ゼロの喰種   作:gulf0205

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重雨

「ぐっ……」

 

ワルドは左腕を失った痛みに顔をしかめる。脂汗が額を伝い、グリフォンの背中にポタポタと滴り落ちた。

それだけでなく傷口からの出血もあった。応急処置だけでもしておかなくては、首都に戻る前に死んでしまう。

どうにか手放さずに置いた杖の先を切断面に向けて “氷結” の呪文を唱えた。

 

「ぐうぅっ……」

 

文字通り骨の芯まで凍りついた。だがこれで出血は止まる。

 

「……」

 

あいつらはいったいなにをしているのだ? 山に偽装した城塞を、わざわざ砂のように崩している。あれでは攻め込まれた時に防御できないではないか。

そもそも『ヘヴィ・レイン』とはなんだ? なにをする気だ?

 

「……」

 

だがもうどうでもいい。貴様ら王党派は皆殺しだ。それは変わらん。貴様らの墓標なぞ聖地までの敷石になってしまえ。その上を歩いてやるぞ。

ワルドはグリフォンの行き先を王党派の本拠地へと向けた。

 

 

 

しばし空を飛び、首都の上空にたどり着いた。哨戒中の竜騎士が二頭、こちらへと近づいてくる。

 

「そこのグリフォン! 目的と名前を言え!」

 

「私の名はジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド! 聖帝アルビオン皇帝、オリヴァー・クロムウェル殿に情報と手紙を持ち参上した! 本殿に通してもらうぞ!」

 

「ならばついてこい!」

 

竜騎士に前後を挟まれた形で高度を下げ、かつてアルビオン家の住まいだった城の屋上テラスへ降り立った。

その衝撃でズキリと腕が痛む。

 

「うぅ……ぐ」

 

「お、おいなんだ? 腕が……」

 

「医務室に連れて行け。俺は皇帝陛下に報告してくる」

 

そうして連れて行かれた医務室で治療を受け、肝心のクロムウェルは就寝中だとかで朝まで待てだそうだ。

だがちょうどいい。ワルド自身疲れていた。下っ端にまでワルドのことが伝わっていないらしく、監視がつけられたまま一夜を明かした。

 

 

 

そして朝。

会議室として使われている一室に入った。中には円卓とそこに座る貴族の面々。正面には三十路を越えたであろう巻き毛の男、クロムウェル。

その背後に控えているのは黒い長髪を揺らした妖しい女性と、無言のまま壁に背を預けて立つ、褐色のローブを身にまとった仮面の男。

その仮面の男、喰種と目が合った。

 

「っ……!」

 

背筋が凍り、失った腕が悲鳴をあげる。

あの鬼を模したアオギリの仮面の下にはどんな顔が隠れている? リンの、あの醜悪に歪んだような笑みを貼り付けているのか?

そしていまワルドを見てどんなことを思っている? “美味しそう” か? “どうでもいい” か?

仮面をつけていてはその表情を読み取ることはできない。だからこそおぞましい。

いやそうではない、認めよう。

喰種が恐ろしい。

 

「おおワルド君。すまないね、いや君が帰還したことを知っていたら、私だけでも会っていたのだが」

 

皇帝の肩書きにそぐわない気さくな声に、ワルドは意識を切り替えた。少なくともあの喰種は味方だ。

 

「いいえ、私が休息をいただけたのです。感謝しております」

 

「おやそうかね。では本題に入ろう。その腕を失って、かわりに手に入れたものがあるのだろう?」

 

いたわりの言葉もほどほどに、早速クロムウェルは切り出した。貴族のように長々と会話するよりはいい。

 

「ええ、例の手紙です」

 

アンリエッタからウェールズに宛てられた手紙を取り出し、クロムウェルのそばに置いた。

 

「これは素晴らしい。見事な働きぶりだ」

 

