ゴジラvsビオランテ F・battle 作:サイレント・レイ
――― 白神研究所 ―――
「……白神君…」
「博士はどうしたのでしょう?」
「まだ寝てるんじゃない?」
「…それはえりかだけです!!」
「「うん!」」
「でしゅ!」
昨夜からの三原山の現状に事で打ち合わせをする為に白神研究所を訪れたつぼみ達であったが、幾ら呼んでも白神が迎えに来ない事に首を傾げていた。
で取り敢えず白神が留守でない事は確かなので研究所に入ったつぼみ達の前にその白神がガウン姿で現れたが…
「あ、博士……って」
…つぼみ達に声を掛けず(と言うより気付いていない?)に直ぐ脇を段ボールを抱えて走り過ぎていった。
しかも白神が汗だくであった為につぼみ達は一瞬目線を合わせたが何かがあった事は理解出来たので取り敢えず白神を追い掛ける事にした。
そして白神を追って辿り着いた場所では…
「「「「「「…っ!? ああーー!!!」」」」」」
…アクア・カレンが硝子ハウスごと無茶苦茶の土砂まみれになっていた。
「…か……かれんさん!!」
「…つぼみ君?」
アクア・カレンに駆け寄ったつぼみに気付いた白神は、此処でやっと彼女達の存在に気付いた様だった。
「白神君、此の現状はどうしたの?」
「…三原山の噴火の影響なのか、昨夜気付いたらこうなっていたんだ」
「だったら早く……!?」
つぼみに続いてえりかがアクア・カレンを持ち上げたら、その持ち上げた物々の花が一斉に落ちた為につぼみと一緒に悲鳴を上げた。
「…ア…アクア・カレンが枯れかけてる!!」
「えりか、かれんさんが凄く弱っているです!」
花の妖精であるコフレが悲鳴に近い形で言うなればのだから、アクア・カレンの現状は深刻であった。
「……やはり箱入り娘だったか…」
「どう言う事ですか、博士?
何故アクア・カレンが枯れ始めたのですか?
それに“箱入り娘”と言ったのも?」
いつきの質問に白神は目を瞑りながら溜め息を吐いた。
「…前にも言ったがアクア・カレンは未完成でな、極端に免疫力が低いのを通り越して全く無いのだ。
だから綺麗な空気と水でないと直ぐに枯れ始める上に病気に感染しやすいんだ」
「此所に住んでるのはそれも理由だったのですね?」
いつきの質問に白神は頷いた。
「だったら早く薬をやるなりしたらどうなのです?」
えりかの質問につぼみ達も同感の様であったが…
「…残念だがかれんはもう駄目だ。
よりにもよって炭疽病に掛かったみたいなのだ」
「…た……炭疽病ですってぇぇー!!?」
…“炭疽病”の単語を聞いた薫子が顔面蒼白になってつぼみが悲鳴を上げたが、えりかといつきは理解出来ずおお互いの目線を合わせた。
「つぼみ、炭疽病って何なの?」
「一言で言えば植物版の癌みたいなのです!
しかも此の病気は感染力が非常に強い上に予防薬があっても治療薬が無いのです!」
「…っ! 治療薬が無いって…まさか炭疽病は不治なの!?」
いつきの質問につぼみは素早く数度頷いた。
「私も炭疽病の治療薬の開発を試みた事があるけど全く駄目だったわ」
「…そんな…ゴジラが蘇ろうとしている上にかれんさんが死ぬかもしれないなんて…」
「…やはりゴジラが蘇ろうとしているのか?」
「ええ、その事で此所に来させてもらったんだけど…」
薫子が言おうとしている事も分かるのだが……此のアクア・カレンの現状だとね…
「…今三原山処か大島は島民達の避難が始まった性でかなりピリピリしているらしい。
幸いな事に三原山の噴火はゆっくりとだが徐々に終息しているらしいからもう少し後に行った方が良い」
白神達自身どちらを優先すれば良いのかを分かってはいたが、三原山(ゴジラ)より目の前のアクア・カレンの危機が大事であった。
「…博士、かれんさんは此のまま死んでしまうなんて事は無いですよね?」
つぼみの質問に白神は何も答えず唇を噛んでいた…
――― 同・研究室 ―――
数時間後、つぼみ達が引き上げた後も研究室で必死にアクア・カレンを救う手立てを探っていたが、それを一切見つける事が出来ずに頭を抱えて座り込んでいた。
そんな白神の心情を表すかの様に本来は整理整頓されている研究室が書籍や資料が無茶苦茶に散らばっていた。
「……駄目だ。
此のままではかれんに二度目の死を与えてしまう…」
万策尽きた白神は寝不足と疲労に加えて、絶望から集中力が切れた事から意識が途切れようとしたその時…
『……お祖父様…お祖父様…』
「…っ!? かれん!?」
…不意にかれんの自分を呼ぶ声が聞こえて顔を上げながら立ち上がった白神の目線の先にかれんが立っていた!
