絶対零度のお嬢様が往く 作:みか
そして、どうでもいい設定ですが、主人公は紅茶を飲む時はカップを両手で持って、息を吹きかけて少し冷ましてから飲みます。
「骨が折れている」
「…へ?」
「恐らくは右足の酷使による疲労骨折だろう」
「とりあえず処置はしておいた。そのくらいの怪我ならすぐに完治するとは思うが、痛みが酷くなるようなら医務室に行くといい」
「…うん、ありがとう」
エミールさんを助ける為に飛び込んだ時のグベキッ! はどうやら骨が折れる音だったようだ。
まったく…骨が折れる話だぜ。
うん、洒落にならない
現在私はジュリウスの部屋で右足首に包帯を巻いてもらい、紅茶をご馳走になっている。何故そうなったのか簡単に説明させてもらうと……
エミールさんを助けた後、
すやすやと満足げに眠る3人を見て、うっすらと疎外感を抱きつつ帰投ヘリを待っていたら、水中からグボログボロが「よう」とばかりに現れた。
フランさんからの無線連絡も無かったので、あれは正直びびった。
ギル達に注意が向かないよう、近距離で貼り付くようにして攻撃し続け、何とか討伐する事に成功したが、今度は「俺の出番か」とでも言わんばかりにウコンバサラが水面から顔を出した。
涙目になりながら攻撃を捌き、尻尾を結合崩壊させた所で、ようやくエリナが目を覚ましてくれた。
2人で連携してウコンバサラのタービンを破壊し、スタングレネードを投げつけて怯ませたところに、練習した必殺の突きを放って撃退。
ようやく来てくれたヘリに乗って、命からがらフライアに帰還したのだ。
その後、エミールさんを医務室に放り込み(ギルはヘリの中で目を覚ました)、自室に戻ろうとエレベーターに乗った所で、ジュリウスと出会った。
ジュリウスは私を一瞥(いちべつ)するなり、「足を怪我したのか?」と声を掛けてきた。
足首は猛烈に痛かったが、そんな事はおくびにも出さず、いつも通りに振る舞っていた筈なので、どうしてわかったのかと尋ねると、重心がいつもより3ミリ程左にずれているから、と返された。
そんな些細な事が本当にわかるのかどうかは不明だが、有無を言わさずお姫様抱っこをされ、当然のようにジュリウスの部屋へと運ばれる。
私をベッドに座らせると、ジュリウスは丁寧に靴下を脱がせ、どこかから包帯と固定具を取り出すと、慣れた手つきで処置を始めた。
何でも、骨折程度は新人のゴッドイーターには良くある事らしく、今までにも何度か処置をした事があるそうだ。
「今日はとりあえず自室に戻って安静にしているといい。ラケル先生には俺から話しておこう」
今日の夕方に予定されているラケル博士の講義の話か……
「これくらい大丈夫だよ」
「無理しなくていい」
「平気だって、ほら」
「なんと、もうジャンプも出来る」
ジュリウスの前でぴょんぴょんと跳ねてやると、わかったから落ち着け、と呆れ顔をされ、甘めの紅茶を差し出されて今に至る、という訳だ。
ほんのりと温かいカップに口をつける。
「美味しい」
うん、たまにはミルクティーも悪くない。
「好きなだけ飲んでくれて構わない」
「ありがとう」
しかし、ジュリウスは多芸だ。戦闘技能や部隊の統率力に優れているだけでなく、救護処置にまで詳しいとは……
おまけに紅茶を淹れるのも上手いときている。
悔しいが、今の私の勝っている点はギャグ方面しか無いようだ。
だが、いつか必ず追いついてみせよう、お祖父様の名に賭けて!
まあ、お祖父様の名前はうろ覚えなんだけど。
~~
ラケル博士の講義(戦闘の基本と、神機兵についてのお話だった)を受けた後、自室の机に向かう。
講義の際に取ったメモの内容を確認がてらノートに書き記しておくためだ。
ついでに、得意の高速筆記によってメモ帳に走り描きした、あくびを我慢しようとして口を閉じたまま涙目になるラケル博士の似顔絵も別のノートに描き写しておく。
絵の具は貴重品なので、色はまだついていないが、我ながら良い出来だと思う。
ちなみに、このノートには他にも、『水も滴る(したたる)いいジュリウス』や『チャージクラッシュを豪快に外すロミオ先輩』、『プレッシャーを放つナナ』、『満面の笑みのフランさん』、『帽子を深く被りすぎてもがくギル』、『絡み酒で泣き上戸のレア博士』、『ウロボロスを引きちぎるリンドウさん』など、主にフライアのメンバーのレアなシーンが描かれている。
なお、私の絵の腕前は、お母様から「絵はすごく上手なのに、チョイスするシーンがすごく残念」と絶賛される程だ。
一冊500fcくらいで画集を出したら売れないかな?
ジュリウスから届いていた、しばらく安静にしていろというメールを開きながら、ぼんやりとそんな事を考える穏やかな夜だった。
エリナからの助言で、突きを放つ際には左手を刀身に添えるようになりました。
これにより命中率が若干アップ。技の格好良さもグンと上がりました。
あと、次話は割と早く更新出来そうです。