IS 双極の兵器   作:黒魔道士ゲバラ

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陸話  双極の兵士

ミッションを説明しましょう

 

依頼主はローゼンタール社

目的は、ミラージュ社の軍需施設、フランスのサン=ディジエ・ミラージュ第三工場の襲撃支援、工場最奥の動力部を破壊してください

 

第三工場は仮想敵の襲撃を考えられている施設ですが

まぁ、所詮は対通常戦力用、VACでは取るに足りない問題です

 

また、同施設では新型兵器の開発が進んでいますが

いまだトライアルさえ出ていない未発達兵器です、これも問題ないでしょう

 

問題があるとすれば、EUを中心とした軍事施設の襲撃事件が多発しています

ですが、標的となっているのはIS関係の施設ばかり、そう気にする事ではありません

 

なお、依頼主は装甲車以上の大型兵器の破壊に追加報酬を設定しています

歩兵戦力の道を確保してください

 

説明は以上です

 

ローゼンタール社との、繋がりを強くする絶好の機会です

そちらにとっても、悪い話ではないと思いますが

 

 ミッションを受託する――

 

 

  フランス、パリから東へおよそ200km、サン=ディジエ

 

 

『作戦領域に到達。頼んだぞ』

[了解]

ヘリとコアの固定具が外れ、VACが降下する。

工場では既に戦闘が始まっている様で砲撃や銃撃の音がする。

[こちらVFA。作戦を開始する]

『君が作戦機だな、よろしく』

 味方の車列を飛び越えて、工場へと進む。

 ――あの後、白草畔襲撃事件の後。自分はVACの技術指導でCFに何度も足を運んだ

 VACの設計思想は“安くて堅牢”、“個体依存性が少ない”の二つ。

故に、ダメージに強くするため、非常に簡素に作られている、要は作りやすい。

そのため、己が行かなくても生産は容易に進むのだが、これは同時に“パクられやすい”事を意味する。

事実、機体制御の基礎を作り上げていたアルドラこと“アルブレヒト ドライス”などは、およそ二週間でこちらより性能の良いACSを開発をした。

兵器産業の特許はあるようで無いから文句は言えない。

 故に、今のVAC産業の需要は“早い者勝ち”状態で穴が埋まっている。

先に言ったアルドラは良い例で、BFFもVACに目をつけて、長距離兵器の範囲を席捲している。

自分は本職の技術者では無いから、アイデアと技術の大枠しか説明出来ない。

よって、新発想の兵器分野をどんどん開発して、優位を保っている。

以前の世界に無かったこれ(VAC)の背部兵装の製作にも成功した。

有澤製のタンクには全部乗せられた、手持ち兵装約一つ半が背面兵装一つに相当する。

それでも、他企業の成長率には勝てない。

本当、どこに行っても技術屋連中は変わらず、貪欲に新しい物を追求し続ける。

 己は、サッサと嘉成氏との会議と取引に行ったが、鈴はPTSDになる寸前まで、精神を消耗していたそうだ。

新人(ルーキー)の誰もが通る道、これを体験して一人前に成長していくのだろう。

 それは実に良い事なのだが、それを機に鈴が自分に対し、よくコンタクトをとるようにになった。

明らかに“友好度”? らしき物が異常になっている。

これが吊り橋効果と言うやつか。

人として、その好意を無下にしたくは無いのだが、

いかんせん、どう接すれば良いか分からない。

常に戦って、“戦争”に生きた身だ。

今更“平和”やら“恋愛”やらになびく資格は無い。

それ程に己の手が汚れている事は自覚している。

 

 工場に大した戦力は見当たらない、予想通り両手の兵装のみで十二分な兵器群だ。

ローゼンタールの意図が分からない。何故わざわざCFグループに依頼したのだろうか

 [こちらVAC、間も無く最深部だ]

『了解だレイヴン、最後まで細心の注意を払え』

[VAC、了解した]

 不安要素が一つ、未だに“新型兵器”を確認していない。

[結局未完成なままか……こちらVAC、最深部に到t――]

