やはり俺の真・恋姫†無双はまちがっているฺฺ   作:丸城成年

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第56話

 様々な苦労を乗り越え(れん)の説得に成功したところで馬に乗った冬蘭が戻って来た。

 

「上手くいったみたいですね」

「おう」

 

 冬蘭は俺に声を掛けた後、馬から降りて(れん)へ軽く頭を下げた。

 

「八幡さんの部下で曹純と言います」

(れん)

「え、それ真名じゃないですか。真名で呼んで良いんですか?」

「八幡の部下ならいい」

 

 冬蘭は困惑した顔でこちらを見る。その表情は「どんな非道な脅迫をしたら、この短時間で呂布を手懐けられるんですか?」とか考えてそうだった。

 違うよ。俺がやったのは虎豹騎に包囲させたり、投網やトリモチを投げさせて動きを阻害しようとしたり、関羽と張飛をけしかけただけだから。後は君はもう孤立無援なうえ、こちらに付かなければ延々と嫌がらせをすると言っただけだ。

 うん、疑いようもないくらいクソ野郎だな。もし呂布が女騎士だったら「くっ、殺せ」と言ってたはずだ。ちなみに姫騎士なら「あなたって本当に最低のクズね」と言ってくれただろう。我々の業界ではご……いや何処の業界だよ。そんな修羅の国に所属した覚えはないぞ。

 冬蘭のこちらを窺うような視線に結局俺は気付かないふりをした。

 冬蘭は一瞬呆れた表情をしたが、すぐににこやかな顔を恋へ向けた。

 

「では私のことは冬蘭とお呼びください」

 

 恋は小さく頷く。

 冬蘭と恋の顔合わせが終わったのを見て、関羽が声を掛けて来た。

 

「我々はそろそろ戻ろうと思います」

「そうか、今回は世話になったな」

「いえ、今までの借りを返したまでです」

「出来ればまた美味しい物が欲しいのだ」

「こら鈴々」

 

 俺と関羽の会話に割り込んだ張飛に関羽の軽い叱責が飛ぶも、お互いただの軽口だったようで険悪なものは感じない。作戦成功の達成感によって場の空気が弛緩しているのだろう。

 張飛の言った美味しい物というのは、多分黄巾党討伐の際に分け与えた糧食のことだな。どう見ても資金難な劉備達からすると、うちの糧食はご馳走だったようだ。しかし甘いな。あれから料理上手な流琉が加入して、うちの食糧事情はさらに向上している。それに俺の現代知識を利用すれば保存食の種類も増やせるので、今後俺達の糧食はさらなる高みへと登っていく予定だ。

 圧倒的じゃないか。わが軍は。あっ、これ死亡フラグだわ。というわけで少しでも生存率を上げる為、この頼りになる関羽達の好感度を稼いでおく。

 

「虎牢関の攻略が完全に済めば一旦休憩が入るだろ。礼としてその時に何か差し入れする」

「言ってみるものなのだ」

「……申し訳ない」

 

 満面の笑みを浮かべる張飛とばつの悪そうな関羽。

 また餌付けである。物で釣ってばっかりだが、他に有効な手段が無いから仕方ない。知ってる? 会って話をするだけで好感度が上がるのはゲームの中とイケメンだけなんだよ。なんなら俺の場合、会話をしただけで好感度は下がる。何それクソゲーなんだけど。アプデも無いしクソメーカーだな。

 

「では我々はこれで」

 

 関羽は一度頭を下げた後、恋へ視線を移す。

 

「機会があればまた手合わせを」

「今度は一対一でやるのだ」

 

 関羽は闘志が漲った目で恋を見つめている。そこに張飛の弾んだ声が割り込んだ。どちらも武人として絶対的強者である恋へ挑戦したいというチャレンジ精神からの発言のようだ。

 恋は二人を見た後、すぐ興味を失い視線を外した。

 

「何度やっても、同じ」

「なっ!?」

「むー、鈴々はまだまだ強くなるのだ!」

 

 関羽達を歯牙にもかけない恋に関羽は唖然とし、張飛は抗議の声を上げる。それでも恋が反応を示すことはなかった。流石に関羽達もキレるんじゃないかとハラハラしたが、それは杞憂に終わる。

 

「私達は今より腕を磨き、貴方に挑むのに相応しい強さを身につける。必ずだ」

 

 キレるどころか関羽は活き活きしている。平塚先生が好きそうな熱血少年マンガのノリで俺には付いていけない。拳で語り合ったり、強敵と書いて【とも】と呼んじゃう作風は俺とは相容れない。いや、マンガやアニメとしてなら良いよ。でも俺自身がやるのは勘弁である。平塚先生も合コンや見合いの場では、拳なんて無力だと気付いているはずだ。結婚出来ないという現実に、抵抗出来ますか。拳で。

