IS 双極の兵器   作:黒魔道士ゲバラ

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 ACVの続編が出るそうです。スペックの欄に“メカカスタマイズアクション”は勿論ですが“リアルタイムストラテジー”としっかり表記されているのが気になりますね。


十話  ナチュラリー・センス

  IS学園、翌日

 

 

 IS学園は全寮制である。

勿論朝食は学園内で取るため、食堂がある。場所は寮から直ぐ、と言うかつながっている。

〚なぁ箒、何時まで怒ってるんだよ〛

〚怒ってなどはいない〛

〚でも顔が不機嫌そうじゃん〛

〚生まれつきこんな顔だ〛

〚はぁ……〛

一夏と箒の二人は絶賛喧嘩()中、やり取りを見るにいつもの事のようだ。

 〚ねぇねぇ、あれが“一人目”の?〛

〚そうみたい。織斑 一夏君〛

食堂は一つしかないからここで生活している生徒、即ち全員だが、ここで食事を取る。

よって誰もが一度はここを通るために男子生徒四人をこの目にしようとして食堂は小満員になっている。

〚あっ、来たよ! 多分有澤兄弟のお兄さんとストレイド君〛

〚あれが“最強”かぁ……〛

ラスティは篠ノ之博士と契約している。更に彼のISはNEXT技術を使った超兵器と化しているため、“篠ノ之博士の首輪付き・最強のISパイロット”などと呼ばれている。ちなみに博士はこのIS学園の国家不可侵の校則に目を付けて学園に居住しているとかいないとか……。

〚―――それにしても〛

〚かっこいいね……〛

やはり外国人はそう見えるのだろうか、ラスティは人種で行くとトルコ人に少し西欧人が入っている、

髪はブロンドでミディアム、彫の深い顔でかなりの長身。

確かに外国の俳優にいそうな感じではある。

〚そう? 私は有澤君の方が良いかな〛

彼は日本の男性としては少し身長が足りないが……後は割愛しよう。ご想像にお任せする。

 彼女らが見ている間にラスティは一直線に注文カウンターへ。

〚おばちゃん、イスケンデルケバブ※一つ〛

  ※トルコの肉料理

〚先ず食券買おうか、そもそもそんなのあるわけ――〛

〚まぁまぁ、外国から来た生徒さんにはよくある事だから。で、イスケンデルだっけ? はいよ〛

〚えぇっ!? あるんですか?〛

ここ(IS学園)にはいろんな国から生徒さんが来るからね。現地の味を再現できてるよ〛

食堂のおばちゃん、恐るべし……。

〚凄いな……僕はB定食で〛

〚おっ、あそこが空いてるぞ〛

ラスティの行った先は簪が朝食を食べるテーブル。

〚なあ、相席良いか?〛

〚…………〛

簪は無言で盆をずらす。

〚有難う〛

置かれた“朝食”に唖然とする簪を余所にラスティはケバブを食べ始める。

 一連の間に零冶が入って来た、隣にはティナの姿もある。

〚あれが“四人目”?〛

〚うーん、なんかパッとしないね〛

この世は美男子で構成されている訳がない、例えIS操縦者であったとしても。

零冶は人種としてはスラヴ人、それに東洋人の要素が加わっている。

手入れのしていない黒髪は癖も入っているのか、整っていない。東洋人の要素が強い顔の眼は長い長い戦闘に生きた生活のせいか据わっているを越して半分死んでいる。

非常に高い身長もかえって不気味な印象を与える。

[うわっ、人がいっぱい……]

[目当ての目測は付く]

鬱陶しそうな顔になる零冶。

[――さて、手早く行こうかMs,ハミルトン]

その言葉にティナがムッとした顔になる。

[あーっと、ティ……ティナ?]

[分かればいいのよ。なーんでいつも堅苦しくなるのかしら?]

[悪かったよ、その位で許してくれ]

ラスティもそうだが、この男、零冶も異国感の漂う人間である。

顔が東洋人のために傍から見ればそうでもないのだが、当たり前のように数カ国の言語を流暢に話されると印象が変わる。

 零冶も真っ直ぐに注文カウンターへ。

[Mrs,昨日頼んだ物はありますか?]

[ほんとにこれで足りるのかい?]