『こちらミラージュ、ナイトメアフレーム(KMF)特務隊。直ちに武装を解除し降伏せよ。でなければ実力行使で排除する』

 ……ナイトメアフレーム?何だそれは

『ふん、獣に話は通じぬか。死んで貰おう』

リコンに反応が一つ、上からだ。

 最深部の天井から降ってきたそれは、見た事の無い物だった。

全高はVACと同程度。VACと同じ人型だが、

VACに比べ、装甲は非常に薄く、コックピットが背部に突出している。

また―――

 ……っ! 思考の時間もくれんか

ハイブーストで横に、数瞬後にコイルガンの弾丸が横を過ぎる。

『言った筈だ、死んで貰うと』

敵機が動き始めた。脚部外装のホイール移動を始める。

 柱が乱立する工場最深部を縫うように動きながら戦闘を行う。

ハイブーストがある分回避はこちらに分がある、

しかし、敵機の装甲が薄い分、機動力が凄まじい。だが、

〈まだ未発達、敵ではないな〉

ブーストドライブで柱を蹴り三次元戦闘を展開、見下ろす角度から弾丸を降らせる。

相手は速い、速いがNEXT程では無く、対応可能な域を出ない。

あの薄い装甲ではもう持たないだろう。

『――――――――――――――』

フランス語が聞こえた後、コックピット全体が機体と分離、射出され、工場の天井を突き破り消える。

〈モジュール式脱出機能か……〉

VACとは系統が違う。ミラージュ、こんな物を作っていたとは。

 仕事を終わらせよう。動力部に数発発射、機能を停止させる。

[こちらVAC、動力部の破壊、完了した]

『了解レイヴン、帰投せよ』

[VAC了解]

 ……KMF、一考する価値があるかもしれな――

『待てっ! レイヴン、レーダーに反応があった。恐らくISだ、およそ一分で君が接敵する!』

 ……来たか

 

 

 ミラージュ第三工場最深部は重量兵器による戦闘の跡が残っている。

天井には二つの穴が開いており、壁は複数の弾丸により外が見える。

在るのは建物の中央、一機の四脚型VACのみだ。

 閑散とした空間に、一機のISが入って来た、

例の天井に開いた穴から、今では珍しい、フルスキンタイプのISが。

公的機関でこのタイプのISを開発している機関は無い。

更に驚くべきはそのIS、“NEXT”にそっくりなのである。

 ISはそのままVACへ接近する。そして話し始めた。

「おーい、お前Vi――」

 敵ISが間合いに入って来た。

『おーい、お前V―――』

 トリガーを引く。これを予想していて良かった、アディ※も割と仕事をする。

  ※オーメルグループのミッション仲介人、本名はアディ・ネイサン

有澤重工に無理を言って作ってもらったVACの両背面兵装が起動、

名を付けるならば“KAMIKAZE”と言った所。

背面の二つの直方体が爆発を起こす、

VACを中心の周囲30メートルの破壊。

それは、相手伝々の以前に搭乗者が即死する。

VACには人が乗る兵器だが、自ら壊すと言う使い方がある。

工場に空いた穴から自爆を見届けた俺でさえ爆風で倒れそうになった、

流石にISでも、多少の機能停止が起きる筈。

「こちらVAC搭乗者、車に空きはあるか?――」

狩られるのは飽きた、今度は狩る番だ。

 

 

こちらアーカム、情報を持ってきた

 

例のISの件、調査が完了したぞ

 

場所はスバールバルから南へおよそ400km、ピエルン島だ

恐らくそこにあのISがいる

 

隠蔽を第一にしているが、半要塞化している

下手に行けば、痛い目にあうだろうな

 

あちらの電子系だが……残念ながら浸入さえ出来なかった

まさしく天才だ、あの島にいるのは

 

ピエルン島は自然的な地形が多い、お前が作ったVACでは厳しい所もあるかもしれん

せめて僚機との連携をした方が良いと思うが……

 

こんなところか

まあ、頑張る事だ

 

 ……非人工的地形、か。確かにVACには向かんな――

 

 

  日本、とある研究所

 

 

 [スザク君! スザク君!]

[ロイドさん、どうしたんですか?]

珍しくロイドが走った、何かあるに違い無い。

ロイドは一息ついた後、

[おめでとう、スザク君。僕達も日の目が見られそうだよ]

差し出したのは、一つの箱。大きく“VFA”と書かれている。

[これが何かあるんですか?]

スザクは状況が呑み込めていない。

[……スザク君、新聞とか読まないの?]

少し遅れてやって来たセシルは少し呆れ顔である。

[まぁまぁ、これはねスザク君、君宛なんだ。早く開けてくれないかな?]

