ハイスクールD×D 赤腕のイッセー   作:nasigorenn

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イッセーの出番なんてないんですよ(笑)


彼は異世界の彼と出会う その15

 本来ならば緊張が張り詰める雰囲気になるはずの中、響くのは一誠の爆笑。

それを聞いたイッセー達はどうして良いのか分からず困惑し、ディオドラは嘲笑されたことに憎悪を燃やし睨み付けてきた。そして久遠は笑いを堪えるのに必死だった。

 

「き、貴様ぁ、異世界の赤龍帝! 汚らわしきドラゴンが!」

 

想定外のことに驚きつつも一誠に怒りを向けるディオドラ。

そんなディオドラに一誠は腹を抱えながら若干涙目になりつつ答える。心底笑っていることが窺えるだけに、その肝の太さにイッセー達は少し呆れてしまう。

 

「何だよ、テメェの予想通りにいかねぇからってキレんなよ。人生なんて予想通りにいかねぇもんだぜ、お坊ちゃん。もっと世の中でシバかれて来た方がいいんじゃねぇのか」

 

明らかに馬鹿にした台詞。

それを聞いてディオドラの額に浮かんだ青筋に穴が空いたらしく、中で内出血を起こし始める。

実にシュールとしか言いようがない。仮にも人質を取られているはずなのにそんな気負いはまったく感じられず、イッセー達は内心でヒヤヒヤとした。

今すぐにでも一誠を殺したいディオドラだが、前回腕をへし折られたことの恐怖が脳裏を霞め身体が萎縮する。上級悪魔のプライドとして人間如きに腕を折られたのは屈辱以外の何者でもないが、相手はただの人間ではない。異世界の、それこそ最強と言って良い赤龍帝。現にこうして自分の眷属達を神殿ごと全部吹っ飛ばした存在だ。下手に刺激するのは危険極まりない。

そう考え、精神を落ち着けようとするディオドラ。

状況はかなり危険だ。何せ想定概の戦力が向こうにあるのだから、負ける気はないとは言いきれないくらいに危ない。

ならどうするのか? 今更白旗を上げれば済むというものではない。すでに自分のことは三大勢力に広まっているのだから、何をどうしようとしても極刑は免れない。

逃げることは出来ないし、この機会を逃せばご執心のアーシアを手に入れることもないだろう。

問題は『禍の団』が押さえると言っていた一誠達が着いてきてしまっているということ。

コレさえどうにかすればリアス達を殺すことは出来る。

故に一誠をどうにかしなければと思考する。表情には出さないようにし、余裕をもった感じでアーシアが真実を知って堕ちることが楽しみだと笑い語る。

 

「フフフフフフ、ハハハハハハ……君達にも見せたかったなぁ、真実を知ったアーシアのあの顔……最高にイイ表情だった……アハハハハハ。教会の女の堕ちる様は何度見ても堪らないよ」

「テンメェッ!!」

 

その言葉にリアス達は皆怒りを燃やす。

ここまで言われれば誰だって怒りを抱くだろう。それが大切な存在なら尚のこと。

その怒りを浴びつつ嘲笑うディオドラ。しかし、内心では一誠がどう出るのか分からず冷汗を掻く。

ディオドラから凄く警戒されている一誠だが、彼はディオドラに笑いかけてきた。

 

「そこまでビビんなよ。別に俺はテメェとやる気はねぇよ」

「え…………?」

 

そう言われ呆気にとられてしまうディオドラ。それはリアス達も一緒であり、一誠に向かって強気で問い詰めた。

 

「何で戦わないのよ!」

 

それまで一緒に行動して、この場に来るまで何度も助けて貰った。

目的が一緒だから助けてくれたのだと、そう思っていた。

だというのに、何故もっとも強いであろう一誠が何故戦わないのかと。これでは語弊がある。勿論皆戦う。しかし、彼も戦わないのかと、そう言いたいのだ。

それに対し、一誠はリアスの顔を実に呆れた顔で見てきた。実に場違いなまでに呆れた様子でだ。

 

「おいおい、アンタ、勘違いしてねぇか?」

「勘違いですって?」

「そうだよ。いいかい、こいつは『アンタ等に売られた喧嘩』だ。だったら買ったアンタ等があのお坊ちゃんの相手しねぇでどうする?」

 

そう言われて理解は出来る。

自分達の事情に彼等は巻き込まれた? だけとも取れる。しかし、それでもだ。

最大戦力になり得る存在が戦わないというのはやはり勿体なく感じる。

故にリアスは一誠を説得しようと考える。

しかし、イッセーはそうではなかった。

イッセーは一歩前に出ると闘志を燃やしながら一誠に答える。

 