「…夢か? いや、かれん、お前が何故此所に!?」
表れたかれんは姿こそ人として死ぬ前の白神が知る姿であったが、アクア・カレンの現状の通りなのか、重病の病人の様に痩せて顔色が悪かった。
それもあってか、白神は嬉しさよりも驚きと戸惑いを表情に出していた。
『お祖父様、私を救う唯一の方法が有ります』
「それは本当か!?」
白神にかれんは頷いた。
『お祖父様、昔作り出そうとした放射能を除去する植物を覚えていますよね?』
「…ああ、覚えている。
だがアレには致命的な……っ!
かれん、まさか!?」
白神はかれんが何を示そうとしている事を察した。
そしてかれんも白神に頷いた。
『そうです。 あの植物のを応用すれば私は助かります。
それはお祖父様にしか出来ません』
「…駄目だ!! その方法は賭け率が悪すぎる!」
かれんの提案を白神は怒鳴って否定したが、かれんは悲しそうな目線を向けた。
『…御願いです、お祖父様。
私にはもうその方法しか無いのです』
「…かれん……っ!?」
白神はかれんに何かを言おうとしたが、その直前からかれんの不意に透け始めた。
『頼みます、お祖父様…』
「待て…待ってくれ、かれん!!」
白神の叫びも空しく、かれんは完全に消えてしまった。
白神は暫く黙っていたが、良心ではかれんの提案を否定していたが、それをやるしかないと思い机を強く叩いていた。
――― 防衛省 ―――
「…そうか、大島の島民の避難は順調に進んでいるのだな?」
此の時、統幕議長である黒木以外の自衛隊の上層部の面々は、防衛省の大会議室の一つに集まっていた。
勿論、黒木達が此所に集まっていたのは、三原山の現状であった。
「はい、『おおすみ』以下の第一、第二輸送艦隊に加えて、東京都の手筈で民間の船舶の協力を得ましたので、守備隊や観測班以外の人間の避難は間も無く終了するそうです」
此の報告に黒木だけでなく、他の者達も安堵の息を吐いていた。
「…で、三原山の新しい情報は手に入ったのか?」
黒木の言葉を聞いた高官の一人が、部屋の隅に待機していた二人の部下に目線を送って、“行動する様に”と指示を出した。
そしてその内の一人…九条ひかりはパソコンを操作して大会議室のカーテンを一斉に閉じると同時に、照明を落としてスクリーンを転換し、もう一人である霧生薫はそのスクリーンの前に立って一礼した。
「僭越ながら、今から皆様方に御覧見せる三原山の現状を説明させて頂きます」
当たり前と言えば当たり前だが、ヤングエリートの一人と言え、尉官でしかない若輩者が多数の将官や上級佐官……それも自衛隊の重職を任されている者達に説明するのだから、恐れ多かった。
…で、その間にひかりは三原山の上空映像をスクリーンに映した。
「御覧頂いているの此の映像は、JAXAから太陽観測用の衛星からの三原山の映像です」
薫が説明すると同時に三原山の火口が拡大された上、特殊フィルターが展開された。
「此れは比較用に用意した先週撮影された物でありますが、御覧の通りに何も映っていません。
処が、昨夜撮影された三原山の映像には…」
ひかりが先週の物から切り替えた現在の物にハッキリと映っていた黒点を、薫がレーザーポインターで指し示した。
その薫が指し示した黒点の正体を掴めない為、高官達から疑問の小声が多数漏れていた。
最も黒木の様に何人かは黒点の正体を察しているのか、スクリーンを目を剥いて見つめていた。
「そして此の黒点の一時間後…」
更に切り替えられた拡大映像には黒点が存在していた場所に……彼等、自衛隊が…否、日本が最も恐れる怪獣が身体を丸めている横からの黒いシルエットが映っていた為、高官達は一斉に「おおー…」と声を出してざわつき始めた。
「……ゴジラ…」
「予測していたが、やはりゴジラだったか…」
「しかも奴は生きているみたいだぞ」
そしてそのざわつきの中から、黒点とシルエットの正体である“ゴジラ”の単語が次々に出ていた。
「薫、君達は此の映像から何を推測した?」
その高官達を静めた黒木が薫に質問した。
「はっ!! 我々特殊作戦戦略室は此の映像を解析及び検討した結果、西新宿の戦い後に火口に落下して地底深くに沈んだゴジラが、今回の噴火で確認が取れる程に浮上したと思われます。