言われるまま箱を開けると一つのタブレット端末が、ともあれ起動する――。

 

初見となるな、こちらVFA、ヴィクトルだ

 

君と君のKMFを見込んで依頼がしたい

 

ロシアのスバールバル、ピエルン島へ侵入

私と共同して島の制圧をして欲しい

 

ピエルン島はかねてから違法と思われる兵器研究が行われており

更にはEU圏の施設襲撃の容疑が掛けられている

 

これを捨て置く訳にはいかない

 

もちろん、報酬も用意してある

 

君の力を貸して欲しい、君にしか、出来ない事だ

連絡を待っている

 

 [スザク君! 凄いよこれ!]

[ロイドさん、僕日本語と英語がしか出来ないんですけど……]

依頼はロシア語で語られていた。

[あらら……]

 

 

  ロシア、スバールバル、ピエルン島

 

 

 [そろそろ作戦領域か。いけるな枢木(くるるぎ)君]

『は、はい!』

[よし、計画通りに進めるぞ]

投下される。

 作戦は非常に単純、(ヴィクトル)が先行しVACの重装甲と火力で防御兵装の優先撃破度を上げる。

その間にKMFがこちらのやり残しを片づけつつ、進入路を探索する流れだ。

地表に辿り着く以前に防御兵装が起動する。

 ……やはり気付かれていたか

[作戦開始。敵戦力を潰しつつ、進入路を探索する]

左方にはアサルトライフルを、右方にはライフルを(ちなみにアサルトライフルはローゼンタール、ライフルはBFF製である)。

ACの火力は時にISをも凌駕する。それを喰らったガードメカは一溜りも無い。

『す、凄い……撃ち洩らしが無いなんて』

[頼むぞ、急いでくれ]

装甲にも弾丸にも限りがある。あのISが来る事が分かっている以上、ここで消耗は出来ない。

 『――あった! こっちですグラズノフさん』

VAC対策が為されている、通常VACでは行き得ないポイントだ。

 ……誰だ、誰なんだ? ここまで出来るのは絶対にこちら側の人間ではない俺達の同類……“転生者”、どいつだ?

『何かあったんですか?』

[いや、――そっちだな、下がっていろ]

右背部兵装、テクノクラートのロケットをアクティブ、隔壁へ発射する。

数発で隔壁が破壊される、

 ……見極めねば、ここにいる奴を

 不気味な程静かな通路を駆ける。

『ランスロット、空間を検知しました。気を付けて……』

ランスロットのオペレータが声を発する。

[レーダーにも反応。……ISだ]

『分りました』

 通路を出ると、

――ISがいた。

〈ちぃっ、ふざけやがって……!〉

それはただ構える事も無く佇んでいた、

『待っていた。さ、始めよう』

オープンチャンネルでこう告げてきた。

[言われなくても。いくぞ枢木君]

加速する。最強(IS)との戦闘が始まった。

 距離200、ロック、即座にトリガー。

〈当たらんか〉

『うおぉ!』

枢木が接近戦を仕掛けるが距離を取られて近づけない。

苦し紛れにスラッシュハーケン※を放つも蹴って弾かれる。

  ※肩部兵装、先端に突起のあるワイヤーを射出する。移動にも使える。

今度はISが弾丸を四方八方から降らせてくる、何故一機で十字砲火が出来るんだ、

ハイブーストで回避しても多少の被弾は避けられない。

 ……これがIS、これが俺の敵、圧倒的過ぎる……

VACはその装甲で戦闘を持続させているが、ナイトメアは回避が基本、

相性が悪過ぎる。

 『ランスロット活動限界です! スザク君離脱して!』

『しかし!――』

[いけよ、枢木君。――ここは私が片を付ける]

『ですが!!』

『マズイよ、スザク君! なんだか解らないけど多国籍軍がこっち(ピエルン島)に向かってる! 僕達は逃げなきゃ』

 ……それは私もマズイんだが……

『くっ……ランスロット、離脱します……!』

白兜、ランスロットがドームから離脱する。

『軍めやっと来るのか、マイペースだなぁったく』

通信をオープンチャンネルにする、

[貴様がやったのか!]

