とある正義の人間兵器《サイボーグ》   作:大器・晩成

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 上条や御坂が出てきてやっととあるシリーズらしくなった前回。
 今回から少し超電磁砲ルートが匂う単語が出てきます。
 
 さて、御坂と対決することになった主人公の運命やいかに!?
 
 どうぞお気軽にお楽しみください。
 


3話 衝突する二人

 相良恭助と御坂美琴。二人の戦いの火蓋は切って落とされた。

 

 しかし現状は恭助の防戦一方だった。

 

「ちょこちょこ逃げ回ってないで戦いなさいよ!」

 

 御坂が最強の『電気使い(エレクトロマスター)』の名に恥じない鋭い電撃を放ってくる。流石に手心は加えているようだが、食らえば気絶、良くても痺れて動けなくなるぐらいの威力はある。

 

「うおっ、あっぶねぇっ!」

 

 それをすんでのところで回避する恭助。

 

「自分からケンカ売っといて何よその様は!」

 

「ふざけんな!俺はどっかのツンツン頭と違って、右手に異能の力を打ち消す不思議な力なんてないんだよ!」

 

 上条の右手に宿る科学の総本山である学園都市でさえ解明出来ない不思議な力。それがもし自分の右手にもあったら少しは楽に活路を見いだせるかもしれないと思った恭助。

 

 だがすぐにそれは無い物ねだりに他ならず。それにその右手の力と上条の極端な不幸体質はもしかしたら因果関係があるのではないかと推測している恭助だったので、やっぱりいらねぇという結論に至った。

 

 そうしているとふと御坂の電撃の雨が止んでることに気付く。

 

「アンタ・・・・・・」

 

「ん?」

 

「アイツの知り合いかぁぁぁぁぁァァァァァァ!!」

 

 その瞬間。恭助の目の前が真っ白に染まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 常盤台のエース、中学二年の御坂美琴は困惑していた。

 

 彼女がいつものように以前自分の入れた一万円札を食った自販機から無理矢理食った分を請求していると高校生ぐらいの金髪の男が声を掛けてきた。

 

 最初はいつものように自分をナンパしに来たスキルアウトかと思ったが、実は風紀委員だったらしい。

 

 同じく風紀委員を務めているどうやら自分をえらく慕っている(たまにレズな変態行為もしてくる)後輩からいつも何かと注意を受けており、時折このような軽犯罪ギリギリのことしても、人を傷つけている訳ではなかったり、誰かを助けるためにしたことであったという理由で見逃して貰っていた御坂だったが、まさか別の風紀委員に見つかってしまうとは思わなかった。

 

 内心(捕まることより、後でそこらの警備員より遙かに強い寮監に怒られることに)かなり焦った御坂だったが、相手は風紀委員の証明となる腕章をどこかに忘れたらしい。

 

 これ好機と見て罪悪感を感じつつも、まさか超能力者に戦いを望もうなどしないだろうと思い強気な態度を取った。

 

 これで相手が穏便な対応を見せれば計算通りだったのだが、何故か相手はまったく戦意を失っておらず、むしろ御坂に堂々と宣戦布告をした。

 

 一瞬相手も自分と同じ超能力者の一人かと思ったがどうやら口振りからして違うようだった。

 

 御坂は気付けば高揚していた。

 

 ついこの前、自分の電撃が何故か通用しない少年にあった。

 

 これは面白いと思って何度も勝負を挑んだが相手は逃げるばかりで御坂のことをまるで相手にする気もない。

 

 はっきり言ってイライラしていた。

 

 そこへ逃げるどころか御坂を超能力者と知ってなお、勝負を挑んでくる少年が現れた。

 

 もしかしたら自分の力の全開を試せる相手ではないかと思った。

 

 しかし結果は向こうの防戦一方。御坂に近づくことさえ出来ない。

 

 初めの内はそう思った。しかし徐々に少年が自分に近づいてきていることに気付いた。

 

 一見、相変わらず一進一退を繰り返しているように見える。

 

 だがよく見ると3歩進んで2,5歩ぐらい下がっているが確実に距離を詰めて来ていた。

 

 息も一定でほとんど疲れた様子もない。

 

 近づかれたところで負ける訳ではない。それならそれでやりようはある。

 

 頭では分かっているが何だがじわじわと追い詰められているという錯覚をしてしまう。

 

 心なしか段々と避けるのが上手く、速くなっている気がする。

 

 動くスピードではなく、動くまでタイミングが。

 

 明らかに御坂の手を読んできている。

 

 その時、御坂に思考が読まれているのではないかという懸念が生まれる。

 

 まさか相手は読心能力者(サイコメトラー)なのか?

