蛇足的な回にするつもりだったんです・・・・・・本当です。
我が儘ですみませんが出来れば前編・後編続けてお楽しみください。
容疑者・介旅初矢の確保後、爆発があったセブンスミストでは現場の記録や鑑識などの事後処理が開始された。
「・・・・・・、」
専門の警備員がそれらの作業する中、その邪魔にならない位置に常盤台中学の制服を着たツインテールの小柄な少女がその現場風景を観察するように立っていた。
そうしながら考え事をしていると、遠くから彼女を呼ぶ声が聞こえた。
「白井さーん!」
常盤台中学一年。校内の誰よりもお姉様こと御坂美琴を信奉していると自負する風紀委員の少女・
「もう、心配しましたのよ・・・・・・」
佐天や被害者である少女と共に元気よく走ってきた、同じ支部の同僚であり友人でもある初春のことを見て、白井はひとまず健全であることを確認し胸を撫で下ろす。
「ごめんなさい。でも
初春は同い年である白井にも変わらず丁寧な話し方で自分を心配してくれた友人に謝罪した後、クルリとその場で回って怪我が無いことを明るく報告する。
「
少女が無邪気にそう言って、一緒に助けられた初春に同意を仰ぎ、初春も危機的状況から脱した反動か上機嫌な様子でそれに合わせて「ねーっ」と返す。
彼女達が互いに御坂を賞賛し合い、自らの無事を喜んでいる中、白井は取りあえず無事を喜びつつも一つの疑問を浮かべていた。
「(それにしても・・・・・・)」
白井は振り返りもう一度現場の状況を確認する。
「(
その白井の見解通り、爆発があった地点から床すら抉る程の破壊は周りにある商品や陳列棚、照明に至るまで平等に破壊しているのにも関わらず、彼女達がいた場所だけが切り取ったように、不自然なぐらい無傷であった。
まるで、そこに及ぶはずだった破壊そのものが『打ち消された』かのごとく・・・・・・。
それは同じ学校で寮のルームメイトでもある、彼女をよく知る白井だからこそ気付いた違和感だったが、初春達が無事ならこれ以上考えても意味は無いと断じた。
「あっ、そうだ白井さん。相良さんを見ませんでしたか?御坂さんは無事だと言っていたんですが、私が起きた頃にはいなくて・・・・・・」
唐突に初春が白井に恭助について聞いた。
初春と少女はあの爆発があった時ショックで失神していて少しの間気を失っていたので、恭助があの後どこにいったのか知らなかったのだ。
「相良さん?一体どこのどなたですの?」
勿論、彼を知らない白井は首を傾げて問い返す。
「ええっと、私達と同じ風紀委員なんですけど・・・・・・」
咄嗟のことでどう彼の特徴を教えれば良いのか迷ってしまい口籠もる初春。
すると今まで言葉を発して無かった佐天が代わりに説明した。
「相良さんは、金髪で一見やる気のなさそうな目をしてて、でも以外と身体を鍛えてる着痩せするタイプで、不器用だけど世話焼きで、いざという時には結構頼りになったり格好良かったりする、ただ今初春が恋い焦がれ真っ最中の王子様ごもごもっ」
「ちょっ、なに言ってるんですか佐天さん!べっ別に私は、相良さんのことをそういう風に思っているんじゃ・・・・・・」
佐天の口を両手で塞ぎ、真っ赤になって必死に否定する初春だったが、端から見ればこれ以上分かり安い反応も無いだろう。
白井も分かった上でそこに敢えて追求せずに答えた。
「すみませんが初春。残念ながらわたくし、そのような殿方は見ておりませんわ」
一番の友人のうぶな様子に、可笑しさと純粋な喜びで微笑む白井になおも一生懸命に言い訳しつつ、手がかりを掴めなかったことで残念がる初春。
「そうですか。相良さんにもお礼を言いたかったんですけど・・・・・・」
「? 初春達を助けたのはお姉様なのでしょう?」
初春の言葉にもう一度首を傾げることになった白井。
そんな白井の疑問に初春は少し戸惑った後に答えた。
「確かに助けてくれたのは御坂さんです。でも相良さんは私を
「?」
白井は初春の不思議な言い回しに合点がいかない様子だ。
初春にも自覚はあったようだが、そのことについて詳しく話すのは流石に恥ずかしいのか慌てて話題を変える。
