IS 双極の兵器   作:黒魔道士ゲバラ

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 IS学園の一日目、後編になります。


九話  異郷の学園 2

  IS学園、放課後

 〚――織斑君、ちょっといいですか?〛[零冶君、こっちに]

真耶が男子二人を呼び止める。

〚えっと……〛

真耶は日本語を話すか英語で話すか悩んでいるようだ、

[日本語で構いませんよ]

零冶が翻訳ソフトを起動する。

〚では……今年度は貴方達二人の他に後二人、男子生徒が入学しています〛

〚えぇっ!?〛

一夏にとって非常に驚きだったらしい。

彼の情報収集能力に疑問が出るが、取り敢えず話を続ける。

〚先ずは彼らと顔合わせをしましょう。その後に――〛

〚失礼します〛

〚ここで合っているか?〛

後二人の男子、隆文とラスティがやって来た。

隆文はスーツ風に、ラスティは非常にラフにそれぞれ制服を改造している。

〚おぉっ?〛

また一夏が驚きを(あらわ)にする。

〚やぁ、君が一人目だね、有澤 隆文です。よろしくお願いするよ〛

〚あ、あぁ。ん? 有澤、ってことは……〛

〚零冶は僕の義弟だね、年齢は同じだけど〛

〚俺はラスティ・ストレイドだ、宜しく〛

〚お、おう〛

簡単に挨拶を交わす。同時に、

〔よぉ、二ヶ月振りだ?〕

〔計画は?〕

〔特には〕

〔解った〕

ラスティと零冶が手短に話をする。

〚あ、アラビア語……?〛

真耶が少し驚く、ラスティと零冶が情報漏洩対策に使った手段は機能していると見て良いだろう。

 〚――っと、全員揃いましたね〛

〚それで? 俺らを集めてどうするんだ、先生?〛

〚はい、皆さんには寮で生活して貰うのですが〛

〚? 先生、俺は暫く自宅から通うって聞いてたんですけど……〛

一夏が疑問を口にする。

〚一夏君、僕達が置かれている状況が分かってる?〛

〚毎日、それも定時に同じルートで外に出るのは、ちょっっと危険だよな〛

〚はい、そうなんです。それで、急いで部屋の準備をしました。部屋は三つに分かれます、どう分けるかは特には決めていませんから、皆さんに集まって貰ったんです〛

 麻耶が四つの鍵を出す。それぞれ“臨時”“臨時”“1025”“1126”と、書かれている。

〚どう決める? その前に問題が有る組み合わせとかあるかな?〛

「強いて挙げるなら俺は日本語を話せないし、一夏に英語での生活は難しいだろうな」

〚そんな位か。ま、()したる問題でもないか。いちいちそれ(翻訳ソフト)使うのもダルイけどな〛

〚織斑君は何かある?〛

〚い、いや。特には……〛

〚なんだ堅いな織斑、もっとゆるく話そうぜ〛

ラスティは適当が過ぎる感じが有るが。

「面倒だ、自由に取って良いんじゃないか?」

〚そうだね、じゃあくじ引きの方式でやろうか〛

隆文が四つの鍵を表記が見えないようにして持ち、三人へ差し出す。

〚俺から引くぜ……お、“臨時”だ〛

〚次、俺良いか? ……“1025”〛

「……“1126”か」

〚と、言う事は、僕の部屋は“臨時”だね〛

〚では、ストレイド君と隆文君が“臨時”、織斑君が“1025”、零冶君が“1126”ですね〛

部屋割の問題は一先ず片付いた。ここで一夏が思い出す

〚あっ、先生、俺、生活用具を持って来て無いんですけど――〛

〚――お前の荷物なら、ここに持って来ている。取り敢えず着替えと携帯の充電器があれば良いだろう〛

一夏の問いには千冬が答えた。

〚ちふ……織斑先生、ありがとうございます〛

千冬は五人に近寄りながら続ける。

〚それと、勿論の事だが大浴場はまだ使えんから注意するように〛

〚ゑ? 何……あぁ、そうか〛

〚えぇ!? そんなぁ〛

〚――織斑がそういう反応を取るのは分かっていたが、隆文は意外と健全な青少年なんだな〛

千冬が冷やかすように言うが、隆文の耳に入る様子が無い。

[いや、織斑教諭、隆文は無類の温泉好きなんですよ]

