ハイスクールD×D 赤腕のイッセー   作:nasigorenn

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これがシャルバの終わりです。予想以上に長くなりましたね。


彼は異世界の彼と出会う その18

 ヴァーリがイッセーを一方的に圧倒する少し前、彼もまた己が望んだ喧嘩を相手にふっかけていた。

怒りと勢いの籠もった声と共に拳を繰り出し、喧嘩を売られた相手であるシャルバはそれを防ごうと防御結界を張る。

しかし、それは意味を成さない。何せ一誠の拳は魔王の純粋な血統たるシャルバの結界を打ち砕くのだから。

 

「どぉしたどぉしたッ!! まだまだ始まったばかりだぜ!」

「クソッ! 穢れたドラゴンがッ!」

 

まったく防御出来ないことにシャルバは焦りを見せる。

これがまだ、禁手に至っている状態なのなら分からなくもない。しかし、相手は神器を出しただけで、その上悪魔でもないただの人間。それにこうも押されているというのは、悪魔として耐えられない屈辱だった。

だからこそ、シャルバは怒り咆える。

 

「たかが人間如きにッッッッッッ!!」

 

自身を叱咤すると共に一誠の拳から逃れようと後ろに飛び退く。

相手は粗暴で力任せの戦い方をしている。その事から遠距離攻撃はないだろうと見越しての行動。それは決して間違いではない。事実、あの近距離ではシャルバの力は発揮出来ないのだから。上級悪魔は様々いるが、総じて接近戦が得意と言う者は少ない。王であるが故にどの面に於いても優れてはいるのだが、皆魔力を重視する傾向が強いためか主に遠中距離における魔法攻撃が主体となっている。それは旧魔王派である者達も同じであり、一誠のような近距離戦が得意な相手に対してはそれに付き合うよりも、自分の間合いで戦う方がより安全だ。

 

「先程は不意を打たれたが、見せてやろう! これが真の魔王の力だ!」

 

そして魔法陣を展開すると、そこから金色に輝く魔力弾を一誠に向かって放つ。

別にこの程度で死ぬとは思っていない。しかし、相手に近づけさせないようにするには有効だ。牽制して動きを鈍らせ、そこに必殺の一撃を放つ。魔術戦における常識。

当たればダメージは入る。そうでなくても避ければ体勢が崩れ足が鈍る。

故に一誠の足は止まる……そう思った。

だが、それは違う。一誠はそのどちらにも動かなかった。

向かってくる魔力弾。正史であれば弱っていたとはいえディオドラを一撃で貫いたそれを、一誠は…………。

 

「んなちゃっちぃもんで止められるわけねぇだろッ!」

 

自慢の拳を持って叩き潰した。

当たるのでも避けるのでもない。ましては防御などという上等なものでもない。

まるで飛んで来たボールを払うかのように、たまたま邪魔だった羽虫を叩き潰すかのように弾いたのだ。

そこに苦しみや耐え抜いたといったような感情はない。あるのは肉食獣めいた殺気と狂気に彩られた笑みだけだ。

その笑みにシャルバ飲み込まれかけてしまう。真の魔王である自分がたかが人間に恐怖するなど認められたものではない。しかし、意思はそう思っても肉体は、本能が目の前の相手を畏れる。それを認めたくない一心でシャルバは咆えた。

 

「チッ、穢れた赤がぁあああアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」

 

そしてゆっくりと近づいてくる一誠に雨の如き魔力弾の雨を放つ。

先程の様子見とは違う、回避不能防御不能の徹底した連続攻撃。人間にはまず過ぎた攻撃が一誠に向かって殺到する。

それに対し、一誠は何かを構えることはない。

彼は笑みを浮かべたままその雨の前へと突き進む。無論、避けるつもりなど無い。

彼がすることは、たった一つだけなのだから。

 

「こんなもんで退く程柔じゃねぇんだよッ!」

 

