絶対零度のお嬢様が往く 作:みか
これは、数時間飛行機に乗せられ連れてこられた未開の地にて、グレープフルーツを搾り、シロップと混ぜ合わせるなどの研修を行っていた為であり、別にエミール視点で書いた物がしっくりこなかったので没にしただとか、主人公視点で書いた物も気にくわなかったので没にしただとか、次話の17話で、シエルがあまりにヒロインヒロインしていたので全没にしただとか、出産の準備で忙しかっただとか、
そのような事は一切ございません(政治家風)
では、エリナ視点の16話です、どうぞ。
「どうして神機が動かないの!?」
フライアの眼前に立ちふさがるアラガミ達の掃討を行っていた私たち。
効率を上げるために手分けして索敵を行っていたのだが、
「っ…!」
廃墟となった図書館エリアを壊しながら、突如として現れた白いガルムのようなアラガミ。
無線でエミール達に連絡を入れ、迎撃を行おうとしたのだが、その白いガルムの咆哮(ほうこう)を聞いた瞬間、私の神機は活動を停止してしまった。
接続が切れてしまえば、神機は重い荷物でしか無く、私たちゴッドイーターも身体能力が少々高いだけの一般人でしか無い。
今はなんとか攻撃を避ける事が出来ているが、そう長くは持たないだろう。
「くっ…」
逃げる私の背後から迫る爪を、屈んでなんとか回避し、伸び上がるようにして再び走り出す。
重々しい足音は相変わらず、すぐ後ろで響いている。
急がないと
焦るあまり、足元への注意が疎かになっていたのだろう。
小さな石に躓いてしまい、豪快に倒れ込む。
「あっ……」
尻餅を着きながら振り返ると、白いガルムがゆっくりと近付いてきている所で……
「ひっ!」
思わず目をつぶる。
鋭い風切り音と同時に、
「エリナっ!」
聞き覚えのある声が聞こえた。
続いて耳に飛び込んできたのは、がきぃんという何か固いもの同士がぶつかる音。
「大丈夫っ!?」
恐々目をあけると、盾を展開した華奢な後ろ姿が見えた。
私の絶体絶命のピンチを救ってくれたのは、特殊部隊ブラッドに所属している夏姫さんだった。
天王寺夏姫さん。
人形のような美貌を持つ可憐な少女。彼女はつい最近ゴッドイーターになったばかりらしいが、卓越した戦闘センスを持ち、訓練、実戦共に関係者が目を疑う程の結果を叩き出しているらしい。
その経歴等は一切不明だが、噂ではフェンリルに深く関係している企業とパイプが有るとか無いとか。
普段は氷の無表情と呼ばれる程、感情を露わにしない彼女であるが、極稀に見せる女神のような笑顔に私を含め何人がやられた事か。
本人には内緒でファンクラブまであり、名簿にはフランさんを筆頭にグレム局長、レア博士、ロミオさんにラケル博士の名前まであると言うから驚きだ。
当然ながら私も所属している。
そんな表情をめったに変える事のない彼女が、私の危機に焦った顔を見せていた。
「怪我とかはしてないよね!?」
白いガルムの右腕を受け止めたまま、私の心配をする夏姫さん。
「は、はい、大丈夫です」
「良かった……」
白いガルムがうなり声を上げ、その左腕を大きく持ち上げた。
振り下ろす気だ。
「…邪魔だよ」
夏姫さんは丸みを帯びた装甲で白いガルムの爪を受け流し、目にも留まらぬ速さで刀身を振るう。
その鋭い一閃は体勢を崩していた白いガルムの顔面を横一文字に切り裂いた。
たまらず叫び声をあげ、後方に大きくジャンプする白いガルム。
「浅いか……なら」
夏姫さんはそれを読んでいたかのように、着地点に正確な射撃を加える。
怒りに身体を震わせた白いガルムが再度咆哮の体勢に入った。
「夏姫さん! そいつの吠え声を聞くと神機が動かなくなるよ、気を付けてっ!」
「了解」
いつ変形させたのかわからない程の早業で夏姫さんはガンフォームからブレードフォームへと切り替えると、白いガルムに向けて疾走した。
今まさに咆哮を上げようとしていた白いガルムが、慌ててビルの上に飛び乗る。
「逃がさない」
夏姫さんは地面を蹴って大きくジャンプすると白いガルムを追撃した。
左前足のガントレットでそれを受け止めた白いガルムは、大きな咆哮を上げると夏姫さんを弾き飛ばした。
小柄な身体が宙を舞う。
「な、夏姫さんっ!!」
「よっ、と、大丈夫だよ」
