あの姉御がやっと登場です(知らない人はネットでチェックしてもしなくてもお好きなように)っ!
趣味100%な作品なので気兼ねなく、頭の中を空っぽにしてお楽しみください。
恭助は那由他を迎えに先進教育局、特殊学校法人RFOに来ていた。
そう、ここは那由他や『置き去り』の子供達が通っている小学校だ。
電話であらかじめ連絡しておいてここら辺で待ち合わせしている那由他を探そうとした時、グラウンドの方から幼くも元気な声が聞こえてきた。
「わーっ!恭助だー!」
その一声を合図にどんどん集まってくる子供達。
年齢層は一年生から六年生までまばら、男女率は三:七といったところか。
そんなことを観察している内にあっという間に子供達に囲まれてしまう恭助。
「おーいガキんちょ共。今日は風紀委員の仕事があって遊ぶ暇はねぇんだ。すまねぇけど今日の所は勘弁な」
恭助は彼らに手を引っ張られながらもそう訴えるが、当の子供達は「えー!久しぶりに来たのにーっ」とか「ねえねえ、前やったアレやってよ、アレ。連続でバク転するやつ!」など騒いで聞く耳を持ってくれない。
「あっ、恭助。遅れてごめんね。急な雑務を先生に頼まれてたの」
恭助がいい加減うんざりしだした頃、ようやく那由他が現れた。
「あっ、那由他ちゃん!ねえ那由他ちゃんからも恭助にお願いしてよー」
子供達は今度は那由他にもお願いしだすが、逆に那由他が彼らを諫めてまた今度疾風や剣科も連れてくることを約束し、やっと彼らから解放された二人。
早速呼び出した理由を説明した恭助。那由他は桃華の名前が出た所で多少困惑したようだったが、推測のレベルで止まっていて実際にあるのか不明だった『幻想御手』の尻尾を掴める絶好の機会を逃さないために首を縦に振ってくれた。
・・・・・・恭助としてはここで那由他が首を横に振っても良かった、というかむしろ断って欲しいと思っていた気持ちも決してなくはなかったのだが、提案したこちらが今更那由他を説得するのも筋が通らないので、いつの間にか送られていた桃華のメールに了承のメールを返した。
そして今、桃華がメールで指定したファミレスに適当に会話をしながら向かっている最中である。
意外と遠くない場所にあったのでもうすぐ着くだろう。
「しっかし、何だって俺みたいのがあんなにガキんちょ共に懐かれてんだ?」
確かに那由他が通っている学校ということで風紀委員として交通安全教室などのイベント事の手伝いに剣科達と来たり、プライベートでも何度か訪れたことはある恭助だが、それだけで自分のような愛想のない人間が子供達に懐かれるとは到底思えなかった。
「さあ、でも恭助ってたまに天然ジゴロな所あるし・・・・・・」
那由他は恭助の問いに語尾が口籠もりながらも答える。
「俺があのツンツン頭と同じだって?ははっ、そんなまさか」
流石にあの少年ほどの天然女たらしになったつもりは毛頭無い恭助だったが、那由他はそんな彼に少し投げやり風に返答を返す。
「恭助がいつも言ってるツンツン頭の上条お兄さんがどんな人だかは知らないけど、意外と恭助って顔も悪くないし運動神経もけっこう良くて、ぶっきらぼうだけど親切だからそういう所が小さな子には『ちょいワル系の運動神経抜群な意外に優しいお兄さん』として気に入られるんじゃない?」
「そんなもんか?・・・・・・ま、別に良いか」
匙を投げたような彼女の言い草にいまいち恭助は納得ができなかったが、同じ『小さな子』である那由他が言うのだからそうなのだろうと結論づけた。
「ところで・・・・・・桃華お姉さんはそこで待ってるんだよね?」
先の話題が終わるや否や、妙に緊張した声で那由他が尋ねる。
「・・・・・・そうだろうな」
恭助も那由他が言いたいこと察して溜息混じり返答する。