[勿論]

おばさんが差し出したのは二つのゼリー型の食品、所謂十秒メシと言う物、

一つをその場で開封、サッサと胃に収めた。

そこに盆を持ったティナが来る。

[まだ決まって無いの?]

[いや、もう終えた]

[貴方、せめてもう少しは食べた方がいいわ]

[善処しよう。適当に座ろうか]

[聞いちゃいないし……はいはい]

ティナは適当な場所を見つけて食事を始める、

 ……これでやってけるのかしら

一末の不安を共にして。

 〚――ねぇ、更識さん〛

隆文の声に簪はキッと彼を睨む。

その名(更識)で呼ばないで〛

〚悪りぃ悪りぃ、そう気にしないでくれ〛

〚……あなたには言って無い〛

ラスティのフォローは逆効果にしかなっていない。

〚じゃあ簪さん、君は第八(第八アリーナ)の整備室で何を作ってたのかな。整備にしてはパーツが多かったと思うんだけど〛

簪は少し驚き、

〚なんで解るの……?〛

隆文は昨日整備室には入っていない。ではなぜ。

〚君の掛けているそれは眼鏡、ではないよね? 恐らく簡易ディスプレイだ、とするとかなりの情報量、つまりパーツを扱うためだ、よって整備ではない。と思ったんだけど〛

〚……あなたには関係無い……〛

彼女の冷たい言葉に“そう”と嫌な顔せず隆文は応えた。

 不意に拍手が二回、食堂内に響く。

〚いつまで食べているんだ、食事は迅速かつ効率良く取れ〛

白いジャージを着た千冬である、彼女の言葉に促され皆が慌ただしく動く。

〚私は一年の寮長を担当している。――遅刻したらグラウンドを十周させるぞ〛

ここでラスティの脳が考える。

 ……まてよ、遅刻すれば七面倒な授業を無視してグラウンドを十周、ゆっくり走って時間を稼げて外だから誰を気にする事も無く煙草が吸える、これは素晴らし、ん? 殺気!

素早く頭を下げると、先程まで頭があった位置に手が通る。

〚ちっ、――ストレイド、手が止まっているぞ、早く食べんか〛

〚なぁ今舌打ちしたよな!? 今!〛

〚何の事だ? それとも、そうなるような事でも考えていたのか?〛

〚いやぁ、HAHAHA、滅相もない、さ、早く食べないと〛

ラスティの変わり身は早かった。

 

 〚これより、一年最初のISを使用する行事、クラス対抗戦に出場する代表者を決める。

  “クラス代表”とは対抗戦の他、生徒会で行われる会議や委員会への出席など、要はクラス長と考えてくれ。

  自薦他薦は問わない、誰か居ないか?〛

 ……“クラス代表”、現時点で強い者が成れば問題ないか

翻訳画面を見た零冶の判断は合理的だった、

〚はい、織斑君を推薦します〛

〚私は有澤君を推薦します〛

[俺はMs,オルコットを推薦する]

当たり前のように、因縁のある相手を推薦する程に。

推薦された一夏が立ち上がる。

〚ちょ、ちょっと待った! 俺はそんな事やらない……やりたくありません!〛

〚推薦されたからには、選考に加わって貰う。――例え望まなくてもな〛

〚えぇっ!?〛

[但しだ、織斑教諭、俺は――]

〚納得が行きませんわ!!〛

[――出来ないのだが……Ms,オルコット、なんのつもりだ]

セシリアは零冶を一瞥して無視を選択した。

〚そのような選出は認められません! “入試主席”の実績のあるわたくしはともかく、男が珍しいからと言って選出されるのは適切ではありません!〛

[俺は辞退するつもり――]

〚これでそのまま男が選出されるなど良い恥(さら)しですわ!! このセシリア・オルコットにそのような屈辱を一年もの間、味わえと仰るのですか!? 

――選考されるなら、それ相応の実力を見せていただきたいですわね〛

ここまで言われて一夏はセシリアの挑発に答えた。

〚あぁ! やってやろうじゃないか〛

〚決闘ですわ!!〛

[俺はパスで]

[あなたもですのよ!]

 ……俺を巻き込むなぁ――!

零冶は千冬を見るが、

[推薦された以上は、そうだな。

 零冶、お前も参加しろ]

不敵な笑みで返された……。

 これは自分で処理せねばならない。

[じゃ、不戦敗の扱いにしてくれ]

[逃げる気ですの?]