危なげなく華麗に着地を決めた夏姫さんが私に微笑み掛ける。
「でも……」
これで夏姫さんの神機も動かなくなってしまった筈だ。
白いガルムが高台から飛び下りた。
ズシンと大地が揺れる。
「心配しないで」
不敵な笑みを浮かべた夏姫さんは停止した神機を構えると、再度白いガルムに突撃した。
その動きはまさに機敏と言わざるを得ないもので、とても神機が動かないとは思えない。
迎撃とばかりに振るわれた右前足のフックを上体を屈めてくぐり抜け、顔面に神機を叩き込む。
火花が散った。
そのまま白いガルムの顔面を蹴って後方へジャンプし、空中で一回転。
左前足の一撃を回避する。
夏姫さんは着地と同時に距離を詰め、更に神機を振るう。
右腕、左腕、胸
白いガルムの体の至る所で、小さな火花が散っては消えるを繰り返している。
牙を剥いた白いガルムのガントレットがパカリと開いた。
開いた隙間から炎が顔を覗かせる。
至近距離で怒号と共に放たれた火球を、夏姫さんは右にステップする事によって紙一重でかわし、側面から後ろ足に斬撃を加えた。
身体を半回転させ、目障りな獲物を捉えようとした白いガルムの裏をかき、更に背後を取って尻尾に神機を叩き付ける。
夏姫さんはダンスでも踊るような軽快な動きで白いガルムを次々に翻弄していく。
…とてもじゃないが私にあんな動きは出来ない。
今の私に出来る事は……
『フライア、応答して下さい。こちらエリナ!』
悔しいけど、現在の状況をフライアに伝えるくらいしか無かった。
~~
自身の攻撃が当たらない事に業を煮やした白いガルムは、攻撃手段を火球による広範囲攻撃に切り替えてきた。
しかし、凄まじい密度で放たれるそれらも夏姫さんには届かない。
「当たったら大分熱そうだね」
彼女はそんなのん気な事を言いながら、放たれる全てをかわしていく。
「隙だらけだよ」
更にフェイントを交えた攻撃を加える余裕まで見せている始末。
夏姫さんはいとも容易く回避しているが、神機との接続が切れている今、並の神機使いでは白いガルムの動きについていく事すら出来ないだろう。
夏姫さんはどうやっているのかはわからないが、相手の次の動作を完全に読み切り、先に先に行動する事によって回避しているようだ。
「ジュリウス達はまだかな?」
白いガルムの懐に潜り込み、暴風のような連続攻撃を軽くかわしながら独りごちる。
改めて彼女の凄さを実感した。
白いガルムが唸り声を上げ、後方へと素速く跳躍する。
両のガントレットが開き、火炎を纏った。
あれは火球の予備動作だ。
夏姫さんはそれを回避しようとして……ピタリと立ち止まった。
そのまま刺突の構えを取る。
……どうして?
その答えは、白いガルムの動きで簡単にわかった。
あいつ、私を狙ってる。
ガルムの狙いは攻撃をことごとくかわす夏姫さんでは無く、目に見えて動きの鈍い私だった。
追尾してくる複数の火球を避けきる事は、今の私には出来ないかもしれない。
だからこそ彼女は神機が動かないにも関わらず迎撃の構えを取ったのだ。
私を守る為に。
なんて情けない……これじゃ私はただのお荷物だ。
「任せて」
私を安心させようとしたのか、彼女は一瞬だけ振り向き、見惚れてしまいそうな笑顔で呟いた。
白いガルムが一際大きな咆哮を上げ、巨大な火球を放つ。
同時に夏姫さんも動いた。神機を血のような紅色に光らせながら、火球に向けて突っ込む。
「はあぁぁぁぁっ!!」
夏姫さんは普段の落ち着いた様子からは想像もつかない程の大声を張り上げると、身体全体を使った強烈な突きを繰り出した。
その渾身の突きは当然のように火球を霧散させる。
夏姫さんは止まらない。
彼女は右足を大きく踏ん張る事により、前進する勢いをそのままに向きだけを変え、白いガルムの頭部目掛けて刀身を突き出した。
斜め下からえぐり込むようにして放たれたその突きは、身をよじって何とか逃れようとした白いガルムのガントレット部分を貫く。
耳をつんざくような悲鳴が上がった。
「や…やった」
左ガントレットを完全に破壊された白いガルムは崩れ落ち、無防備な顔面を晒している。
夏姫さんがそんな隙を見逃す筈もなく、再度神機を構え、突きの体勢を取った。
「あ……」
とどめの一撃を放とうとした夏姫さんが、構えの途中でがくりと片膝をつく。
技の反動!?
