IS 双極の兵器   作:黒魔道士ゲバラ

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 中華と言えばなあの人の登場です。



五話  CF,ind―中華中央重工―

  “第二次ジェンダーウォー、疑問の残る終結”

 

 先月、シリアの“人民解放軍”基地が壊滅、第二次ジェンダーウォーは事実上の終結を迎えた。

基地内で激しい戦闘の跡が残っていたため、ISによる戦闘があったと予測される。

英国の新設部隊、ISチームが、ISによる攻撃作戦であったと声明を出している。

 しかし、関係筋からは、疑問の声が発されている。

第一に基地のISによると思われる戦場痕、ISチームの配備した新型であるティアーズモデルはトライアルにおいてEN兵装のみとなっていたが、多くの実体弾の跡が発見されている。

第二に戦闘後の処理が非常に不可解であった事、ISによる作戦の後は“アラスカ条約”によって、作戦内容の開示が行われる(余談だが各国、各企業はこの開示においてあえて実機のスペックを公開して、他国企業への牽制(けんせい)を行う)のだが、作戦概要に抜けている点が多く、ISのスペックデータも数カ月前のトライアルの物と全く同じであった。

第三に、これが最も疑念を生んだのだが、戦闘後にホムス(シリア西部の都市)で行われた講和会議の内容、イギリスが提示したのは異例の大型譲歩案だった、中東における女性優遇化の波は完全に水際で止まったのである。

 これらの点から専門家らの内部で様々な憶測が飛び交っているが、その真偽は不明である。また――

 

 「ったく、結局解らず仕舞いか」

(ダニー)は軍事系雑誌を閉じた。更に続けて

「にしてもあの中佐、良く講和にこぎつけたな」

『彼は軍人より、政治家の傾向が強かったようだ』

通信からベルリオーズが答えた。

「そうだったのか、俺も見る目が無くなったな……」

『もはや過ぎた事だ。それよりも今は――』

「解ってる、判ってる。そう気負わ無くてもいいだろ、これは勝てる」

――これも勝負といえば勝負だ。

 

 

  中華人民共和国、北京から西へ五十数km、白草畔

 

 

 一か月前の基地壊滅は結局謎のまま。

ベルリオーズは事前に危険を察知して、サッサと退散したおかげで助かっている。

ISにも弱点になりうる点が一つ。ISは非常に高出力な兵器であるが故に、完全なステルス状態に無い得ない。少なくとも現時点において、ISの存在は熟練のオペレータが長距離レーダーを見るだけで事足りる。

 あの後、人質を輸送した。

中佐は満身創痍だったが、“充分だ”と言って報酬を支払った、それも超多額に。

藁にもすがるような思いだったのだろう、男性側の最後の対抗手段だったのだから、それにしたとしてもかなりの額だった、あれを“男気”というのだろうか。

 例のチームは己とベルリオーズ以外もう解散した。

元々、長く馴れ合うつもりも無かったし、そもそも、このように真っ当でない仕事の仲間意識はこの程度が丁度良い。

アーカムからはよく情報を買っている。他は分からないが、元気にしている事だろう。

 そして今、二人で中国に出向いている。

目的はここ(白草畔)で行われる“中華新兵装選考会”、これの重工・新兵器部門だ。

己には資本が必要だ、中国で大口の発注を受けられれば、金と他企業とのコネクションが同時に手に入る。

ベルリオーズとの約束を果たすため、この世界で“NEXT”を作る、そのために――。

 

 

 〘これより識別コードX-ray、コジマ製作所のデモンストレーションを開始します〙

中国語で、後、隠れ蓑の会社名を名乗る。

X-ray(NATOフォネティックコード)は二十四番エントリー、という意味である。

新興企業(と言う設定)なので、そうなるのが順当だろう。

 〘今日我々は、従来の軍事歴に革変をもたらす製品をご紹介しましょう〙

プレゼンテーションは刺激的な方が効果がある。

システムの見方から変えるような物ならなおさらだ。

〘我々が開発したのはACです。しかし、ただのACではない。

 これまでのACとは似て非なる物です。先ず、我々のビジョンを明確にしましょう、結論からお話すれば“ACは兵器である”。

 より実戦的な兵器(AC)へと、より安定的な戦力へと進化をしました。我々のAC、いや、“VAC”は―――〙

 ブースのモニターにはアリーナに入る新型AC現し出された。

全高五メートル、従来のACの二分の一スケール、まるで鉄塊の様なACだ。

〘これまでのACのコンセプトは汎用性の高さを念頭に置いた物です。

 しかしながら、今、その設計理念は足枷でしかない、万能兵器のポストにはISがもう存在している。これは火を見るより明らかです、であればACの進む道は専門的で実戦的な兵器です〙

