絶対零度のお嬢様が往く   作:みか

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第8話 ブラッドの真価

 

「なっ、ヴァジュラ!?」

 

ロミオ先輩が驚いて動きを止める。ナナは初めて見る大型アラガミに怯えているのか、一歩後ずさった。

 

「グオオォ!」

 

幾人もの神機使いの命を奪ってきたであろう剛爪が、私達に向かって振るわれる。

 

 

「ジュリウスっ!」

 

「わかっている!」

 

 

 

ナナを庇うようにジュリウスのシールドが展開された。

 

 

シールドと爪の間に火花が散る。

 

「こっちだよ!」

 

 

ジュリウス達に気を取られている間にヴァジュラの側面に回り込み、弾丸を連射する。

 

 

上手く引きつけられたようで、ヴァジュラが吼えつつ、飛びかかって来た。

 

それをあえて、ヴァジュラ側に片手をついて前転する事によって回避し、神機を素早く剣形態に変形させる。

 

「ナナ! 側面に回って、ヴァジュラが隙を見せたら攻撃して! ジュリウスはナナのフォロー!」

 

かわされた事に業を煮やしたのか、ヴァジュラは前足を支点にして素早く半回転し、再び飛びかかって来た。

 

今度は右手側にステップする事によってかわしながら、すれ違いざまにヴァジュラの左前足を斬りつけてやる。

 

「わ、わかった」

「ああ、任せろ」

 

ナナとジュリウスがヴァジュラの側面へ

 

「ロミオ先輩は私と一緒にこいつを引きつけてっ!」

 

飛んできた雷球をギリギリの所でかわしながら、ロミオ先輩に指示を出す。

 

「お、おう!」

 

ロミオ先輩が銃を乱射してヴァジュラの注意を引いてくれたので、すかさず接近して前足を斬りつける。

 

「はっ!」

 

 

更に私とタイミングを合わせるようにしてジュリウスが胴体部に斬撃を加えた。

 

 

ヴァジュラが素早くジュリウスの方へと向き直り、爪を振るったが、既にジュリウスは後方にステップして軽やかに回避していた。

 

「はああっ!」

 

 

素早く踏み込んだナナがハンマーを後ろ足に直撃させる。

 

 

ヴァジュラの動きが止まった。

 

「ロミオ先輩、いくよっ!」

 

「よっし」

 

 

すかさず、ヴァジュラの顔面目掛けてロングブレードを振るう。

 

短い鳴き声を上げてこちらに向き直ろうとしたヴァジュラは、続いて襲って来た大剣によって顔面を半壊させられた。

 

 

 

私達を脅威であると認識したのか、ヴァジュラが雷を自らの身体に纏わせようとする。いわゆる、『怒り』状態だ。

 

この状態になったヴァジュラは動きが格段に速くなり、攻撃をかわすのが非常に難しくなる。新人ゴッドイーターである私とナナに捉えられる速さではないかもしれない。

 

 

ゆえに、ここで勝負を決める

 

 

「グレネード、いくよっ!」

 

 

先ほどとは比べ物にならないスピードで私に迫ってきたヴァジュラの鼻先に、スタングレネードを放り投げてやる。

 

 

眩い光が辺りを包み、目を閉じる事もままならなかった可哀想なヴァジュラは、スピードに任せて神機使い達の真ん中に突っ込んできた代償を支払う事になった。

 

 

「くらえっ!」

 

 

ロミオ先輩のバスターブレードがヴァジュラの尻尾に直撃する。

 

ヴァジュラの尻尾だったモノが辺りに四散した。

 

たまらず仰け反った所に、ロングブレードによる斬撃を浴びせ、足まわりを崩す。

 

 

「ジュリウス!」

 

 

「了解」

 

 

私の意図を汲み取ったジュリウスがゼロスタンスの構えを取り、血の力を発動させた。

 

 

私とナナ、そしてロミオ先輩の身体が淡い光を帯びる。

 

 

「ナナ、決めるよ!」

 

「うんっ」

 

 

先程の前足への斬撃によって、体勢を崩したままの無防備なヴァジュラに向かって、ナナが迫る

 

 

ナナは充分に接近するとブーストを起動させた

 

重厚な駆動音が響き渡る。

 

 

「てりゃあああ!」

 

 

ナナはそのままヴァジュラの顔面を何度も激しく殴打した。

 

 

「グガアアア!」

 