それともまさか、エミールを庇った時の怪我が完治していない?
「夏姫さん!」
白いガルムは右前足を踏ん張り、なんとか立ち上がろうとしている。
走る。
もっと!
もっと速く!
「夏姫さん、一旦下がって!」
夏姫さんと白いガルムの間に割って入る。
「…エリナ」
あんなに重かった筈の神機はいつの間にか軽くなっていた。
「これならっ」
神機を握り締め、構える。
白いガルムが完全に体勢を立て直した。
夏姫さんがまだ膝を着いたままだからか、悠然と歩み寄ってくるその姿からは余裕が感じられる。
怖い……
けど、退けない。
「舐めないで、私だって華麗に戦えるんだから」
覚悟を決め、白いガルムを睨み付ける。
咆哮を上げ、私達へ向けて走り出そうとした白いガルム。
その顔面に真横からオラクル弾が直撃した。
「…………!」
銃形態の神機を白いガルムに向けながら颯爽と駆けてくるうさぎの着ぐるみ。その背後からはエミール。
「エミール、キグルミっ!」
「エリナ、ナツキ無事か!?」
応戦しようとキグルミ達の方へ向き直る白いガルムに、更に別方向からオラクル弾が降り注ぐ。
「悪い、遅くなった」
「無事か」
ギルバートさんとジュリウス隊長だ。
「…………」
「てめぇ、人の妹に何してくれてんだ」
無表情でブーストを起動させようとしているナナさんと、激昂したロミオさんもその後に続く。
とりあえずナナさんが一番怖い。
形勢を不利と判断したのか、白いガルムが高台へと飛び乗った。
白いガルムは一度こちらを窺うと、追撃として放たれたオラクル弾から逃れるように素速く姿を消した。
~~
「夏姫、平気か?」
ジュリウス隊長が夏姫さんの手を取り、引き起こした。
「うん、私は大丈夫。エリナも怪我とかしてない?」
「はい、問題ありません」
私と夏姫さんの言葉にみんながほっとため息をつく。
「お腹がすいたね、帰ろう」
「全く、のん気なやつだなお前は」
ギルバートさんはあきれ顔だ。
「まあまあ、無事で何よりって事で……おいナナ、お前いつまで無表情なんだよ」
「……」(ニコッ)
「口角上げれば良いってもんじゃねぇ!! むしろ怖いから」
~~
帰りのヘリの中、隣で静かな寝息を立てる夏姫さんを見ながら、
この人に追い付きたい。
強く、そう思った。
『エリナがブラッドアーツを習得しました』
今、わかりました。本当の主人公は彼女だったんですね。
~~ブラッドが若干出遅れた理由~~
ギル「はっ!?」
ロミオ「なんだ……この感じ」
ナナ「…………」
ジュリウス「血の力、遂に……いや、前々からだったような気がするが、覚醒したか!」
ロミオ「まあナツキなら平気か」(オウガテイルざくざく)
ジュリウス「そうだな」(コンゴウずばずば)
ギル「そうなのか」(ヴァジュラつんつん)
ナナ「…………」(息切れ中)
ロミオ「いや、息切れ中くらい表情変えろって」
ナナ「……あっはははははは!!! 今行くから待っててね!」(びゅん)
ロミオ「最近後輩が怖いんだけど」
ナナ「……」(息切れ中)
ロミオ「いきなりあんな大声出すからだ」(さすさす)