絶対零度のお嬢様が往く   作:みか

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第9話 想定外の中型アラガミが侵入しました、侵入地点のデータを送ります

 

「あんなの対処出来ないよねぇ」

 

 

私は今、モップでエントランスを掃除している真っ最中だ。

 

 

 

ブラッド全員での初ミッション『カウボーイ』から数日。

 

私達は順調に戦績を伸ばしてきた。

 

 

倒したアラガミは

 

オウガテイルを始めとし、ドレッドパイク、ナイトホロウ、コクーンメイデン、ヴァジュラ、コンゴウ、コンゴウ堕天、グボログボロ、ウコンバサラ、シユウ

 

だいたいこんな所だろうか。

 

 

ちなみに私達が受けた任務での討伐対象はオウガテイル、ナイトホロウ、コクーンメイデン、コンゴウ、この4種類のアラガミのみだ。

 

その他のアラガミはミッション中に乱入してきた為に、やむなく交戦する羽目になったものである。

 

 

何故こんなに想定外のアラガミの乱入が多いのかは、よく分かっていない。ラケル博士が言うには、『何らかの力に導かれているよう』との事だが、なかなかに迷惑な話だ。

 

 

コンゴウの討伐に向かったはずだったのに、待ち受けていたのがコンゴウ通常種とコンゴウ堕天種とグボログボロだった時は『もう駄目だ、世界の終わりだ……』と嘆きたくなった。

 

 

やっとの思いで戦闘を終え、ぜいぜいと荒い息をしながら帰りのヘリを待っていたら、どこからか楽しそうにシユウが飛んできた。

 

……あの時は流石に死を覚悟したものだ。

 

 

最近は帰る度、オペレーターのフランさんに「申し訳ありませんでした」と深々と頭を下げられ、「…無事で良かったです」と抱き締められるのが日課になりつつある。

 

想定外のアラガミの乱入は、別にフランさんが悪いわけではないので謝らなくてもいい、と毎回言っているのだが、彼女は責任を感じているようだ。

 

 

美人さんに抱き付かれるのは悪くない気分だけど、マジ泣きされるのは心が痛むから勘弁してほしい。

 

 

さて、そんな悲しい報告は置いておいて、もっと別の楽しい事について話そう。

 

 

ジュリウスに聞いた話によると、もうじきブラッドに新しいメンバーがやってくるらしい。

 

 

詳しい事はまだ知らされていないが、ベテランの槍使いさんという事なので、神機使いの心得などを教えてもらいたいと思っている。

 

あと、色々なアラガミへの対処法とか。

 

 

 

「ふっふー、汚物は消毒だよ〜」

 

「怖えって」

 

 

布巾で棚を掃除しながら物騒な事を口走るナナにロミオ先輩がツッコミを入れている。

 

 

数々の難関(通常任務である)を共にこなした結果、私達ブラッドの結束力は大分深まったと思う。

 

今日もいつものように、ナナとロミオ先輩に掃除を手伝ってもらっている。

 

 

手が空いている時はジュリウスも手伝ってくれるのだが、今日は何かやることがあるそうだ。すごく申し訳無さそうな顔で謝られた。

 

 

 

「自動お掃除ロボットとかがあればいいんだけどなぁ」

 

 

エントランスは自分たちが使う場所だから、きちんと毎日綺麗にしておかなければならないのである。

 

というより、屋敷に居た時から毎日どこかを掃除するのが癖になっていたと言った方が良いかもしれない。

 

 

 

「お前達! 何をやっている」

 

鼻歌を歌いながらモップで床をごしごしこすっていると、誰かに声を掛けられた。

 

「掃除です」

 

答えてしまってから、しまったと思った。

 

 

何故なら、目の前にはここフライアで一番偉いグレム・ド・ブロア局長(名前はうろ覚えだが)が立っていた為である。

 

 

「それは殊勝な心掛けだが、今日は大事なお客様がいらっしゃると言っておいただろう。連絡網が回ってきた筈だ」

 

 

「……たぶんラケルの所で止まったんだと思います。あの子、あまりメールを見ませんから」

 

後ろに控えていたレア博士が申し訳無さそうに口を開いた。

 

 

レア博士というのは、ラケル博士の姉妹の美人さんだ。泣き黒子がえっちぃ。

 

 

あと、何となくだけどレア博士もジュリウスと同じく苦労人のような気がする。

 

 

 

「ユノさん、お見苦しい所をお見せしました」

 

グレム局長が振り向く。

 

 

「こいつらはちと世情に疎い所がありまして…」

 

 

グレム局長の背後に居たのは、これまた見惚れるような美人さんだった。

 

 

サラサラと流れるような美しい髪、整った顔立ち

 

「いえ、いいんです」

 

 

女の私から見ても、すごく可愛い。これがいわゆる正統派ヒロインというものか……

 

 

是非ともお近付きになりたい。

 

「まったく……うん?」

 

 

そのまま薄ら笑いを浮かべ、エレベーターの方に歩いていこうとしていたグレム局長は、突然私の前で立ち止まった。

 

 

しばらくの間じっと見つめられる。

 

 

「お前…いや、君は?」

 

 

どうしたのだろうか

 

 

グレム局長は非常に困惑しているように見える。

 

 

 

「名前は何と言うのかね?」

 

 

名前……まさか私の?