又、ゴジラの姿勢に変化が確認出来ましたので、火口内のゴジラは既に活動を始めていると思われ、再び三原山が噴火を起こしたら、確実にゴジラが現れると結論付けています」
ひかりがスクリーンを収納してカーテンを開けた後、薫とひかりが所属するゴジラに関する戦略を立てる事を主とする特殊作戦戦略室の結論に、高官達は再びざわつき始めていた。
「…それで単刀直入に聞くが、何時ゴジラが再出現すると思っている?」
「残念ながら、そこ迄は予測出来ていません」
黒木の質問に薫は無念そうに答えた。
「現在我々は環境省と協同で三原山を観測していますが、三原山がかなり不安定な状態ですので、予測が極めて難しいのです」
薫に高官達は非難的な目線を向けていたが、元々予測が難しい噴火の事を専門家でない薫達に求めるのも酷であった。
最も難しい決断を求められている黒木以外の高官達は、他の者達と話し合っていて、薫に質問するか黒木に進言する者が全くいないので会議の進行が止まろうとしていたが…
「…兎に角、総理にゴジラの警戒レベルを上げる様に進言する必要がありますね」
…此の部屋で只一人背広を纏っていた人物が口を開いた。
しかも此の人物は足を組んで椅子に深く凭れていた事もあって、かなり浮いていた。
「それに此れで予算の無駄遣いと言われなくなりますよ」
最後の言葉に自衛官達は大小差があれど不快感を表していた。
「片桐書記官、貴方もその必要があると思いますか?」
黒木は不快感を表面に出さずに、ふてぶてしさを感じさせる書記官・片桐光男に質問した。
「ええ、此れ等には野党を納得させて警戒レベルを上げる要素は十分揃ってますよ」
片桐は現総理からゴジラ関連の事を一任されているので、彼が了承してくれた事は、事実上政府からの了承を得たのと同義語であった。
「…後は現場の準備だな」
黒木は薫に目線を向けた。
「スーパーX2は操作員の訓練を兼ねた飛行試験を終え、最終整備も間も無く終わりますので、何時でも出撃は可能です」
薫が求めた言葉で返したので、黒木は満足そうに頷いた。
「また海自も既に大島の周辺に潜水艦隊を展開している上、横須賀艦隊も出撃の準備を終えています」
「厚木航空隊も指示があり次第、何時でも出撃出来ます」
「無論、陸上部隊もです」
薫に続いて高官達も次々に準備が整っている事を伝えた。
「…後は抗核バクテリアだな。
アレは全く開発に手が付いていないからな」
黒木に薫が詫びを言おうとしたが、その少し前に入室した者と何かをやりとりしていたひかりが黒木の近くに来た。
「統幕議長、先程白神博士が抗核バクテリアの開発に加わるとの知らせが入りました」
ひかりの報告に黒木処か片桐や高官達も「おお~!」と歓喜の声を漏らした。
「そうか、当代一の白神博士が加わってくれたか!」
「…ですが、博士は二つの条件を示しました」
「……博士は何を示したんだ?」
ひかりは少しの間、沈黙した。
「……博士は…翌日中にゴジラ細胞と篠田雄二博士のオルガナイザーG1の論文を自分に貸す事が条件たと述べたのです。
質問は一切許さないそうです」
前者は兎も角、後者は此の場にいる者達の殆どが心当たりが無さそうだったが、片桐だけはその後者を聞いて渋い顔付きになっていた。
でその片桐に黒木は振り向いた。
「片桐書記官、博士が指定物を二つ共至急用意してくれませんか?」
指定物がどちらも重要物であった為、流石に慎重になっていた片桐は黒木の具申に眉間に皺を寄せていた。
しかもオルガナイザーG1の方は、片桐にとって因縁深い物であったのだから…
「…白神博士はそれ程の人間ですか?」
「はい、博士がいないと開発自体が瓦解します。
最も、既にその傾向が出ていますがね」
最後に黒木は自傷したが、片桐は暫く思案していた。
「…分かりました。
国からゴジラ細胞を預かっている四葉財閥と、オルガナイザーG1を所有している国会図書館には私から連絡しましょう」
ビオランテ登場まで、あと3話
感想・御意見、御待ちしています。
今回アクア・カレンに原作には無かった病魔を感染させましたが、我が天敵である炭疽病が薔薇に感染するかは知りませんので(オイ!)
後、原作では薔薇にゴジラ細胞を交ぜてましたが、チョット無理があるかな~と思ったので、此れも変えています。