 黒塗りの中量型AC、ではなくVACは見た目に似合わぬ機動力で動いている。

〘我々は先の目的達成の為に二つの技術を開発しました。ひとつは“コア理論”〙

己もVACで、テスト場に入る。

自分のVACは脚部が四脚である事以外、ベルリオーズのそれと同一だ。

〘ご覧頂いて解るように、二機は脚部のみ“換装”されています。

 各部パーツを共通化して、状況ごとに対応できるようになります。

 パーツごとに製作出来るのでより多くの企業が参入可能です。

 更にこのサイズの為、安価に機体を製造、ACの“配備”が出来ます、ACは決戦兵器で無くなるのです〙

 少しおいて、

〘二つ目はACS(アクチュエータ複雑系)、これは実際にご覧頂いた方が分かりやすいでしょう〙「ベルリオーズ、頼む」

『了解』

ハイブーストを交えて挙動のデモンストレーションを行っていたベルリオーズのVACがこちらを向いて、

――――発砲した。

 俺の乗ったVACの左腕は数十から数百発の弾丸の直撃を受けて装甲が吹き飛んだ。

現れたのは無数のアクチュエータ、生き残ったアクチュエータ同士で再連結、もうVACの左手は握開(あくかい)運動を始めている。

〘ACS、これは特殊な機体制御技術です。これにより、ACの弱点であった内装の脆さは八割解決されました。

 最悪、内装に大きなダメージが回る場合はそのパーツを“パージ”すれば問題ありません。

 更に、ACSによって、より精密な機体制御が可能です。VACは実戦における堅牢さも、手に入れました〙

 また少しおいて、

〘現在、戦場に必要なのはただ“強い”事ではありません。これからの戦場をコントロールすべきは“少数の天才”ではない、“代賛可能な多数の凡人”です。

 それをかなえる“兵器”を、開発しました。我々はここに宣言します。“我々は世界を塗り替える”、これより戦争の姿は大きく変わるでしょう〙

 

「――作戦終了、だな」

「あぁ、どうなるかは解らんが……」

スーツに着替えた二人は発表したブースへ進む。

 ……“代替可能な多数の凡人”で構成される、か。知らない内に俺も企業的になったな……

 

 

 先の発表資料を片手に話し合う者、携帯に叫ぶ男性、ブースは今日一番の活気と混乱に包まれていた。これを起こした張本人は少し離れた所で中国国営開発(要は中国軍部の者)と話していた。

〘君がコジマ製作所の?〙

〘ヴィクトル・グラズノフです、よろしく〙

 メタ的な発言になるが、“ダニー”はもちろん偽名である。

と言うか、非正規戦闘に使った名であるから、ビジネスネームに使う名は変えるべきだ。

ちなみに、今度は正規ルートでやって来ているので昔から使っている名、謂わば“本名”だ。

 〘凰 嘉成(ファン カシン)だ。――それにしても貴社の製品、素晴らしいな〙

〘えぇ、弊社でもこれまでで最高の出来である事を約束出来ます〙

話を続けていると会場の中央、軽兵装・ISのブースがある方から小柄な少女が歩いてきた。

〘ただいまおじさん、デモンストレーション、終わったよ〙

〘おぉ、そうか。――あぁ、失礼。私の姪だ、ISパイロットをしている〙

凰 鈴音(ファン リンイン)よ、アンタは?〙

鈴音は握手しようと手を出す、が

〈?〉

ヴィクトルはきょとんとしている。

〘馬っ、鈴!企業のお偉いさんだぞ!〙

嘉成は小声(?)で指摘する、

〘え?――。すっ、すいませんでしたっっ!! あたしてっきりパイロットの人かと……〙

〘構わない、グラズノフだ。ここでのコードはX-ray、なんでも呼びやすいようによんでくれ〙

〘(グラズノフ・エックスレイ? なんか凄い名前……)じゃあ、分かりやすく“レイ”って呼ばせて貰おうかしら〙

 ……この娘、なにか勘違いをしている。

 〘――話の続きをしましょう。こちらとして、貴社の新兵器VACは非常に魅力的だ、正規の配備を視野に入れた交渉を行いたい〙

〘感謝します。――では実戦配備における説明を…… お話は後程、失礼します〙

 