「それと、王党派は現在、南東にある山に偽装した城に潜んでおります。しかしその城を解体し、なにやら “ヘヴィ・レイン” なる魔法の準備をしております」

 

「さすがは子爵だ。手紙を回収し、なおかつ隠れ家まで見つけ出した。賞賛に値する」

 

本当にそう思っているのか怪しい口ぶりで告げ、クロムウェルはその手紙をを封筒から取り出して内容を斜め読みする。

 

「やれやれ、小娘の恋文を読んでいるとこちらまで恥ずかしくなるよ」

 

ひらひらと手紙を貴族たちに見せると、嘲けるような笑い声が上がった。

 

「ではミス・シェフィールド、あとは手筈通りに」

 

「わかりました」

 

封筒に戻し、手紙を後ろの女性に渡した。

シェフィールド……この女はいったい何者だ? こいつが喰種を引き連れてやってきてから、全ては動き始めたのだ。

詮索は一切許されず、なにもわからない正体不明の女。すくなくともこの女の背後にはさらに巨大な存在があるのだろうが……。

ワルドは疑問を払う。どうせ考えたところで答えは出ない。

聖地へ行く。そのために利用し、利用されてやる。それだけだ。

 

「これでトリステインは孤立したも同然だ。そちらに軍を動かす前に雑用を済ませるとしよう」

 

「お待ちください」

 

と、貴族の一人が立ち上がる。たしかホーキンスとかいったか。歴代の将軍だとか。

 

「王党派は正体のわからない魔法を行使しようとしているのでしょう? 正面からぶつかれば返り討ちに遭うのでは?」

 

その問いかけはもっともだ。 “ヘヴィ・レイン” などという魔法は聞いたことも、なにかの文献に載っていたこともない。

シェフィールドはクロムウェルに歩み寄ると、なにかを耳元で囁き、離れた。

 

「臆するな将軍。やつらがなにをしようとしょせんは最後の悪あがき、我らには強大な力がある。叩き伏せるのみだ」

 

「王家にのみ伝わる禁じられた魔法というものを、あなたはご存知ないのですか?」

 

「その噂は聞いたことがあるとも。そしてその噂が事実であることは今しがた判明した。だからなんだというのだ? トライアングルメイジが一○や二○いたとて軍隊に勝てるわけがない。そうであろう?」

 

「う、む……」

 

「それにワルド子爵、あの中にはスクエアクラスのメイジがそれほど多くいたのかね?」

 

王宮魔術師全員を調べたわけでも聞き込みをしたわけではないが、いまここで彼らに臆病風に吹かれても困る。

第一、それほどの粒ぞろいなら、王党派はあそこまで追い詰められていないだろう。

 

「いいえ。せいぜいが二、三名かと」

 

「だそうだ、将軍」

 

「は……」

 

ホーキンスは渋々といった風ではあるが、椅子に座った。

 

「だが将軍の言い分も一理ある。圧倒的な戦力差で叩き潰そうではないか。レキシントンも出したまえ。矮小な抵抗も虚しく空振りに終わらせてやるのだ。他に意見のあるものはーー」

 

そこでドアを叩かれる。

 

「む? 何用かね?」

 

「会議中失礼いたします。哨戒中の竜騎士より報告がありました」

 

「入りたまえ」

 

「はっ」

 

ドアを開けて、若い下流騎士が入ってきた。手には走り書きの羊皮紙を持っている。

 

「報告します。南東にあるアネート山が噴火していると報告が来ております」

 

噴火? ありえない。アルビオンは空に浮いているのだ。地中に風石があっても溶岩など存在しない。それに報告する彼自身が困惑している。

 

「噴火だと?」

 

「アルビオンに火山などあるわけないだろうが」

 

「報告したのはどこの馬鹿だ?」

 

呆れを通り越して苛立ったのか、口々に批難した。

しかし、だ。まさか朝っぱらから竜騎士が飲んでいるわけではないだろうし、南東といえばウェールズたちが潜んでいる城の方角だ。

 