「あぁ、そうだな……その通りだ! アーシアが攫われたのは俺等の責任だ。だったら俺等でどうにかしなきゃならない。それに……あのむかつく野郎はこの手でぶっ飛ばさないと気が済まない! アーシアを泣かせやがって……絶対に許さねぇ!!」

「そうだよ、そうこなくちゃなぁ」

 

イッセーの答えを聞いて満足そうに笑う一誠。

そのやり取りを聞いてどういう意図なのか気になったディオドラだが、引き下がった一誠を見て取りあえず関与しないということがわかり内心安堵する。

そしてイッセーを嘲笑うかのようにアーシアを自分の物にしようとしていた画策を明かす。

それを聞いてリアスは驚き、一誠は過去の話を聞いてトラウマを刺激させられる。

さらにディオドラはイッセーを煽るべく、アーシアをダシに問いかける。

アーシアが処女であるかを聞き、既にされていたら嫌だと言いつつも、それを更に上書きするのは面白そうだと。

その実に下衆い言葉にイッセーの怒りは沸点を超え、彼はキレた。

 

「ディオドラァアアァアァアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」

 

叫ぶと共に怒りによって禁手を発動し、一気に全身を赤い鎧で覆うイッセー。

その怒りはオーラとなって体表に表れ、彼から赤いオーラが噴き出す。

 

「ひっはっはっはっは、それが赤龍帝か。だが、僕もオーフィスから貰った蛇があるんでね、君なんて瞬殺っ」

 

噴き上がる力を前に笑うディオドラ。

彼自身、無限を司る龍神から力の片鱗を貰っているのでその力は通常時よりも断然に跳ね上がっている。上級悪魔がいくら神器持ちでも転生悪魔に負ける訳が無い。

そう高をを括っていた。

しかし、それは覆された。

嘲笑い見下していたイッセーがディオドラが言い終える前に間合いを詰め、そのままディオドラの腹に拳を打ち込んだからだ。

 

「グハァッ!?」

 

腹に叩き込まれた拳で呼気が止まりかけるディオドラ。力が抜けた身体をイッセーは掴むと、反対方向へと投げ飛ばす。

床に叩き付けられたディオドラはその現実に怒る。

 

「巫山戯るな、僕は上級悪魔だ! 現魔王ベルゼブブの血筋だぞ! それが君のような下級で下品な転生悪魔なんか如きに、気高き血筋である僕が負けるはずがないんだぁ!」

 

そう叫びイッセーの拳を防ごうと結界を張るが、それはガラスのように砕かれ顔面に拳がめり込んでいく。

そんな二人の様子を見て、一誠は面白そうに笑う。

 

「血なんかに力の大小なんてねぇよ、バカ。強い奴は強い、そんだけなんだよ。無駄なこだわりなんて持ってる奴は見てるもんが小せぇからそうなる。もっと目をかっぽじってよ~く見ないとなぁ。意地の張り所が違うのも考えようってこった」

 

その言葉を聞いて久遠は笑う。お前が言うなといわんばかりだ。

そして皆がイッセーとディオドラの戦いに注目していく。

それは戦いとは呼べない代物だった。

自分が圧倒的に優位だと思っていたディオドラだったがそんなことはなく、イッセーの拳で文字通り打ちのめされる。結界を張っても砕かれて殴られるといった攻防が何度も繰り広げられていた。

 

「何でだ、僕はオーフィスの蛇で絶対なまでに強くなったハズなのに!」

 

怒りと恐怖と焦りで困惑しながらそう叫ぶディオドラ。

そんな台詞を吐いたディオドラを一誠は笑う。その笑い声にリアス達は何事かと顔を向けた。

 

「おいおい、いくら何でもそいつはねぇだろ。テメェの力ならまだしも、もらいもんに頼るなんていくら何でも情けねぇっての。それでも男かよ……あぁ、意地も貫けねぇクソ野郎か。テメェのもんじゃなくてもらいもんにしがみつくくらいだからなぁ」

 

まさに可笑しいと笑う一誠だが、周りは笑えそうにない。

そして戦闘は更に情けない体を見せていく。ディオドラはイッセーのことを認めたくないと否定しつつも恐怖し、強固な結界を張った。

それに攻撃を拒まれたイッセーにディオドラは自分の方が上だと虚勢気味に言い張る。

しかし、それで引き下がるイッセーではなく、禁手によるブーストを何回も行いその結界を突き破った。

 