那由他は気を冷静にするために深呼吸をする。
二人以外の人の姿が見えない通りでは、少女の呼吸音はやけに大きく聞こえた。
彼女は静かに恭助の方を向いた。
「ねえ、恭助には悪いけど桃華お姉さんに会ったら「うっひょおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ那由他ちゃあああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんんんんんんんんんおひさああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっ!!!!!」
いきなりで、すまない。突然のことで理解できないのは分かってる。
だが、あえて簡潔に言うなら。
・・・・・・変態の奇襲だ。
「あああああっっっ!!那由他ちゃん那由他ちゃん那由他ちゃん!!那由他ちゃんはホント可愛いな!!!可愛いなったら可愛いな!!!!!」
突如出現した眼帯をつけた怪人、人見桃華は那由他のその小さな体躯に死角から思いっきり抱きつき、頬づりを何度も何度も繰り返す。
「あわわわわわわわっっっ!!?」
あまりに唐突過ぎる出来事に、目を回して桃華のなすがままになってしまっている那由他。
「あははははーっ!!!那由他ちゃんの手、足、お腹、髪、ほっぺた、耳、瞳も全部っ!!!プニプニでサラサラでキラキラで愛いよぉー!!!!!!」
「うわあああああああああああっっっっっ!?!!?」
「わあああああーっっっっ!!!キャラ崩壊って怖いーっ!!!!!」
恭助はとりあえずそうツッコミを入れつつ桃華を後ろから羽交い締めにして無理矢理にでも那由他から引き離した。
「おっと、やっと来ましたかセンパイ。もー私、待ちくたびれちゃってましたよぅっ」
「お前さりげなく何事も無かったように話を進めようとすんなよっ!そんな急にテンション変えたところで誤魔化せる訳ねぇだろ今のっ!!」
何かやり切った感のある清々しい顔をしながら、事を無かったことしようとするようにいつもの調子で話し出す変態に熱いソウルを言葉で叩きつける恭助。
「ううっ・・・・・・ううっ・・・・・・」
一方、那由他は自分の体を抱きつつ真っ白に燃え尽きたように放心したまま、地面に座り込んで項垂れている。
「あははーっ。ごめんごめん、那由他ちゃん。ほら、今度アイスでも驕るから、ね?・・・・・・あっ、センパイにはこれどうぞ」
そう言って恭助の手に何かを握らせる桃華。
それはゲームセンターのコインだった。
「・・・・・・ナニコレ?」
「さっきゲーセン行って暇つぶしにゲームしてたらメッチャフィーバーしたんですよねー。・・・・・・その中の数枚です」
「・・・・・・もう一回良いか?・・・・・・ナニコレ?」
「ほんの詫びのつもりですよ。私一人で那由他ちゃんを楽しんじゃったことの、テヘっ☆」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ははっ」
「いやはや、まさか本当に来てくれるなんてセンパイと那由他ちゃんはホントに良い人達だなー・・・・・・って?」
じりじりと暗いアルカイックスマイルで桃華に近づく恭助。
「あーえーっと、もしかして、O☆SHI☆O☆KI☆ですかー!?」
うぎゃーっ、という声が学園都市に響き渡った。
夜。
辺りは暗闇で満たされ、建物や街灯の光がそれらをかき消す。
場所は学園都市にある、とあるファミレス。
そこで二人の男女が向かい合って座っており、テーブルには飲みかけのコーヒーカップが一つと飲み終わっているジュースのガラスコップが二つある。
「とりあえず、ここで待っていれば良いのか?」
「は、はい。そうです・・・・・・」
