃないと言え、何故憎んでいたゴジラの細胞の所に?」
「…分からない。
私にも何故かれんがゴジラ細胞の所に……しかも仲間達の供養をしに帰国するのを土壇場で止めてまでいたのか分からない。
もしかしたらゴジラ細胞を消そうとしていたのかもしれない」
かれんの身内である白神さえ知らないのだから、最早知るよしなど無かった。
「だがかれんがテロの標的になったゴジラ細胞の所にいたのは事実だ。
結果的にかれんもゴジラの呪縛から逃れなかったのだ」
「…だから……博士は全てを捨てて此所で隠居しているのですね」
白神が頷いた後、暫く全員が沈黙した。
「…そして今、そのゴジラが再び現れようとしているわ」
「ああ、三原山が噴火の兆しを見せたと言う事は封印が解け始めているのだ。
もし今の状態で三原山が噴火したら確実にゴジラが封印を破壊して出現する筈だ」
「…て事は今度は私達がゴジラと戦うかもしれないのですね?」
「いえつぼみ、そうはならないわ。
その前に貴女達で一時封印を破壊して新しい封印を施せばゴジラは出現しないわ」
「大丈夫なの?
私達で封印を破壊しちゃったらゴジラが出てくるんじゃ…」
確かにえりかの不安は最もだが…
「その心配はほぼ無い。
封印を破壊すると言ってもそれは短時間の事だ。
そして何より三原山が噴火さえしなければゴジラは解放されない筈だ」
…その不安を白神が否定してくれた。
「そう言えば、ゆりさんは封印の補修をしなかったのですか?」
「それはゆり君がまだ封印の補修が出来る程の器量が無かったから出来なかったのだ。
そしてゆり君が器量が達しようとしていた時に…」
「…負けたのてすね」
つぼみに白神と薫子が無念そうに頷いた。
「…でも正直な処はつぼみ、貴女達はまだ三人共も器量に達していないけど貴女達三人が一緒になれば少なくとも三原山が噴火してもゴジラが解放されない程の物が出来る筈よ」
「それ位ので大丈夫なのですか?」
「勿論、不安はあるけど今の君達で施した封印でも暫くは保てる。
三原山も噴火の兆しはあるけど別に近い内に噴火する訳ではないからね。
だから今回のは応急的なものとして君達が器量に達しだい改めて封印を施せば二度とゴジラは解放されない筈だ」
「「「………」」」
白神と薫子の言葉を聞いてもつぼみ達三人が不安を消せないでいるのが表情に現れていた。
「大丈夫よ。 貴女達なら問題なくやれるわよ」
「薫子さん、つぼみ君達も気持ちを整理出来ていないみたいだから今日は引き上げた方が良いよ。
私も少し疲れたが君達を麓まで送り届ける事位はやろう」
「じゃあ、お願いするわ」
取り敢えず打ち切りとなり、白神と薫子に続いてつぼみ達も重苦しい空気の中を退出していった。
そしてその去り際につぼみは振り向いてアクア・カレンを悲しそうに見つめたが、残念ながらかれんの声は全く聞こえなかった。