IS 双極の兵器   作:黒魔道士ゲバラ

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今回はリンクス達からあの人が登場します


三話  英国淑女と合理主義者

  ロシア、とある空港

 

 

 [―それで、これからどうする?]

[イギリス、敵情偵察だな]

四人の男が飛行機を待っている。つかの間の休憩といった所か、それぞれに休息を取っている。

[アーカム、ヴォルクタはどうなったのだ?]

手ぶらのソコロフ、

こいつ(PC)によると、被害者数不明の大惨事になったらしい。収容所のあらゆる施設が破壊されていて囚人達の反乱があった、程度しかわからないようだ]

ノートパソコンを操作するアーカム、

[証拠隠滅までやったのか、ありがたいな]

コーヒーを飲むダニー、

[…………]

読書に勤しむレッジ。

[時間だ、私達は先にシリアだ]

[じゃ、アーカム、引き続き情報収集頼む。レッジ、例の機体換装の件よろしく]

[あぁ]

[分かった]

アーカムとレッジがシリア行の飛行機搭乗口へ、

[我々は英国、ロンドンか……]

ダニーとソコロフはイギリス行の飛行機搭乗口へ歩を進める。

 

 

  イギリス行飛行機、機内

 

 

 〈着いてからの行動プランはどうなるんだ?〉

〈俺はロンドン郊外の基地に偵察、お前は中心部で人探し、この写真の奴を探してくれ〉

ソコロフの慣れているロシア語を使って会話する、

〈分かった、――そういえばダニー、どこでロシア語を学んだのだ?〉

〈母国語だ〉

〈では英語は?〉

〈あぁ、まぁちょっとな……〉

他愛の無い会話が続く。

 

 

  イギリス、空港

 

 

 [ええ、はい、そうです、ありがとう]

特に問題無く入国をパスする。

 〈――お、見えたぞ〉

空港を出るとISの大きな広告がある、

〈――でかいな、これがウォルコット財閥の影響力……〉

〈ダニー、ウォルコットではなくオルコットだ〉

〈さ、行動開始だ〉

〈無視するなよ……〉

 

 

  イギリス郊外、ワトフォード

 

 

 長身の男が丘の上から英軍実験部隊を見ている。

体制は匍匐、手には双眼鏡とレーザー標準器、手元にはペンと手帳、明らかに怪しい……。

これでなぜ基地からのアクションが無いのかと言うと、

〈――目標までおよそ四キロ、意外と遠いな〉

レーザー標準器は基地までの距離を4067mと指している。最新型超遠距離用双眼鏡と強化人間の目ならば容易に観察可能だろう。

 ……さて、ISの力、見極めさせて貰おう

ダニーは期待半分に新型パワードスーツの登場を待っていた。

 突如、戦闘機のような甲高い音を立てて人が飛び立った、現代兵器群を置き去りにしてなおお釣りが来る程のスピードで空を滑りながら、基地から発射される的をいとも簡単にスクラップに変えて行く、その姿はまさに空の王者と言った所か。

〈――――――〉

ダニーの開いた口はISが訓練を終えるまで閉じる事は無かった。

 〈おい、マジかよ……〉

今更ながらに数日前に基地ごと潰す等と宣言した自分に後悔の念を抱く。

 ……マズイな、これは作戦変更だろ

観察して得た情報を事細かに手帳に書き込む。相手の規模、通常戦力の兵力、ISの実地偵察の考察、読み取った事を余すことなく記していく。そしてダニーは気づいて無かった、目にした事の衝撃が大き過ぎて気づけなかった。

 [貴方、何していますの?]

 ……マズイ、気づかれたか

周囲に一般市民が利用するような建造物は皆無、故にこの少女は英軍関係者だろう。そしてこの怪しい男(ダニー)も英軍関係者でなければならない、よって、

[この基地の測量調査を行っておりました]

 大嘘をつく事にした。

 [(胡散臭い男ですわね……)ここはもう移転が決まっていますのよ? なぜ今更調査を?]

