IS 双極の兵器   作:黒魔道士ゲバラ

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 第一章  生存戦略
一話  悪運持ちの苦労人


 ――ん? 俺は……そうか“また”死ねなかったのか

 

 起き出した脳で状況を整理する。肉体年齢は十代後半程度、着ているのは安物のスラックスにシャツ、ここは……?

〔動くな!!〕

 アラビア語、どうやらここは中東のようだ。

「ツイてないな……」

〔ゆっくりとこちらを向け!!〕

両手を首の後ろへ、ホールドアップの体制を取る。さりげなく首筋の触れると金属の感触がある、AMSはこちらに来ても己の身体に入っているようだ。

 〔連行しろ、第二尋問室だ〕

……やれやれ、本当にツイてないらしい

 

 

 第二尋問室は二部屋で構成されていた、尋問する部屋とその監視をする部屋の二部屋、これを隔てているのがマジックガラスではなくただのガラスな辺りは随分粗末な作りをしている。

〔一つ質問良いkッッ〕

〔先ずこちらの質問に答えろ〕

大柄な尋問官は一発殴って男を遮ったが、

『構わん、言ってみろ』

 ……ガラスの向こうの指揮官が話の分かる奴で良かったよ

〔さっきあったのはACだよな?〕

『……! あぁそうだ』

ここに来る時に歩行試験を行っていた、あの見た目から恐らくハイエンドノーマルより前の代物であると推測される。

〔この基地の作戦目標は?〕

『分からんのか? 第二次格差戦争だ、我々は敵軍基地を落とすのが目標になる』

 ……紛争直前って事か、重要な情報もこぼしてくれたな、

 〔一つ取り引きしないか?〕

『ほぅ、続けてみろ』

己の外見、見た目十代の所からして、まともに聴いているかは謎だが、今はこれしか、方法が無いであろう。

〔俺が要求するのは金と自由、対価は作戦目標の達成だ〕

『そんな事聞き入れると思っているのか?』

〔準備から実行まで全て行おう、そっちが出すのは金と設備だけだ、失敗してもそちらの有利になるように作戦を組む。そうだな……人集めに三ヶ月、準備に一ヶ月でどうだ?〕

『そんな巧い話があるか。譲ったとしても時間がない、二週間に一週間だ、基地内でどうにかしろ』

〔基地の外には出してもらうぞ、三週間に二週間〕

『餓鬼の遊びに付き合う気は無い』

 ……ちょっと推し過ぎたな、指揮官が難色を示している、札を切るか

『先ず貴様を信用出来る要素がない、残念だが――』

〔ACのプログラムを作ろう〕

『……なんだと?』

〔あのAC、見た感じ、あぁーっとなんて言うか動きが妙に鈍かった。MT(マッスルトレーサー)のをそのまま使っているんだろう?〕

妙に、ではなく凄くだったが。あれ反応速度では戦車にも勝てるか分からない。

更に畳み込みを掛ける。

〔一週間くれ、それを前払いと信用にしてくれ〕

『完成しなければ?』

〔煮るなり焼くなりご勝手にどうぞ〕

『ハッ、一週間だな? 良いだろう。せいぜい上手くここ(基地)から抜け出す方法を考えるんだな、アーカム……』

 その間に拘束を解いてもらう。

 

 

 〔一週間――――良い――――監視――助言者――、アーカム〕

呼ばれたようだ。

[はい、中佐]

[ACプログラムをつくったのはお前だったよな]

[はい、そうです、私が責任者でした]

[そこの坊主はACプログラムで我々の信用を買うつもりのようだ。一週間で作ると提示している]

 ……バカな!? MT用のをAC用にするのだけで一ヶ月かかったんだぞ!!

人型汎用兵器であるアーマードコアは他のプログラムと比較にならない程、難解なプログラム構成の兵器である。今となっては衰退に向かう代物なのだが。

[恐らく一週間の内にここからの脱出を図るだろう、監視を頼む]

[はい、了解しました]

参謀達の内、唯一のスーツ姿を整えて、懐の拳銃を確認する。出来ればこれを使わなければ良いのだが。

 

 尋問室前の廊下で待機していると、スーツ姿の男がやって来た。

〔アーカムだ、よ、ろし、く?〕

英語らしいアクセントを確認した。

「……英語で良いぞ」

[――?]