〚毎日温泉の気分が味わえると思ったのに……〛

がっくりと落胆する隆文、彼がこのIS学園に来た目的の三割程度がおあずけになった。

 〚後は……〛

千冬にはまだ伝える事があるらしい。

[零冶]

[なんでしょうか、織斑教諭]

[お前が今日から申請しているアリーナの使用だが……]

[何か問題が?]

[大アリだ。今日は新学期初日なんだぞ? 実際に武装を使う許可は降りなかった]

[そうですか……。まぁ、致し方ありません、従います]

[(こいつには“従わない”の選択肢があるのか?)場所は“第八アリーナ”で良かったか?]

[はい、そうです]

[なんでそんな()()()()を選択したか分からんがな……]

千冬に“辺境の地”とまでに言わせた第八アリーナは学園の北東の端、アリーナの中で最も本棟から遠いし、南西の寮からも遠ければ、整備室からも遠い、第八アリーナだけ専用の整備室を有する程だ。

「あ、零冶、僕も同行していいかな」

「あぁ、構わない」

「じゃあ俺も――」

「遠慮して貰おう」

「――って早っ! 俺はまだ何も言ってないぞ!?」

「言わなくても大体分かる。お前の戦闘狂(バトルジャンキー)気質に気付かぬ俺では無い」

「お前程だった憶えはないですぅ~」

「ちっ、どうせ付いてくるつもりなんだろ」

仲が良い程喧嘩する、正にそんな感じなのであろう。

〚あぁっと、あはは……〛

一夏は言葉の壁を始めてその身を持って体感した。

〚――織斑、あいつらはもう関係の無い事を話してるから寮に行っても構わんぞ〛

〚そうします〛

 ……はぁ、これからどうなるんだ? 俺の学園生活は

一夏の前途多難()な生活は始まったばかりである。

 

 「――って遠い! と言うか広過ぎだろIS学園!」

「徒歩八分なんて遠くも無いだろ全く」

「あのね、学校内の移動に徒歩八分は意外と長い方だと思うよ?」

 確かに学園内の移動に掛かる時間では無い、国家の血税を使っているだけある。

それぞれの施設の規模が、国家におけるIS戦力の割合が大きい事を示しているようだ。

「で、お前この距離分かった上でまだここ(第八アリーナ)を使う気なのか?」

「そのつもりだ。――既に半年分の利用申請を済ませている」

 ……や、やべぇこいつ、本気だ……

「何を呆けている。ほら行くぞ」

 [――おっ、来たね]

IS学園の各施設にはそれぞれ担当の教師が付いている。

ここ、第八アリーナには教師用の机の上にある盆栽の手入れを行っている女性がいた。

[申請を行っていた有澤です]

[エドワース・フランシィよ、よろしく。

 ――それにしても、新学期初日からこの第八アリーナに利用申請する人が来るとは思わなったわ。

 それも、あんな量の荷物を持って]

零冶(VFA)に来ていたテストの依頼はVACの各装備のテスト。

勿論ISのように量子変換なんて手品が出来る訳では無いので、全て現物で運ばれて来る。

[あはは……、これからもっと増えますよ]

[えぇっ? なんでここ(第八)にはこう凄いのが来るかなぁ]