「いえ、ですが、ここからでも視認できるほどの煙が上がっています。噴火は確かかと」

 

そんな馬鹿な。

ワルドは窓へと歩き、それを押し開けて身を乗り出した。あれか。

遠方で白い煙がもうもうと吹き出しているのがわかる。それに火事などではない。火事にしては煙の広がりが少なく、一カ所から吹き上がっているとわかる。

 

「……確かに噴火のような煙が見えますな」

 

言うと、信じられないクロムウェルら貴族諸侯も窓から外を見た。

 

「どういうことだ?」

 

「うむむ」

 

考えうる可能性は一つしかない。

 

「 “ヘヴィ・レイン” とやらではありませんかな?」

 

ワルドが述べた可能性に皆が顔を合わせて、クロムウェルを見た。なにが起こるかわからないがために、指導者に指示を請うように。

だがそのクロムウェルはシェフィールドになにかを囁かれていた。母親から密かに答えを教えてもらっている子供のように。

視線に気づいたクロムウェルはわざとらしく咳払いをして、言う。

 

「やるべきことはなにも変わらぬ! 進軍の準備を開始せよ! 攻撃目標は王党派! 敵はアネート山にあり!」

 

 

 

 

 

><><><><><><

 

 

 

 

 

はるか以前……アルビオン家が王族ではなく一介の貴族でしかなかったころ。

もっと強力な魔法を作ることはできないか? ドットクラスでもせめてライン、トライアングルに匹敵する魔法を使えないか?

魔法を扱えるメイジならば誰しも考えることを、当時のアルビオン家当主も考えた。

より強力な魔法を、より殺傷能力が高く、敵対者を確実に叩き潰しうる魔法を作りたい、と。

しかし魔法の始祖たるブリミル以外に、新たな魔法を生み出すことはできなかった。

 

ではドットクラスを二人揃えてラインクラスの魔法を撃てないか?

この試みは一応の成功を収めた。

長年の時を共に過ごした者、あるいは双子のメイジ。そういった心を通わせた者たちであれば成功はした。

しかしその条件に見合う者たちはそうそうおらず、ありあわせのメイジ同士で成功することはなく、三人以上になると絶対に成功しなかった。

 

ならば水の秘薬で精神の統一させてはどうか?

これは極めて危険な試みだった。

二人以上の人間の精神を一時的に統一させる。その術式をわずかにでも失敗したら、そのメイジたちは精神崩壊を引きおこした。

紅茶とミルクが溶けて混ざり合ってしまうように、二人のメイジの精神が境界を失って混濁する。そうなればよくて廃人、悪くて死だ。

そうならないためには慎重に慎重を重ねて膨大な時間と貴重な水の秘薬をかける必要があるのだが、それほどの労力と費用がかかるのであればそれぞれが別々に魔法を撃つほうが効率的という結論に達した。

 

アルビオン当主はそれでも試行錯誤を繰り返し、新たな試みを思いついた。

 

魔法を放った後、さらに別の魔法を撃つことによって別の効果を生み出してはどうか?

これは非常にうまくいった。

水魔法によって水分をかき集め、火魔法でそれらを加熱し、冷却魔法によって大雨を降らせて水害を引き起こす。

山から流れる河川の上流を土魔法でせき止め、大量の土砂を集めたあと、一気に放流して土石流を発生させて街を破壊する。

乾燥の魔法により市街地を乾燥させたうえで火を放ち、深刻な大火災を引き起こす。

その無差別、かつ非人道的極まりない攻撃によって、アルビオン家は次々と敵対する貴族たちを屈服し、制圧した。

それでも……アルビオン当主は研究を続けた。

より安全な場所から、より遠くの敵を、地形や環境の制約を受けることなく、より確実に壊滅させる強力な魔法。

その完成系が、ヘヴィ・レインだ。

 

 

 

 

 