 

 いや、なら最初に御坂が常盤台の超電磁砲だと気付いたはず。

 

 それとも最初から気付いていて気付いていない振りをしたのか。

 

 だが、さっきの態度は自然だったし、大体そんなことをするメリットがないだろう。

 

 ならば自分は単純な技術相手にここまでの精神的なプレッシャーを受けているのか。

 

 そんなことはプライドの高い御坂は認めなかった。

 

 その時相手の口からあのツンツン頭の少年のことであろう人物を指す言葉が出た。

 

 ただでさえ混乱の極みに至っていた御坂はそれをトリガーに爆発した。

 

 厳密には全方位に電撃を放った。

 

 遠くから見れば光のドームに見えただろう。

 

 気付けば戦っていた少年は煙を上げて伸びていた。

 

 致死レベルの電撃ではなかったはずだが万が一のことを考えて脈があるか確認し、安堵する。

 

 しかしそのまま放っておく訳にはいかないし、だからといってバレて寮監に怒られたくはない。

 

 そんな思考を続け、今に至る。

 

「一応近くにあったベンチに寝かしたけど・・・・・・」

 

 病院に連れて行くか、それとも知らぬ存ぜぬで立ち去るか。

 

 一向に目覚める気配がない少年を前に彼女の頭の中の天使と悪魔が何度も囁く。

 

 そしてまったく答えが出る気配がない思考に徒労を感じ、一旦切る。

 

 ふと御坂は寝ている少年の様子を観察した。

 

 歳は恐らくあのツンツン頭の少年と同じだろう。特に特徴の無い制服だが、もしかしたら彼と同じ高校の学生かもしれない。

 

 金色の髪をうなじで結び、前髪は二つに分かれている。これだけ見ると不良と言うより、どこぞのライブハウスでギターを弾いてそうなミュージシャンに見える。

 

 とてもじゃないが風紀委員には見えない風貌だった。

 

 しかし運んでいる途中に彼のズボンの後ろポケットから風紀委員の腕章が落ちたのだ。

 

 どうやら自分で入れていて、そのまま忘れていたらしい。

 

 彼女はそんな彼のおちょこちょいな所についフっと笑ってしまった。

 

 そんな彼はまだベンチの上で安らかな顔をしたまま穏やかな寝息を立てている。

 

「よく見たら案外悪くない顔してるわね・・・・・・」

 

 次の瞬間自分で言った言葉で自分が恥ずかしくなり赤面した御坂。

 

「いや、別にコイツがイケメンで格好いいとか言ってる訳じゃなくて!あくまで悪・く・な・い・よ、悪・く・な・い!大切なことだから二回言いましたっ!」

 

 もはや誰に言い訳をしているのか分からない。

 

 その時、御坂が無意識に出している電磁波を利用したレーダーが反応した。

 

「(誰かがこっちに来る!)」

 

 さらにパニックになった御坂はその場で意味も無く数回行ったり来たりすると、たまらず逃げ出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 恭助が目を覚ますとそこは自分が務めている第七学区にある風紀委員の支部だった。

 

 那由他がここまで運んで来てくれたらしい。

 

 どうやら恭助がちゃんと風紀委員の仕事があることを覚えているか心配だった那由他が彼を迎えに行ったところ、入れ違いで恭助がおらず、引き返して支部に向かおうとした時突然支部に行くまでの道付近にある公園が強い光をあげたのが遠目に見え、急いで行ってみたところボロボロの恭助がベンチで寝かされていたようだ。

 

 途中、那由他が持つ『AIM拡散力場(通常、特殊な機械を使わないと確認できない能力者が無意識に発している何らかの余波)を視認し、触れて干渉出来る能力』で強力な『電気使い』の電磁波を見たらしく、どんな奴だったのか聞いてきたが・・・・・・適当に濁した。

 

 何故なら相手が超能力者だったからだ。

 

 那由他が憧れる超能力者だったからだ。

 

 那由他が来て慌てて逃げてしまったようだが、気絶した自分を看病しようとしていたことは顔や腕に張られていた、ゲコ太というマスコットキャラクターのイラストが描かれた(見てはいけない個人の趣味を見てしまった気分になる)絆創膏を見れば分かるように根は良い奴だったみたいだ。だが自分が憧れていた超能力者という存在が自分の友人(きっとそう思ってくれているはず・・・・・・たぶん)を傷つけた下手人と知れば那由他がショックを受けてしまうと思ったからだ。

 

