絶対零度のお嬢様が往く   作:みか

12 / 24
セクハラ駄目、絶対。今回も後書きにちょっとした話があります。


第12話 そいつの名はハガネール

私たちが現在向かっているらしい極東には日本刀という物の作り方が伝わっている。

 

 

折れず、曲がらず、とてもよく切れる。それはまさに至高の武器と言えるだろう

 

 

『玉鋼を探しています』

 

 

こんなポスターを貼ったぐらいで玉鋼が手に入るとは思っていないが、打てる手は打っておかなくてはならない。

 

 

「絶対に玉鋼を手に入れてやる」

 

ここ2日程寝ていない私の顔はきっと、幽鬼のようになっていると思う。

 

 

何故このような事になったのかといえばギルとのミッションが原因だ。

 

 

~~~

 

 

 

「邪魔だ!」

 

 

ギルがチャージグライドでオウガテイルを数匹まとめて貫く。

 

「これで終わりっ!」

 

 

私がスナイパーで最後のオウガテイルを撃ち抜き、辺りには静寂が戻った。

 

 

「流石ギルだね、見事な槍捌きだったよ」

 

 

「あんたの方も、なかなかいい動きだったぜ。特にコンゴウにトドメを刺した時の突き技には思わず見惚れちまった」

 

 

「そ、そうかな?」

 

 

褒められた経験はあまり無いので、照れてしまう。

 

 

「しかし、あの突き技は身体の使い方次第でもっと良いものに仕上がる筈だ」

 

これはひょっとして

 

 

「ベテラン神機使いからの新人へのアドバイス?」

 

 

「ま、そんな所だ」

 

 

私よりも遥かに先輩であるギルが稽古をつけてくれるらしい。

 

 

「身体の動きをよく見てろ」

 

 

そう言うとギルは身体を沈め、チャージグライドを放った。

 

「ふっ!」

 

目の前を風が掠めていく

 

 

相変わらず見事な動きだ。

 

 

ポイントは腰、肩、踏み込みに使う右足かな。

 

「夏姫の突き技は肩と腕の力しか使っていない。類い希なる身体能力のお陰で、それだけでも充分な威力を誇ってはいるが、ここに腰の捻りを合わせる事で更に何倍もの威力が出せるようになる筈だ」

 

そうなのだろうか?

 

 

「やってみる」

 

神機を引き、構え、

 

「はあっ!」

 

 

身体を沈め、腰の回転を加えた突きを放つ

 

少し肩が遅かったかな?

 

 

「腰と肩の動きがずれている。もう少し肩の方を速くしてみてくれ」

 

的確なアドバイスが飛んできた。

 

「了解」

 

それから何度か繰り返す。

 

 

「たあっ!」

 

 

「大分よくなったが、体重移動が不完全だな」

 

ギルが肩と腰、更に腕の使い方について実演とアドバイスをしてくれているが、ナナみたいな可愛い娘に同じ事(触ったり、掴んだり)をしたらセクハラで訴えられると思う。

 

 

「これを踏まえてもう一度やってみてくれ」

 

「分かった」

 

 

腰を落とし、やや後ろに体重をかける。そして腰を捻って体重を前方に移動させると同時に肩と腕に力を込め、

 

 

全身全霊を込めて打つ!

 

 

『ビュオオオッ』

 

 

物凄い風切り音がした。

 

 

「…………」

 

 

「そうだ、今の感覚を忘れるな」

 

思わずギルを見る。

 

 

「ギル、いや……ギルバート師匠」

 

「し、師匠?」

 

 

「もっとご指導をお願いします」

 

「とりあえず恥ずかしいから、師匠と呼ぶのは止めてくれ」

 

 

その後何度も何度も練習をする事によって私の突きは更に洗練されていき、

 

 

「もはやロングブレード版のチャージグライドだな」

 

 

体重移動を円滑に行う為に助走をつけるようにしてみた所、不思議な事にロングブレード版チャージグライドとでも呼ぶべき何かが完成していた。

 

 

「しかし、夏姫は覚えが早いな。これじゃ俺が追い越されるのも時間の問題か?」

 

ギルが笑いながら頭をかく

 

 

「いやいや、ギルの教え方が上手いんだよ。戦闘技術の教師にでもなったら? ゴッドイーターなんかよりもずっと儲かるかもよ?」

 

 

「ははっ、そりゃいいな」

 

 

訓練を通してギルとも軽口を叩けるくらいに仲良くなれた。

 

 

いやー、良かった良かった。しかし技の研究をするって案外楽しいなぁ。もっともっと威力や効率が上がらないか試したくなってしまう。まあ、この技に関してはひとまずの完成ということに……

 

 

「あ、そういや夏姫、知ってるか? 今俺達が向かってる極東には『刀』っていう突き技や切断に特化したロングブレードがあるらしいぞ」

 

 

「詳しく」

 

 

 

~~

 

 

 

とまあこんな事があって、私は寝不足を押してまで技の威力向上の為に『刀』の素材を集めているという訳だ。

 

 

ちなみに寝不足のためアラガミの戦いには不安があったのだが、逆に集中力が上がっていつもより楽なくらいだった。

 

 

生存本能とかのスキルが働いているのだろう、多分。

 

 