[それで結構、二人で仲良くやってくれ]

一夏は話が終了したと判断する。

〚それで? 分かりやすく戦うんだよな〛

〚故意に負けよう物ならわたくしの小間使い、いえ、奴隷にして差し上げますわ!〛

〚オーケー、ハンデはどれ位付ける?〛

セシリアは拍子を抜かれた顔をする。また直ぐ挑発的な態度に戻り、

〚あら、早速お願いかしら?〛

〚いや、俺がどの位付ければ良いのかと――〛

次の瞬間、

〚ぷっ〛

〚あはははっ〛

〚織斑君、それ本気で言ってるの?〛

〚男が女より強かったのって、ISが出来る前の話だよ?〛

〚もし、男女の間で戦争したら一週間、いいえ、三日間も持たないって言われているんだよ?〛

これが現在のIS国家の問題、“女尊男卑”の実情。ISによる歪んだ感覚。

〚あぁ、そうだった……〛

一夏が“実情”を認識する。

 〈――違う、全く違うぞ織斑〉

ISなんて特殊兵器が無くても男性と渡り合える強い女性は多くいた、誇り高き“鴉殺し”、信念に生きた“ウィン・D”、それに“リリウム”…………。

強さはそんな短絡的な尺度では断じて無い。

〈君達は“引き金の重さ”を知らない。

 ISは強い、下手に使っても無敵の大量殺戮兵器だ。――だが、使う方はどうなんだ? 

 君達は己が手で目の前の人間をただの肉片にする覚悟はあるのか?

 銃って言うのは引き金にたったの250g程度の圧を加えるだけ、たったそれだけで一人の命を奪う。ISでは一度に十人は下らない。その実感を得た上で“殺し”を続けられるのか?〉

しん……と静かになる、翻訳ソフトを開いていない生徒でさえ、威圧によって静まった。

〈更に“戦争”はそんなに甘くない。

 相手が正面から倒せないなら尚更の事。人質、暗殺なんでもありだ。手段なんて選ばない。

 ISに乗らない時は何時暗殺されるか分からない中生き続けて、十人屠るごとに見ず知らずの仲間が一人、報復として消される。正常な人間なら気が狂う〉

それこそが“実情”、戦争の姿。

〈ISを服か何かと取り違えてないか? 殺しの道具、兵器だ。

 そもそも数える程の個人依存兵器にどう“戦争”が出来るんだ。力は……強者はそんな簡単な物では無い。

 教えてくれ、なぜ、なぜそんなに簡単に力を、殺しを、解ったように言う!?

 俺は……私は!!――〉

[そこらへんにしておけ零冶]

千冬が止める。先程までの浮いた空気は無く、水銀の如く重い。

多くの生徒が零冶の言が分からないにも関わらずその威圧に怯えている。訳を見た中に顔を蒼白とする者もいる。

〚零冶の言った事は事実、ISなどの()()には必ずそのような面もある。

 諸君らにはそこも理解した上でISを学んで欲しい〛

千冬が微量ながらフォローを入れる。

[…………すまない]

[話を戻そう、結局お前は辞退か?]

[気が変わった。私も参加しよう]

[ふ、ふんっ! せいぜい頑張る事ですね!]

〚話は纏まったな? それでは勝負は次の月曜、第三アリーナで行う。三人はそれぞれ準備をするように〛[零冶、勝負は月曜にする。もう行っていいぞ]

[はい、失礼します]

 ……気分が悪いな、早い所行こう

教室を後にする。

 

 

  トウキョウ租界、アッシュフォード学園

 

 

 [なぁ、ルルーシュ、お前はどう思う?]

[? 何の事だ?]

[オイオイ、あれだよあれ、“異邦人”。噂になってるじゃんか]

[あぁ……そんな事もあったか]

[無関心な奴だなぁ。ほら、うちにまだ空いた席が一つあるだろ? 俺の隣なんだけど、なんでもブリタニア人じゃないらしいぜ]

[それは何処から来た情報なんだ……? まぁこの御時勢だ。ありえなくはない]

[へぇそうかよ、ったく興味の無い事はとことん適当ってのもどうかと思うぜ?]

言葉の回りが早い少年、リヴァル・カルデモンドとどこか退屈そうな少年、ルルーシュ・ランペルージが話をしている。話題は言うまでもない、“異邦人”、即ち零冶の事である。

 [皆、席についてくれ。お待ちかねの空席、一日遅れの転入生だ]

[おぉっ!! 待ってました!]