「なんだ、アイツも案外やるじゃねぇか」

「お前と比べられたら可哀想だっての。彼、それなりにやると思うぜ、俺は。精神的な部分がちょっとアレだけどな」

『だが、あれでも相棒の通常には劣る。少しはやると見直すがな』

 

そんなイッセーを見守る2人と一匹。

その感想は少し辛口だが、それなりに評価している。

そしてイッセーの拳がディオドラの左腕を捕らえへし折りながら真上へと吹っ飛ばした。飛ばされたディオドラは天井部へと激突してから床へと落ちる。

そのダメージと精神的優位を失い、ディオドラは現在の状況から現実逃避するかのように叫び、自身の最大限の魔力を込めた砲撃を放つ。

対してイッセーも何度も倍化した魔力によって砲撃『ドラゴンショット』を放ち迎え撃つ。

結果、ディオドラの砲撃は打ち破られ、彼の脇を剃れて真後ろの壁を粉砕し外にあった巨岩を粉砕した。

その光景と脱力感から床にへたり込むディオドラ。イッセーはディオドラの前まで進むと、彼の襟元を掴み自分の顔の前まで引っ張り上げる。

そして顔の部分の鎧を解除し、怒りを滾らせた目で脅す。

 

「二度とアーシアに近づくな! 次に姿を現したら、その時は本当に消し飛ばしてやる!」

「ヒ、ヒィッ!」

 

そして手を放すと、ディオドラは戦意を喪失して床に座り込んだ。

その様子を見ていた一誠達は少し呆れていた。

 

「随分とお優しいって奴だな。ああいう奴は絶対にそういう約束守らねぇって」

「まぁ、そこがモテる秘訣って奴だろ。お前は寧ろ少しでもそれを見習ったらどうだ」

『敵に情けを掛けるのは感心できんことだ。その点、相棒なら二度目などくれてはやらん』

 

感想もぼちぼちに、イッセー達がアーシアを助けにいく所へと一緒に行く一誠達。

しかし、囚われのお姫様を助けて終わり、と言うわけにはいかないようだ。

 

「くそ、外れねぇ!」

 

イッセーが思いっきり力を込めて引き剥がそうとしても、アーシアを拘束する器具は外れない。そのことにリアス達は赤龍帝の力を持ってしても駄目なのかと危機感を煽られる。

その様子を見て、弱々しい感じながらも笑うディオドラ。

 

「それはある神滅具保有者に張ってもらった特殊な結界でねぇ、事が済んだら外してもらう約束だった。でも、仮に僕が倒されるようなことになった場合は、結界が彼女を飲み込むようにしてもらったのさぁ!」

「なんですって!」

 

驚くリアスにディオドラは更に嗤う。

 

「君達にくれてやるくらいだったら消した方がマシさ、そうだろう」

 

その言葉に怒るリアス達。それが見物なのか、ディオドラは力なく嗤う。

解除法が分からない上に力ずくでは外せない。しかも放置すればアーシアが死んでしまう。

そんな事態に彼女達はどうしようもなく焦る。特にそれはイッセーが顕著であり、更に力を込めるがビクともしない。

そんな周りを見て、一誠は動く。

 

「あぁ、面倒臭ぇ。そんなに自慢げに言うんだったら試してやろうか」

 

そう言うと左腕を軽く握り出す。

それは力の行使。あの超絶の威力を叩き着けるという意味合いだ。

しかし、それをすればアーシアは………。

故に先に久遠が止めた。

 

「お前みたいな馬鹿力でやったら、アーシアちゃんの身体も千切れ飛んじまうよ。仕方ないから俺がしてやる」

 

そう言って前に出る久遠。

一体何をするんだとリアス達は久遠に注目し、ディオドラは人間如きに何も出来ないだろうと嘲笑う。

そんな周りを気にすることなく、久遠は周りに何かを浮かべ始めた。

それは何かが表示された画面のように見える。それが何個も浮かび、久遠はそれらに目を通しながら手を翳し術を発動させていく。

 

「あぁ、こうなってこうか……んでここがこうね……なんだ、随分とお粗末な作りだな。コイツを作ったその神滅具持ちってのは随分と神器に丸投げしてるな。作りが杜撰すぎだっと………はい、OK」

 

そう言い終えると、アーシアを拘束していた器具が解除されアーシアは床に降りた。

 

『なっ!?』

 

