絶対零度のお嬢様が往く   作:みか

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沢山のお気に入り登録、どうもありがとうございます。だが目をこすってよく見てみろ、こんな小説だぞ? そ(略)


次話は近いうちに投稿します。


第17話 ブラッド候補生の最後(酷く間違った倒置法)

 

白い狼のようなアラガミとの遭遇から数日が経過した。

 

あれからフライアはアラガミの群れの中を何とか突破し、ようやく比較的平穏な日々が戻ってきた。

 

 

勿論、これが束の間のものに過ぎないなんてことはよく分かっている。何せこれから行くのは極東だ。

 

『アラガミのバーゲンセール』

 

『地獄へようこそ』

 

 

『お前はもう死んでいる』

 

 

エリナ達から話を聞く限り、極東支部は他支部からそんな風に評されているらしい。

 

 

実際、極東ではヴァジュラ倒せたら一人前な、あ、勿論携行品無しで とかいう意味の分からない基準が出来ているとか。

 

 

おまけにウロボロス(山のような超弩級アラガミらしい)を素手で引きちぎる人が居たり、ハガンコンゴウ(雷を操るコンゴウ種の上位)4体を5分足らずで切り刻む人が居たり、1任務の間に味方を20回以上吹き飛ばすブラスト使いが居たり(可愛い娘らしい)、メンバーもなかなかに曲者ぞろいのようだ。

 

あと、これは秘密なのだが…なんと、終末捕喰なるものが起こりかけた事もあるらしい(ラケル博士がこっそり教えてくれた)。

 

 

極東…恐ろしい場所。

 

 

 

そんな恐ろしい極東で生き抜くため、ブラッドに新しいメンバーが加わる事となった。

 

 

名前はシエル。

 

とってもかわいい女の子らしい。

 

 

うわーい、やったー!

わーい、わーい!

 

どんな娘だろ? どんな娘だろ?

 

 

会う前から既に私のテンションは最高潮だぜ。

 

さあ、シエル、カモーーーーーン!

 

 

〜〜

 

 

「本日付けで極致化技術開発局所属となりました。シエル・アランソンと申します」

 

 

「ジュリウス隊長と同じく、児童養護施設マグノリア=コンパスにて、ラケル先生の薫陶を賜りました」

 

「基本、戦闘術に特化した教育を受けてまいりましたので、今後は戦術、戦略の研究に勤しみたいと思います」

 

 

「…………」

 

 

か、固ぇ。

 

 

確かに可愛い。すごく可愛い。だが固い。活性化してないセクメトの下半身くらい固い。

 

 

 

「……以上です」

 

そんな固い挨拶をしたシエルが困ったように目を泳がせる。

 

 

「シエル、固くならなくていいのよ、ようこそブラッドへ」

 

 

ラケル博士はシエルに向かい、慈愛に満ちた笑みを浮かべた。

 

流石はブラッドのお母様、相変わらず聖母でいらっしゃる。

 

 

ラケル博士の笑みでシエルの表情が少し緩んだ。

 

うむ、シエルも博士もどちらも可愛い。

 

「さて、」

 

ラケル博士が名探偵のような事を言いながら私達の方へと向き直った。

 

横顔に見とれていたのはバレていない筈だ、多分。

 

 

「これで、ブラッドの候補生が皆揃いましたね。血の力を以て(もって)あまねく神機使いを、ひいては救いを待つ人々を導いてあげて下さいね」

 

 

「ジュリウス」

 

 

「はっ」

 

ラケル博士の呼び掛けに、後ろに控えていたジュリウスが咳払いを1つして話し始める。

 

 

 

「これからブラッドは戦術面における連携を強化していく」

 

 

「その命令系統を一本化するために、副隊長を任命したいと思う。ブラッドを取りまとめていく役割を担ってもらいたい」

 

 

こんな個性的なメンバーの取りまとめか……

 

誰が選ばれるかは知らないが、ご愁傷様である。

 

 

「これまでの戦闘の立ち回りと、早くも血の力に目覚めた事から……夏姫、お前が適任だと判断した」

 

 

なん…だと……

 

 

 

「副隊長、やってくれるな?」

 

「お断りします」

 

誰が好き好んでそんな面倒な役を引き受けるものか。

 

 

「そうか、快く引き受けてくれるか」

 