貴族派が大軍を用意し、アネート山まで行軍するには時間がかかる。クロムウェルが進軍命令を出した翌日の昼過ぎ。

ウェールズたちが潜むアネート山の上空には薄気味の悪い雲が広がっていた。その下では貴族派の傭兵や騎士たちが隊列を組んで進軍している。

アネート山が噴火するという謎の現象はすでに収まっているが、進軍する兵たちにはどこか不安の色があった。

その中央に、ホーキンス将軍がいた。

表情は陰鬱で、あまり気が乗らないといったことが見て取れる。

 

「気分でも優れないのですか?」

 

副将が問いかけた。

 

「……いや」

 

とだけ短く答え、副将軍はさらに問うた。

 

「敵はわずかに三百。我らは二万。さらに飛行船の援護もあります。なぜ暗い顔をされる?」

 

「……だからこそだ」

 

「は?」

 

「……私は英雄になりたかった。将軍ではなく、な」

 

やれやれまた始まったか。

副将軍は顔でそう言い、黙ってホーキンスの言葉を聞き流す。

 

「私は王家を裏切り、さらには大群を率いている。こんな卑怯な行い……どこが英雄か」

 

「あなたが選んだのでしょう? 王家の軟弱者ではアルビオンは守れないと、あなたが決めたのでしょう?」

 

「……ああ」

 

「いまさら後悔しないでいただきたい。士気にかかわります」

 

「そうだな」

 

どんよりとした雲を見上げて、ホーキンスは言った。

 

「いやな空だな」

 

 

 

そんなやり取りが繰り返される中、上空。

もはや風竜でさえも到達できない超高高度。

そこに漂っているのは放射冷却によって冷え固まった水蒸気などではなかった。

地上から見ると雲のように見えるそれは、金属の微粒子だ。砂つぶよりもさらに小さな金属性粒子。

先日まではニューカッスル城とその山々をなしていたものが、金属性粒子へと錬金されて超高高度を漂っていた。

ヘヴィ・レインとは……簡単に言えば鉄球を落とす。ただそれだけだ。

しかし想像してほしい。小石を塔のてっぺんから落としたらどうなるか? もしそれが人の頭にぶつかったら?

軽い小石であっても、じゅうぶんな速度と硬さを持てば人の頭蓋骨を割るのはたやすいものだ。

かつてのアルビオン当主は思いついた。

砲弾を高高度には打ち上げられない。ならば高高度で砲弾を作ればいい、と。

無限にある大地から大量の微粒子を生成。それを鉄、鉛、錫、鋼、真鍮、青銅、といった卑金属へと変換する。

次に熱による上昇気流や風魔法、さらには砕いた風石を用いて超高高度にまで打ち上げるのだ。

そして水の秘薬を大量に使い、じゅうぶんすぎるほどの時間をかけて、数十人の精神を安全に統一させる。

そして頃合いを見計らって『凝縮』のコモンマジックを金属性粒子の雲に向かって唱えるのだ。

 

いままさに、ウェールズによって合図がなされた。

 

『凝縮』のコモンマジックを受けた金属性粒子の雲は変化を始めた。

この魔法による核が回転を始め、水蒸気が集まって水滴となるように、金属性粒子は高速でかき集められて粒が生み出される。

粒は周囲の金属性粒子を次々と取り込み、体積を増す。やがては粒同士がぶつかり合い、その大きさを加速度的に増大させた。

上昇気流ではもはや漂っていられなくなったものから、重力に引っ張られて降下を始めた。その大きさはもはや金属の粒などとはいえまい。

落下中もさらに金属性粒子の雲を、金属塊を取り込み、成長を続ける。空気抵抗によって水滴状に発達したそれは “打撃体” と呼ぶにふさわしい。

 

 

ォォォオオオオオオオオオオ!!!