アーシアを無事に救出でくたことに喜びを感じるリアス達だが、目の前で起こったことに驚愕し過ぎて思考が追いつかない。

神滅具で作られた結界をただの……というには語弊があるが、それでも人間が難なく解除したのだ。驚かない方が無理がある。

 

「そんな、馬鹿な…神滅具の結界が………」

 

それはディオドラも同じであり、信じられないといった顔をしていた。

その表情を見て一誠は笑いを堪える。

 

「一体どうやってあの結界を解いたの……イッセーの力でも無理だったのに」

 

皆を代表して聞くリアスに、久遠はディオドラにも聞こえるように声を少し大きくして答える。

 

「あんなもん、そこの馬鹿の暴走止めるよりも簡単なことだよ。結界ってのは、詰まる所数式だ。ただイメージしただけじゃそこまで硬いものは作れない。如何にして、どのような構造で、どのような特性を持たせるのかなど、色々と考え構築するのが結界だ。機能美の追求と言っても良い。でも、あの結界は駄目だね。まったくもって作り手の考えがない。ただ、強力な神滅具で作りましたって感じだ。杜撰でお粗末で単純過ぎる。そんなもん、駄菓子やで買った知恵の輪を解くよりも簡単だよ」

 

それを聞いて更に驚くリアス達。正直逃避し始めていた。

目の前の男は異世界の赤龍帝の影に隠れがちだが、それでも異常と言うべき能力者だと。人間が神器無しでここまでやるとは皆思わなかったから。

しかし、それで固まってるリアス達をアーシアの声が現実に戻した。

ディオドラがショックのあまり放心してる中、イッセー達はアーシアの無事を皆で喜ぶ。

実に感動的な場面であり、口を出すのは無粋だろうと一誠達は下がった。

そしてアーシアは少し離れて祈り始める。

それは彼女の感謝と願い。

それに何かが答えたのか、アーシアの周りが光り始める。

美しく幻想的な光景にリアス達は見入っていた。

しかし、その中で一誠が動いた。

 

「ちっ、面倒臭ぇ!」

 

そのままアーシアに飛び込み彼女に抱きつくと、光は一層強くなり、彼女は消えた………一誠も一緒に。

目の前で消えたアーシアに戸惑うイッセー達。

そんな彼等を嘲笑うかのように魔法陣が現れ、中から出てきたのは禍々しい魔力を感じさせる男だった。

男の名は『シャルバ・ベルゼブブ』。

旧魔王の血筋であり、自分こそが真なる魔王ベルゼブブだと主張する。

シャルバの出現に助けを求めたディオドラだが、シャルバは何の感慨もなくディオドラを消滅させた。

そしてアーシアを『殺した』犯人として敵意を殺意を燃やすリアス。イッセーは目の前でアーシアが『殺された』ことが信じられず、逃避し始める。

その光景にリアス達は言葉を失い悲しむ。ゼノヴィアは怒りに我を忘れシャルバに斬り掛かるが、弾き飛ばされた。

そんなリアス達を嗤い、シャルバはアーシアを次元の彼方へと飛ばしたことを告げ、真だとはっきりと口にした。

その言葉にイッセーは今まで保ってきたものが崩れ、憎悪に包まれた。

それと共に噴き出す壮大なオーラ。シャルバは吹き飛ばされて壁に叩き着けられる。

理性を失ったイッセーはその言葉を口にする。

それはリアス達が一度だけ聞いた事がある言葉。

しかし、それを口にした者とはまったく違う姿へと変わっていく。

巨大になっていき、人型ではなくなっていく。

それは龍だ。巨大な龍へとイッセーは姿を変えた。

そしてリアス達がいた部屋を吹き飛ばした。

 

「な、何だ、アレは…………」

 

その姿にシャルバは驚愕し、それはリアス達も同じであった。

イッセーがまったく違う姿に変わったことに戸惑いを隠せず、どうして良いのか分からない。

そんな中、イッセーは咆吼を上げる。それはアーシアを失ったことへの悲しみからだ。

そんな中、久遠だけは違っていた。

シャルバへと彼は実に可哀想なものを見る目を向けて、軽く両手を合わせる。まるで南無阿弥陀仏を唱えるかのように。

 

「あぁ~あ、俺知らね。まったくもって可哀想だな、アイツ……近づきたくないねぇ、アイツの側にはさ」

 

可哀想だと言わんばかりに哀れみそう口にする久遠。だが、その顔は実に悪どい笑みを浮かべていた。

そして覇龍と化したイッセーがシャルバへと襲い掛かろうとした瞬間………。

 

『世界は砕かれたことへの悲鳴を上げた』

 

 

 

 

 


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