ハイスクールD×D 赤腕のイッセー   作:nasigorenn

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番外編その2です。
今回はアーシアにスポットが当たります。


番外編その2 アーシアのデート
アーシアのドキドキデート その1


 その能力故に人々から崇拝され、そしてその優しさ故に人々から畏怖され裏切られた少女、アーシア・アルジェント。

彼女は禁忌を犯したとして背信者として教会から追放され、堕天使に騙されて日本へとやってきた。

そこで本来ならばその奇跡の力たる神器を抜き取られ死ぬところであったが、それはこの国で出会った一人の男によって止められた。

最初に会ったときの印象は、とても目が離せなくなるくらい心配になってしまうくらい衰弱していて、それでいてとても優しい異国の男の子。

そして騙されてもう終わりだと思った時に助けに来てくれて、初めて見た時は全く違ってその男の雰囲気は実に刺々しかった。

そこから先は気絶してしまい彼女は見ていないが、男によって堕天使は行動不能なまでに叩き潰され、彼女が意識を取り戻した時にはもう事は終わっており、そして男によって助けられた。

何故助けたのかと聞けば、男は頬を掻いて少しだけ気まずそうにしつつ、

 

『あんときにサンドイッチの御蔭で助かったからな。その礼代わりに言っただろ……何か困ったことがあったら助けるってよ』

 

それを聞いて彼女は男の顔を見入ってしまった。

胸がドキドキと高鳴り、顔が熱を放ち、瞳が潤み目が離せなくなる。

それは初めて彼女が抱いた感情であった。

吊り橋効果ではないかと思われるかも知れない。だが、彼女はそれを聞けば絶対に否定するだろう。

助けてくれた、救ってくれた恩人との感情が錯覚なわけがないと。

そう、彼女はこの時、初めて『恋』をした。

 それから彼女は助けてくれた男『兵藤 一誠』の手助けの元、彼がそれまで生活していた孤児院へと案内され、そこで暮らすことに。

孤児院の園長は勿論、その子供達から温かく迎えられアーシアはそこの一員となった。

そして一誠と同じ学校に通うことになり、現在では通い妻のように一誠の暮らしているアパートに行っては料理を作り、彼と一緒の学園生活を満喫していた。

 これはそんな恋と青春を謳歌する彼女のほんの一時にあった話。

言い替えるのなら、彼女にとって初めて一誠とのお出かけとさえ言っても良い日の話しである。

 

 

 

 それはとある日の朝。

学校が休みと言うこともあって、恋するアーシアは想い人たる一誠ともっと一緒に居たいと彼の部屋で献身的に尽くしていた。

眠っている一誠の寝顔を見てドキドキとしつつ起こし、一誠のために朝食を作り一緒に食べる。

それが彼女にとっての日課であり、それが出来る事が嬉しくてたまらない。

だからなのか終始幸せそうに笑うアーシア。

そんなアーシアに何とも言えない顔を向けつつ、一誠はアーシアの作った朝食を一緒に食べる。

 

「んじゃ……いただきます」

「はい、どうぞ! いただきます」

 

アーシアが作った朝食を平らげると、一誠はその余韻に浸ってかジッとしている。その様子を見てアーシアは一誠が満足してくれたと喜んだ。

そしていつもなら学園に向かうところだが、休みとあってすることもないので部屋でゆっくりと過ごすことに。

時たまに久遠が来ては仕事を持ってくるが、今回はそのような様子は見られない。

そこで一誠と一緒に何かをしようと考えるアーシアだが、その先は一誠が切り出してきた。

 

「なぁ、アーシア。今日はこの後暇か?」

「え? は、はい!」

 

いきなり予定を聞かれて驚くアーシア。

だが、その言葉の真意は分からずとも、一誠がアーシアに何か用があるということはわかった。

一誠から誘われたことが嬉しくて嬉しそうに微笑むアーシア。そんなアーシアに向かって一誠はニヤリと悪どい笑みを浮かべた。

 

「なら、一緒に行って貰いたいところがあるんだよ。着いてきてくれねぇか」

 

それは傍から見れば普通の誘い。

だが、アーシアからすればデートの誘いのように感じられ、その誘いに彼女は頬を染めながら大きく頷いた。

 

「はい、是非!」

 

 こうして彼女と一誠のデート? は始まった。

一誠が何処に連れて行ってくれるのかと胸を期待で膨らませながら楽しみにするアーシア。

別に特別な所でなくても良い。彼女にとって、一誠とどこかに行けることが嬉しいのだ。場所では無く、一誠と一緒に出掛けられること自体が楽しくて嬉しい。

だからこそ、彼女は上機嫌で一誠の隣を歩いていた。

 

「イッセーさん、どこにいくんですか?」

 

とはいえやはり気にはなるものであり、アーシアは少し興奮気味で一誠に行き先について問う。

すると一誠は顔をアーシアに向けるも、それは何やら含みある笑みを浮かべていた。

 

「そうだな、別によくある場所だから特別な場所じゃねぇんだが……時間帯や曜日によっちゃぁ地獄とも戦場とも取れる場所ってところかねぇ」

「え、地獄? 戦場?」

 

物騒な単語が出てきた事に少し怖がる様子を見せるアーシア。

まさかそんな恐い所に連れてこられると誰が思おうか? そしてそこまで物騒な所にどうして連れて行かれるのか、彼女は理解出来ない。

だが、一誠がそんな物言いをするということは、途轍もない激戦が繰り広げられている場所なのだろうと考え始める。

すると思い当たるのは、どこかの地下格闘技場での賭け試合などといった如何にも危険で違法そうな場所。

一誠のような強者なら、そういう事を知っていても可笑しくはない。何せ堕天使を人間の身でありながら倒したのだから。

そう考えた途端、アーシアは急いで一誠の腕を引っ張り一誠を止める。

 

「だ、駄目ですよ、イッセーさん! そんな危なくてイケナイこと、絶対にしちゃ駄目です!」

 

腕を引かれ必死な様子で止めるアーシアに、一誠はそれが面白かったのか愉快そうに笑った。

 

「おいおい、お前は俺がいつも何してると思ってるんだよ」

「で、でも、危ないことなんですよね! 地獄とか戦場と仰っていますし、とても危険そうなので」

 

何で一誠がそんなに笑っているのか分からずアーシアは困った顔をしてしまう。

危険な場所には行かせたくない。いくら一誠がそういった危険なところに慣れているとしても、それでも危ない目には遭って欲しくないというのは恋する少女なら想い人に誰だって思うことだろう。

だが、一誠はカラカラと笑いながらアーシアの手を逆に引いてきた。

 

「別にお前が心配するような危ない場所じゃねぇよ。さっき言っただろ、よくある場所だって?」

「で、でも………」

 

冗談だとしても一誠が言えば性質が悪い言葉にアーシアは不安で仕方ない。

そんなアーシアの手をぶっきらぼうながら優しく引きながら一誠は歩いて行く。

そしてとある建物の前に来て、一誠は気合いの籠もった顔でアーシアに言った。

 

「ここが目的地だ。これから地獄の戦場に化す………なぁ」

 

その気迫の籠もった声を聞いて意を決したアーシアは目的地たる建物を見るが、そこで彼女は不思議そうに声を上げてしまう。

何せ、そこは彼女が心配していたような特殊な場所ではなく、どこからどう見たって普通にある物だったから。

 

「スーパーマーケット……ですか?」

 

そう、そここそが、一誠にとって地獄の戦場と化す激戦地であった。

そしてこの後アーシアはその意味を知ることになり、どうして自分が連れてこられたのかということを知った。

 

 


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