ハイスクールD×D 赤腕のイッセー   作:nasigorenn

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中々話が進まないですよ。やっとディオドラが出ます。


彼は異世界の彼と出会う その14

 窮地を久遠の力によって脱したリアス達。しかし、その顔は未だ青ざめている。

それは当たり前だろう。何せ目の前が全て血で真っ赤に染め上げられたのだから。いくらはぐれ悪魔を退治したことがあるとはいえ、このような一方的な『虐殺』を目の当たりにしたことなどないのだから。まだ若い彼女達にとってそれはあまりにも残酷で悲惨で恐ろしいものだった。

だが、その御蔭でこうしてディオドラが待ち構えている神殿へと何の障害もなく向かうことが出来る。それだけが唯一彼女達にとって救いになったものである。悲惨なことには目を瞑りたくなったが、それでも大切な下僕を助けるために。

そして少し走ると、彼等の目の前に広がるのは浮遊した土地の上に建てられた神殿。階段がいくつか付けられており、最上の部分に一番巨大な神殿があることが窺えた。そこに捕らわれたアーシア、そしてアーシアを攫ったディオドラがいるのだろう。

 

「あそこにアーシアが………今、助けてやるからな!」

 

イッセーはそう呟き闘志を燃やす。

大切な存在である彼女を救うために、守ると誓ったのだから。

それは皆同じ思いであり、リアス達も頷き返す。

そして神殿に突入しようとするのだが…………。

 

「いや、ちっと待てよ」

 

その意気込みは一誠によって止められた。

 

「なんだよ、いきなり! 止めるなよ!」

 

急にそう言われ苛立ちを顕わにするイッセー。リアス達は何故止めたのか少しだけ気になりその足を止めた。

そんなイッセー達に一誠は不思議そうに問いかける。

 

「なぁ、何でそのまま行こうとしてんだよ?」

「はぁ? お前、何言って…」

 

その問いかけにイッセーは意味が分からないと返す。それはリアス達も同じであり、何故このような問いかけをしてきたのか分からなかった。

それに対し、久遠は軽く溜息を吐いて相棒が言いたいことを翻訳するかのようにリアス達に話しかけた。

 

「つまりコイツが言いたいのは、何でそのまま神殿に駆け込んでるのかってことだよ。アーシアちゃんがいるのは最上階にある神殿のアレだろ。なら、飛んでいけばいいじゃないかって、コイツは言いたいんでしょ」

 

それを聞いてイッセーはそれもそうだと思ったが、それに関してリアスが真面目な顔で説明を始めた。

 

「確かに飛んでいけば良いかもしれないけど、それは不可能だわ。きっとディオドラはあの神殿の各所に自分の眷属達を配置している。それらを無視しようとしても飛び上がれば直ぐにばれて戦闘になるわよ。つまりどうしたって戦いは避けられない。なら、奇襲されないように地上から階段伝いに上がって撃破していく方が確実なのよ」

 

その理由を聞いて、一誠は更に呆れ返った。

確かにリアスが言っていることは最もだろう。確実に近づくためには敵の勢力を各個撃破していく必要がある。

しかし、それを聞いて一誠は尚のこと正気を疑った。

何故か? それは………。

 

「つまりアンタは敵が余裕ぶっこいて見下してる中、一生懸命頑張って面倒臭く戦ってくってか? …………馬鹿だろ、アンタ」

「なっ!? 馬鹿って何よ!」

 

馬鹿にされたリアスは顔を赤くして怒りを顕わにする。そして主を馬鹿にされた眷属達は一誠の方に注目した。そこまで言うのなら他に何かあるのかと。

そんな視線を受けて、一誠はニヤリと笑う。それは獰猛な肉食獣染みた笑みであり、見る者の心を恐怖させた。

 

「俺が言いたいのは、何でわざわざ向こうの掌に乗らなきゃならねぇんだってことだよ。向こうはこっちが来るって分かりきってる。そしてそれを笑いながら見てるだろうさ。その下僕とやらを使って一生懸命お前等が戦ってる様子をなぁ。そんな舐め腐ったことされてむかつかねぇのかよ、お前等。相手の思惑通りに流されてそれで仕方ねぇってしか思わねぇのか?」

