絶対零度のお嬢様が往く   作:みか

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「」が普通の会話文で、『』が無線越しの会話です。


第21話 二つの兆候

神機兵へと搭乗する際、必要となるものは何だろうか。

この作戦が始まった時、興味から漠然と考えていたその問いに対する答えは、自身の身体をもって知ることになった。

「……パイロットスーツが欲しい」

そうつぶやいたのは三度、血を吐いての事である。

まず、この神機兵というやつはパイロットに対する配慮が全くされていない。

ゴッドイーターである私がこの様なのだ。一体どれほどの負荷が掛かっているのか、考えるだけでも恐ろしい。一般人が生身で乗れば、まず死は免れないだろう。

耐Gスーツは絶対に必要。私は神機兵パイロットの安全性向上に人生を懸けるつもりだ。

 

そんなくだらないことを考えつつ、振るわれた針を躱し、巨大な神機を叩き付ける。

 

それにしても、血濡れのブラッドとはずいぶんと身体を張った洒落だ。

一滴(ひとしずく)の笑いとハンマーで殴りつけられているかのような頭痛と、めまいその他諸々のおかげで気が遠くなる。

 

どうしてこんなことになったのか……

文句を言うなら誰にだろう、アラガミか、赤い雨か、それともやはり私自身にか。

 

~~

 

「ナツキ、その大荷物は何だ」

 

「不測の事態に備えたら、こうなりました」

「備え過ぎだ」

 

任務中に起こり得る不測の事態の数々、副隊長としてそれに対応しようとしたら、聖夜に赴かんとするサンタクロースのようになった。

半分に減らせと厳命されたので、こっそりブラッド全員の荷物に紛れ込ませておく。

 

「なあギル」

「何だ」

「リュックの底に小型のダンベルが敷き詰めてあったんだけど」

「もっと身体を鍛えろってことじゃないか?」

「え……そう、なのかな」

「信じるな馬鹿」

 

 

小型のダンベルをロープの一方の端に結びつけ、それを放り投げてくぼみに引っ掛けることにより、障害物を乗り越えることができる。

これは不屈の勇気をもってそびえたつ数多の障害を乗り越えてほしいという私の想いの結晶であり、どんなことがあっても負けないでというメッセージが……まあどうだっていいや。

「私のには乾パンが入ってたよ」

無邪気に言うナナ、ちなみに過去形だ。

「私のには予備のOアンプルが」

 

ジュリウスがこれ見よがしにため息をついたので、笑顔を返しておく。

 

かくして準備は整った。

1000(イチマルマルマル)をもって、神機兵護衛任務は正式に開始されたのである。

 

数時間の移動ののち予定通り三方に分かれ、神機兵運用試験の前準備を行う。

つまり索敵と掃討なのだが……

 

「露払い、にもなりゃしねえな」

そうつぶやくのはギル。

「だねぇ」

ナナも右手を目の上に当て、辺りを見回している。

どういうわけか、私たちの担当するB地点にはアラガミが一体も見当たらなかった。

「へへっ、俺たちにビビッて、逃げ出したんじゃねえの?」

直後に奇襲を受け、殺される一般兵士のようなたわごとを吐くのはロミオ先輩。

 

「直後に奇襲を受け、殺される一般兵士のようなたわごとを吐くのは控えてください」

「そう思ったとしても、口に出すなよ!?」

「ごめんなさい、下が氷なのでつい」

「滑ったのそれ口っ!」

 

「お馬鹿なこと言ってないで探せ」

 

ギルに言われ、再度金目のものを探す。ちっ、ハーブか。

 

そうこうしている間に、司令部よりジュリウスが交戦に入ったとの連絡があった。

基本、無線通信は一対一で行われるが、司令部を経由することによって複数人での通信が可能になる。

それにしてもジュリウスめ、

何が、『交戦(エンゲージ)に入る』だ……格好いいじゃないか全く。

 

『シエルです、こちらも敵を発見、小型が2、掃討します』

 

 

私たちも負けてはいられない。敵の姿が見えないのなら、先んじて神機兵の運用テストを開始するとしよう。

『こちらナツキ、司令部応答願います』

 