 

 

金属性粒子の雲を突き抜けた打撃体は音を置き去りにする速度に達し、その重量は成人男性にも持ち上げることはできない。

そんなものが、地上の貴族派たちをめがけて降り注ぎ始めた。もちろん一つや二つなどではない。雨のように。

『ヘヴィ・レイン』は発動までに数時間から数日かかるものの、自然災害に匹敵する破壊をもたらす。

『ヘヴィ・レイン』はただ鉄球を降らせる。ただそれだけの、単純極まりない大量破壊魔法。

単純であるがゆえに、対処方法はない。

もう、どうしようもない。

人間が災害に巻き込まれたらもう、死ぬしかない。

 

 

 

 

「将軍、この音は? あれはいったいなんなのです!?」

 

地上の兵たちは動揺を隠せない。

頭上から耳を聾するような爆音が迫ってくるのだ。見上げれば赤々と尾をひく何かが大量に迫ってきている。

 

「静まれ! 静まらんか!」

 

怒鳴るホーキンス自身、あれがなんなのかわからない。金属の塊が音速を超える速度で降ってきているなど夢にも思っていない。

 

「あれを!」

 

「落ちるぞ! 落ちてくる!」

 

誰かが指差した。その方向を見ると、赤々と熱せられた打撃体が地上に迫り、着弾。

 

巨大な爆音。

 

地鳴り。

 

砂柱。

 

逃げ遅れた哀れな、あるいは幸運なものが打撃体の直撃を受けて苦しむひまもなく消し飛んだ。これが一次被害。

落下の衝撃波は凄まじく、爆弾の炸裂にも等しい衝撃波を撒き散らし、それによって周囲の兵士をバラバラに引き裂いた。これが二次被害。

そしてバラバラになった腕、脚、首、皮膚、臓腑、ほかにも鎧や武器の破片、地面の石。そういったものが弾丸のような速度で放物線を描き、飛散し、不幸な兵士の頭を、胸を、手や脚を砕いた。これが三次被害。

打撃体一つでこの有様だ。死に損なった哀れな者たちは、悲鳴や叫び声を上げて地面をのたうちまわる。

無事な兵たちはすぐに空を見上げ、自分が置かれている状況を理解した。

終わりだ。

 

 

「うわああああああああああああああああああああああああああ!」

 

 

もはや誰が叫んだかなど関係ない。みな一様にして走り、逃げ出す。

だがすでに手遅れだ。『ヘヴィ・レイン』はすでに発動してしまっている。いまさら止めることはできない。

そして金属性粒子の雲の真下に来ているのだ。雲から逃れられる手段はない。急いだところで間に合わない。

 

 

ォォォオオオオオオオオオオ!!!

 

 

彼ら貴族派を潰すような轟音は、まさしく破壊音そのものだった。

戦場ならば銃声や怒号、爆音や悲鳴による様々な音が聞こえてくるだろう。歴戦の兵士はその音は楽曲のように聞こえ、むしろ興奮さえするかもしれない。

だがこれは違う。戦場の交響曲とは正反対のものだ。圧倒的な暴力で敵対者を抹殺する、明確な殺意に満ちた自然災害の音。

雪崩や土砂崩れに巻き込まれて死ぬことに名誉を感じる者などいるはずがない。それはホーキンスも同じだ。

 

「どけ! どかぬか! どけ! 道を開けろ! どけええええええええええ!!」

 

もはや将軍の矜持も貴族の威厳もへったくれもない。なりふり構わず馬を走らせる。

いやだ、死にたくない、こんな死に方はあんまりだ! 裏切りの代償がこれなどひどすぎるではないか!