 ……? 英語が変か? いや、イギリス人か。それにしても妙な反応だな

[何か問題でも?]

[あぁ、いや。すまんな、アーカムだ。これから一週間、君の監視を行う。細かい話はACガレージに行ってからにしよう、名前は?]

アーカムは隠す事無くそう言った。

[ダニーだ、よろしくアーカム]

[あぁ、よろしくダニー]

 

 

 あれから3時間程、俺はここのACの稼働データを見ている。正確には、AMSの脳内コンピュータで処理、記録を行っている。しかし、

[足りないな。アーカム、他の資料は無いのか?]

[その328枚目がラストだ]

[おいマジかよ……]

[ACなんて骨董品(アンティーク)どころか古代兵器化しているんだ、数年前から大型のトライアルには出なくなったよ]

[って事は国での開発は止まった訳だ]

[まだ頑張っている企業もあるが下火だな]

 ……こちらの世界でのACはマイナーな兵器のようだ。今、時代の最新鋭は、ACに取って変わった新兵器、IS(インフィニット・ストラトス)とか言うパワードスーツが台頭している。それによって、世界のパワーバランスが激変、市民の生活にも影響が及んでいるらしいが実際を見ていないため細かくは解らない。

[悪い、話が逸れた。じゃあこれ以上の資料はないんだな?]

[そうだ]

[アーカム、ACの操縦経験はあるか?]

[? 話の流れが解らんが]

[今からデータを取る]

[はぁ!? 何言ってるんだ]

[ちょっとで良いから、頼むよ]

[いやだ。…………わかったやるよ、ちょっと待ってろ]

 

 

 二日目、昨日はアーカムに散々働いてもらった。

これでMTの転用版よりましなのが出来るだろう、己の脳に入っている“記録”からそのまま打ち込んでも良かったのだが、こちらの世界のACの仕様が違うのを考慮して、実際に動くのを観察し、検証した。

更に言えば、実機を見るだけでプログラムを作ったとみせれば、己の価値が多少上がるであろうと見込んだ結果である。

[今日も動かすのか……?]

[いや、大丈夫だ。もう打ち込みに入ろうと思う]

[へぇ、じゃあお手並み拝見って所だな。このマシンを使ってくれ]

 さて、ダニーの名を“天才”に仕立て上げるか。

 

 

 作業の間、ダニーはアーカムにいろいろと聞いていた。

[そう言えば、敵の基地って何処の何なんだ?]

[イギリスだ、英国実験部隊が私達の相手になる]

[実験……例のISのか?]

[そうだ、このままいくと私達はISの実験台になってしまう。建設も決まっていてもう開戦まで時間がない、そこで秘密兵器ACと言う訳だ]

[おいおい、情報が筒抜けだな]

[あぁ、えっと……まぁそうだな、うん]

アーカムは嘘が下手な奴だった、だが国家レベルのセキュリティに入る程の実力者な訳だ、頼りになりそうである。

[まぁ、そう言う事にしておこう。にしてもそのレベルの力ならこれもかなり簡単じゃないのか?]

[私の専門外だ、ACは大き過ぎて手に負えない]

[ご苦労なものだ、じゃあ専門は?]

[ハッキングの分野だ、技術者じゃないのにここに回されてしまったから苦労してるよ]

[じゃあ、本職をやってみないか?]

[と言うと?]

[でかい仕事を計画してる、腕利きのハッカーが必要なんだ。金は山分け、イギリス実験部隊を潰す]

「それはこの基地の作戦目標だろう。別働隊を作るってことかい? 協力ならしようじゃないか]

[契約成立だな]

[あぁ、それで良い]

[よし、終了だ、改めてよろしくな]

[常識はずれな男だな君は……よろしく頼むよ]

 一人目の仲間と握手を交わす。

 

 

 ……さあ、頑張って見るか、打倒IS!!

 

 

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