エドワースの嘆きを余所にVFAを中心として各依頼企業のトラックが着々とアリーナにやって来る。

学園に北門があり(かつ)、正門が西側のためにトラックは特に問題なく荷物を積んで来ている。

「テストは僕も手伝うよ」

「有難う、この施設的な利点から考えて、更に依頼企業が増える。その時も頼りにさせて貰うぞ」

「勿論」

 〚――あの、フランシィさん何かあったん……?〛

第八アリーナの特設整備室から水色のセミロングで眼鏡をしている少女がやって来た。

〚あぁ更識(さらしき)さん、まだ言って無かったっけ。この“辺境の地(第八アリーナ)”に来た学友よ〛

〚よぉ〛

ラスティが気付いたように声を掛ける、が

〚…………〛

隆文がラスティを少し引っ張り、小声で話す。

〚ねぇ、あのとっつきにくそうな子の知り合いなの?〛

〚一応はそうだが〛

ラスティの所属は一年四組。そして今さっき来た少女、更識 簪(さらしき かんざし)も一年四組に所属しているのだが、

〚でも明らかに知り合いって感じでは無いように見えるけど?〛

〚なんでだろうな〛

〚こっちが聞きたいんだけどなぁ……〛

「――おい、隆文、通訳頼めるか?」

「え、あぁうん、引き受けるよ」

零冶と簪の二人が向き合う。

「さて、俺は有澤 零冶だ。これから宜しく頼む」

〚……更識 簪です〛

ごく短く、簡潔に会話が終わる。

[さて、ではテストを始めたい、物資搬入口はどちらに?]

[あんなんで良いの? 挨拶と呼べるかも分からないけど]

[えぇ、問題ありません]

[そう。――こっちよ]

「俺もそっちに行こう」

「じゃあ、僕はデータ収集の準備をしに行こうかな」

ばらばらと零冶達が散っていく。

 ……なんでこんな所に?

簪は一人思うのだった。

 第八アリーナの観客を想定していないドームの中に二機のVACが入ってくる。

「二人とも、問題無い?」

『特に無い』

零冶の乗るBFF製のパーツが主な四脚に問題は無いようだ。

『こっちは重心が少し変だ、かなりリアにずれている』

ストレイド君のアルゼブラ製の軽量二脚はリアにずれ……

「あ、ちょっと待ってて」

管制室に持って来たメモリからアルゼブラの物を参照する。

彼の乗っている二脚は元からそういう仕様のようだ。

「ストレイド君、その機体はコンセプト機みたい、腕の兵装しか付けない高速戦闘用フレームとして設計されてる」

『了解。

 ――て事は兵装付きじゃないとデータとしての価値は無いな。換えて来る』

二脚が踵を返して戻る。

『データは?』

零冶から通信が入る、動作を一つ一つ行って駆動系の確認に理想的な動きをしている。

「うん、順調だよ。滞空時間が予測より少し長い位かな」

『そうか……まぁ動作不良は無し。後は実物を持たないとな……少ししたら上がる』

今日は武装の使用許可が下りなかったから、取れるのは駆動データのみ、それでもこれまでに比べればずっと効率良くデータが取れる。

これで開発のスピードは格段に速くなる。

 ……と言っても、ACの技術は僕達の持っていた技術を再現する後は飽和してしまうからどうにかしなきゃな状態なんだけど

 〚順調そうだな〛

〚はい、この息なら――って義父(とお)さん!? なんでここに?〛

気が付くと背後に義父、有澤 和輝の姿があった。

〚ちょっと近くに来たんでな〛

〚ここの近辺に有澤、及びGA系列の物はなにも無いと思うけど? そもそもここ(IS学園)にどうやったらはいれるのさ〛

〚保護者権限って凄いんだな、ここまで来れるとは思わなかった……分かったからそんな目でみるな。

 高性能なテスト場を見て見ようと思ってな、初日から来ているとは思わなかったが、おかげで実際に確認出来た〛

 (有澤 和輝)は当時孤児院にいた僕を養子として拾ってくれた。

書類上、法的には義父だが僕をまるで実の息子のようにして接してくれる、さっきは高性能なテスト場を等々と言ってたがもし本当なら部下の人も連れてくるだろうに。

「数値の方はどのような感じに……」[あぁ、和輝さん。来たんですか]

[ついさっきね。ここは使えそうかな?]