[はい、この基地は第三連隊への譲渡が昨日、承認されたためにこの基地の事前調査を行う事となりました。そのため測量による基地の危険度調査を]

[(第三? 北部担当がここ(ワトフォード)に?)それにしては、随分と長い間ISのテストを見てましたわね、その“第三連隊”と関係があるのですか?]

[いえ、申し訳ありません。あまりにも美しかった物で――]

少女の目の色が即座に変わる。

[でしょう! やはりISは完璧な兵器ですわよね! 男達の使う野蛮でがさつな戦車なんかとは格が違うのですわ! 大体――]

 調子が付いて、背を向けて熱弁を振るい始める少女をよそにダニーは静かに、かつ迅速にこの場から退避し始める。

[――全くいい恥さらしですわ! 貴方もそう思うでしょう? あっ、まっ、待ちなさい!]

およそ50mの差が開いている、もはや追いつく事は出来ない。

 ……変な男でしたわね……まぁ警戒する程でもありませんわ

 これがダニーとIS、青い雫(ブルーティアーズ)のパイロット、セシリア・オルコットとの、いわゆるファーストコンタクトであった。

 

 

  イギリス、ロンドン

 

 

 夜になり、賑やかさを増したロンドン、大通りの端で二人の男が話し合っている。

〈――で、見つかったか?〉

〈あぁ、あのバーの中に入ったのを見た〉

〈よし、じゃ行くか〉

 バー“エクトル”は平常通り営業中だ、今日は見知らぬ客が一人カウンターに座っているほかはいつもと変わらずに少々(やかま)しいだけだ。

 また、二人、新入りの客がやってきた。

[隣、いいですか?]

「あぁ、構いません、どうぞ」

返答の、細かくは発音を聴いた後、見知らぬ客達は揃ってカウンターに並ぶ。

少し酒を飲んだ後、唐突に話しかけた。

「フランク・リシェールだな、いや、“ベルリオーズ”と言った方が良いか?」

「!! なんッッ!?」

ベルリオーズと呼ばれた男は凝視して再度驚く、

「君か……?」

「今はダニーで通ってる、驚いたよ、どうやってここに?」

「私の方が聞きたい、何があったかさっぱりでね」

「そうか……。俺はつい先日こっちに来てな、何か分かると思ったが」

「悪いな、無駄足だ」

 「――ところで、ベルリオーズ、お前また働く気はないか? 昔みたいにな」

「ACでか? なら無理だな。ここのACは未だに発展途上だ、ACS(アクチュエータ複雑系)(小型のアクチュエータが自律しながら、相互に関連・連結し、ACを動かす技術)どころかコア理論さえ確立出来てない」

「ハード面ではな、IRS(統合制御システム)(操作を認識、各部に伝達する技術)とFRS(専用制御システム)(IRSから来た情報を各パーツレベルで最適化、実行する技術)は簡単にプログラムが入った。多少は別の機械になった」

「? と言う事は、君はACを持っているのか?」

「ちょっといじる機会があってね、実はそのパイロットをして欲しいんだ。

 俺たちの仕事は、近く始まるであろう第二次ジェンダーウォーで英軍実験部隊の基地を落とす事、もちろんACを用意する」

「ふむ、私で良ければその仕事、受けよう。こちらでは戦闘技能だけでは生きていけないようだしな」

「交渉成立、だな」

握手を交わす、

 「そういえば、君たちは私を追って来たのだろう?

 軍部の者を見なかったか?」

「? 知らんな」

[彼らの事か?]

ソコロフが久しぶりに発言をするが、

「「え?」」

 

 

  イギリス、路地

 

 

 「――おわぁッ! ベルリオーズ、お前何やったんだ!!」

「ちょっと上司との小競り合いがあってな」

 ……明らかにちょっとじゃねえ…………

三人は追いかけられている。

相手は英軍の者達だが、幸い都市の中心部であるためか、殺傷兵器群は使用されていない。

「ベルリオーズ! この後空港に行きたいんだが!」

「では、もう少し敵を撒くか。こっちだ」

「いつまで走れば良いんだアァア!!」

 

 三人の夜はまだまだ続く……。

 