 那由他も深くは聞かず渋々ながらも納得してくれた。

 

 そんな彼女の気遣いが少し嬉しかった恭助だった。

 

 ただ、気遣うつもりが気遣われてしまったことに、自分はまだまだだな、とも思ったが。

 

 ちなみに無くしてしまったと思っていた腕章が寝ていた恭助の腹の上に置かれていたらしい。

 

 それを聞いてそう言えば学校に行く前にすぐ取り出せるよう鞄にではなくズボンの後ろポケットに仕舞っていたことを思い出し、同時にそれが御坂にバレたことに気付き、穴があったら入りたい気分になった。

 

「散々、人のことをアホの子扱いしといてお前の方がアホじゃん(笑)」とか思われたかもしれない。はっきり言って、死ぬ程恥ずかしい。

 

 だがいつまでも気にしても仕方ないので忘れることにした。

 

「(きっと御坂も忘れてくれるだろう。ってか忘れろ!忘却しろっ!)」

 

「ところで那由他。昨日の夜、遅くまで何してたんだ?」

 

 自分の人生の恥ずべき汚点の一つを忘却の彼方へ追放するためにそんな何気ない話題を振った。

 

 今、この詰め所には恭助と那由他の二人しかいない。そのため必然的に那由他と話すしかないのでとりあえずふと思いついたホットでプライベートな話題、のつもりだった。

 

「・・・・・・、えっと、最近多発している虚空爆破(グラビトン)事件の資料を調べてたんだよ」

 

「虚空爆破事件?ああ、最近よくニュースでやってるヤツか」

 

 いきなり仕事に関係ある話題になってしまった。今まさに仕事中なので正しいことなのだろうが。

 

 ちなみに虚空爆破事件とは、何らか能力によって突然町中で爆発が起こる事件で、その際異常な重力子の加速が人工衛星のレーダーで確認されており、故に『グラビトン』事件と呼ばれている。

 

 最初は不自然に置かれたアルミ製のスプーンや空き缶などが爆発物に変えられることで爆発が起こるというもので爆発の規模も狭く被害が少なかったが徐々にエスカレートし、爆発の威力も大きくなり始め爆発物もぬいぐるみやバックに入れるなど見た目を警戒心が薄くなるものに変え、被害が大きくなっている。

 

 一応まだ死人は出てないがこのままではいつ出てもおかしくない。だが、そんなことが出来る能力者は限られていたのですぐに容疑者の名前は挙がった。

 

 だが、その人物は事件当時原因不明の昏睡状態になっていたというアリバイがあったため捜査は振り出しに戻り、以後あまり進展していない。

 

「恭助。他人事みたいに言ってるけど、私達の管轄地区でも被害が出てるんだからね」

 

「別に他人事とは思ってないが・・・・・・」

 

 さっきの那由他の質問に応えるまでの間に小さな違和感を覚えつつも、会話を続行する恭助。

 

「その虚空爆破事件ってので、気になることでもあったのか?」

 

「うん。まずはこれを見て」

 

 そう言って毎度おなじみ真っ赤なランドセルから携帯型ノートパソコン(PC)を出す。

 

 何だかいつもいつも何でも入れたり出したり、どっかの猫型ロボットの腹ポッケを想起させるランドセルである。

 

「こいつは・・・・・・」

 

「うん、今まで虚空爆破事件があった場所と被害者のプロフィールだよ」

 

PCは那由他が開くと間髪入れず画面に光を灯し、所々に吹き出しの付いた地図を映し出した。

 

 それを見るため恭助が画面を覗き込んだ(自然、頬が触れそうになる距離まで那由他に恭助の顔が近くなる)時、那由他の肩が小さく震え頬が淡い桃色に染まったことに恭助は気付かなかった。

 

「ねえ、恭助。何かおかしなことに気付かない?」

 

「おかしなことって・・・・・・爆発があった場所か?」

 

「違う、そっちじゃなくて被害者の方」

 

「被害者って言ったって虚空爆破事件は無差別な犯行だろ・・・・・・って、ん?」

 

「分かった?」

 

 那由他が得意げな顔になる。

 

「風紀委員の被害者がやたら多くねぇか、コレ」

 

「そう、初期の段階から虚空爆破事件がある時は必ず風紀委員が近くにいる時に限って起きているの。そして被害者の大多数はパトロール中だった、または重力子の異常な加速が確認された現場に向かった風紀委員なんだよ」

 

 つまり無差別と思わせて、実は風紀委員を狙っての犯行だったということらしい。

 

「ってそんな悠長に話してる場合じゃねえだろ!早く他の風紀委員にも知らせねえと!」

 

