絶対零度のお嬢様が往く 作:みか
結果から言おう、訓練は無事に終了した。
ただ、先ほどやってきたジュリウスには「一度ゆっくり休養をとった方がいい」と言われた。
今日から仕事だっていうのに休んでどうする。
……私はひょっとして、何かいけないことをしたのだろうか。
あれ、そういえば……私はどうして医務室のベッドの上にいるんだろう。訓練は無事に終わったんじゃなかったっけ?
訓練内容をもう一度思い出してみよう。
〜〜〜〜
「では、これから基礎訓練を始める」
ジュリウスの声が広い訓練所内に響く
「どんとこーい」
頷いて見せると、目の前の床から何かが出現した。
「訓練用のダミーアラガミだ、とりあえずそいつと戦ってみろ」
攻撃力、防御力はほとんどないらしく、危険性は少ないって言われたけど、
「いきなりですか……まったく、私は素人だってのに」
私に向かって牙を剥いているのは、茶色っぽく光るダミーアラガミ、ターミナルで調べた『オウガテイル』というアラガミに酷似している。
「あー、こんな奴、何回か見たことある」
ターミナル内の資料で見た時にはピンと来なかったが、昔に遭遇したことのあるアラガミだった。
「まずはブレード形態だ」
「らじゃー」
右手にロングブレードを引っさげ、ダミーアラガミに肉迫する。
そして、スピードをのせたまま、
「はっ!」
一発殴ってやった(どや)
ゴッドイーターになってから、初のアラガミ(ダミーだけど)への攻撃は、顔面へのえぐり込むような左ストレート。
「……アラガミは神機でないと倒せない」
上で見ているジュリウスに注意された。
「知ってるよ」
続いて側頭部に蹴りを入れてやると、ダミーアラガミは何やらうめき声のようなものをあげた。
反撃とばかりに尻尾が振るわれるが、左側にステップする事によって回避する。
「隙だらけだよっ!」
そのまま一歩踏み込み、上段からダミーアラガミの首へと神機を突き立てた。
そこで一度神機を手放し、空中で一回転しながら踵落としを放つ
狙うのは神機の持ち手部分、いわゆる柄の部分だ。
「てやっ!」
ブチッと音がして、ダミーアラガミの首が落ちた。
「よし、上々」
華麗に着地を決めると、そばに転がった神機を拾い上げる。
訓練用のダミーとはいえ、一応はアラガミなので念の為、頭部を失って動きを止めている無防備な所に何度か斬撃を放ち、オラクル細胞を完全に四散させておく。
続いて出現したのは、動かないタイプのダミーアラガミ。
あれは『ナイトホロウ』というアラガミを模したものだ(ったと思う)
さっと後ろに回り込み、とりあえず左手で一発殴ってみた
……うん、ぐにゅっとして何か変な手触りだ。
アラガミは妙に甲高い鳴き声を上げ、動きを止めた。
ん? これはひょっとすると……
「ほっ」「とっ」「やっ」
そのまま殴る蹴るのコンボを続ける。
ターミナルによると、黒い霧のようなものを飛ばして攻撃してくるとの事だったが、体勢が崩れているせいか、甲高い鳴き声を上げるだけで攻撃してこない。
ハイキックの合間にロングブレードでの斬撃を加え、完封した。
どうやら、アラガミは神機でしか倒せないが、ゴッドイーターになる事によって強化された体術なら、怯ませるくらいは出来るようだ。
ジュリウス達が静かだな、と思って小窓を見上げると、みんな間抜け顔でポカーンとしていた。
そうしているうちに再びダミーアラガミ(オウガテイルもどき)が出現した。生まれたては目がよく見えないのか、何度も目をしばたかせて、ぼんやりしている。
確か訓練の流れは、剣形態(ブレードフォーム)、銃(ガン)形態、捕喰(プレデター)形態の一連の動きをこなす、というものだったはずだ。
神機をガンフォームに変形させると、未だ目をしばたかせているダミーアラガミに足払いをかける。
見事にこけた
そのまま、立ち上がろうとしているアラガミ目掛け、ほとんどゼロ距離で弾丸を撃ち込む
1発、2発、3発と続けていく内に弾が出なくなった。
「弾切れだ」
ブレードフォームに変形させる。このまま捕喰も試してみよう
「…ん」
神機に力を込めると、何やら黒いアゴのようなものが生えた。自分の神機とはいえ、ちょっと怖い。
「喰らって!」
黒いアゴはグゴゴゴと音をさせながらダミーアラガミに、文字通り喰らいついた。
何かを引きちぎったような鈍い音がして、神機がブレードフォームに戻る。同時に、何か暖かいものが私の中に入ってくる感触がした。
「うおぉぉ、なんだこれ!」
身体が淡い光を帯びる。
これが神機解放(バースト)状態なんだ!
私の身体にある古い細胞が喜び震えているのが分かる。
新しい細胞って、こんなに美味しいんだ……
「もっとだ、もっと喰わせろ!」
それから私はしばらくの間、捕喰を中心とした戦闘(くんれん)を続け、
「あーはっはっはっ!」と高笑いしながら、ダミーアラガミの73体目を喰らっていたところで体力の限界が来て、倒れ込んでしまったのだ。
…………うん、ジュリウスは間違って無かった。我ながら…これは引くわ
しばらく枕を抱きかかえてベッドの上をゴロゴロと転がる羽目になった。
主人公は『器用』スキル持ちです。