その男女とは、入念なO☆SHI☆O☆KI☆ですっかり意気消沈した(しかしそれでも決して頭を下げることはなかった)桃華とまださっきのことを少し根に持ってか鋭い目つきで桃華を睨んでいる恭助の二人だ。
ちなみに那由他はお手洗いに行っている。
「(つーかここまで来て空振りだったら、コイツマジで本格的にシメようかな・・・・・・?)」
そんな末恐ろしいことを考えつつ、ふと胸騒ぎがしてトイレがある方向を見た。
「え~、私ぃそんな子供じゃないよぉ?」
何か常盤台の制服着た御坂みたいな・・・・・・御坂がいた。
「(ま、アイツなら大丈夫だろ)」
恭助は華麗なスルースキルでコレを回避した。
「おやおやー?センパイ。アレはもしかして常盤台のエースで
「(あーあ、面倒臭いのが気付きやがった・・・・・・)」
この色々と面倒な眼帯少女に勘づかれたくなくてスルーしたのに、それが水の泡になってしまった。
「あの男勝りのお転婆お嬢様が、あんな不良に尻軽みたいにお尻振っちゃって。誘ってンのかァ?って感じですよねー?」
まるで
対する恭助はその口振りに疑問を抱いた。
「・・・・・・お前、御坂のこと前から知ってたのかよ?」
そう、まるで御坂を前々から知っているような口振りだったからだ。
「そりゃあ有名人ですから。モチロン、世間で流布されているような無駄に美化された噂話じゃなくて実際にその私生活を目で見て調べた情報として、ですよ?」
「ストーカー・・・・・・」
率直な感想を口ずさむ恭助。それに反発するように桃華は言い返す。
「真実を追い求めるジャーナリストと呼んでくださいよ。まあ、流石に彼女自身や彼女の露払いを自称する後輩さんの索敵能力が高すぎて、最終的に『奥の手』を使っちゃいましたけど・・・・・・」
「あ?『奥の手』?」
『奥の手』。その単語を言う時、桃華が気まずいような苦虫を潰すような表情をした。
今までに見たことがない彼女のその表情に、恭助は興味を抱いてしまった。
「いやー、『奥の手』っていうか、
「・・・・・・、それってお前の能力か?」
まず、それが頭に浮かんだ。
恭助は桃華が能力を使っている所を見たことがなかったし、どんな能力かも知らない。
学園都市の学生なら誰もが『能力開発』を受けているはずだ。
レベルによる差はあれど、そこに例外は基本的に存在しないはずだ。
彼女が日頃から自分を天才と呼ぶのも、自身の能力の高さを示しているのでは?と恭助も常に思っていた。
「まあ・・・・・・はい、そうですね」
推測が確信に変わり、恭助はもう一歩踏み込んだ。
「どんな能力なんだ?」
答えは即答だった。
「言えません」
それは絶対の拒絶。
「どうしてだ?」
「知ったらセンパイはきっと後悔するからです」
彼女の言葉には何かしらの
「はあ?別に良いだ「ダメです」
取り付く島も無いとはこのことだった。
だが、今日の恭助はどうしてなのか諦めがつかなかった。
「お前、いっつも散々ヒトの内情探っておいて自分は嫌だって、それじゃあ筋が・・・・・・」
そんな彼を黙らしたのは拒絶でも、凄味でも、脅迫でも、交渉でも無かった。
「・・・・・・いつもの私の態度じゃ信じて貰えないかもしれませんが、私はセンパイのことが好きです」
「・・・・・・、」
「勿論、那由他ちゃんや剣科さん、疾風さんのことも好きなんです」
「・・・・・・、」
「自分で言うのもなんですが、私は救いようの無い快楽主義者です。情報収集や取材も昔はともかく今は楽しいからやっています。・・・・・・センパイ達との会話もそれがとても楽しいからです」
「・・・・・・、」
「私は、センパイ達のことを嫌いになりたくないんです。だから言えません」
「・・・・・・分かったよ」
恭助は頷くことしか出来なかった。
彼を黙らしたのは、まるで懇願するようなおよそ彼女らしくない必死な目だった・・・・・・。