[残念だったな野郎ども、転校生は男子だ]

[ちぇー。なんだよぉ]

教室に零冶が入る。

[初めまして、有澤 零冶だ]

[えっ……]

[イ、 イレヴン……?]

[国籍は“日本人”だが人種はロシア人と恐らく中華人だ。これからよろしく頼む]

零冶は生徒らを一蹴(いっしゅう)する。

[と、言う訳だ。有澤はそこの席を使うように]

[解りました]

勿論リヴァルの隣へ、

[よっ、転校生。俺はリヴァル、よろしく]

[改めて、有澤だ]

二人は握手を交わす。

 

 昼、食事時の食堂は賑やかである。

酒場では無いため下卑(げび)た笑いが響くわけではないが、いかにも陽気な気色が窺える。

 食堂の一角、端の他と離れるようにした席にセシリアは座っている。

彼女の気位の高い態度では、友人を作るのに苦労しそうだ。現にこの状態が良く表している。

そのセシリアの方へ向かう男が一人、

〚空いてるか?〛

やって来た男はそう言った。

〚愛想を撒く余裕は空いてませんわよ、“首輪付き(カラー・パイロット)”〛

〚それで結構〛

ラスティが置いたのは卵の乗ったピデ※、早速と言った感じに食べる。

  ※トルコのピザ、舟型

 〚――お前、模擬戦をするんだってな〛

初対面の人間に対しては、実際どうでも良いような話題から始めるのだろうが、彼は躊躇無く本題に入った。

〚何を言いたいんですの?〛

〚英国での資料を見た、どうも気になってな、――お前の装備で勝てるとは思えない〛

〚なっ! 馬鹿にしてますの!?〛

〚いや、BT(ブルーティアーズ)は試作機としてのレベルは高い、()()()()()としては素晴らしい限りだが、例のビット操作は零冶との相性が悪い〛

ビット攻撃における問題の事だ。

だとしても、セシリアには引っかかる点が一つ、

〚仮にそうだとしても貴方がそれを言う意図が分かりませんわ〛

〚言っただろ? ただ気になっただけだ。

 ――それに、随分と面白そうだ〛

不可解な言葉を残すだけ残し、男は去っていった。

 ……首輪付き、わたくしを“試している”とでも? いいですわ、受けて立ちましょう

 

 なぜ零冶が第二学年の教室に入るのか、それは彼のトウキョウ租界にやって来た目的に帰する。サクラダイト技術だ。

 ……1stグレードはサクラダイトには触れない、3rdグレードは時間がない、何せ卒業と共に租界へのパスを失う事が予測される

と言った具合でここに、という訳だ。

[――という訳で噂の転校生、レイジ・アリサワ君に来て貰いました~]

[い、いぇーい?]

[って、何だこの(くだり)は!!]

発言の順番は、リヴァル、同じクラスの生徒にして生徒会メンバーのシャーリー・フェネット、ルルーシュ。

この学園にブリタニア人以外の人間が在籍するのは異質なのだろう。生徒会メンバーのリヴァルが気を利かせて生徒会に入るよう勧めた。

[じゃ、さくっと紹介するわね。私はミレイ、ミレイ・アッシュフォード。お爺ちゃんがここの理事長なの―――]

さくっと紹介を受けた。

 [Ms,アッシュフォードにMs,アインシュタイン、Ms,シュタットフェルト、Ms,ランペルージですね、よろしく願います]

[いいのよ、そんなに畏まらなくとも]

[恐れ入ります。――ではミレイさん、生徒会の業務内容を教えて下さい]

[まぁ、名前のまんまね]

[ときどき会長の思いつきで企画が始まるんだけど、]

[あら、それが楽しいんじゃない]

[全く、それで俺達の仕事はいくら増えたか……]

[今更彼にネガティブな事を言わないの]

 ……?

零冶はこの言を聞き逃さなかった。

[失礼、“今更”? どういう事ですか?]

[どういう事って、ねぇ?]

[ねぇ?]

[もうメンバーの一員でしょ?]

[もう逃げられんな、これは]

[ル、ルルーシュ君、これはどういう……?]

