絶対零度のお嬢様が往く   作:みか

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とある人物に虐められて目からハイライトが消えた主人公がフライア中を放心状態で練り歩き、最終的にジュリウスの給料が三割カットされるという話を13話として書いていたのですが、子供の教育によろしくないとの理由で没にされました。


主人公が表情を出し過ぎたのも悪かったのかもしれません。涙目でベッドに横たわるのは流石にやり過ぎだったかな……


だが私は謝らない。そのうち隙をついて投稿してやろうと思っています。


第13話 持つべき物は金とコネ

 

妙な夢を見たような気がする。よく覚えていないが、確かジュリウスに関係があったような……

 

 

 

「あれ?」

 

 

どうして私はジュリウスの部屋のベッドで眠っているんだろう。

 

 

部屋の主の姿は既に無い。

 

 

掛け布団を押しのけ、ゆっくりと身体を起こす。

 

 

私はいつもの制服を着ていた。

 

少しほっとする。

 

 

 

小さな机の上に置いてある時計に目をやると、そろそろ出勤しなくてはならない時間だった。

 

 

洗面所で鏡を確認する。

 

 

寝癖もついていないし、他の所も特に問題は無いみたいだ。

 

顔を洗おうとしたら、何故か洗面所の横にタオルが用意してあった。

 

 

上にメモが置いてある。

 

 

『自由に使ってくれ』

 

 

わざわざありがとうございます。

 

さあ、今日も1日頑張ろう。

 

 

朝礼を行うため、エレベーターでラケル博士の部屋へと向かう。

 

 

扉をノックすると、少し間が空いて「お入りなさい」と声が返ってきた。

 

 

「失礼します」

 

 

「おはようございます、夏姫」

 

「おはようございます、ラケル博士」

 

 

まだみんな来ていないようだ。ジュリウスは部屋に居なかったけれど、どこかに行っているのだろうか。

 

「失礼します」

 

 

「おはようございます」

 

 

「おはようございまーす」

 

 

「失礼する」

 

 

噂をすればなんとやらとでも言うべきか、4人が連れ立って入室してきた。

 

若干やつれ気味のジュリウス、顔は笑っているが目がギラギラしているロミオ先輩、朝から元気一杯なナナ、いつもの2割増くらいでクールなギル。

 

 

うん、深くは詮索すまい。

 

 

「全員揃いましたね」

 

 

よく見ると、ラケル博士もテンションが若干高い。

 

 

まるで夜更かしした子供みたいと言うと失礼かもしれないが、そんな感じだ。

 

 

とにかく可愛い。

 

 

「では、今日の予定を発表する」

 

 

ジュリウスがフラフラしながらも健気に説明を始める。

 

 

今日のミッションも引き続き、フライアの進行方向に待ち受けている小型、中型アラガミの討伐だ。

 

大分極東支部に近付いてきたらしく、最近はアラガミが更に増加傾向にある。

 

 

流石はアラガミの動物園とまで呼ばれる極東。

 

気合いを入れないと大怪我をするかもしれない。

 

 

今日の午後からは訓練とラケル博士による講義も予定されているらしく、相も変わらずハードなスケジュールとなっている。まあ、何だかんや言って、毎日結構楽しんでいるから良いんだけど。

 

 

「以上だ、何か質問は?」

 

 

「はい!」

 

「何だ? ナナ」

 

 

「男の人はみんなアラガミだってお母さんが言ってたけど、ジュリウスもそうなの?」

 

 

「ナナ、無邪気な笑顔で俺の命を取りに来るのは止めてくれ。今度こそみんなに殺される」

 

 

「はい」

 

 

「何だ? ロミオ」

 

 

 

「ジュリウス、あの事を夏姫に言わなくていいのか?」

 

 

「ロミオ……お前も敵か」

 

 

「いや、そっちじゃなくて素材の方だよ」

 

 

「……ああ、そう言えばそうだったな。すっかり頭から抜け落ちていた」

 

力無く笑う。

 

 

「夏姫」

 

 

目に力を無くしたジュリウスがこちらに向き直った。

 

 

「お前宛てに大量の玉鋼が届いている」

 

 

「え、本当!?」

 

 

駄目もとで貼ったポスターが功を奏したのだろうか

 

 

「ああ、刀何本分か数えるのもおこがましい程の量だ」

 

 

私が眠っている間に一体何があったんだ……

 

 

「更に、遠方より凄腕の鍛冶師の方もいらっしゃっている」

 

 

「本当に何があったの?」

 

 

 

〜〜

 

 

 

ジュリウスに連れられて素材倉庫を確認してみると、確かに玉鋼の山が出来ていた。

 

 

有志もとい、勇士からの贈り物との事だが、ありがたい話だ。こんなによくしてもらったのだから何かお礼をしないと

 

 

「彼らは夏姫が元気で居てくれるなら、それだけで満足だそうだ」

 

 

私の心中を察したようにジュリウスが補足する。

 

 

みんな、ありがとう。

 

 

「ただ、今度一緒に写真を撮ってくれないかという申し出が100件以上来ている」

 

 

「何でっ!?」

 

 

〜〜

 

「ほう、あんたが噂の新人さんか」

 

引き続きジュリウスに連れられてやってきた技術者用の待機室には、1人の男性が待っていた。

 

 

「そんな意外そうな顔してないで、もっとこっちに来い」

 

 

床に豪快に座り込み、ダンベル片手に何か図面のようなものを描いていたその人は、作業を続けたまま、こちらを振り向かずそう言った。

 

 

「フライアに呼ばれてから今までずっと新型神機の図案を描いていた」と語るその人は、鍛え上げられた肉体を持ち、野生児のような雰囲気を纏う技術者とはまるで正反対とでも言うべき人物だった。