 恭助が慌ててつい喚くようにそう言うと、那由他が待ったを掛けた。

 

「ううん、捜査に混乱を起こさないためにもここは慎重に、確信が得られるまでこのことは私達の支部内で留めるって、さっき恭助が寝てる間に剣科(けんか)お姉さんと決めたんだ」

 

 那由他の言う剣科お姉さんとはこの支部で一番の先輩である高校二年の女子高生だ。

 

 風紀委員としても単純な学生としても恭助の先輩に当たる。

 

 年上やお偉い方に何かと反抗的な恭助が信頼し、尊敬出来ると思う数少ない人物だ。

 

 改めてその名を聞いて、そう言えば那由他も昔は自分のことをこんな風に恭助お兄さんと呼んでいたなあ、と思い出す恭助。

 

 別に剣科や恭助に限らず那由他は基本年上のことをお兄さんやお姉さんと呼ぶ。

 

 では何故、現在恭助が呼び捨てで呼ばれているかというと、実の妹でもない人物にそんな呼称で呼ばれると何だがむずがゆいものがあり、むしろ呼び捨ての方が現在の那由他と自分の上司と部下という関係に合っていてスッキリする気がすると恭助が思ったからだ。

 

 それなら何で恭助も那由他を呼び捨てにするのかというと、そこは男のプライドの問題だったりする。

 

「そうか、那由他と剣科先輩が決めたことならしょうがないな」

 

「うん、ありがとう恭助。私も早く確信が得られるように調査を頑張るよ」

 

「ああ、俺に協力出来ることがあったら言ってくれ」

 

 那由他の意気込みに恭助も強く応える。

 

「じゃあ、私がここでさらに詳しい捜査資料が送られてくるのを待っているから、恭助は管轄地区のパトロールをお願い」

 

「あいよ」

 

 そう恭助が二つ返事で支部を出て行こうとすると那由他が呼び止めた。

 

「もう一年になるんだね。恭助と会ってから」

 

「・・・・・・ああ、そうだな」

 

「(俺があの地獄から解放されてから一年。まだ一年しか経っていないのか・・・・・・)」

 

 那由他の言葉を受け、恭助の視線は自然とドアノブを握る右手に向く。

 

「会ったばかりの頃と比べると恭助は本当に変わったね。よく笑うようになったし、時間が惜しくてほとんど栄養剤やコンビニの弁当ばかり食べてた私のために料理の腕も磨いて、上手くなった。昔の恭助からはちょっと考えられない」

 

 那由他がニッコリと笑う。恭助は顔を逸らす。

 

「別に、そんなことねえよ」

 

 そして少し間を取った後、那由他は唐突にこう問い掛けた。

 

「ねえ、恭助。今の恭助の()()って何?」

 

「え・・・・・・?」

 

 恭助の心臓が大きく跳ねる。

 

「昔は、自分と同じ実験の被検体だった女の子を探し出して助けるんだって言ってたよね。でも、最近聞かない。ねえ恭助。今でもそう思ってる?」

 

 那由他は別段怒ってる訳でも咎めている訳でもなく、ただ恭助を見据えているだけだった。

 

 脳裏に、あのどこかぼうっとしている、でもとても優しかった女の子が蘇る。

 

 それが次第に、目の前にいる那由他に重なりかける。

 

 だが、恭助は堪えきれなくなり首を振った。

 

「お前に・・・・・・関係ないだろ」

 

 恭助はなるべく平静を装ったつもりだったが、それは吐き捨てるような険悪な響きを残した。

 

「いちいちうるせぇよ。もう良いんだよ。どうせあの子だってあのクソ忌々しい研究者供に良いように弄ばれて、既に使い潰されてる後だろうよ」

 

 そして逃げるように支部のドアから出る。

 

「待って!恭助っ!」

 

 恭助は背後で聞こえた少女の声をこれ以上聞かないよう、耳を塞ぐようにドアを乱暴に閉めた。

 

 そして那由他が少年に伸ばした手は、虚しく空を切った。

 




 読者の皆様、今回の『とある正義の人間兵器』はいかがでしたか?
 素人ですので至らぬ点も多いでしょうがお楽しみいただけたなら幸いです。
 一応ネタが尽きるまで毎週土曜に定期更新していくつもりです。
 では、これからも精進していくつもりなので評価・感想等、次回もよろしくお願いします。

PS.敬語口調は流石に堅苦し過ぎるし疲れるので今回から前書き・後書きは最初の頃よりも、もう少し肩の力を抜いた感じになります。
 
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