 かつての恩師の身を案じる俺に気付くことなく関羽達は凄く良い顔で帰っていった。まあ、今のところ変に関係がこじれた訳じゃないから良しとするか。

 さて俺に任された仕事は終わり戦いの大勢(たいせい)も既に決している、とはいえ勝手に休むのも良くない。一応手伝いが必要な所は無いか確認して置くか。確認するだけで手伝うとは言っていない。

 

「などと言いつつ身を粉にして働く八幡さんなのであった」

「縁起でもない内容を付け足さないでくれ。って」

 

 不吉な未来予測をした冬蘭に俺は、ツッコミを入れた所でハッと振り返る。

 まさかコイツ、俺の心を。

 

「八幡さんの考えることなんてお見通しです」

「こわっ」

「嘘です。出来るわけないでしょう。普通に声が出ていました。ブツブツ呟くのは気持ち悪いから止めた方が良いですよ」

 

 心は読めなくても、心にダイレクトアタックは出来るのか。フレンドリーファイアは止めようね。俺のライフはもうゼロだから。

 俺の願いが届いたようで、冬蘭からの精神攻撃は終わった。

 

「それで、えーと、残っている敵勢力といえば、あとは虎牢関に籠っている敵兵だけですね」

「主力を失ったのにまだ抵抗しているのか」

「まあ戦力的に無理があるので、敵が愚かでなければすぐ撤退か降伏をするんじゃないですか」

 

 相手はもうほぼ詰んでいる状態だ。放っておいてもこちらに不都合はない。しかし相手の行動を待つのではなく、こちらから働きかけた方が色々利点があるかもしれない。

 名の知れた恋や張遼が離反したと知れば、虎牢関に立て籠もる敵もこちらに下るかもしれない。そうすればこちらの被害は減り、兵の補充にもなる。それに虎牢関を迅速に攻略出来れば、本命である董卓に態勢を整える時間をやらずに済む。あと、つい先ほどまで恋にとって味方だった者を討つところを見せなくて済むなら、それに越したことはない。

 俺はそんな事を考えながら傍らにいる恋の様子を窺うが、彼女のお世辞にも豊かとはいえない表情からは何も分からない。仲の良い者がいるとしたら、心配くらいしそうなものだが。

 

「なあ、虎牢関に恋の知り合いはいないのか?」

「……いる」

「あー……大して仲が良い相手じゃないのか?」

「ねね。家族、みたいなもの」

「それを早く言え」

 

 全く気にする様子が無いから多分親しい者は虎牢関にいないのだろうと思いつつ、一応確認したらまさかの答えでついツッコミを入れてしまった。

 コイツは何を考えているのか全く分からん。家族みたいな相手が不利な戦況に置かれているのに、なんで動揺もせず普通にしていられるんだ。のんき過ぎるだろ。

 

「急いで虎牢関の敵兵に降伏させに行くぞ。こっちの勝ちはもう揺るがない。いつまでも敵側に属していたら死んじまうかもしれん」

「ねねは賢い、多分もう撤退している」

「可能性の話だ」

 

 もし俺がその立場なら撤退しない。虎牢関に俺がいて、小町が外に残っていたら俺が先に逃げるなんてありえない。今の八幡的にポイント高い。溜まったポイントの行き場が無いのが悲しいところ。

 虎牢関にいる恋の家族みたいな奴も、恋が寝返ったことを知らなければ徹底抗戦するかもしれない。

 

 

◇◇◇

 

 結論から言えば、恋の家族みたいな奴は虎牢関に残っていた。それも俺が危惧した通り徹底抗戦のつもりで、だ。ただ幸いだったのは、恋がこちらにいるのを見た瞬間抵抗を止めたことだ。 

 

「恋殿~、ん、何かべとべとしているのです」

 

 小柄な少女が恋に抱き着く。彼女が恋の言っていた家族みたいな相手らしい。真名は多分【ねね】で、名前は陳宮。うーん陳宮ね。俺の微妙な三国志知識では詳しいことは分からない。聞いたことがあるような、ないような。確か呂布の軍師的なポジションだったか。

 

「で、何故陳宮は恋に抱き着きながら、俺を呪い殺さんばかりに睨んでいるんだ」

 