「そういえば肝心の御坂さんはどうしたんですか?御坂さんもあの後どこかへ駆けだしたっきり会ってませんけど―――――」
しかし初春が慌てるまでもなく、彼女の友人にとってその『お姉様』の名前を出したことは予想以上に効果的だったらしく、
「ああっ!わたくしとしたことがお姉様のことをすっかり忘れていましたわ!黒子、一生の不覚ですのっ!」
と、変なスイッチが入ってしまった白井は周りに対する配慮ゼロのハイテンションになって叫ぶ。
その友人の醜態に苦笑いするしかない初春を無視し、白井はさらにその愛と言う名の変態力を爆発させる。
「そぉですわ。今日は初春を助けていただいたお礼にご奉仕しませんと。そうと決まればじっとしてはいられませんわ。待ってて下さいまし、お姉様。今夜、黒子はお姉様の下ぼ・・・・・・ゴホン、お願いを何でも聞いてさしあげますわ。・・・・・・では初春、佐天さん、皆様ご機嫌よう」
最後こそお嬢様学校の生徒らしく丁寧に挨拶をしたものの、彼女が持っている能力である『空間移動《テレポート》』で立ち去る際に垣間見えた横顔には、とても他人様にはお見せ出来ないタイプの満面の笑顔が零れていた。
ふと、顔を上げると学園都市は夕焼けに染まっていた。
計画的に建てられた大小のビル群。
その無数の窓の一つ一つに朱色の光が反射する光景は、絵画の中に納めれば一種の芸術作品になるのではないか。
そう思える位には綺麗な景色だ。
恭助はそんな益体の無いことを考えつつも帰路についていた。
そして突然振り返り、口を開いた。
「常盤台のお嬢様が盗み聞きなんて、趣味が悪いんじゃねぇの?」
周囲に人の姿は見えない。
しかしそれは独り言では無かった。
その証拠に返答があった。
「・・・・・・別に盗み聞きしていた訳じゃないわ。爆弾魔を探してたら偶然アンタと爆弾魔が話してる所に出くわしたのよ」
不服そうな口調で物陰から出てきたのは御坂だった。
「どういう経緯があったにしろ、盗み聞きしたことに変わりねぇだろ?」
御坂は呆れたように嘆息する恭助にムスッとしながらもそれ以上は口答えしなかった。
だが、素直に自分の非を認めたからではなく、そのこと以上に重要だと判断したことを聞くためだった。
「アンタ・・・・・・、一体何者なの?」
爆弾魔・介旅初矢と対峙していた恭助から発せられていた尋常ではない空気。
それは学園都市に七人しかいない超能力者の第三位であるはずの御坂ですら息を呑み、傍観を余儀なくさせる程のモノだった。
好奇心と警戒心が半々、といった様子の御坂に対し恭助は辟易したように肩を竦める。
「別に、どこにでもいるただの高校生だっての」
そう言って立ち去ろうとする恭助。
「ちょっ、そんな答えで納得出来るわけないでしょ!」
その背中を御坂が慌てて追いかけようとした・・・・・・その時だった。
「きょ、恭助危ない避けてぇーッ!!」
御坂の視界斜め上から恭助に向かって、赤いランドセルを背負った少女が飛んできた。
「って何ぃ!?」
恭助はそれを目で捉え、そのまま抱き留めるように受け止めた。
そしてその勢いを後ろに逃がすように後退る。
しかし、勢いを殺しきれずそのまま仰向けに倒れてしまった。
「痛っつ・・・・・・。おい、大丈夫か那由他。つーか、そもそも一体全体何があったんだ?」
背中を強打したにも関わらず、一番に謎の赤いランドセルの少女・・・・・・那由他の心配をする所は何とも彼らしかった。
「・・・・・・、」
だが、肝心の那由他から返事はない。
「ん?どうした那由他」
疑問に思い、問い返す恭助。
「・・・・・・かい・・・・・・」
やっと反応が返ってきたがそれは囁き声のように小さく、うまく聞き取れなかった。
「えっと、何だって?ごめん、もう一回頼む」
「・・・・・・恭助、近い・・・・・・」
「あ」
そこで彼はやっと気付く。
自分が那由他のことをずっと抱きしめていたことに。
「すっ、すまん!」
慌てて那由他から離れる恭助。
そんな彼とは対照的に那由他は落ち着いたものだった。
少なくとも客観的にはそう見える彼女につられ恭助も平静を取り戻す。
「その・・・・・・つまり、どういう状況なの?」
突然の意味不明な出来事に御坂が遅れて恭助に声をかける。