身体に纏う赤きオーラを輝かせながら、一誠は左腕を地面に向かって叩き着ける。

その衝撃が大地を揺らすと共に、一誠の身体を弾丸のように弾き出した。

そして一誠は空中で身体を捻り回転させる。ここまでくればもう分かるだろう。

毎度お馴染みのあの攻撃だ。

回転したままその破壊の嵐に突入する一誠。

向かってくる魔力弾は回転による遠心力の載った拳によって全て打ち落とされていく。

そして嵐を抜けた後にシャルバを待っていたのは、

 

「もっとだ! もっと見せろよ、テメェの力って奴をよぉ!」

 

まるで全てを粉砕されるかのような、愉快そうな一誠の凄惨な笑みだった。

その笑みに背筋が凍り付くシャルバ。手加減をした気などない。人間ならまず死ぬであろう攻撃は確かにしたのだ。上級悪魔でも防げるような者はそうはいないはずだ。

それを目の前の男は、神器を使っているとは言え殆ど生身である男は、何もなかったかのように自分に向かって突き進んでくる。

内心でどこか人間如きがと見下していたのは認めよう。それは今でも思っているし、これからもそうだ。悪魔とは基本自分達以外の種を見下すものなのだから。だが、目の前にいる男は人間の区分に入れて良いのか分からない。

神器を使っている『人間』なのか、それ以上の何なのか? それは分からない。

だが、シャルバにはこれではっきりとしたことがある。

 

(殺さなければ………殺されるッ!!)

 

嘗めるということはもう辞めた。

真の魔王である自分が偽りの魔王達を駆逐し、悪魔として真の世界を取り戻す。

そのためにはここで、目の前にいる化け物に足止めを喰らうわけにはいかないのだ。

故に…………。

 

「いいだろう、異界の赤き龍帝よ! 改めてここに、真の魔王であるシャルバ・ベルゼブブの名において、貴様を必ず殺してやる! もう侮ったりなどはしない!」

 

その宣言と共にシャルバの身体から金色の魔力が溢れ出す。

それは全力で相手をするという意の現れ。獅子が兎を狩るのに全力を出すかのような行為。今まで殺す気ではいたが、それは見下したものであった。だが、今のその殺意は、強敵を殺そうとする者となっている。

それを見た一誠は実に嬉しそうに笑った。

 

「いいねぇ、そうこなくっちゃなぁッ!」

 

そして今度は此方の番だと言わんばかりに一誠は動く。

再び地面を殴り、その反動を利用してシャルバへと突き進む。その際に起きる大地の揺れ。その揺れる大きさから如何に威力が大きいのかを連想させ、シャルバは冷や汗を掻きつつも迎え撃つ。

小技など無用。目の前の男はきっとそのようなささやかな物など、全て強引にねじ伏せる。

だからこそ、シャルバは全身に魔力を溢れさせながら咆えた。

それまでの選択からは考えられない、一誠との真っ向からのぶつかり合いを。

自分は悪魔。その肉体能力は人間を遙かに超えている。侮る気はないが、負ける気も無い。

 

「オォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」

 

叫びと共に放たれるのは、一撃で大岩を打ち砕く程の威力を持った拳。それが自分に向かってくるのを感じて、一誠は殺気だった笑みを深めつつ此方も拳を放った。

 

「オラァッ!」

 

そして激突する両雄の拳。激突の轟音を轟かせ、拳同士拮抗する。

 

「グゥウウウウウウウウウウウウッ!」

「へぇ~、悪くねぇじゃねぇか」

 

シャルバは必死に力を込め、一誠はそんな彼を嘲笑うように笑う。

そしてどちらも兎も角、拳を弾き合った。

力は互角だと、傍から見ればそう思うだろう。だが、シャルバの表情は硬くなっていた。

弾き合ったのではない。間合いに入るために敢えて弾き合わせられたのだ。

そのまま互いに弾き合えば、また距離が離されると思ったのだろう。だから力を流され、互いの拳が届く距離にされた。

そうなればそこは……………。

 

「ここは俺の距離だ! 今まで嘗められた分、きっちり返してやるよ!」

「ッ!? くっ………」

 