 

そう言われて、ならばどうしろというのだとリアスは怒る。

相手に主導権を握られているのだから、今はこうするしかないのだと。

しかし、一誠はそうは思わない。そして久遠もまた、その出されるであろう案に笑いを堪えていた。

 

「相手の思惑に乗る理由なんざぁ何もねぇんだよ。寧ろそいつの驚く面を見てぇとは思わねぇのか?」

 

そう、この男ならこう考える。

相手の思惑通りに動くなんて御免だ。寧ろ相手が予想もしないことをしてその顔を驚愕に染めたいと思う。

だからこそ、彼はこう言うのだ。

 

「要は真上に着くまでの間の奴等が邪魔なんだろ。だったら一々構ってられるかよ」

 

そう言うと、一誠は左手に赤龍帝の籠手を展開する。この場に揃った同じ神滅具はある意味壮観だった。

 

「どうするつもりなんだ?」

 

それまで話を聞いていたイッセーは神器を出した一誠に問いかける。

神器を出したということは何かしらするつもりなのだろう。

しかし、赤龍帝の籠手で出来ることなど限られている。敵に見えないようにする能力など無いのだし。尚、本来のドライグの能力にはそういった能力があるのだが、現時点のイッセーでは使えないし、知りもしない。一誠に関しては知ってはいるが、そんなものなど気にも留めていない。脳筋な一誠は殴れればそれでよいのである。

では何をするのか? その答えを分かっている久遠はリアス達に話しかける。

 

「あいつの前ににいるのは危ないから、少し離れて。あぁ、特に神殿の真正面は絶対に近づくなよ」

「え、えぇ……」

 

久遠にそう言われ、リアスは大人しく聞いた。何せ少し前に大量虐殺を行った人間がそう言うのだ。相当に危ないのだろうと本能は警告してきたからだ。

そして一誠より皆後ろへと下がった。それを確認次第、久遠は一誠に声をかける。

 

「準備OKだ。ちゃんと調節しろよ。俺はもう働いたから後はお前がしろよな」

「あぁ、わかってるよ」

 

そう答えると、一誠の身体から真っ赤なドラゴンのオーラが噴きだし始めた。

それはまるで深紅の炎のように舞い上がり、彼の足下の大地を砕き始める。

その力の強さに戦くリアス達。そんな彼女達を尻目に一誠は左拳を握り締めて構える。

 

「ドライグ、4回くらいで行くぜ!」

『いや、今の相棒なら3回で充分だろう。それと微調整はオレが指示を出すぞ。そうでないと狙ってる部分以外も消し飛ばしかねんからな』

「あぁ、頼んだぜ、相棒」

 

そして一誠の籠手が赤く光り始めた。

籠手の宝玉の輝きが増していき、独特の機械音声が聞こえ始める。

 

『Boost、Boost、Boost!』

 

一回鳴る度にリアス達は信じられない程の力の高まりを一誠から感じた。

それが3回。それだけで既に上級悪魔を凌駕している程の力を一誠から感じる。

一誠は力が溜まったのを感じると笑みを浮かべ、その赤く輝く拳を振り抜いた。

 

『explosion! 相棒、4度拳の角度を変えろ』

「おぉ! いっくぜぇぇぇぇええええええ! ドラグブリットッッッッッッバァアアアストォオオオオオオオオオオオッ!!」

 

そして放たれたのは、以前ロキとの戦いで見たのと引けを取らないほどの凶悪な砲撃。

それは赤い巨大な柱となって神殿の方へと飛んでいき、頂上にある巨大な神殿から下にある全ての神殿と階段を飲み込み消滅させた。

砲撃がやんだと共に残ったのは、ディオドラがいるであろう頂上の神殿。そこから下は何一つ残らなかった。

その超越の威力の余波は凄まじく、久遠の後ろにいたリアス達でさえ踏ん張らなければ吹き飛ばされかねない程に凄まじい。

 