[この流れは、お前は生徒会に入会、それが避けられない流れだ]

ブリタニア人による学園に一人、別の人種が入れば摩擦が起きるのは明白。

その保護と学園へ慣らしを含んでいるのだろう。

[拒否権無し、ですか……]

[学園内における会長の命令は絶対である! なーんてね。

 ――でも、実際はあなた次第よ]

[そう言われたら、入るしか無いじゃないですか]

[じゃ、改めて宜しくね]

 

 〚よぉ、一夏いるか?〛

〚織斑君なら篠ノ之さんと剣道場に行くって言ってたけど……〛

 ……剣道場? ISアリーナじゃ無いのか

〚OK、サンキュ〛

ラスティは剣道場に歩を進める。

 彼は面白そうな事、特に荒事には首を突っ込まずにはいられない。

別の用事もあるが、取り敢えずは、と剣道場に入った。

中では木とも鉄とも言えぬ物の音が響いている。

いくつかの打ち合いの音の後、より大きな音を立てて竹刀が落ちる。

敗北したのは一夏。負かした方、箒の肩は震えている。

〚はぁ、へぇ、はぁ〛

〚どう言う事だ……!〛

〚いや、どうって言われても――〛

〚どうしてそこまで弱くなれる!? 中学では何部に所属していた!〛

〚帰宅部! 三年連続皆勤賞だ〛

〚鍛えなおす。IS以前の問題だ!〛

〚えぇっ!?〛

〚これから毎日、放課後の二、いや、三時間、私が稽古をつける〛

入って早々にこんな会話が繰り広げられるとは思いもしなかったろう。

〚おいおい、ISの事は良いのかよ〛

〚だから! IS以前の問題だと言っている! ……?〛

〚一夏ァ、面目丸潰れだな〛

〚全くだ。というかラスティ、いつからそこに?〛

〚お前が竹刀を落した所からだな〛

〚…………何回目の?〛

〚おいうそだろ〛

〚事実なんだよな。

 おっと、箒、彼がラスティ。こいつは箒です〛

〚一夏、私の扱いがぞんざいじゃないか〛

〚ま、そんだけ気に入られてんだろ。良かったな箒、さん?〛

〚べっ、別に嬉しくなどないっ!〛

 ……あぁ、そういう感じか

かまかけのつもりは全く無かったが、図らずも箒の心の内を垣間見た。

〚ところで、だ。一夏、お前そんなに弱いのか〛

〚剣道はほぼ三年ぶりなんだ、それよりも箒が強すぎるからなんだけど〛

〚いーや、お前が鈍ったのだ〛

〚痴話喧嘩はその位にして、あの代表候補生にどう勝つつもりだ?〛

〚それをどうにかしようと、箒に声を掛けたんだ〛

〚で、先ずは生身でやってみよう、となった訳か。結果は?〛

〚この有様だ。なぁラスティ、どうにか――〛

〚あながち外れじゃねぇな〛

〚ゑ? それはどう言う事でせう?〛

〚日本人、と言うかお前は銃を使った事あるか?〛

〚無いな〛

〚そういう事だ。下手に飛び道具をかじるよりかマシだろうな〛

〚あぁ、そういう〛

ふむふむ、と納得した一夏。

 再度一夏と箒の打ち合いが始まる頃に今度は零冶がやって来た。

二人の様子を少し見て、

「――実物の前に先ずは、と言った辺りか」

「当たり。読みが良い奴だ」

「褒め言葉と受け取ろう」

「違うだろ戦闘狂め」

「それも俺にとっては褒め言葉になり得る」

「ったく」〔それで、要件はなんだ?〕

〔これだ〕

零冶はメモリを手渡す。

〔博士に渡せば分かる、開発依頼だ〕

〔またかお前〕

〔使える物はなんでも使う、それが――〕

〔お前のポリシーは解かってる。

 今度は何を見返りにする気……いや、無くてもいけるか〕

〔資材の分はVFAで持つ、これだけでも彼女は乗るだろ〕

〔だろうな。しかし何処から資金を出した? VFAは軍需にも傭兵にも単独で手を出して無いだろう〕

〔社の財政は既に火の車だ〕

〔それで良く社長を名乗れるな〕

〔週末に少し大きなヤマがあってな〕

〔依頼を受ける前に追加報酬の計算をすると、痛い目に遭うぞ〕

〔成功報酬だから問題無い〕

〔失敗はしない、と〕

〔ヘグッたら破産するまでの話だ〕

〔冗談はよせ、こっちも困る〕

「理解している。――さて、これ(剣道)はどんなルールなんだ?」

「あの棒を使って相手を伸せば勝ち、棒を落させても勝ちのようだな」

「ほう」

 一息ついた所で一夏が零冶に気付いた。

〚お、ええっと〛「やぁ、れいじ」

[一夏君、Ms,篠ノ之、朝はすまなかった]