「ええーッ!?トイレに集団でゾロゾロは女の子の特権だと思ってましたがーッ!!」
まさかのツンツン頭の登場も(アイツも慣れてるから助けなくて良いだろ、という何気に酷い理由で)無事スルーし、やっと恭助達が目当てにしていた連中がやって来た。
まず、連中に桃華が接触するという。
恭助はそれに反対した。
確かに誘ったのは桃華で、風紀委員の自分達は顔が割れている可能性があるがそれにしても危険過ぎると思ったからだ。
自分達が常に近くで見守っているとはいえ、もしもということがあるかもしれない。
だが、桃華はクスリっと笑うと歌でも歌い出しそうな気軽な声で言った。
「あははーっ、センパイは優しいですね。でも大丈夫です。誰かとコンビを組んだ時、特に那由他ちゃんと一緒ならセンパイは最強ですからっ」
「・・・・・・そんな無責任な信頼はいらねぇよ」
恭助は彼女が自身に向けている信頼を否定した。
でも・・・・・・、
「無責任なんかじゃありません、私が保証します。センパイのことはホントにいっぱい観察して調べた、この私自身が」
彼女はその否定を、覆した。
「お、おう・・・・・・」
あまりにも自信満々に言い返され、恭助はそれに反論を挟むことが出来なかった。
そんな彼が唖然としている間にそのまま彼女は連中の所へ行ってしまった。
そして心配は杞憂に終わり、口達者な桃華はその不良共を上手く丸め込んだ。
不良達はここでは『幻想御手』のことは話せないと言って、彼女を連れて店を出て行く。
「後を追おう、恭助」
「・・・・・・、ああ」
「? 恭助どうしたの?」
「いや、何でも・・・・・・」
「(私が保証する、か・・・・・・桃華の癖に知ったような口を)」
彼女は本当の相良恭助を知らないのだろう・・・・・・その凄惨な過去を。
それこそ恭助の過去を知れば、彼女は彼のことを嫌いになるだろう。
それは分かっている。
でも、その言葉は不思議と恭助の心の冷めた部分を少し温かくさせた。
暗い夜空の下でもさらに暗い路地裏。
「さてと、とここらで良いだろう。邪魔者はいなくなった・・・・・・」
「えっと、じゃあ―――――」
「まずは有り金全部出して貰おうか」
「キャッシュカードと暗証番号も忘れずにね」
一人の小柄な少女が、三人の男から恐喝を受けている。
まさしく絶体絶命。
だが、その現場に颯爽と現れた二つの影。
「待ちな、テメェら。風紀委員だ」
一人は高校生の少年、一人は小学生の少女。
勿論、彼らは偶然現れたのではない。
そう、これらは全て『幻想御手』を使っているらしい不良共を一網打尽にするための作戦だったのだ。
「と、今の状況を刑事ドラマ風に紹介してみましたけど、どうでしょうセンパイ」
「・・・・・・とりあえず気付いたらお前が俺の後ろにいた件に関してツッコミはしない」
そんないつも通りな会話をする桃華と恭助。
対する不良共は風紀委員が現れたことにしてもそうだが、何より自分達が絡んでいた少女が気付いた時には自分達の手をすり抜けるように風紀委員達の後ろに移動していたその早業に驚きを隠せなかった。
「・・・・・・そんなことよりこれからどうすんだっけ?」
「え?センパイ達がポポポーンって倒してくれるんじゃないんですか?」
「いやいや、桃華お姉さん。流石にいきなり実力行使はどうかと思う」
「あれ?何かすでに帰りたくなってきた?」
「ちょちょっ、センパイっ。ここで甲斐性なしモードになられても困ります、主に私が」
「そもそも甲斐性なしモードって、何?」
そんな感じに完全に三人の世界で会話が盛り上げっている状況に、ニット帽を被った不良が声を荒げた。
「おいテメェら!いきなり現れたと思ったら好き勝手談笑し始めやがって、ふざけてんのか!?」