 

「お断りします」

 

 

「わー、副隊長ー! よろしくね」

 

「まあ順当だろう、ナナはあれだし、ロミオは頼りないしな…」

 

「副隊長になったら、書類仕事とかめっちゃ増えそうだし、正直面倒くさいよな」

 

 

ロミオ先輩が本音を口に出した。ナナとギルも、うんうん、と頷いている。

 

 

必死に目を合わせないようにしているブラッドのメンバーを見て、ジュリウスが眉間にしわを寄せた。

 

 

「チームの現状に一抹の不安が残るが、お前ならきっと出来るさ」

 

「お断りします」

 

 

「シエル、副隊長とブラッドについてのコンセンサスを重ねるように」

 

 

「了解です」

 

「お断りしません」

 

シエルみたいな可愛い子の為なら、どんな面倒事だって喜んで引き受けますとも。

 

 

「なあギル、コンセンサスって何?」

 

「確か塩基配列に関係あったような気がするが…」

 

 

こそこそ内緒話をするロミオ先輩とギル。

 

 

「わからない事があったら、ターミナルで調べなさい。ターミナルには何でも書いてあるから」

 

「ナナ、お前はのび太のパパか!」

 

「お前達……」

 

結局、いつものように馬鹿騒ぎに興じるブラッドを見て、シエルは目を大きく見開いていた。

 

〜〜

 

 

「後は若い2人に任せて、私達は退室するとしましょう」

 

 

見合いの席の仲人さんのような事を言って、ラケル博士達は出て行った。

 

なお、ロミオ先輩には、頑張れよ、みたいにグッと親指を立てられた。

 

あなたは私の恋を応援するためにこの場をセッティングした親友か!

 

それでこの後、赤い雨に打たれながら、「畜生、なんで素直に祝福出来ねぇんだよ、畜生……」

 

とか言うのか。

 

 

 

まあ、こっちの準備は任せとけ、みたいな意味でやったんだろうけど、ラケル博士の仲人発言の後だから、ついそんな風なツッコミを入れたくなってしまう。

 

 

 

「副隊長、改めましてよろしくお願いします」

 

嵐(比喩であり、チーム名ではない)が去り、静かになった部屋でシエルが口を開く。

 

 

「うん、よろしくね」

 

 

「先に、確認しておきたい事があります」

 

「ブラッドとして作戦行動を行った回数はどのくらいでしょうか?」

 

 

「そうだね……7、8回かな」

 

想定外のアラガミと交戦したのも数に入れれば、優に40回を超えるけれど。

 

 

「なるほど、つまりほとんど経験がないという事ですね」

 

「……うん」

 

 

「わかりました。それでは次回の任務以降、しばらくは戦術レベルでの連携訓練を行っていくべきですね」

 

うーむ……連携プレーなんて高度な真似が私達に出来るだろうか。

 

甚だ疑問である。

 

 

「副隊長から私に、何か質問などはありますか?」

 

 

「そうだね、好きな食べ物とかはある?」

 

 

「好きな食べ物…ですか?」

 

 

「うん」

 

 

「好き…という訳ではありませんが、携帯食はよく食べますね」

 

「じゃあ、何か食べられないものはある?」

 

 

「いえ、特には」

 

 

「それじゃ、これからみんなで一緒にご飯を食べない?」

 

 

「えっ…」

 

 

「歓迎会とまではいかないけど、ちょっとしたものを用意してるんだ」

 

 

「それは…私の為に…ですか?」

 

「そうなるかな」

 

 

今日の任務は既に終わり、間もなく夕食の時間である。

 

 

シエルのやってくる時間は夕刻になるだろうと聞いていたので、予めフライアの職員さんに頼んでおいたのさ。

 

ちなみにお金はみんなで出し合った。うん、みんないい奴らだ。

 

「なんだか、申し訳ないような気がします」

 

 

「そんな事ないよ」

 

 

「そうなのですか」

 

「うん」

 

「では……不束者ですが、よろしくお願いします」

 

ぺこりと一礼される、うむ可愛い。

 

「よっし、行こう」

 

 

「あっ…」

 

 

シエルの手を取り、会場を目指す。

 

 

このフライアに来たからには、新人だろうと関係ねぇ、きっちりしっかり歓迎してやんよ!

 

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