絶対零度のお嬢様が往く 作:みか
しばらくは訓練を続けるようにとの辞令を受けたので、今日は訓練所にこもっている。
どうやら先日の私の動きは物議を醸してしまったらしく、ジュリウスは現在説明の為にフライア中を走り回っているらしい。
ごめん、ジュリウス
さて、そんな事はどうでもいい、訓練に話を戻そう。
剣形態の神機はこの前、嫌と言うほど振りまくったので、今回は銃形態を中心とした動きの訓練を1人で黙々と行っている。
たゆみない反復練習によって動きを最適化させ、余裕を生み出す。
ようは『慣れ』だ。
銃身の制御については大分コツを掴んできたので、続いて実用的なバレットの管理および作成を行う。
とは言っても、ターミナル内に存在している先人の残したエディットデータを参照し、同様にターミナルによって得られたアラガミ情報から、それぞれのアラガミに効果がありそうなものをいくつかピックアップして、運用効率・効果などを考え、モジュールの追加・変更、発射角度の修正などを行っているだけなので、私の負担はほとんど無いも同然なのだが。
それにしても…レーザーに弾丸、放射や爆発。貫通属性や破砕属性。
様々な種類があって、とても奥が深い。
刀身でもそうだが、それぞれの武器の特長を知り、それを正確に使いこなせるようになれば、それはそのまま生存率の向上、ひいては戦果の増大へと繋がるだろう。
ゴッドイーターというのは、言うまでもなく非常に危険な仕事だ。……だが、今の世界には、どこもかしこもアラガミが跋扈している。どんな人間でも、死ぬときは死ぬのだ、こんな世界ならなおさら。
『力を持つ者は、力の無い者を守らなくてはならない』
私は昔から、お父様にそう教えられて育った。だから私は、今出来る事を精一杯やろうと思う。
こんな私を必要としてくれる人が居る限り。
〜〜〜
水分補給の為、一度訓練所を出てエントランスへ向かう。
グボログボロ、シユウ、コクーンメイデン、ウコンバサラ、ヤクシャ、ドレッドパイク、オウガテイル、ナイトホロウ
私が戦う可能性のあるアラガミは、今のところはこの辺りだろうか。
訓練の様子を見る限り、1対1でオウガテイルやナイトホロウに後れを取る事は無さそうだが、シユウやグボログボロを相手取るとなれば、不安が残る。
一応、効果のありそうなバレットを作る事には成功したから、まったく手も足も出ない訳では無いと思うんだけど
「頭を結合崩壊させて、手のひらに斬撃を集めれば……」
「うわっ!」
「わあっ!」
ぶつぶつ独り言を呟きながら歩いていたら、誰かとぶつかってしまった。私は平気だったものの、ぶつかった相手は急いでいたのか、倒れ込んでしまった。
慌てて手を伸ばす
「大丈夫!? ごめんね」
「ううん、平気だよー」
引っ張り起こしたのは、私と同い年くらいの女の子だった。
「考え事してて……本当にごめんなさい」
「悪いのはこっちもだよ、遅刻しちゃうと思って、よく前を見て無かったから」
香月ナナさんと言うらしい彼女は、私と同じくフェンリル極致化技術開発局……詰まるところブラッドに配属されるらしい。
ナナさんはこれから訓練に行く所だったので、あまりお話は出来なかったが、お近づきの印に…という事で、手作りだという『おでんパン』なるものをもらった。
「残したら後で怒るからねー」と、のたまったので早速エントランスの椅子に座り一口かじってみる。
串があった。
…………
これは、どうすれば良いのだろう?
普通はもちろん外して食べる。
串を食べるような馬鹿は居ない。
だが、私達は誇り高きゴッドイーターなのだ。
神すらも喰らう(ここ重要)私達が、たかが串ごときに臆するわけにはいかない
更に「残すな」という言葉、あれは、1人前の神喰らい(ゴッドイーター)足るもの、串くらい喰えなくてどうする?
というメッセージだと見た。
「いただきます」
〜〜
結果だけ言おう、
口から血が出た。
医務室の先生に「君ほど毎日のように医療室に来るゴッドイーターは初めてだよ」
と言われた。
泣きたい
ジュリウスには、
「……」
言葉はなく、何か可哀想なものを見る目で見られ、肩をポンと叩かれた。
今度こそ人目も気にせず泣いた
そうしたら、何故か受付にいた綺麗な女性が頭を撫でにやってきた。
おでんパン(串)はゴッドイーターより強し
迷言だな、こりゃ。
一番の敵はいつも己自身です。