フライで飛んでいては間に合わないと判断してのことだが、どちらにせよ同じだった。

地上は恐慌状態に陥った兵たちでひしめき合い、少しでも身軽になろうとして脱ぎ捨てられた兜や鎧、剣や斧といったものがそこかしこに転がって足場はひどく悪い。

馬はそれらに脚をとられ、転んだ兵士を踏みつけ、姿勢を崩しては立て直す。そんなことばかりで全力疾走には程遠い。

 

「邪魔だ!」

 

逃げ走る兵士をはね飛ばしたとき、ついに馬は転倒した。ホーキンスは地面へ投げ出される。

それでも受け身をとってすぐさま起き上がることができたのは日頃の訓練の賜物だろう。

流れるように杖を抜いて、フライを唱えて空へ浮かぶ。

同じようにメイジが上空を目指していた。せめて打撃体の直撃さえ受けなければなんとかなると考えたのだろう。

それは間違いだった。

打撃体が地面に着弾したとき、その衝撃波は上にも作用するのだ。それはつまり飛散物の一部が空に向かって打ち上げられるようなものだ。

そして上に行けば行くほど、鳥撃ちに使う散弾銃のように広範囲へ飛散する。

 

「ぐえ……」

 

「かはっ!?」

 

豆のように小さな石ころが、ホーキンスより高度のメイジを撃ち落とした。彼らは血を吹き、地面に落下していく。

あるいは下へと注意が向いたため、上からせまる打撃体に気づかず、その直撃をくらった。

そのメイジはパン! と水を叩いたような音がして、赤い霧となって消えた。駄目だ。飛散物が届かない場所まで上るのは危険すぎる。

やむなくホーキンスは低空を飛ぶ。

ふと、遠方で巨大ゴーレムが三体立ち上がっていた。あれで打撃体を防ごうというのだろう。

駄目だった。

音速を超えて落ちてくる鉄塊を、ゴーレムていどで受け止められるはずがない。

ゴーレムは打撃体をいくつも受け、体積を削り飛ばされ、足元にいるメイジたちを巻き込んで崩壊した。

 

 

ォォォオオオオオオオオオオ!!!

 

 

破壊音は止むことなく響き続ける。

その中でバキバキといびつな音が混ざり込む。

飛行船だ。飛行船が撃ち落とされていく。打撃体は船体を削り、マストをもぎ取り、直撃を受けて大穴を穿たれる。

やがて火薬に引火したのか大爆発を発生させ、地上に落ちてきた。

一隻、二隻、三隻……特に巨大な船、レキシントン号さえもだ。ゴーレムでさえ防げないものを、木造の船が耐えられるはずがない。

王党派の禁術に対して、数で挑もうとしたのは最大の愚策だったと思い知らされた。

百万の兵で津波を止めるようなものだ。いくら人間が集まったところで洗い流されるに決まっている。

炎上するレキシントンは残骸や乗組員を降らせて、地上の兵士を巻き込みながら墜落した。

そして……死神はホーキンスを見逃しはしなかった。

引き裂かれた鎧の一部なのか、折れた剣先なのか……とにかく鋭利な鉄片がどこからともなく飛んできて、杖を握るホーキンスの右腕を肘から先を切断した。

 

「なあっ!?」

 

フライの効果を失ったホーキンスは地上に落ちた。勢いそのままに地面を転がる。

低空だったためか死ぬことはなかったのだが、右肩が外れて左足もあらぬ方向へとねじ曲がっている。

 

「あ、あああ、ああああああ……」

 

顔は痛みと絶望に歪んで血の気を失う。呆然としている間にも打撃体は地上に着弾し、人間がゴミのように空を飛び散る。

 

「これが、これが私の最期だというのか……?」

 

戦ならばどこの誰が撃ったかわからない銃弾や流れ矢に当たって死ぬこともあるだろう。あるいは名も知れぬ雑兵に打ち取られることもあるだろう。

その覚悟はできている。戦なのだからそういうこともあるだろう。

しかしこれはなんだ? 空を覆い尽くさんばかりの鉄塊の雨。一矢報いることもできず、虫けらのように一方的に潰されるこれのどこが戦だ!?