そのあまりの威力に、打たれる度にヴァジュラが身体を震わせる。

 

 

「…まだ立ち上がるのか」

 

 

身体は既にボロボロになっているにもかかわらず、最後の力を振り絞ってヴァジュラが吼えた。

 

「ナナ、下がれ」

 

 

ジュリウスがナナを庇うように前に出る。

 

 

「りょ…了解」

 

 

ナナはやや後方へ下がると、地面にハンマーの柄をついて荒い息を吐いた。

 

 

「まさか、スタミナが……」

 

 

ヴァジュラが走り出す

 

「ナナ、危ねぇ!」

 

 

ロミオ先輩が声を上げ、オラクル弾を連射する。同時にジュリウスがヴァジュラの顔面を切り裂き、自分に注意を引き付けようとした。

 

だが、ヴァジュラはそれらを意に介さず、尚もナナに向かって前進し続ける。どうやらナナ1人に狙いを絞ったようだ。

 

 

手負いのヴァジュラほど恐ろしいものはない。

 

……だがこの私、天王寺夏姫を無視したのが運の尽きだ。

 

 

「君ら弱っても、油断ならないからなぁ」

 

ヴァジュラの鋭い牙がナナに届くよりも速く、仕掛けておいたホールドトラップを発動させ、ヴァジュラを拘束する。

 

 

携帯用のホールドトラップでは、ほんの数瞬動きを止める事しか叶わないが、今はそれで充分だ。

 

 

「これで…終わって!」

 

 

助走をつけ、身体全体で放った私の渾身の突きが、ヴァジュラの眉間に真っ直ぐ突き刺さった。

 

 

 

「グオオオォォォ……」

 

 

ヴァジュラの目から光が消え、その巨体が大きな音を立てて地に沈んだ。

 

 

 

 

 

「……」

 

 

…死んだふりをしている可能性もある、よね?

 

 

しばらく警戒するが、ヴァジュラは全く動く様子を見せなかった。

 

恐る恐る神機を引き抜いてみる。

 

 

反応はない

 

 

これはひょっとすると

 

 

「勝ったの?」

 

私の言葉に

 

「ああ、想定外の相手だったが、ヴァジュラの討伐成功だ」

 

 

ジュリウスが優しく返してくれた。

 

 

「やったよ、夏姫ちゃん~」

 

 

ナナ(若干返り血付き)が抱き付いてくる。

 

 

「むぐ」

 

帰りのヘリが着くまでの間、辺りの警戒をしないといけないんだけど……

 

 

私と目が合ったジュリウスが一つ頷く。

 

あ、周囲の警戒はジュリウスがやってくれるみたいだ。ここはお言葉(喋ってないけど)に甘えよう。

 

「すっげぇ、俺たちだけで大型アラガミをやっつけちまった」

 

ロミオ先輩は興奮気味に飛び跳ねている。

 

ひょっとすると、ロミオ先輩達も大型アラガミと対峙した経験はあまり無いのかもしれない。

 

「夏姫ちゃんのお陰で誰も怪我してないよ」

 

ナナが抱きしめる手に、更に力を込めてきた。

 

「ん……」

 

少し痛いけど、可愛い子に抱きつかれているんだから我慢だ。

 

「それはみんなが頑張ったからだよ」

 

 

みんなは私の想像以上の働きをしてくれた。ジュリウスは言わずもがな、リーダーに相応しい動きをして私達にチャンスを作ってくれたし、ナナは恐怖心と動揺を押し殺してヴァジュラに肉迫してくれた。更にロミオ先輩は先輩らしく私とナナをしっかりとフォローしてくれた。

 

 

「そんな事ないよ~」

 

 

ナナに頬を擦り付けられる

 

 

「確かに被害が出なかったのは、夏姫の的確な指示のお陰だよな」

 

「ああ、見事だった」

 

 

ロミオ先輩達までおだててくる。

 

まったく…何も出ないよ?

 

 

 

 

「あ、夏姫ちゃんが笑った」

 

 

 

とりあえず、みんな無事で本当に良かった。

 

 

~~

 

こうして私達ブラッドの最初のミッションは、想定外の大型アラガミの乱入というアクシデントがありながらも、何とか無事に終了したのであった。

 




前日の夜、想定外の事態に備えて色々なアラガミのデータを必死に収集していたみたいです。

「うう、眠っちゃダメだ……」

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