 

 

フリーズしていると、苦笑いといった表情を浮かべているレア博士に、早く答えろというようなジェスチャーをされた。

 

 

慌てて口を開く

 

「夏姫です」

 

「ナツキ?」

 

「はい」

 

「ナツキ……はて?」

 

 

「グレム局長、どうかなさいましたか?」

 

レア博士が尋ねる

 

「……いや、見かけん顔だと思ってな」

 

 

一応毎日フライアに居るんだけどなぁ

 

 

「彼女らはつい最近ブラッドに配属されたばかりですから、ご存知ないのも無理はないと思います」

 

「そうか」

 

「局長、お時間の方が」

 

 

「そうだったな……ではブラッド候補生の諸君、失礼する。まあ掃除は夕方にでもやっておきなさい」

 

 

3人で並んでグレム局長に敬礼を返す。

 

「さ、行きましょうユノさん」

 

「はい、…また今度お話しようね」

 

ユノさんというらしい色白の美人さんは、イタズラっぽい笑顔で私達に小さく手を振ると、グレム局長達について歩いていった。

 

 

「はー、モップ片付けないとね」

 

いつの間にか落としていたらしいモップを手に持つ

 

 

「雑巾とバケツは私が片付けるよ」

 

ナナも片付けを手伝ってくれるらしい。

 

「ロミオ先輩は箒とちりとりを……」

 

ナナが言葉を途中で止めた。

 

 

「ロミオ先輩?」

 

「ロミオ先輩~!」

 

「ロミオ先輩!」

 

「ロミオ先輩!?」

 

 

「大変! ロミオ先輩が…立ったまま、し…死んでる」

 

 

 

「いやっ、死んでないからね!? 俺すごく生き汚いからね!? アラガミ化してでも生きて帰るからね!? 可愛い妹残して死なないからね!?」

 

 

ぼーっとしていたロミオ先輩が我に返った。

 

 

「なーんだ、期待して損した」

 

「ナナ、お前一体いつからそんなに黒くなったんだ?」

 

 

「気のせいじゃない?」

 

 

「いや、初めて会った時よりも大分…… あれ? ひょっとして最初からこんなだったっけ」

 

そんな2人の会話をBGM代わりにしながら、片付けを続ける。

 

 

さて、この後も任務だ。

 

 

せいぜい死なないように頑張るとしよう。

 

 

~~第10話へ続く~~

 

 

「っ! 待て待て、何で俺がフリーズしてたか訊いてくれないの?」

 

 

「特に興味が湧きませんので」

 

「先輩の事だからどうせレア博士に踏まれたいとか思ってたんでしょ」

 

 

「お前ら最近俺への扱い酷くねぇ?」

 

 

「大丈夫だロミオ、誰だって妙な性癖の1つや2つ」

 

 

「ジュリウスまで! って言うかいつの間に」

 

「あ、ジュリウス用事終わったの?」

 

「ああ、手伝えなくて済まない」

 

「別にいいよ」

 

ジュリウスと話していると、

 

 

「そうじゃなくて、ユノだよユノ!」

 

ロミオ先輩が構ってちゃんオーラを出しながら割り込んで来た。

 

…仕方ない、相手してやるか。

 

 

「見えなかったのか? さっきのユノアシハラだぜ!?」

 

 

「ゆーのー?」

 

 

「ユ・ノ!」

 

 

「いいか、よく聞けよ、葦原ユノってのは……」

 

 

そこから先のヒートアップしたロミオ先輩の様子は語るに忍びなかったので、ここでは割愛する。

 

まあ、まとめると、ユノさんは凄く歌が上手くて、美人さんで、ロミオ先輩は今日は風呂に入らない覚悟である、との事だった。

 

池に蹴り落としてみようかな、と少し思ったのは内緒だ。




ナツキ「ロミオ…ああロミオ、あなたの痴態は……未来永劫、フライアの防犯映像に記録されていく事でしょう」

ロミオ「やめて!」
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