[えぇ、隆文が持ってるデータが物語っていると思いますが]

零冶の目線がこちらに向く。

「そうだね、少なくとも砂漠だったらここまでのデータが取れないだろうね」

[それは良かった! 仲良くここに入学した甲斐もあった訳だ]

[なに正当化しようとしているんですか、俺にとっては青天の霹靂みたいな物だったんですから。

 これから公の場での発言は、もう少し言葉を選んで下さい]

零冶は不機嫌そうに返すが、

[――まぁ、ここを使えるメリットは大きいですから、一概(いちがい)にも悪いとは言えないんですけど……]

なんだかんだ言って感謝もしているようだ。

 アリーナから駆動音が、ストレイド君が機体を換え終えたようだ。今度は有澤の重量タンク型に機体に搭乗している。

〚? あれっ? なんか早いな……〛

タンクは予想以上に機動力が高い、兵装が無いにしても明らかに速い。

有澤のデータメモリを開くと、

〚……義父さんこれ、仕様変えたの?〛

〚? なにか問題あったか? 予測データでも流石に遅かったからな、こっちの方がいいだr――〛

〚良いわけないよっ!! だって……だって()()()タンクだよ! それも重量型の!〛

〚い、いやしかしだな、あれでは他との連携が上手く取れないぞ?〛

〚そっっっこも踏まえた上で考えた設計だったよ!! 第一均一化を求めたらタンクとしての利点を生かしきれないじゃないか! 元来VACとしての設計を考えるなら――〛

『……オーイ、これデータ取れてんのか?』

「――はっ! ごめん忘れてた、大丈夫、数値は出てるよ、必要な分はもう少しで取り終えるからまだ継続していて」

『OK、じゃそろそろ上がるぞ』

「了解」〚――義父さん、今回は不問とするけど、次からは一度僕に言ってからにしてね〛

〚は、はい……〛

 

 

  IS学園、学園寮に続く道

 

 

 時間は少し(さかのぼ)り、一夏が寮に向かって歩いている、後ろには付かず離れずと言った距離に多くの女生徒が付いて来ている。

 ……同じクラスに男子がいたのは良かったけど、零冶はいつもいるわけではないし、それに

〚初日からこれでは、先が思いやられるよなぁ……〛

一夏の不安は絶えない。

 1025室前。

〚ここか〛

 ……“臨時”ではなく、部屋に名前が有るって事は……ちゃんと作られていた部屋=良い部屋だな?

残念だが一夏の推論は間違っている。

一夏が鍵を使って部屋に入ると、

〚お? おおぉ!〛

高級そうな机にホテルのようなベッド、高校生の寮とは思えない豪華さだ。

 一夏が感嘆していると、

〚――誰か居るのか?〛

女子の声、シャワールームから聞こえる、更に言うとその声は聞き覚えがある。この声は、

 ……マズイッッッ!!

ワタワタと動き始めるが、シャワールームは今通り過ぎた、もはや逃げ場は無い。

一夏の焦燥を余所に、彼女は話を続ける。

〚あぁ、同室になる者か。あんまり遅いから私の部屋は一人部屋かと思ってたよ。

 こんな格好ですまないな、シャワーを浴びていた、

 私は篠ノ之 ほう……き〛

 一夏はバスタオル一枚のみと言う健全な十五歳には少々刺激的な状態の箒と相対した。

〚…………〛

〚…………〛

〚………………〛

〚い……一夏!?〛

〚お、おう!?〛

一夏は動揺とその他いろいろな物によって箒から目を逸らせない。

シャワーの後の上気した肌、運動のおかげか美しく、日本女性らしいスラリとした四肢が――

〚みっ、見るな!!〛

〚わっ、悪い!〛

体ごと百八十度回転させる。

〚なぜお前がここにいるんだ!〛

〚俺はこの部屋の鍵を貰ったんだけど……〛

箒はシャワールームでは無く自分のバッグに跳んだ、手に取ったのは――

――木刀。

〚はあっ!!〛

箒が迷いなく一夏に突きを放つ、

 ……あれっ? 突きは中学では禁じ手じゃなかたっけ?