『は、はい、こちら司令部、クジョウソウヘイです』

声がこもっており、ひどく聞き取り辛い。恐らくマイクに近づき過ぎているのも原因の一つだろう。

 

『B地点付近に敵の姿は無し、いつでも始められます』

『りょ、了解。では、待機ポイントより神機兵γをそちらに向かわせます、到着まで今しばらくお待ちを……』

 

そこでノイズが入り、通信が途絶した。

「受けたまわりました……と」

ナナたちに索敵を続けるよう指示を出し、神機兵を乗せた装甲車の到着を待つ。

20分と待たずして神機兵は私たちの前に降り立った。

 

「すっごーい、ほんとに無人で動いてるよ!」

 

はしゃぎまわるナナ、時折くるくると回ったりする。可愛い。

 

「ジュリウスとシエルはこれ乗ったことあるんだよな、いいなあ、中どんなんだろう?」

 

「このマニュアルにパイロットルームの説明がありますよ、読みますか」

「へー、背部がこう開いて乗り込めるようになってんのか……ってなんでそんなもん持ってるんだよ!」

 

「レア博士に都合してもらいました」

「まめ、というか……」

「変な方向に真面目だな」

 

失礼なロミオ先輩とギルを放って、神機兵を眺める。

 

「……ちょっと乗ってみたいな」

 

 

 

ずしずしと歩く神機兵、その動きは油の切れたブリキ人形のようにぎこちなく、頼りになるのかはわからない。しかし、この人形がブラッドと双璧をなす、極致化計画とやらの看板なのだ。せいぜい役に立ってくれ、というかラケル博士たちのためにも役に立ってもらわないと困る。

 

ジュリウスの担当する神機兵αとシエルの神機兵βも到着し、テストが始まる。動作確認から始まったそれは、やがて索敵行動にシフトしていった。私とロミオ先輩は神機兵γの両脇やや後方に陣取り、いつでも神機兵のフォローに入れるよう神機を構えつつ待機。ギルとナナは更に後方にて側面、背面からの奇襲に備える。また、想定外のアラガミの件もあるため、15分に一度は司令部と連絡をとり、各チームの状況確認も行っている。

 

肌寒い風が吹く中でのほのぼのとした散歩は、神機兵のセンサーがシユウを捉えたことにより終結した。

 

「うわっ」

巻き上げられた土埃に怯むロミオ先輩を残し、神機兵に続く。

 

猛然と自身に迫り来る巨体を見ては、流石にいつものように挑発する暇もなかったらしい。

神機兵の顔面めがけて放たれた火球を、ギルの銃撃が相殺する。

「ちっ、ただのでくの坊じゃねえか」

 

いやいや、無茶言いなさんな。

 

「ギル、援護は最低限で」

「ああ」

 

性能評価のため、私たちの手出しは無い方がいい。もちろん非常時は除くけれど。

 

 

神機兵が刀身を振り回す。シユウが回避する。反撃に掌底を喰らう。

体勢を崩されはするが、損傷を受けた様子はない。

「案外頑丈だな」

「まあ、中型の一撃で壊されるんじゃ、危なくてとても実戦には出せないよ」

「そりゃそうだ」

 

 

神機兵はなおも果敢に突進する。そのたびにはたかれ、殴られ、鋼鉄のような翼で散々に打ちのめされる。

それでもめげない神機兵。元気に立ち上がると、突然虚空に向かって拳を突き出す。

当然カウンターを喰らい、倒れ込む。そして再び立ち上がると刀身を大きく持ち上げ、勝利のポーズ。

……なんだか気の毒になってきた。

「ギル」

「なんだナツキ」

「あの子、勝てると思う?」

「いや、今のままではまず無……なんで泣いてるんだ」

「クジョウの馬鹿ぁ!! もっとましなプログラムを組めぇ!」

 