『なッ…………!?!?』

 

そして彼女達は目の前で広がった破壊の跡を見て、驚愕のあまり言葉を失いかける。

本来ならこのまま神殿に突入し、ディオドラの眷属達と戦わなければならなかった。それがどれほどの人数なのかは分からないが、充分に強い者達が予想され、苦戦は免れないと考えていた。

しかし、目の前にいるこの男はそれらを一瞬で消し去った。

苦戦のくの字もない。異世界の赤龍帝は此方の赤龍帝と違い、それらを全て軽く笑って成した。それも禁手ではない。通常の状態でだ。

それを見れば、それまでその凄さをイマイチ理解しきれないでいたイッセーにもはっきりと分かるだろう。

如何に自分と違うのかが。

驚愕し固まっているリアス達などを気付かずに一誠は満足そうに目の前の光景を見る。

 

「まぁ、こんなもんだろ」

『そう言うが相棒、さっきのは3度だったぞ。もし後少しでもずれていたら、この世界のアーシア・アルジェントをあのガキ諸共消し飛ばしかけてたぞ』

「まぁ、そこはコイツが繊細さの欠片もないからだろ。それにしても、やっぱり凄いねぇこの威力。俺はさっきみたいなのより防御してるのが性にあうよ。こんな破壊を巻き起こすことなんて出来やしないんでね」

 

思いっきりリラックスした様子の一誠達。

軽くドライグに注意されたが、特に聞く気がないのか軽く聞き流す。

そして未だに固まっているリアス達にニヤリとした笑みを向けながら声をかけてきた。

 

「何惚けてやがる。これでお前等の心配するもんはなくなっただろ。速くいくぜ」

 

その言葉にリアス達は気を取り直し、一誠に取りあえず感謝の言葉を言って翼を広げ始めた。

そして神殿に向かって飛行を始めるわけだが、一誠達は動かない。

 

「あれ、行かないのか?」

 

二人の様子を見て不思議がるイッセー。そんなイッセーに久遠は軽く笑う。

 

「いや、俺達はお前等が向こうに着いたら転移するよ。一誠風に言うんだったら、喧嘩を売られた張本人の前に観客が来るのは無粋だろ。だからそっちが着いたら行くさ」

 

それを聞いてイッセー達は思い出す。

あまりに目の前にで行われた超破壊に忘れそうになっていたが、今回の問題は自分達の問題だ。アーシアを助けるのはイッセー達でなければならない。

だからこそ、その言葉に頷く。

 

「あぁ、分かった。今度はオレ等が頑張らないとな!」

「えぇ、そうよ。アーシアは私達が助けないと」

 

そしてリアスも頷き、皆戦意を高めて神殿へと飛び込んでいく。

一誠達はそんな背中を見送り、少ししてから久遠の術で転移していった。

 そして障害らしい障害もなく、ディオドラが待つ神殿の間に突入するリアス達。

彼女達の目に映ったのは、特殊な拘束器具によって縛り付けられているアーシア。そしてその下の玉座に腰掛けているディオドラ。

その姿を見た途端、イッセーはアーシアを心配し、ディオドラに怒りを燃やす。

本来ならそこでアーシアに真実を話し、ショックで悲しむアーシアを嘲笑うのだが、少し様子が違っていた。

確かにアーシアは真実を知って絶望し悲しんでいたが、ディオドラは嘲笑うどころではなかった。

まるで信じられないものを見るかのような目をリアス達に向ける。

嫌悪感を顕わにし、想定外のことに戸惑っているような、そんな顔。

その表情を見たリアス達は少し戸惑ったが…………。

 

「くっくっく………あっはっはっはっは! どうだよ、お前等。あれが嘗め腐ってやがった奴が予想外のことが起きてテンパってる面だよ。見て笑えねぇか? 俺はそういう面をしてるのを見るの、嫌いじゃないぜ!」

 

アーシアの悲しみが満たすはずだった空間内を、一誠の爆笑が響き渡った。

 

 

 

 


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