そんな事考える暇は無いだろう一夏。

一夏は出口へ猛ダッシュ、部屋を出て扉を閉める。

〚はぁ、はぁ、助かっ――〛

扉に寄り掛かろうとすると、

〚ふんっ!!〛

箒の木刀は木製のドアを容易(たやす)く破って突きを放った。

流石に一夏も予想外、飛ぶようにして前に転がった。

〚痛っつぅー、お前、本気で殺す気かっ!〛

言っている間に騒ぎを聞きつけた生徒が人だかりを作る。

〚何何?〛

〚あっ、織斑君だ!〛

〚へぇ、ここって織斑君の部屋なんだ〛

ここは一夏達もいるが、実質的には女子寮と変わり無い。

必然的に彼女達の衣服も薄くなる、それこそ一夏が見ていられなくなる程に。

〚うわぁっ! 箒、箒様っ! 入れて下さい今すぐに! 謝りますからどうかっ!〛

一夏がドアにすがりつく。すると

〚――入れ〛

剣道着に着替えた箒が扉を開いた――。

 

 

  IS学園、学園寮、1126室前

 

 

 一夏らのひと騒動からかなり経った後、零冶がこれから自室となる部屋の前に来ていた。

何も考えずに部屋を開ける前に少し考える。

 ……“臨時”ではなく、部屋に名が付けられている、山田教諭は急いで部屋を準備したと言っていた、更にそれぞれの部屋が多少離れていることから考えて、恐らく元から人がいる部屋に急ぎ当てたのだろう。山田教諭にはもう少し我々の境遇(男子である事)を理解して貰いたいな。

零冶は推論から二点、先客がいる事と、更にそれは男性では無い事を予測した。

よって、ここでの正解は、

[誰かいるか?]

零冶はドアをノックした。

[? はーい、どちら様?]

ドアを開いたのは金髪碧眼の少女だった、幸い英語が通じそうだ。

[俺は一組の有澤 零冶だ、宜しく]

[は、はぁ、ティナ・ハミルトンです]

彼女、ティナは困惑顔だ。

[あー、取り敢えず、今部屋に入れる状態かな]

[えっ? ちょ、ちょっと待ってっ]

 ティナは急ぎ部屋の整理をして零冶を部屋へ。

[えっと……]

[ふむ、“どういう事だか分からない”って顔しているな、まぁ俺もなんだが]

[全くその通りなんだけど、どういう事なの?]

ティナの問いに零冶は手に持つ鍵を出す。

[どうやら俺達は同室らしいんだ]

[えぇ!?」 

[そうだろう、まあ落ち着いてくれ]

ティナが落ち着いた後、

[OK、大丈夫。――それで、あなたもここで生活するの?]

[そうなるな]

 ……おおお! これは二組にはいない男子と仲良くなるチャンス! 彼を見た感じ如何(いかが)わしい事はしなそうだし……

ティナは内心そう思っていると、

[やはりこの状態は問題だよな、一度上に掛け合って――]

[だっ、大丈夫よ、どうせ今言っても時間的に直ぐは解決しないし、そうなったらあなた宿無しじゃない。私は構わないから]

[そうか? すまない、ではそうさせて貰おう]

「えぇ、これから宜しくね]

「――さて、俺は少し散歩に行こうかな]

零冶は部屋を後にする。なにせ、

 ……帰る頃にはきれいにしてくれよ?