 ヴィクトルは早足に重工・新兵器のブースへ進む。

今発表をしているのはアクアビット、内容はACの追加兵装で“粒子プライマルアーマー(CPA)”なる物の説明を行っている。

 ……アクアビット……。やはりこちらでも派手にやらかしてるな

 CPA、その構造は自機の前方に特殊な金属粒子を散布、これを制波装置で固定して一時的な防御障壁を作り出す肩部兵装である。

モニタで戦車がアクアビットのACに発射した砲弾がCPAによって、速度が格段に落ちた。のだが、

〈あぁーぁ……〉

流石アクアビット、自慢の紙装甲のおかげでAP危険域を表すアラートが鳴っている。

 ……惜しい……凄く惜しいぞ、アクアビットォ

だが、もう少しすれば疑似PAが完成するかもしれない。

この世界で動くのはヴィクトルだけではない、それが良く解った。

 

 モニタを見る彼にスーツ姿の日本人が近づく。

[君は……コジマのプレゼンターだね?]

情報がほぼ無い中でずばりと言いあてられて、ヴィクトルは少し驚く。

[え、えぇ。何故その事を?]

[この稼業で少し長い方でね、新顔は直ぐ分かるんだ。有澤重工、第42代代表取締役、有澤 和輝(ありさわ かずき)だ]

[コジマ製作所、グラズノフです]

 ……42代、てことは

ヴィクトルは和輝の隣にいる青年を見る。

「あ、有澤 隆文(ありさわ たかふみ)です。よろしくお願いします……」

 ヴィクトルは有澤隆文の事を残念ながらあまり知らない。

GAグループにはよく顔を出していたが、用があるのはいつもBFFだったし、炸薬系の兵装はいつもテクノクラートのロケットで事足りたので有澤重工の人間には面識が無い、逆もまた然りなため、

 ……どう聞けばいいんだ……

二人の間に沈黙が生まれる。

 〘レイ、どうしたの?〙

妙な空気が気になったのだろう、鈴音がやって来る。

「っ!? ――第三世代機パイロット、鳳 鈴音、何故ここに?」

和輝社長が驚きを(あら)わにする。

〘いや、なんでも無いんだ〙

ヴィクトルは“とりあえずスルー”を選択した。しかし、

 ……聞くタイミングを失ってしまったな……

少々後悔もしていた。

 

 

 選考会はもう終盤、デモンストレーションもラスト、キサラギの発表のみだ。

後ろの方で三人が並んで座っている、端からヴィクトル(鈴音の中ではレイ)鈴音、隆文の順だ。ぱっと見れば、少女とそのボディーガードと言った所か。

和輝社長は他にも用があるそうで、先に行ってしまった。三人も割と相性が良い様で、特に問題は無い。

〘――そろそろお開きだな。鈴、また何度かここ(中国)に来るからその時はよろしくな〙

〘もちろんよ、レイ、待ってるわ。タカフミもまたね〙

鈴は席を立ってこの場を後にする。二人になった。ヴィクトルは隆文を見据える。

「僕に、用があるんだね。丁度良かった、僕も君に用があるんだ」

「あぁ。お前はもしかして――」

“あの”有澤 隆文か?とは続かなかった。

「! 緊急アラート!?」

 何者かによる襲撃があったようだ。ヴィクトルの目の色が変わる。

「(なんだか知らないが、これは製品を見せるチャンスか)悪い、急用を思い出した」

隆文も同じ事を考えていたらしく、

「奇遇だね、僕も思い出したんだ」

「後で少しは打ち合わせをしようか、じゃ」

二人はそういうなり自分のガレージに走り出す――。

 

 ガレージではベルリオーズが既に準備を終えていた。

「左腕の換装は終えてある、いつでも出れるぞ」

「よし、さっさと行こう」

(ヴィクトル)はいつもの四脚VACに乗り込み、デモンストレーション用に掛けられていた銃の安全装置(セーフティ)を解除する。

『私も出て良いか?』

ベルリオーズの乗る中量二脚型VACが隣に並ぶ。

「もちろん、来いよ」

ガレージが開かれる。久しぶりの“戦場”だ、知らぬ間に顔がイイ笑顔を浮かべている事に気付く。

結局俺は戦争屋であった訳だ。ただVACで戦いたいだけかも知れない、だが

〈守るための戦闘か……〉

後悔はしない。

 

 敵を視認、距離およそ千、数台の戦車は施設を手当たり次第に攻撃している。

 ……目的はなんだ? こう言う時、得体の知れない物程、怖い物は無い

『敵戦力を視認、殲滅する』

 ベルリオーズ(のVAC)はハイブーストとブーストドライブを使用して敵上方に高速接近、手に持つマシンガンとアサルトライフルで戦車上面の装甲が薄いエリアを撃ち抜く。

俺はその後でショットガンを発射、確実に敵を無力化する。

リコンには未だ無数の敵が表示されている、次の獲物に向かい加速する――。

 