帰ったらラケル博士にプログラムを組んでもらおう。あれはいくらなんでもかわいそうだ。私は密かにそう決心した。

 

~~~

 

長時間における激闘の末、シユウはついに沈黙した。

 

「γ、頑張ったね」

表面がボロボロになり、至る所に泥を被った神機兵の左足部分を撫でてやる。この数十分の死闘は、まさに涙なくしては語れないものだった。みんなはあくびしたり動物の形した雲を探したり、中型アラガミを仕留めたりしていたけれど。

涙を袖でぬぐい、クジョウ博士と回線をつなげる。

 

『司令部、こちらナツキ、ミッションコンプリートです』

「いや、コンプリートしてないしてない」

ロミオ先輩に首を横に振られる。

 

『こちらナツキ、神機兵γがシユウを撃破しました』

今度はうんうんと頷かれた。

 

『よし、どんどんテストを続けましょう』

『鬼か!!』

 

『済みません、ノイズが酷く……何かおっしゃいましたか?』

 

『こちらギル、気にするな何でもない』

 

私が何か言う前に、ギルが代わりに返答した。

 

~~

 

「ん?」

 

雲を眺めていたナナの髪(セットではなく癖らしい)がぴょこんと動く。

 

「どうした?」

「あれってまさか……」

ナナの指さす先には、不気味な赤みを帯びた雲が棚引いていた。

 

 

「全員、防護服を着用せよ、テストは直ちに中止」

 

大声でそう告げ、再度司令部と通信を試みる。

『は、はいクジョ……』

『フランを出せ、一刻を争う』

クジョウ博士に構っている場合ではない。

 

『こちらフラン、非常事態ですね』

『うん、赤乱雲らしきものを発見した、至急確認をお願いしたい。それとジュリウス達にも連絡を』

『了解、偵察班、聞こえますか。至急確認をお願いしたいことが……』

フランの声が遠ざかり、司令部に混乱が広がっていくのがわかる。

私も防護服を着用しよう。

バックパックから折りたたまれた防護服を取り出し、袖を通す。顔面を覆うプロテクターは視界が悪くなるのでまだ装着しないでおく。

『ナツキさん、こちらでも赤乱雲を確認しました。現在急速に成長中。推定では25分足らずで雨が降り始めます。直ちに防護服を着用し、待機ポイントへ向かってください』

 

『ジュリウス達への連絡は?』

『ジュリウス隊長は神機兵αの損傷のため、運用試験を一時中断し、規定のポイントにて待機中です。シエルさんは現在交戦中、中型アラガミを討伐したのち、帰還ポイントへ向かうとのことです』

『神機兵γはどうしたらいい?』

『そちらも帰還させますが、神機兵は赤い雨の中でも活動可能ですので急ぐ必要はありません。それよりもブラッド隊の収容を優先させます』

 

『わかった、ありがとう』

 

念の為、回線をつなげたままにしてみんなを集める。

 

「これより待機ポイントへ向かう、全員周囲への警戒を怠るな」

 

防護服をしっかりと着こんだ3人が強く頷いた。

 

 

「……シエル」

 

3人と並んで走りながら、ここにいない少女のことを考える。

今は私たち4人が無事に避難するのが先決だ。もしもの時は待機ポイントから救援に向かえば良い。そう思いながらも、やはり足取りは重いままだった。

 

 

 

『司令部、こちらナツキ、待機ポイントへ到着』

『こちらフラン、了解』

『シエルは?』

『戦闘は先ほど終了、移動を開始する模様です』

 

大丈夫、心配ない。みんな無事にフライアに帰れる。

 

『いえ、待ってください、これは……』

『フラン?』

 

『赤い雨に引き寄せられるようにアラガミ反応が多数出現、どうやらB地点付近を目指している模様! シエルさんの現在地であるC地点は進行予測ルート上にあります!』

 

「やべぇじゃねえか」

「副隊長、すぐ助けに行こう」

 

元から落ち着かない様子だったロミオ先輩とギルが折りたたみ式の椅子から立ち上がる。

「うん……シエルちゃんを助け……ないと……」

 

同じように椅子から立ち上がろうとしたナナがふらりとよろめいた。

「ナナっ!」

「どうした」

 

倒れ込むナナをあわてて受け止め、もう一度椅子に座らせる。

 

 

「少し熱がある、ミッションエリアの気温が低かったせいかもな」