それに迎合するように両腕にブレスレッドをつけた不良も声を上げる。
「へっ、俺達のパワーアップした力を見せてやろうぜっ!」
ネックレスを首に提げたもう一人もそいつに合わせて構える。
「テメェら温室で育てられた優等生とは
これら不良の行動に最も反応したのは桃華だった。
「おっ、向こうは戦う気満々ですけど、どうしますセンパイっ」
「何でお前がワクワクしてんだよ、戦うの俺達だぞ。なあ、那由他」
「まあ、相手が抵抗するのなら仕方ないよね・・・・・・」
「じゃあ、私はお邪魔にならないように遠くに行ってますねーっ」
そう言ってピューっと音がしそうなくらい迷い無くさっさと行ってしまう桃華。
「(アイツ面倒事ヒトに押しつけて逃げやがった・・・・・・いや、言葉通り邪魔にならないように退避した、と今回だけはプラスに受け取ってやるか)」
そんなことを考えていると他にも四人、相手の増援が来て恭助と那由他を取り囲んだ。
「今からでも平和的に解決は・・・・・・無理そうだね」
やれやれと言わんばかりに嘆息する那由他。
「ま、
鼻を鳴らすように肩を竦める恭助。
次の瞬間、二人が纏う空気が一変した。
表情が反転するように剣呑な目つきに変わり、集中力を研ぎ澄ました彼らが出すキリキリと張り詰めた空気が場を支配する。
そして背を互いに預けたまま、各々の戦闘スタイルに合った構えをとる。
那由他は両手を軽く広げフリーにした状態で腰を落とした前傾姿勢で、どこから攻撃が来ても即座に反応できるような構え。
恭助は空手とボクシングの構えを合わせたような主に両腕を主力に戦闘を行うスタイル・・・・・・と思わせて足技も常に繰り出せる連続攻撃&カウンター重視の構え。
「うっ・・・・・・く・・・・・・」
「お、おいっ。なに下がってんだよ相手はたった二人だぞッ?」
「いやだって・・・・・・こいつら何か・・・・・・」
不良達が気圧されるのも無理は無い。
その二人は『ただでさえ高い格闘スキルを持っている上に高位の能力をその格闘術に
RPGゲームで例えるなら・・・・・・不良達が常に町の外で何十匹のスライム達と連続で戦って地道に経験値を貯めているのに対し、恭助達は高難度ダンジョンで何匹ものボス級モンスターをその度に工夫して勝利を収めることで一度に大量の経験値を得ると同時にボスを倒したボーナスで新しい必殺技を覚えている、といった具合なのだ。
つまり、生憎とそこらの不良と彼らでは一つ一つの
「さてと、ちゃちゃと終わらせるとするか」
「恭助。この人達には後で『幻想御手』について話して貰わないといけないんだから程々にね」
「あいよ」
これから二人で七人を相手にしようとしているようには思えない、そのあまりにもリラックスした会話が逆に彼らの強さにおける自信とそれを裏付ける実力を示していた。
だが、さっきまで気圧されていた不良の一人が絞り出すように罵倒した。
「くっ・・・・・・スカしてんじゃねぇぞっ!テメェらが何者かなんて関係ねぇ、俺らだって『幻想御手』でパワーアップしたんだ・・・・・・食らいやがれッ!これがレベル2の俺の全ry―――――」
「こんなもんか?」
「思ってたよりあっさりと終わっちゃったね」
戦闘開始から一分後・・・・・・無傷の二人がそこに立っていた。
当然、風紀委員の恭助と那由他だ。
結果は圧勝、もしくは瞬殺といったところか。
彼らに介旅ほどの能力は無かった。
「都市伝説自体デマだったっのか?それとも
「恭助って何気に桃華お姉さんに容赦ないよね・・・・・・それはさておき、そう断定するのは早計なんじゃないかな?実際、この人達自分で『幻想御手』でパワーアップしたって言ってたし」
恐い発言が口から漏れてる恭助に苦笑いを浮かべる那由他。