 『――こちら有澤重工、雁行(がんこう)だ』

『おぉ、ワカか!久方ぶりだな』

『ベルリオーズさん、来てたのか』

 ……そういえばそうだったな、ベルリオーズは背面兵装に有澤のグレネードを使ってたっけ。

「じゃあ、あんたは?」

『そうだ。――しかし、貴様が“あの”グラズノフとはな……』

 ……あれ?なんか人変わって無いか?

『ふん、まあいい。レイレナードの切り札と“最後の一人”がいるなら問題ない。正面から行かせて貰おう、それしか能がない』

 ……戦場では、人が変わるタイプか。にしても変わりすぎだろ……

鉄の色をした重タンクACが、敵に正面から当たる。相変わらずの硬さと火力で敵を殲滅する。

 

 敵戦力もほぼ殲滅。予想より敵が少なかった様に感じる。

「妙だな、嫌な予感がする……、二人とも、変化ないか」

『敵影視認にもリコンにも無し』

『レーダー、変化なし。なんだ、これでは削りあいにもならんな』

 こちらに手を振る少女がいる。彼女(鈴音)の元へ向かい外部スピーカーをオンにする。

〘へぇ、これがVAC……〙

〘鈴?中央で何かあったのか?〙

〘なーんにも、あんた達のおかげで被害はここだけに収まってるわ。あたしも出たかったなぁ、上から許可が下りなくってさ〙

 ……好戦的だな。勇敢と見るか、蛮勇と見るか……

〘取り合えずは戦闘終りょ――〙

『マズい!! 敵未確認機接近! 恐らくACだ、そっちに来るぞ!!』

 ……楽な仕事には裏がある、お約束だな。

 

 轟音を伴いACが落ちてくる。

〈イクバールの新型、“無人AC”か、どこに乗っ取られたんだ?〉

〘なんか面白そう――〙

〘鈴、俺の後ろに隠れてろ〙

〘で、でも〙

〘今お前はISを展開出来ない、そうだろ?〙

 ぐぬぬ、と言いつつ、鈴は後ろへ。

「どれくらいで来れる?」

『十秒だ』

『少しかかる』

 十秒、ベルリオーズが来るまで耐えなければならない。

ACが照準を構えてこちらに小ジャンプ。

恐らく着地と同時に撃つだろう。大型ライフルの直撃は不味い、だが避ける事も不可能、ならば

ショットガンを地面に発射、ACの着地点に穴があく。

今のACではコンマ単位での姿勢制御は出来ない。

ACが着地で姿勢を崩す、同時に発射されたライフルも外れる。ACは二射目を構えるが、

『――――――…………!!』

ベルリオーズが間に合い、横からブーストチャージの蹴りを入れる。

 二対一、有澤が来るまで自分の機体装甲が残れば勝ちだ。

ACは動かないこちらを優先的に狙ってくる。

 撃たれながらも、ショットガンとライフルで応戦する、こちらの攻撃も通っているが、それ以上に相手の攻撃が激しい!

「くっ、AP残り40%。有澤! まだか!」

『そいつの足を止めろ!』

 足を止めるにはどうすれば良いか。思い出すのは一つ、“メインブースターを潰す”。

後脚のパイルバンカーを展開、ライフルを構える。狙うは奴の着地時、確実に当てる。

四脚による精密射撃がACのメインブースターを壊す事に成功した。

 即座にACがこちらを向く、優先攻撃度が跳ね上がった様だ。

だが同時に、

――――直撃、直撃、直撃。有澤のグレネードが連射される。

 ……これで終わ……ちっ、まだ生きてやがる! ダメ押しのライフルを放つ――

 

 

 戦場は静かになった、動いたのは鈴のみだ。

〘っつぅ――、大丈夫、レ……イ?〙

ヴィクトルの乗るVACは無残にも大破していた、右腕と左前脚の装甲が破損し内装が見えているし、ヘッドも半分持ってかれている。

 ……あ、あたしのせいだ……あたしが勝手にここに来さえしなければ……

へなへなと崩れ落ちる。今にも泣きだしそうな顔をしている。

〘うっ……?〙

ヴィクトルのVACから音がする。

何度かの打音の後、コックピットが開く。

〘よっと、死ぬかと思った……。鈴、大丈夫――〙

〘レイ――――!!〙

鈴はレイに飛びつく、

〘あっ、あたし、レイが死んじゃったかと、思って、うっ、うわぁぁん!〙

〘…………すなない〙

ヴィクトルは泣いてしがみつく鈴の頭をなでてやる事しかできなかった――。

 