額に手のひらを当て、ギルがそう診断した。

「ベッドまで運ぼう。ロミオ先輩、手伝って」

「あ、ああ」

 

簡易ベッドに横たわったナナはぐったりしている。

 

「なあ……大丈夫だよな?」

「神機使いが風邪くらいでどうにかなりゃしねえよ」

そう答えるギルだったが、眉間にはしわが寄っている。

 

職員さんが温かいお茶と風邪薬を持ってきてくれたので、どちらも飲ませる。お茶で薬を飲むのは良くないと聞くが、今は仕方がない。

 

ナナが発熱したことを司令部へ報告し、プロテクター、ブーツ、ソックス、アームカバーなど出発の用意を進めながらジュリウス達の判断を待つ。

用意が終わるころ、通信が入った。

『ジュリウスだ、ナナの容体は?』

 

『少し熱があるだけで、歩いたりするのには問題ないみたい。ただ、戦闘はできそうにない』

 

『そうか……司令部の許可は得た。ロミオ、ナナに付き添ってフライアに帰還してくれ』

『オッケー、任せといて』

『ナツキとギルはシエルの救援を頼む。ポイント情報は先ほどそちらの端末へ送信した』

『了解』

『俺もすぐに駆けつける。赤い雨が降る前に何とかシエルと合流してくれ』

 

『隊長』

肯定の返事を返そうとしたその時、凛とした声が耳の中に響いた。

 

『既に赤い雨が降り始めました』

『馬鹿な、予想よりはるかに早い……』

ジュリウスが低く唸る。予測ではあと10分程度は猶予があったはずだ。

『併せて報告します。司令部によるとCからB地点にかけて小型、中型アラガミが大挙し、輸送部隊が動ける状況ではないとのことです』

 

『っ、一刻を争う。ナツキ、ギル、ただちに出発してくれ』

 

『いえ隊長、救援は不要です』

『何!?』

 

『不十分な装備での救援活動は、高確率で赤い雨の二次被害をもたらします』

 

黒蛛病、致死率100パーセントの不治の病。

 

『私一人のためにブラッド全員を危険にさらすことはできません』

こんな時でもシエルは冷静だ。

いや、こんな時だからこそ冷静であろうとしているのだろう。

 

『シエル、防護服は着てる?』

 

『え? はい。着用しています』

 

『どこか屋根のある場所は?』

『付近にはありません』

 

『なら、神機兵の中に入れない?』

 

『コックピットの中ですか……試してみます』

 

シエルが試している間、ギルと端末をのぞき込み、最短のルートを確認する。

 

『背部損傷のため、外部からはコックピットを開けないようです』

 

 

『クジョウ博士、遠隔操作はできないの?』

 

『それが……中枢にダメージを負ってしまったのか、ウンともスンとも。簡単な命令には反応するのですが』

 

神機を突き立てて無理やり開いたらどうだろう、そんな考えが浮かぶが、レア博士からの資料の中に暴走という項があったことを思い出し、即座に却下する。

赤い雨にアラガミの群れ、そのうえ神機兵が暴走までしたら手がつけられない。

 

 

『クジョウ博士、神機兵がシエルの傘となるように姿勢を変えられないだろうか』

ジュリウスが発言する。

 

『可能です』

 

『よし。シエルはその場で雨をしのぎつつ待機、救援を待て』

 

『しかし……危険です』

 

『なに、濡れなきゃいいだけだ』

 

ギルが笑って言う。

 

『すぐ行くから待ってて』

 

『ふっ……どうせ止めても聞くような奴らじゃない、か。 ナツキ、ギル気を付けろよ。全員で生きて帰るぞ』

 

『『了解』』

 

「行こう、ギル」

「ああ」

装甲車の後部ハッチを開き、慎重に外の様子をうかがう。こちらは未だ降っていないようだが、赤い雲の広がり具合から見て、時間の問題だろう。

 

『戦闘時に防護服が破損する可能性が高い、なるべく交戦を避けるように心がけろ』

 

開きっぱなしの回線から、ジュリウスの声が聞こえる。

 

私たちが着用している防護服に手袋、顔面を覆うプロテクターなど、赤い雨への対処法を編み出したのは、極東のサカキ博士だという。シエルの救助が上手くいったら、直接お礼を言わせてもらうことにしよう。

 

~~

 

『ナツキさん』

『フラン?』

 