それはさておき、恭助と那由他は実際に『幻想御手』の使用者(らしき)集団と戦ってみて分かった情報を基に各々の推測を述べる。
「能力が上がる上限には個人差がある、と・・・・・・いや、それとも他に介旅にあってコイツらに無い、何らかの条件があるのか?・・・・・・そういや那由他、今日少し調子悪くなかったか?」
「うん。何だかこの人達のAIM拡散力場、少し変だったんだよね。まるで一人の能力者のAIM拡散力場と同じ系統の別の能力者のAIM拡散力場が複雑に絡み合って一つに融合してるみたいで・・・・・・と思えば全然違う不純物も混ざってて・・・・・・とにかく、上手く干渉が出来なかったんだ」
「複数人のAIM拡散力場が融合、か・・・・・・」
何故かそこで
「そこに案外『幻想御手』の手品のタネが隠されているかもしれないね・・・・・・どっちにしろこの人達から事情を聞かないと」
そうやってアレやコレやと、恭助と那由他が議論を交わしている時だった。
「・・・・・・随分と派手にやってくれたじゃねーか」
現れたのは薔薇のイラストが背中に施されているスカジャンを着た、スケバン風の少女だった。
「あ、姐御・・・・・・」
そう言って顔を上げる不良達の様子からして、彼らのボスまたはリーダーのような立ち位置の人物らしい。
「姐御って・・・・・・任侠妻かよ(ボソっ)」
「恭助・・・・・・この状況でそのツッコミはどうかと思う(小声)」
恭助と那由他が密かにミニ漫才をしているのを余所に、彼女は倒れている不良の一人に声を掛ける。
「おい、お前達。あんな小さな嬢ちゃん連れの女顔相手に何やってんだい?」
凄むような彼女の視線に不良達は身を縮ませる。
「す、すみません・・・・・・」
「うぅ、姐御・・・・・・」
「・・・・・・、」
「・・・・・・、そこのアンタら。こいつは一体どういうことか、説明お願いできるかい?」
萎縮したまま詳しい事情を話そうとしない男達に業を煮やしたのか、姐御と呼ばれた女性は恭助達に質問した。
恭助はそれに応えて、簡潔に説明した。
「そいつらが俺達の知り合いの女の財布脅して盗ろうとしてたんで注意したらいきなり殴りかかってきたんで返り討ちにした、以上」
本当にかなりの簡潔さだったが、男達が率先して否定しない仕草から彼女はそれが事実だと合点し、また倒れている不良の方を向いた。
「ふーん・・・・・・ったく、女の財布なんか狙った上に、大人数でたった二人を袋叩きにしようとしてあろうことか返り討ちされた、と・・・・・・」
「で、でもっ―――――」
バシィ、と頬を打った甲高い音が路地裏に響いた。
「うぐぅ・・・・・・」
「アタイに口答えかい!?・・・・・・埋めるよ?」
「す、すみません・・・・・・」
「謝る相手はアタイじゃねーだろっ!」
バシィ、ともう一度平手打ちが飛ぶ。
「ホラ、お前達もっ!」
ゾロゾロと起き上げる不良達改め舎弟達。
「わ、悪かった・・・・・・」
「そうじゃねーだろっ!」
「本当にスンマセンしたぁっ!」
「「「「「「したぁっ!」」」」」」
驚くほど息がぴったり合った謝罪をする舎弟達。
「これでケジメはついたろ?許してやっとくれ。・・・・・・お前ら!もう帰んなぁ!」
その号令に従い「ウィッスっ!」や「お先ですっ!」などそれぞれの応答した後、彼らは去っていく。
「えーと・・・・・・アイツらどっか行ったけど、どうする那由他?」
「でもこの人がさっきの人達のリーダーみたいだし、たぶんこの人の方が詳しい情報を知ってると思うよ?」
何か妙な展開になってきやがった、と心底面倒臭そうに嘆息する恭助にプラス思考な考えを提示する那由他。
「そう簡単に教えてくれりゃ良いけどな・・・・・・」
「?」
恭助の曖昧な答えに首を傾げる那由他だったが、早速その姐御に質問を開始した。