彼女の(正確には彼らの)部屋はよくよく見ると少々物が散乱していた……。

 

 IS学園、学園寮の一室。

セシリアは、一人ベランダに出ていた。

 ……今日は疲れましたわ……

それもその筈、あれだけ癇癪(かんしゃく)を起したのだ、セシリアの精神的疲労はかなり蓄積されている。

見上げる夜空は雲一つ無い、セシリアのもやもやした気分とは随分と対照的だった。

 ……これから頑張らなくては、入試主席としてもへこたれるわけにはいかない

空を見ながら無意識に愛機である“ブルー・ティアーズ”の待機状態、青いイヤーカフスに触れる、その瞬間に、

 ……コア・ネットワーク?

ISに於ける無線、コア・ネットワークに通信が入る、それも己のプライベート・チャンネルに。

少し警戒して通信を開く。

(誰ですの?)

コア・ネットワークは声を発する必要は無く、よって会話が外に漏れる事が無い。

『……セシリア・オルコットだな?』

聞こえたのは機械で加工された音声、年齢はおろか、男女の区別も付かない。

(質問に答えなさい、貴方は誰?)

『君への依頼人だ』

(わたくしはレイヴンになった憶えはありませんわ)

 ――“レイヴン”、それは近年新しく開発された大型で強力な個人依存兵器、AC、は落ち目だがKMF、特にはVACなど(ISも一応含まれる)を駆り、正規・非正規問わず大型機械化戦闘を行う傭兵は蔑称として“死肉を漁る者、レイヴン()”と呼ばれる。その大半はVACの事だが。

『レイヴンに出来る程度の仕事を依頼するつもりは無い』

(聞くだけ聞いて差し上げますわ)

セシリアに“依頼”とやらを受ける気は毛頭無い。会話を続けた理由は、

 ……わたくしのプライベート・チャンネルに割り込める所から考えて、かなり大きな組織である可能性が高いですわね……

会話をしながら相手の思惑、ひいては相手がどこの誰なのかをを突きとめる事。

そして、依頼が言い渡される。

『――――――織斑 一夏、または彼の搭乗した機体の撃破』

[えっ!?]

あまりにも衝撃的な内容だった。

『今、ISによって生み出される情勢を崩されては困る、男性でISを使える彼は起爆剤になりかねない、早い内に潰して欲しい』

[ちょ、ちょっと!]

『殺す必要はない、要は男性ISパイロットがただの人間である事を示して貰いたい、模擬戦で撃破する、が理想的なプランだ』

[あなた達、一体何者なの……?]

『依頼は以上だ、前払いとして装備を一つ送った。通信が終了し次第、コア・ネットワークを通じて量子化データと詳細な依頼内容が送られる』

[お待ちなさい! 一つ、条件が有ります]

『……なんだ?』

[成功報酬としてあなたの組織の情報を開示していただきますわ]

『それは依頼の受諾と見てもいいのかな?』

[首輪付きになる気はありません]

『ふん……結果を期待している』

[あっ、お待ちなさい!]

セシリアの言を待たずして通信が切れる、同時に着信が2件。

[なんなんですの……?]

セシリアはぼんやりと虚空を見つめる。

〚あのー、オルコットさん? 何かあったんですか?〛

 ……っは!!

〚いっ、いえっ! ごめんなさい、なんでもありませんわ。

 ――それと、わたくしはセシリアで良いと言ったでしょう?〛

驚きのあまり声に出して通信を行っていたから、同室の者に聞こえていたようだ。

セシリアがさりげなく受信したデータを見ると、

 ……これは……拳銃?

“前払い”はIS用の拳銃、謎は深まるばかりだ。

 

セシリアの静かな戦いはこの時に始まったのである―――。

 

 




 お、終わらない……アニメ版の一話分さえ進まないとは、少し予想外でした。

 本作のセシリアは“チョロイ”なんていわせないぜ! っと言う感じでセシリアさんには
少しシリアスなルートに入って貰おうかな、と思っています。(セシリアスになるかはまた別の話

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