 

 

 ……全く昨日は最悪だった。ベルリオーズめ、あいつ街中を走り回らせて、挙句の果てにゴミ箱に入って敵をやり過ごすなんて選択を取るとは……空港の入国審査に支障が出た

 ベルリオーズとソコロフは先にシリアへ向かった。

アーカムが迎えを行うらしいから恐らく大丈夫だろう。

英軍基地も建設がおよそ5割進んでいるらしい。

仲間集めは後一人が限界、計画を大幅な変更をかける事にしたため、準備が二週間では足りない。

人集めを一週間前倒しして準備に三週間にせざるを得ないだろう、だから、後一人となる。

 カジノ“ナフセット(なっとく)”、アメリカはミシシッピ州の一等地にある、高級ホテルのカジノに(ダニー)は来ていた。

[このテーブルのレートを上げてくれ、サシで勝負したい]

イエス(かしこまりました)サー(お客様)

先ほどスロットで当てたチップを出す。

10ドル分のチップが強化人間の能力(主に眼と反射神経)で1万ドル分のチップになっている。

このまま帰りたい所だが、ギャンブルするためにアメリカまで来た訳ではない。

目の前のディーラーに用があるのだ。

 [――あー、アンダーソン君]

[なんでしょうか、お客様]

[君には、残念ながら犯罪歴があるそうだ]

ダニーがおもむろに取り出したのはアーカムに送って貰った資料、この資料には目の前の黒人ディーラーの素晴らしい“仕事”の実績が書いてある。

相手からは見えてないから捜査資料に見えるかもしれない。

[おい、嘘だろ……]

ディーラーとしての言葉遣いが抜ける程に動揺している。

[この年の仕事は素晴らしいな、特に――]

[捕まえるなら早くしてくれ、連邦捜査局の人間だろ]

[いや、違う。“警告”とスカウトに来た。あんたの犯罪歴のデータがカジノのデータバンクに入る()()()()()()、早くここから消えた方が良い]

なかなか嫌なスカウト方法を、ダニーは使う。

訳すならば、“こちらに来るか、でなければ檻の中か”と言った所。

[……なんでそんな事わかるんだ?]

[友人に魔術師(アーカム)がいてね。それであんたの腕を見込んで依頼をしたいんだ]

[てことは、表の仕事ではないんだろう?]

[あぁ、来るんなら、詳細を説明しよう]

 ……他のメンバーは絶対に来ると踏んだから先に詳細を話したがこいつはどうなるかが分からない、だから少しは警戒――

[どうせ職が無くなるなら、檻の中より裏側に行く方がマシだな。その話乗ったぜ]

 ……する必要は無かった用だ

[交渉成立だな、そういやアンダーソンは偽名だろ? 本名はなんて言うんだ?]

[俺の名前はゴールディだ]

[ゴールディか、よろしく。おっ、20だこれで――]

[ディーラー、ブラックジャックです]

[……今日の稼ぎが全部パァだよ、チクショウ]

[はははっ、お前運悪いな]

 翌日、ナフセットからテーブルが一つ減った。なんでもディーラーのひとりが急に退職したらしい――。

 

 

  アメリカ、空港

 

 

 [ダニー、これからどこに行くんだ? ラスベガスか? それともロサンゼルスとか]

[俺は少し別の用事で一緒に、とはいかないが、ここに行ってくれ]

ゴールディが受け取ったのは、行き先を書いた紙と航空券、シリア行きだった。

[(嫌な予感がする……)仕事の詳細を聞いて無かったな、俺たちって結局何するんだ?]

[ちょっと英軍基地を攻略する]

[おい、嘘だろ……]

[それ昨日聞いた。ほら行け]

[嘘だアァア!!]

 

 一人の男の断末魔を乗せて飛行機はシリアへ飛び立った。

 




今回で仲間集めは終わりです。
これ以上増えると誰が誰だか、な状態になり兼ねませんし。

次回から本格的に英軍基地攻略に動き出します。
ダニーは圧倒的戦力差をどう覆すのでしょうか(要は思いついてない……)。
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