 恋がべとべとになってしまっている原因を作った事は素知らぬふりをし、陳宮に聞いてみる。バレなければセーフ理論。サッカーとかでファウルを取られなければ問題ないって奴、プロや部活ならそれで良いかもしれないが、体育授業のサッカーで服引っ張たりするのは止めとけ。嫌われるからな。ソースは俺。中学の頃の俺はまだ世の中を理解していなかった。運動神経は悪くなかったから体育で頑張り過ぎてしまった。プロの試合とかならユニフォームを掴むのなんて良く見る光景なので、ついやってしまったのだ。そして付いた渾名が【卑キョヶ谷】。あれ? ヒキガエルよりマシだから問題無いのか。

 

「そちらこそ誰の許可を得て恋殿の真名を呼んでいるのです!」

「恋」

「れ、恋殿ぉ~」

 

 陳宮が強い口調で俺に突っ掛かって来たが、恋の一言でその勢いは急降下した。

 ちょっと考えれば分かることだろ。恋本人が許可してないのに、俺が真名を勝手に呼んだら間違いなく肉塊へジョブチェンジしてしまうぞ。話しかけても「へんじがない、ただのしかばねのようだ」って表示されるようになる。

 

「恋殿、このような怪しげな男に気安く真名を預けるなど軽率ですぞ」

「いい。八幡はご飯や住む場所、用意してくれる」

「そんな物で釣られるのは駄目なのです」

「ご飯は大事」

「それはそうですが、簡単に信じるのは危険なのです!」

 

 陳宮が心配するのは分かる。正直簡単に信じ過ぎているきらいがある。とはいえ俺がもっと警戒しろと言うと、それはそれでおかしな話になる。

 

「疑うのは当然だと思うが、こっちは嘘を吐く必要なんて皆無だからな。最強の武将がこちらについてくれるなら、衣食住や金なんかを惜しんだりしないぞ。それにそちらはそちらで勝ち筋がもう無いんだから、特別な理由が無いなら条件を選べるうちに降伏した方が利があるだろ」

 

 俺の説明に陳宮が理解は出来るが納得は出来ないといった感じの表情をしている。そして縋るような目で恋を見る。

 

「しかし恋殿なら」

「……無理」

「恋が強いのは確かだが、時間稼ぎや嫌がらせならいくらでも出来る。そして、その間に他の連中が総崩れ。ついさっきまでの戦いでもそうだっただろ」

 

 無情にも恋は首を横に振った。さらにそこへ俺のダメ押しが入り、陳宮は諦めたようで肩を落とした。

 

「ねね」

「分かりました。恋殿が決めたのならねねはそれに従うのです」

 

 あくまで俺の言葉に説得されたのではなく、恋に従うという姿勢を陳宮は貫いた。子供特有の頑なさというより、何か別の要因を感じる。この反応は……嫉妬か。荀彧みたいな感じなのか。こんな小さな子まで百合百合していたりするのだろうか。仲の良い姉みたいな存在を取られるんじゃないかという子供らしい嫉妬なら可愛いもんなんだが、どうなんだろうな。

 

 陳宮は恋の説得によりうちへの加入が決まった。そして虎牢関に籠った残りの兵達も全員こちらへ下る。虎牢関に籠っていた者で一番上の立場なのが陳宮で、その彼女が率先して戦うのを止めてしまったのだから当然だろう。それに虎牢関にいた名前の通っている武将は三人だ。その三人の中で華雄が速攻で負け、恋と張遼はこちらに付いたと知らせた。虎牢関から打って出た主力が敗北したのは彼らも知っていたが、その中でも特に強力な二人の武将が寝返ったという事実はあまりに衝撃的だったようだ。末端の兵までもう董卓軍に未来は無いと見限った。




おまけ
収拾がつかなくなるので、絶対本編に出せない二人。彼女?達がもしこの外史に存在した場合。

八幡(三国志演技では呂布が董卓を裏切るのは、貂蝉の計略だったよな)
八幡(こっちにはいないのか?)
八幡「なあ恋、貂蝉っていう知り合いいるか?」
恋 「……いない」首横振り
八幡(有名どころは全員いるっぽいんだがな。美少女として)
八幡(美人で有名な貂蝉だから、いるなら想像も出来ない位の美人になっていそうだ)
八幡(まあ、美人だとしても俺には関係無い話だけどな)

貂蝉 「この外史では天の御使いが二人いるの? ご主人様だけじゃないのねん」
貂蝉 「イケメンかしら」
卑弥呼「実際に会わねばイイオノコかどうか分かるまい」
貂蝉 「うふふ。じゃあ会いに行きましょうか」
卑弥呼「ガハハハッ、うぬは本当に貪欲な漢女よ」

八幡(きゅ、急に寒気が……)

注意・原作をプレイしていない人達は、恋姫の貂蝉達がどんな姿なのか調べないことをお勧めします。


読んでいただきありがとうございます。
誤字報告いつも助かっています。感謝です。
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