『あぁ、そうだ』

と言う事はあのISは、少なくとも世界に対する“大義名分”を持ってる。

己個人としての名が表に出るのはまだ早い。秘匿の内に終わらせねば。

 ……クソ! くそっ! くっそぉ!! 当たればISのエネルギーでも削れるライフルが有っても当たらなければ意味が無い。

 更に言えば、相手はこちらの弱点、“EN攻撃に弱い”と言う四脚の脚部特性を看破して来ている。

まだVACの四脚モデルはこの機体のみ。ここから考えられるのは、

「貴っ様こちらの人間では無いな!」

ハイレーザーライフルを間一髪に避けて問う。

『あーら、なにかだめかしらん?』

 ……こいつ絶対男だ、ふざけてやがる。

〈当たれっ!〉

軽く避けられる。更に左前脚にレーザーがヒット、動けなくなる

〈ちぃっ……〉

左に倒れながらライフルを撃つが流石に当たらん、遂にヘッドを潰され機能停止になった。

 ISの奴の指示に従って、VACから出る。

「すまないな。だがこうでもしないと、どっちかがくたばるまで続くとおもってなぁ、そうだろう? ――“ヴィクトル”」

「っっ、誰なんだ、お前は」

最早意味を為さないバラクラバ※を捨て、そいつに言った。

  ※顔を隠す目的のヘッドガード、ヴィクトルの場合は目出し帽+ヘッドガードで一セット。

「あぁ、そうか」

ISの装備解除したそいつは、

「ラスティ……?」

ラスティ、俺の対極に立つ男だった。

[――やあやあ君がVFAの社長、“ヴィクトル・グラズノフ”だね?]

篠ノ之 束(しののの たばね)、やはりここにいたか」

ヴィクトルの睨みもなんのその、と篠ノ之が続ける。

[時間が無いから手短にいくよ。――なんで私の邪魔をするのかな?]

「邪魔? 何の事だ」

[だからぁ、VACだよV・A・C。あれは私の子(IS)の成長を妨げている、それも意図的なレベルで]

それにさぁ、と続けて

[ここに入り込んでくるのなんて“明確な攻撃の意図有り”だよね? まぁ、手は打たせてもらったけど]

もう外から艦隊の音が聞こえている、突入のタイミングを窺っているのだろう。

[じゃあ、君の目的を教えてもらおうか。何のためにこんな事を?]

ヴィクトルは少し間を取って言った、

「――人類種の栄光のためだ」

ラスティは気付いた様で、ガタッと席を立つ。

「! まさかお前“あれ”を!?」

「あぁ。故にISには本来の役割に戻ってもらう」

束は気に障ったらしく

[なんなのさっ!! 一体――]

「篠ノ之 束、ISとは何だ?」

[宇宙活動のためのマルチフォーム・スーツだよ! それがなにか――]

ラスティが止めに掛かる

こいつ(ヴィクトル)はISを宇宙進出の足がかりに、すなわち()()()()()をさせたいんだよ」

ヴィクトルが引継ぎ、

「現在のISの使われ方、国の運用方針は間違っている。このままではいずれ宇宙(そら)への道は絶たれ、人々はこの(地球)の中で壊死してゆくだろう。私はそれをよしとはしない、協力して欲しい」

束はふーんと聞いた後、

[じゃあ、なんで襲撃なんて方法を採ったのかな?]

「場合によっては排除するつもりだった」

ヴィクトルに取り繕うと言う考えは無かった。

[へ、へぇーそうだったんだ]

束の目が怖い、彼女は続けて

[まぁ、いいよ。別に邪魔する気が無いなら協力してあげても良い]

「ふむ、であれば――」

ヴィクトルは束に遮られる、

[待った、まだ主導権は私にあるよ。

 艦隊は私を救出するって“てい”で来ているんだ、君の立場は私が握っているんだよ?]

そうだった

「……全く小賢しい女だ」

[君は無遠慮で無愛想だよ]

「お前ら仲良いの?」

[「それは無い」]

 [――っと、話が逸れたね。先ず君のプランを言ってみてよ、私はそれに加えていくから]

「解った。では――」

ヴィクトルが手短に計画を伝えた。

[うんうん、問題は無さそうだね。後は――]

束が計画を付け足す。ヴィクトルは次第に疑念が生じてゆく。

[これで完ぺきでしょ]

「いや待てそれは――」

[あっれー良っいのっかなぁー]

束がニヤついた顔でヴィクトルを見る。

「チッ、わかった……」

[へっへーん、じゃあその方向でお願いするよ]

 

この選択が吉と出るか、凶と出るか――。

 




 これで本作品の導入部分、世界観を表す序章の終了です。

 ヴィクトルと篠ノ之 束の“計画”が本作品の中核を成します。
この計画の内容を推理しつつ、話を読んで頂ければより楽しめるではないかなと思います。
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