「えーっと・・・・・・」
那由他はさっさと立ち上がったかと思えば、そのまま目を逸らし続け反応しない。
御坂の質問に咄嗟にどう答えたら良いのか決めかねた恭助だったが、そうしながら那由他が飛んできた方向に目を向けた時、視界に入ったものを見たことで説明するのが面倒臭くなり、適当な態度でこう言った。
「まあ、アイツに聞けばいいんじゃね?」
恭助が面倒そうに指で示した先には、黄色い蛍光色の長いマフラーを風になびかせ何故か得意顔で
時を少し遡り、呉藍剣科が後輩である風紀委員の少年に介旅の情報をメールで送った時のこと。
「・・・・・・ふむ」
剣科は神妙な顔つきで自分のケータイをポケットにしまう。
どうやら彼は重力子の加速が観測された場所にたった今いるとのことだ。
彼自身も何らかの予感はしていたらしく、(だが例えそれを差し引いても、異常な冷静さだったが)その様子はとても落ち着いたものだった。
やはり、かの少年はただ者では無く、もしかしたら自分達とは違う世界の住人なのかもしれない。
「(ただし、だとしても大事な後輩であり仲間の一人であるという事実に変わりはない)」
そう改めて自分の胸に決意を刻みつつも、これから自分はこの支部に務める中での一番の先輩として、どのように行動するべきか考える。
あまり長い間考えていられるほど時間はない。同時にここからセブンスミストまではかなりの距離があり、彼ら(初春達のことは恭助から聞いている)に今すぐ直接的なサポートをするには物理的な距離があり過ぎる。
自分達が持てる限りの情報はすでに渡した。だからといってこのまま指を咥えて傍観するのが正しいとは思えない。
ふと、剣科は那由他の横顔を窺った。
その表情は冷静に物事を考えているように見えるが、これでも長い間彼女の先輩でいる剣科には彼女が内心とても動揺しているのが分かった。
おそらく恭助のことを心配しているのだ。
だが、彼とのいざこざがあった件がまだ解消されてないために一歩進んで前に出ることが出来ないのだろう。
剣科がそんな那由他に何か言おうとした時、それを遮るように先に口を開いた者がいた。
「だぁーッ!ナユちんもケンちゃん先輩も何を難しい顔してチンタラしてんだよ!」
それは黒髪でいかにも体育会系女子といった風のポニーテールをした、釣り目気味のボーイッシュな顔立ちをした少女。今まで上段蹴りの練習をしていた疾風だった。
彼女も恭助と同じく年上でも基本は敬語を使わない人間である(恭助の癖と違い、彼女のはあくまでフレンドリーな意味で)。
ちなみにケンちゃん先輩とは剣科のことである。
彼女はよく相手やその相手のことを知っている人が(あまりにもキャラに合わなさすぎて)面食らうようなあだ名をつけるのだ。
「何だかよく分かんねえけど、要はサー坊のヤツがピンチなんだろッ?じゃあすぐ助けに行くのがフツーだろ!二人が行く気なくても、あたしは行くぜ!」
そう言って彼女のトレードマークであると同時に飛行時の補助的役割を担う、巻いている状態でも女子の中で背が高い方の彼女の腰ぐらいの長さのマフラーを手に取る。
猪突猛進すぎる疾風の発言に少しの間、呆気にとられていた二人だったが、やがて剣科が堪えきれないという風にクスリっと笑みを零した。
それは相手を嘲る類のものではなく、むしろ敵わないと相手を認める種類の笑顔だった。
「そうだな。仲間を助けるのに合理的方法や緻密な計画など必要ない。ただ『助けたい』という意志があれば十分だ。よし、
「ヨッシャー!流石ケンちゃん先輩だぜッ!んじゃ行ってくるぜ!」
疾風はそう言うとマフラーを慣れた手つきで(恭助曰く無駄に)スタイリッシュなポーズで首に巻くと、
「・・・・・・え?ちょっと待―――――!」
そして制止する間もなく那由他もほぼ強引に連れて行かれたのだった。
蛇足的なちょっとした後日談を書こうと思っていたはずだったのに、どうしてこうなった・・・・・・ハっ!そうか、この後の話で疾風と恭助を遭遇させたからか!あの面倒臭いコンビがオルソラさんみたく話を前後させて作者を混乱させてるからなのね!←作者は混乱しています。気にせず後編もよろしくお願いします。