最短ルートをひた走っていると、通信が入ってきた。

あと10分もしないうちにシエルの待機しているエリアまでアラガミがなだれ込むだろう、との報告。

『わかった、ありがとう』

 

このまま走り続けたとしても、到底間に合わない。

なら、どうすればいいか。

 

「ドジるなよ」

「ギルこそ気を付けて」

 

簡単な話だ。

道具を使えばいい。赤い雨にもアラガミにも対抗できるうってつけの道具がそこらに転がっているのだ。使わない手はない。

 

ギルと別れ、神機兵γのあるポイントまで全速力で走る。ぽつりぽつりと雨が降り始めたが、プロテクターと防護服のおかげでなんともない。

 

神機兵は赤い雨の中、まっすぐ前を見据えて立っていた。

 

微動だにしない神機兵の背部に回り、ハッチを開ける。

頭から飛び込むようにコックピットへ入り、内部のコンピューターを待機モードから通常モードへと移行させる。有人制御の場合、広義的にはパワードスーツの延長上のような形で開発が進められているため、操縦方法についてはさして心配いらない。とはいっても、流石に内部の人間が直接飛んだり跳ねたりするようにはできておらず、パイロットの動きを感じ取り、何倍かに増幅して反映させる方式を取っている……らしい。

わずかに濡れた防護服を素手で触ってしまわないように注意しつつ脱ぎ捨てると、首筋と両腕、両足の付け根、手のひらに動きを読み取るためのパッドを貼り付ける。動作精度を上げるためにもう何ヶ所か取り付けるべきなのだが、あいにく悠長にはしていられない。硬い背もたれにもたれかかり、伸縮性のあるベルトで体を固定する。

最後に神機兵のアイセンサーと視界を共有している妙に薄いゴーグルをかけ、ようやく準備が整った。

 

「神機兵、起動」

待ってて、シエル

片膝を上げ、一歩踏み出そうとして……

私は前のめりに倒れ込んだ。

 

「いっ……」

 

痛い、地味に痛い。昔テーブルの脚におもいっきり小指をぶつけた時の痛みを思い出す。

 

すぐさま立ち上がろうとして、今度は仰向けにひっくり返る。

 

「がっ」

 

何故? と聞くまでもない。私の動きが激しすぎるのだ。

急激すぎると言い換えてもいい。

早くしなければ、という焦りが余計な力みを生み、結果として立つことすらままならないとは、ずいぶん間抜けな話だ。

右腕の神機を杖代わりにして何とか立ち上がったは良いものの、走りでもしたら間違いなく転ぶだろう。

私と神機兵の動きにずれがあるのも問題だ。

コンマ数秒の差でしかないが、物凄い違和感がある。

いくら神機兵がある程度頑丈であるとはいえ、この状態ではアラガミとの戦闘はできる限り避けるべきだろう。

 

幾度も地面とキスをかわしながら少しずつ操作に慣れ、ようやく普通に歩けるようになったのはそれからたっぷり3分は経ってからだった。

 

「くそっ」

 

無駄に受け身を取るのが上手くなってしまった。

右へ左へふらつきながらも走り出す。

神機兵のポテンシャルはやはり大したもので、慣れれば軽々と車並みの速度を出すことができてしまう。ただし、文字通り一歩間違えれば大惨事である。

 

足に力を込めるたび、景色がどんどん後ろに流れていく。そして気分の方もどんどん悪くなっていく。

 

「吐きそう」

 

乗り心地は最悪、安全性は劣悪、性能は凶悪、それが神機兵シルブプレ。

 

というかこれって、止まるときパイロットに物凄い負荷がかかるのではないだろうか。

 

 

どうしよう……死ぬかもしれない。

誰かをかばったりして死ぬならともかく、神機兵が急に止まったために死にました、では末代までの恥である。

 

「回転して運動エネルギーを逃したらどうだろう」

 

~~

 

「シエル、助けに来たよ!」

 

「副たいちょ! ……う?」

 

「じぇのさいど・ぎあ!」

どこからかゴロゴロと転がってきた神機兵が、シユウを轢き殺す!

 

「…………」

 

もはや新手のアラガミである。

「却下だな……」

 

その時の私は結構のんきだった。

 

 

 

 

 

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