そう、一誠の拳の距離だ。

内心の焦りを察っせられたのか、一誠はまるで煽るかのような笑みでシャルバへと殴りかかる。

近距離からの左拳、それは鋭い勢いをもってシャルバの顔面を狙う。それを察したシャルバは右腕で防御するが、防いだ腕はミシリと軋み激痛が走る。防御の結界を張る余裕などない。

 

(くそ、骨に罅が入ったか! あと少しでも押し負けていたら腕をへし折られていた)

 

人間の膂力では考えられない威力に顔を顰めつつ、シャルバは開いている左拳を一誠に向かって放つ。

今一誠の神器が装着されている左腕は此方で押さえている。だから防ぐ術などないと判断した。

しかし、それは早計だったと言えよう。

普通の人間なら受けた途端に肉体の全てが弾け飛ぶであろう打撃。それを一誠は何も装着されていない右手で掴んだのだ。

 

「甘ぇ!」

「なっ!?」

 

まさか何もない右手で掴まれるとは思っていなかったのだろう。シャルバから驚きの声が上がる。それは目の前で起こった事もそうだが、その手応えもその原因であった。

まるで鋼鉄の鉄板で拳を包まれたかのような、そんな感触。人間や他の種族の手でもありえないような感触であり、壊せるような気が全くしない。

そして捕まれたが最後、その左手は死んだ。

一瞬にして一気に力を込められたシャルバの拳、それはまるで紙細工のように………

 

握り潰された。

 

ぐしゃりと原型がなくなる左拳。指が変な方向に折れ曲がり、皮を突き破り飛び出した骨から血が噴き出す。

その信じられない現実を認識したとき、シャルバは激痛に襲われ声にならない悲鳴を上げた。

しかし、それで一誠は止まらない。

握り潰した左拳を手前に引っ張り、引かれたシャルバの身体……その顔面に向かって一誠は身体を少し逸らし、思いっきりその頭部を振り下ろした。

所謂、頭突きである。

 

「ガッ!?」

 

顔面に頭突きを喰らい、鼻がへし折れた感触を感じるシャルバ。その痛みもさることながら、止まる気配を見せない鼻血で気管が詰まりかける。

それに噎せ返っているシャルバを尻目に、一誠が咆えた。

 

「そんなもんでイモひいてんじゃねよ! まだ喧嘩は始まったばかりなんだからよ!」

 

その発言にそれまで苦しそうに喘いでいたシャルバは怒りと共に一誠に問いかける。

 

「喧嘩? 喧嘩だと? この戦いを貴様は喧嘩と評するのか! この真の魔王、シャルバ・ベルゼブブとの戦いをそんな下賤なことだと言うのか!」

 

誇り高い者からすれば、喧嘩というのはそう見られるものらしい。彼からすれば、これは無駄な驕りを捨てた立派な戦いなのだ。そのようなものと一緒にされることが我慢出来なかった。

そんなシャルバに対し、一誠は殺気が充満した笑みで返す。

 

「喧嘩に上品も下品もねぇんだよ。テメェに嘗められてムカっ腹が立った。だから俺が喧嘩を売った。んでもってテメェが買ったんだ。だからコイツは喧嘩だよ。んなご大層なもんじゃねぇ。ただの喧嘩だ。ただし……命掛けだけどなぁ!」

 

そして一誠は再びシャルバに攻撃を仕掛ける。

ダメージが濃いのか動きが鈍いシャルバに一気に近づくと、そこから左拳をシャルバの身体に向かって振り下ろした。

その拳は吸い込まれるようにシャルバの胸部に叩き込まれ、その胸部の肋骨を砕く。

折れた骨の破片が体内に突き刺さる痛みで苦悶の声を上げるシャルバに一誠の追撃は続いた。更に空いた右腕をシャルバの左肩に叩き込む。その拳は左拳と遜色なく、シャルバの左肩を破壊した。