しかし、もう丸2日探し回っているというのに材料となる玉鋼は発見出来ていない。

 

 

そもそもターミナル内の情報によれば玉鋼というものは砂鉄を集めて作るものらしい。そんな貴重なものがフィールド上に落ちている筈がない、とギルに言ったら、「アラガミが体内で作って吐き出したものが落ちてるんだ」と返された。

 

 

なるほど、確かにアラガミ糸のような糸を吐き出すアラガミがいるくらいなんだから、玉鋼を吐き出すアラガミもいるかもしれない、と納得したのだが、今になって考えてみると非常に胡散臭い。

 

 

「あの……」

 

 

そうだよ、玉鋼を吐き出すアラガミなんて居るわけ無い。つまりフィールド上に玉鋼は存在しない。さらば玉鋼を吐き出す幻のアラガミ、『ハガネール』(仮称)

 

 

 

「夏姫さん」

 

 

「はっ!」

 

 

いかんいかん、おかしな思考に飲まれていた。これが徹夜テンションと言うものか。

 

 

「大丈夫ですか?」

 

 

そう心配そうに声を掛けてきたのは、フランさんだった。

 

 

「ああ、フランさん、大丈夫だよ」

 

フランさんは今日も可愛いなぁ。

 

「そうは見えませんが……」

 

 

「あ、ごめん。みっともない姿を見せちゃったね」

 

 

「弱った夏姫さんにも、ぐっと来るものがあるのは確かですが、あまり無理はしないで下さい。それであなたが傷付いたりしたら馬鹿みたいですから」

 

 

ありがたい叱責を賜った。そうだね、無理は良くないね。

 

 

「うん、わかった。ラケル博士とグレム局長に言って、今日は休ませてもらう事にするよ」

 

 

「それがよろしいかと」

 

 

「あーあ、玉鋼がどっかに落ちて無いもんかな」

 

「玉鋼……」

 

フランさんが何事か呟いた気がするが、きっと思い違いだろう。

 

 

ラケル博士とグレム局長に事情を話し、特別に休みをもらった。グレム局長には、何故そこまで無理をしたのか聞かれたので、玉鋼を探していたんです。と正直に答えたら、「もっと自分を大切にせんか、この馬鹿者が!」と怒鳴られ、疲労回復に良いという果物の詰め合わせと高級栄養ドリンクを渡された。

 

ラケル博士には何故か人参(これは馬という動物の大好物らしい)と鹿せんべいをもらった。

 

「ありがとうございます」とお礼を言うと、「お馬鹿な子ほど可愛いとは本当ですね」とひとしきり笑われた後、「ブラッドのみんなには内緒ですよ?」とソウルジャムという商品名の桃色のジャムをもらった。

 

 

ありがとう、グレム局長とラケル博士。

 

 

 

さて、もう寝る事にしよう。

 

 

 

お休みなさい。

 




グレム「今、俺個人で動かせる金はいくらだ?」

秘書(男性)「○○程です」


グレム「よし、八割五分までなら使って構わん。玉鋼を買え、出来るだけ安く高純度な物をな」

秘書「承知致しました」

~~


ラケル「急に呼びつけたりしてごめんなさいね、ジュリウス」


ジュリウス「いえ」


ジュリウス「それで頼みとは?」


ラケル「玉鋼を探して来て欲しいのです」


ジュリウス「は?」


ラケル「玉鋼を探して来て欲しいのです」


ジュリウス「玉鋼…と言うと、刀身などに使われる、あの?」

ラケル「ええ、出来れば純度の高いものを」

ジュリウス「承知致しました」

バタン

ジュリウス「どうしたんだラケル先生は」


ジュリウス「しかし、夏姫に渡そうと思っていた分が無くなってしまうな」


~~


フラン「玉鋼を譲って頂けませんか?」

神機使いA「喜んで」


~~

ヒョイ

ギル「確かに素人には見つけにくいかもしれんが、俺にかかれば造作もないな」


ロミオ「俺も見つけたぜ、ギル」

ギル「ロミオ、それはただの鉄屑だ」


~~

エリナ「はい、玉鋼なら持ってますけど?」

ナナ「もしよかったら、少し譲って貰えないかな?」


エリナ「良いですよ」


ナナ「ありがとー」


~~

エミール「エリナも無茶を言う、玉鋼を今日中に刀が50本作れるほど集めろとは……」


エミール「ポラーシュターンよ、僕に力を貸してくれ」


ポラーシュターン「……」




エミール「駄目だ、闇雲に探しても全然見つからない」


エミール「しかし我が友であるナツキの為とか言っていたが、どういう意味なんだろうな」

ピクッ

ポラーシュターン「……こっち」


エミール「声が!?」


ポラーシュターン「……」


エミール「何だ、気のせいか」
テトテト

エミール「おお、本当にあった。ひょっとして僕には精霊の加護がついているのでは」


ポラーシュターン「……そっち」


エミール「おお、またあった、ついている時はとことんついているものだな」

エミール「よし、この調子だ」

~~

偵察班班長「いいかてめぇら、気合い入れて探せよ?」


偵察班一同「「「ウス!」」」

班員A「全ては姫さまの為に」

一同「全ては姫さまの為に!」


ヴァジュラ「グオオ」


一同「邪魔すんなぁぁ」


ヴァジュラ「ギャアアア」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。