 

 

「流石に腹減ったな」と笑うその人にジュリウスがすかさずバナナを渡す。

 

「おお、ありがとよ」

 

 

普通に受け取って食べている

 

 

ジュリウスに対し、何故バナナを携帯している! とツッコミを入れたかったが、人前なのでグッと我慢した。

 

 

最近ジュリウスは、天然なのかネタなのか判断のつきにくいボケをかましてくる。とりあえずツッコミを入れてあげると若干(8パーセントといったところか)嬉しそうな顔になるので、毎晩寝る前とかに明日の為のボケを考えているのかもしれない。

 

「しかし、何でバナナ持ってんだ? 携帯でもしてんのか?」

 

私が我慢したツッコミを……

 

 

羨ましい。

 

 

 

 

「仕事ですから」

 

 

爽やかに言い放つジュリウス

 

 

どうやらプロのゴッドイーターは顧客のどんな要望にも応えなければならないようです。

 

 

 

「なるほど、仕事の流儀ってやつか」

 

 

ジュリウスは食べ終わったバナナの皮を受け取って袋に入れ、空いた手に今度はバナナジュースを差し出す。

 

 

「お、すまねぇな」

 

 

なるほど、喉も渇いているかもしれないから万全を期した訳だ。流石はジュリウス、賢い。

 

 

……誰がツッコミを入れてやるものか

 

 

「しかし、今度はバナナジュースとはな。参ったぜ」

 

 

私も同じ感想だよ。

 

 

 

「お褒めに預かり光栄です」

 

 

「褒めてないから!」 「褒めてねぇよ!」

 

 

その日初めて会った筈の人と心がシンクロした瞬間だった。

 

 

 

 

 

ジュースを飲み終わった『アキさん』(フェンリルではその呼び名で通っているらしい)は身体のあちこちをボキボキと鳴らしながら立ち上がり、「ついて来な」と私達に促した。

 

 

ジュリウスと2人で大人しくついて行く。

 

 

 

「これが家(うち)の娘だ、可愛いだろ?」

 

「はい、とっても」

 

「だよなぁ! いやー、家の娘は……」

 

 

後ろをついて歩いていた筈なのだが、いつの間にかアキさんに赤ん坊の写真を見せられながら並んで歩く羽目になっている。

 

 

アキさんは最近仕事が忙し過ぎて家に帰れていないらしく、娘さんと会えるのが楽しみで仕方ないらしい。

 

 

アキさんとお話(娘さん95パーセント、神機の運用について5パーセント)をしながら歩いてみて、何となくこの人は見た目によらず案外親しみやすい人なのかもしれないと思った。

 

 

 

 

「金は300万fc、びた一文負けねぇぞ」

 

「ぶふーっ」

 

 

「何だ、具合でも悪いのか?」

 

「い、いえ、そうではなく。驚いたんです」

 

 

「何だ、やっぱ安すぎるってか? じゃあとりあえず倍の……600」

 

 

「ろ、ろっぴゃく……」

 

 

払い終わるまでに何年かかる事か

 

 

「申し訳ありませんが、あまりうちの隊員を虐めないでやって下さい」

 

 

ジュリウスが助け舟を出してくれた。

 

うう、私はいい隊長を持って幸せ者です。

 

 

ちょっと天然だけどイケメンだし、蹴りを入れてしまっても、笑って許してくれるし、最近はよく笑うようになったし。

 

 

ひょっとしてジュリウスは超ハイスペックな天然ボケピクニック野郎なんじゃないか?

 

 

……今度ジュリウスを蹴ってしまうような時があったら、もう少しソフトにしてあげよう。

 

 

 

「ははは、冗談だよ。金ならもう受け取り済みだ」

 

 

何だ、冗談か……良かった。って、一体誰に?

 

 

「グレムはお前の給料から天引きしとくとさ」

 

 

やっぱりグレム局長か。色々とありがとうございます局長、今度お肩を揉ませていただきます。

 

 

「それから、必要な素材は胡散臭い車椅子の博士から全部貰ってる。お前らはもう帰っていいぜ」

 

「はい?」

 

では何故ここまで付いて来るよう言ったんだ? まさか娘さんの自慢をする為……

 

 

「あんたをここに呼んだのは、持ち主がどんな奴になるのか見てみたいと思ったからだ

 

 

私の考えている事を読み取ったのか、心外だと言うようにアキさんが言う

 

私の無表情な顔から思考を読み取るとは、この人……やはり強い。

 

 

「…まったく、噂通りなかなかぶっ飛んだ奴みたいだな。気に入ったぜ」

 

 

どこに気に入る要素があったのかまったくわからない。

 

 

ひょっとすると娘さんを褒めたからだろうか。

 

 

「いや、あんたの目が家の娘に似てたからだ」

 

 

違っていたらしいが、まあ結果オーライだ。

 

 

「期間は5日、5日で最高のモノを創ってやる」

 

 

刀は現在の技術をフルに活用しても、確か十数日はかかった筈なのだが……

 

 

 

「最高の妖刀に仕上げてやるよ」

 

いたずらっ子のような笑みを浮かべながら不穏な事を言っているけれど、気にしたら負けだ。多分

 

 

 

 

さて、今日も任務を頑張ろう。

 




集まった素材一覧


フライア一同より高純度玉鋼、一部神玉鋼


ラケル博士より虚神月鋼および虚神円月刀


ジュリウスより発氷晶および竜帝蒼月刃


ロミオより黒鉄(極小)とオラクル氷石


グレム局長より1200万fc(アキより1183万fc返還済み)


その他多数


ポスターは何者かに持ち去られました。
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