そして続く拳の嵐。近距離から繰り出されるのは、上級悪魔の肉体ですら破壊する壮絶な威力が籠もった拳だ。それに巻き込まれれば、如何にシャルバとて無事では済まない。

拳が激突する度に彼の肉体が潰れ砕ける。その痛みは凄まじく、シャルバは意識が飛びかけていた。

だが、彼とてプライドがある。真の魔王としてではない。一悪魔として、人間に負ける事など出来ないと。そう考えが過ぎった途端、既に彼の頭は魔王復権の事など忘れていた。

だからこそ、

 

「ガッァアアァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッッッッッ!!」

 

殺意で意識を奮い立たし、今ある全力を持ってして一誠に殴りかかった。

既に潰れた肩から放たれる拳に何処までの威力があるのかは分からない。しかし、それでも魔力で強化された拳の威力は決して弱くはない。

顔面で受けた一誠は後ろに離れつつ、額から流れてきた血の感触を感じて笑う。

 

「そうだよ、そうこなくちゃなぁ」

 

そして一誠はシャルバに語る。

 

「さっきの拳は悪く無かったぜ。さっきまでのテメェは真の魔王だの何だのと、ご大層なもんをぶらつかせなきゃ何も出来ねぇクソったれた攻撃しか出来ねぇ野郎だった。喧嘩で相手をぶん殴るのにそんなもんいらねぇんだよ。必要なのは一つだけだ。そいつがむかつくから、ぶっ倒したいからぶん殴る、それだけだ。そいつが今のテメェにはあった。やっとそれらしくなってきたぜ」

 

愉快そうに語る一誠にシャルバは怒りの籠もった眼差しで睨み付けるのみ。

身体は激痛が走りは意識は朦朧とする。それでも身体を動かすのは、目の前で不愉快に笑う一誠をぶちのめしたいという思考のみだ。自分が真の魔王であるベルゼブブではなく、ただ目の前にいる男を殺したい男として認識する。そして同時に理解した。

 

(あぁ、これが喧嘩というものか)

 

喧嘩と戦いの違い。

それは主義主張の問題だ。戦争や戦い、決闘の全てには何かしら必ずそのお題目が上げられる。正義であったり復讐であったり名誉をかけたりなど様々だ。

しかし、喧嘩にはそれがない。いや、中にはあるのかもしれない。しかし、その根底にあるのはたった一つ。

 

『目の前にいる敵をぶちのめしたい』

 

それだけだ。そこに正義は無いし、名誉もない。ただ、むかつくから殺りたい。それだけなのだ。

それを自分がしていることが可笑しくもあったが、何故か納得出来た。

自分は今、喧嘩をしているのだと。

 

「いい面だ。さっきまでの薄っぺらいプライドなんかじゃねぇ。男としての意地が見えてくる面だ。だからこそ、見せてみろよ………テメェの『意地』をよぉ!」

 

一誠のその声と共に高まっていく力を感じ、シャルバも全てを賭けてそれを放つ。

左腕を前に付きだし、最初はアーシアを狙ってやったあの転送魔法を一誠に向かって撃ち出した。

 

「この全力を持ってして貴様を裁いてやる! 喰らえぇえぇえええええええええええええええええええええ!!」

 

それは一誠の足下に巨大な魔法陣を展開させ、一誠を飲み込む巨大な光となった。

それは本来ならば次元の狭間に相手を転送させる魔法。しかし、最大出力で放ったのならば、それは全てを消滅させる裁きの刃へと変わる。

この攻撃の前には如何に現魔王であっても死は免れない。それ程の威力がこの魔法にはあった。

だが、その柱の中で一誠は笑う。

それは昂揚した精神がもたらした破壊の笑みだ。

 

「同じ手は喰わねぇッ! いくぜ、ドラグブリットォオオオオオオオオオオオオオオオ!!」

 