零冶が頭を下げる。

[いや、いいんだ。なんにんかははんせいしていたよ、あやまりたいともいってたし]

[そうか……]

[きにしなくてもだいじょうぶさ。それより、なんでここに?]

こいつ(ラスティ)に用があってな]

と言った後に零冶の眼が光った、ように見えた。

[一夏君、それ(剣道)をやってみたいんだが]

[かまわないけど、ルールはわかるか?]

[知らなくても問題無い奴とすれば良い]

[俺かよ!]

〚ぬぅ、い、一夏、どういう状況なんだ?〛

〚剣道をしてみたいんだと、竹刀あるか?〛

〚ちょっと待っていろ―――〛

 竹刀を持った二人が十メートル程度の距離で相対する。

「細かいルールは面倒だから、さっきの二つで良いか」

竹刀を肩に担ぐ様にして立つラスティ。

「防具も無し、それで良い」

あろうことか柄ではなく(はばき)と刀身に当たる部分を持っている零冶。

戦いの始まりに合図は不要。同時に、まっすぐ走って距離を詰めた。

 零冶が走る。ラスティは初速をそのまま右手で突きを放つ。

 ……正直な奴だ

走る速度を少し落とし右手に持つ剣先を上に構える。

一切ぶれの無い突きを受けるのは危険、ラスティの竹刀対しに己の竹刀の柄を滑らせる様に当て、左手も用いて軌道を右に逸らす。

相手の重心移動を見切り、左足を軸に、屈むと共に右に回る。

重心が右足に偏った数瞬後にラスティが左に半回転して水平に蹴りを入れる、だがそこに零冶はいない。

零冶は屈んだまま右足を相手が蹴りを入れる軸足に寄せる。

己の胴体を支点にして柄を相手に膝の裏に、

竹刀を持った右手を引いて膝を折らせる。

〈よし、、!〉

ラスティが倒れながらも強引に身をひねり竹刀を振る、右から来る予想外のそれに竹刀を構え――――

 

 バキィィンと言う音と共に零冶の竹刀が折れた。

「あーあ、真ん中から真っ二つだ」

「お前が折ったんだろ」

「じゃ、俺の勝ちか」

「これを折って良いなんてルール無かったが?」

「でも継続不能だろ?」

「ったく……」

折れた竹刀を片づけ始める。

〚なぁ、箒〛

〚なんだ、一夏〛

〚今、あいつらが何やったか分かる?〛

〚竹刀が折れた事位しか分からん〛

達人同士を試合は存外短く決着がつくと言われるが、たったの五秒かそこらで終わるとは。

 ……俺はこんな連中と戦えるのか?

一夏は既に自信を無くし始めていた。

 

 




 織斑君は拙いながらも英語で話そうと努力したようです。
かなりの適応、吸収能力が窺えます。

 オリキャラの外見についてのとこが出て来たので少し書きます。
 ラスティのイメージはトルコですが、ACの世界ではそのエリア、“アナトリア”と呼ばれる地域なんですよね、要はそうゆう感じです。
余談ですが、トルコ人にはヨーロッパ圏に出稼ぎに行ってその後定住した方もいるそうな、ラスティの“西欧”要素はそこから頂きました。
 ヴィクトル(零冶ですよ!)は勿論テクノクラートをイメージしています。
見た目は所謂“醜男(ぶおとこ)”です。誰もが美男美女なだけで構成されるお話だと、どうも薄い感じがしてしまうので(俺の中でだけなんですが)。
やっぱりかっこいいおじさんとか良いですよね(俺の中ry)。
 有澤 隆文はあまり書きませんでした、安定のフロムクオリティです。
キャラクタイメージは中性的、外見のイメージも中性的……にするかな、
あれ? 男性版シャルになってないかな? 
いや、絶対のそっちの趣向にはいきませんけど。
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