 

 今回の襲撃については現在調査中。(ヴィクトル)はこの世界に嫌われているのだろうか、運が悪いな、だが、もし前の時(人民解放軍基地襲撃)と同じ犯人であれば、相手の狙いは確実にACだ。

IS企業は“最強兵器”の座に踏ん反り返っているだけかと思っていたが、頭を使う連中もいるらしい、しかし

敵の物(AC)を使うとは、見下げ果てた連中だな……〉

 下らないプライドだ。俺は勝つためには何でも使う事を信条としているが敵の物だけは使わないようにしている。

[まあ、勝っただけよしとしようじゃないか]

[和輝さん……]

[所で、今なんて言ったんだ?]

[信じようとした俺がバカだったよ]

 ……和輝さんは良い人だけど、どこか間違っているな……、凄く惜しい

 

 [――ここまでが我々の調査結果だ。緊急出撃を行ってくれた貴社らには感謝している。ありがとう]

嘉成が謝辞を述べる。

[ただ働きにさせるつもりはないよな]

和輝さんが警戒を露わにする。

[も、もちろんだ。君達の製品を正式採用させてもらう流れになっている]

[なら、問題ないな]

 イクバール及びアルゼブラ※にも話を通して、こちらと有澤に有利な提携を組んで貰った。

  ※イクバールとアルゼブラはほぼ同企業。

中国としてもVACの正式採用で関係が持てるからうれしいニュースだろう。ついでにテクノクラートにも声を掛けてVACの開発協力(という名の同盟)を取り付けた。中国を中心とした企業グループの完成だ。

 [鳳氏、物は相談なんだが]

[あぁ、なんでも言ってくれ]

[このVACプロジェクトには既に四社が関わっている。

 生産、開発を統括するシンジゲート※を作るべきだ。あぁ大丈夫、本部を中国に置いてくれて構わない]

  ※シンジゲート、共同販売を行うための企業連合

本部を中国に置くと言う事は、シンジゲートを介した取引は多かれ少なかれ、中国の利益になりうる事になる。所謂“飴と鞭”外交という物だ。

[! ……いいのか? すまない]

[? 何の事だ?]

[良く言う……では、その方向で考えさせて貰おう]

 

 [一件落着だな。グラズノフ君、君はなかなかやり手だな]

[取れる物なら、しっかり取らないと、ビジネスですから]

[若いのに素晴らしい心がけだ]

[そうでもしないと生きていけませんよ?]

[君は……厳しい所を生き抜いてきたんだね……]

[親も、捨てる物も、帰る所も無ければこうもなりますよ]

出来る限り軽めに返す。

和輝さんは良くも悪くも良い人だから下手に心配は掛けられない。

しかし、和輝さんはハッと息を飲んだ後、決意した様に言った、

[グラズノフ君、家の養子にならないかい?]

[え? いやいや――]

[大丈夫、遠慮しなくて良いんだよ。実は隆文も家の養子なんだ]

[いや、そういう事では――]

[あぁ、ヴィクトル・グラズノフでは日本で困るね、中国のパイロットの娘には“レイ”って呼ばれてたっけ、じゃあ零治君だね]

[違くて、ちょっと――――]

和輝さんは良くも悪くも良い人である。

 

 

 “白草畔襲撃事件”から数日、一つのシンジゲートの発足が発表された。

CF,ind‐中華中央重工。

VACの開発元、コジマ製作所改め、VFA‐ViktolFireArmamentを中心とした、有澤重工、アルゼブラ、テクノクラートの計四企業のVAC販売企業連合だ。

 VACの兵器思想は現代軍事の理に叶っており、各国軍部のIS規制条約、“アラスカ条約”の隙間を突く“集団としての戦力”で、正にかゆい所に手が届くような、兵器であった。

 また、CF,indの紳商(しんしょう)な取引体制もあり、VACは瞬く間に世界の軍事産業の舞台に躍り出た。

各国AC企業もVACの開発を始め、VACを使った新しい戦闘の枠組みが作られた。

 

 世界が変化していく予兆が、突如として現れた瞬間である――。




 VACはVのAC、と解釈してくだせう。

 やっとACらしい“企業感”のある話になって来ました。

 有澤 隆文の登場です。ただでさえ濃いキャラクターが更に濃くなってしまった……。
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