叫びと共に爆発的に膨れ上がるその力。それを込めた左拳を、一誠は自分の足下の魔法陣に向かって叩き込んだ。

その途端、地面が粉砕されて爆ぜた。

あまりの威力に魔法陣だけでなくその下にある大地をも砕き、辺りに轟音を轟かす。

それは拳を叩き着けたというにはあまりにも酷い現象だ。

シャルバは渾身の魔法を砕かれ、目の前に広がる深く広大なクレーターに目を奪われた。

そしてその中心にいる一誠は、シャルバの顔を見て更に笑った。

まるで驚いていることを楽しんでいるかのような、そんな子供のような笑み。だが、その破壊は子供所では済まない程に凶悪だ。

目の前で起こった事実にシャルバは脱力してしまう。

そこに恐怖はない。ただ、もう無理だと素直に悟った。

その悟りを感じてか一誠は不機嫌になるが、それでも『それなりに遊んでくれた』相手に対し、その礼をする。

 

「テメェの全力は悪くはなかったぜ。でもまぁ、同じ手ばかり聞くと思うなよ。んでだ、全力には全力で応えるってのが俺の中のルールなんでね。テメェにも見せてやるよ……俺の全力って奴をよぉ!」

 

そして笑いながら一誠は口にする。

先程まで暴れていた出来損ないの完成形、その更に先の姿へと変わるための言葉を。

 

『我、目覚めるは覇の理を神より奪いし二天龍なり。無限を嗤い、夢幻を憂う。我、赤き龍の覇王と成りて、汝を紅蓮の煉獄に沈めよう』

 

そして世界が震え上がると共に、赤き極光を放ちながら一誠はその姿を変えた。

 

『覇龍進化、赤龍暴帝の重鎧殻』

 

それは世界を殺す暴威。止められる者は対極の白以外今の所存在しない、まさに神すらも超えた存在。

その姿を間近で見て目を見開くシャルバ。

一誠はそんな彼にお礼代わりに、今の自分が放てる最強の一撃を放つ。

 

「ドライグ、今回は野暮なことは言うなよ!」

『あぁ、もう………もう相棒は言っても止まらないだろう。だったら仕方ない………徹底的にやれ』

「あいよ!」

 

そして始まるは何度も行われる倍化。

どんどん膨れ上がる力は、それこそシャルバの感じ取れる域を超え、既に彼の無限を司る龍神にすら追いつこうとしている。

自身の限界を試すような行為。失敗すれば、それは自分とその周りを全て巻き込む大惨事を引き起こす。

だが、そのことに恐怖など微塵もない。一誠はただ、最高の一撃を放つ事だけを考え、そしてそれをシャルバに喰らわせるべく飛び出した。

強靱な尾を地面に叩き付けると、先程の一誠の一撃を上回る衝撃を出しながら一誠は真上へと弾き飛び、空中で一旦停止。そして閃緑に輝く両拳を構えると共に、空間を尾で叩き着けてシャルバへと突っ込んだ。

それは翠星のように美しくあり、その威力は『如何なるもの』でも破壊し尽くす。

 

「『ロンギヌスゥウゥゥゥゥッブリッドォオォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッッッッッッッッ!!!!』」

 

その拳がシャルバを捕らえた途端、シャルバの意識はそこで途絶えた。

そんなことは当たり前だ。何せ触れた瞬間には彼の身体は消し飛んだのだから。

彼は消えていく意識の中、確かに感じた。

これが魔王すら超えた者の『喧嘩』なのだと。どことなくだが、満足した。そんな一撃を自分の最後に使ってくれる一誠に感謝すら感じた。

 

(あぁ、悪くない最後だ…………)

 

そしてシャルバは消滅したわけだが、それだけの破壊は収まらない。

その極限の拳を受けた大地は核爆発ですら生温い大爆発を引き起こし、その場に存在していた全てを消滅させていく。

それは物資に限らず、世界の構成その物をも破壊する。

爆発が収まるとそこには、何もない空虚な『無』が広がっていた。

ぽっかりと空いた空間のその先が何も見えない。世界が破壊されたために、その部分が消失し無くなってしまっているからだ。

それが彼が放った先から延々と続く。

その一撃は確かに『世界』を抉ったのだ。

それを見て満足気に頷く一誠。

 

「まぁ、こんなもんだろ」

 

そんな一誠に久遠の罵声とキレ気味のヴァーリの攻撃が炸裂したのは言うまでも無い。


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