「あの、私達は貴女達に聞きたいことが―――――」
「そんなことより・・・・・・アタイの舎弟を可愛がってくれたんだ。覚悟は出来てるんだろうね?」
振り返った彼女の目には闘志と敵意が宿っていた。
「覚悟?今謝ったのは?」
それに気付き警戒しながらも、那由他は言葉を紡ぐ。
「アレはアレ、コレはコレ。借りはきっちり返さないとね・・・・・・行くよ!」
「そうかよ」
彼女が右手を地面に向けて振り下ろすその動きを、恭助は冷淡な目で捉えていた。
案の定、それが彼女の能力を使うための予備動作だったらしく、彼女が手を付いた場所を中心に不自然な波紋が広がった。
二人はその波紋から逃げるように連続でバックステップを繰り返す。
「ほう、中々の反射神経だね。でも、それでアタイの能力から逃げられるかいッ?」
ただし恭助は
それをスケバン風の少女は躍起になって捉えようとした。
しかし、ある一定のラインからその波は広がらなくなった。
「(クッソ・・・・・・!野郎ッ、これを狙って誘ってやがったのか!?)」
姉御と呼ばれていた人物は心の中で毒づいた。
自分が能力の最大射程を、自らの手の内を相手に晒してしまったことに気付いたのだ。
だが後悔しても、もう遅い。
恭助は安全地帯に着いたのだと認識すると、ポケットから何かを取り出した。
それは桃華が詫びの印とか適当に言って彼に渡したゲームセンターのコインだった。
恭助がそのコインを指で弾く。
地面に落ちたソレは金属音を何度か響かせ・・・・・・ある地点でズブリと半液状化したアスファルトに付着する。
「(大体半径5メートルって所か。それがアイツの能力の射程範囲・・・・・・)」
それによって恭助は今いる安全地帯と敵の能力の制御下に置かれている地帯の境を確認した。
そして恭助は口元に手を添えて思案するフリをしながらとなりの那由他にギリギリ音声として認識出来るレベルの声量で声をかけた。
普通の人間では何かを言っていることは分かっても、それを言葉として内容を理解するのは困難だろう。
しかし那由他はただの子供ではない、体の七割強が機械で構成されているサイボーグだ。
故に一時的になら聴覚を常人の数倍に上げることも出来る。
それを知っている恭助がわざわざ口に手を添えたのは口の動きでこちらが密かに作戦会議をしているのを相手に勘づかれないようにするためだ。
那由他もそれを理解してくれたようで、恭助が話しかけても目で見て分かる反応は示さない。
「―――――という作戦で行きたいんだが、OKなら俺を
「・・・・・・、どうしよう
那由他は少しだけ逡巡したように沈黙したが、信頼している恭助の案を肯定してくれた。
「だがこのまま睨み合ってても仕方ねぇ。とりあえず俺が突っ込む。那由他は後に続いてくれ」
あえて相手にも聞こえる声で那由他に応えながら、恭助は作戦を決行するために構えた。
「波状攻撃ならアタイの能力のスキを突くことが出来るとでも?舐められたものだね!」
勝負は一瞬。
チャンスは一回。
月が綺麗な夜空の下で、二人と一人が激突した―――――!!!
姉御さんって意外と美人さんですよねー・・・・・・。
・・・・・・コホンッ。次回からやっと本格的な戦闘回にっ!
読者の皆様がどう思っていてくれていたかはともかく作者は今までずっと書きたかったです!今回の不良達との戦闘もできれば書きたかったのですが「何人も入り混じる戦闘を躍動感溢れるように且つ、分かりやすいように活字にするって意外と難しい・・・・・・」という私事な理由で今回はカットしてしまいました、すみません・・・・・・。
何はともあれ頑張って自他共にご満足していただける作品にしていきたいので、次回もよろしくお願いします。
PS.リアルの方が忙しくなってきたので次回から更新が不定期になります。すみません。