 

「ひ、ひきょうもの……卑怯者め! 卑怯者! 戦いもしないのか!? 卑怯者!」

 

かつてニューカッスル城があった山に向かって叫んだ。卑怯者、と。

打撃体がホーキンスに直撃し、肉体を地面の下へと押し込んだのはその直後であった。

 

 

 

別の場所で、ワルドは地面に這いつくばっていた。

負傷した兵士がワルドの足にしがみついて離れようとしないのだ。溺れたものが別のものにしがみつくかのように、ワルドの脚を掴んで放さない。

その兵士の脚には何かの破片が突き刺さっていた。

 

「放せ! 触るな! こいつ!」

 

「助けて、助けてくれ! 嫌だああああ! わああああああああ!」

 

ワルドは何度となくその兵士の顔を蹴りつける。何度も何度も、蹴りつけるたびに兵士は鼻血を吹き出し、顔が歪み、変色する。

冷静さを失ったワルドには魔法で殺すという発想が出てこない。

 

「放せ! はなーー」

 

 

ごき

 

 

嫌な音がして、右手の方を見た。杖を握る右手が踏み潰されて、指が乱雑にねじ曲がっていた。

杖が握れなければ魔法は使えない。

 

「あっ、か……」

 

左手はない。自分で切り落としたのだから。

 

「なん、て、ことを……」

 

ワルドは気づく。

恐慌状態の兵士たちがこちらに向かって押し寄せてきている。転倒した兵たちをおかまいなしに踏みつけながら。

 

「は、放せえええええ!」

 

兵士をより強く蹴りつけた。だが兵士も兵士で、手を離せば間違いなく死ぬと自覚している。

 

「た、すけて、たしゅけて、た……」

 

鼻が潰れても、額が割れても、前歯が折れても、その手を放そうとはしない。

そしてついに、恐慌状態の一団が到達した。

 

「あっ、がっ、ぐっ!?」

 

兵たちは装備を捨てているとはいえ、そろって筋骨隆々の男たちだ。単純に考えても体重は平均的なものより重い。

そんな兵たちがワルドの体を遠慮なく踏み抜く。

 

「や、やめろ、やめ、や……」

 

両手で頭をかばったが大した効果はない。脚、腹、胸、それに腕ごと。ボキ、ゴキ、とワルドの骨が折れていく。

 

「がっ!? は……」

 

口から派手に血を吐き出した。折れた肋骨が肺に突き刺さったのだろう。

 

「……!」

 

最後にワルドが見たのは、誰かの靴底だった。

裏切り者にふさわしい死に方だった。

 

 

 

 

 

><><><><><><

 

 

 

 

 

ニューカッスル城の地下。

山そのものが巨大な地下壕の役割をはたしているため、いくら打撃体であってもこの船着場は破壊できない。

その船着場の片隅にて、体に包帯を巻いたウェールズがベッドで横たわっていた。

ベッドといっても、木箱をいくつか並べてシーツを重ねただけのものだが……ウェールズの両眼は半開きで、焦点が定まっていない。

ただぼんやりと、土がむき出しの天井を眺めていた。その耳に届いているのは、遠くで鳴り響く落雷のような音だ。

この音が一つ鳴ると、地上では数十人の人間が死んでいるのだろう。そしてこの音は持続的に、とめどなく鳴り続けている。

この音の正体を知らないギーシュやキュルケ、ルイズやシルフィードという使い魔の風竜などは所在なさげだ。

なにか異変を見つけようとあたりを見渡してはいるが、ぱらぱらと土が落ちてくる以外は何もない。

タバサは肝がすわっているのかこんな時でも読書をしており、リンは食事を済ませても頭部の傷がまだ癒えず、ルイズの隣で座ったまま寝ている。

そしてハヤトは遠くの異変よりも目の前のリンに警戒しているのか、やや離れたところで壁に背を預けて立っていた。

ウェールズは天井を見上げながら、誰にでもなく呟いた。

 

「……為政者に都合の悪いことはもみ消される」

 

ヘヴィ・レインは敵と一般人を見分けることなく一切合切を破壊する。市街地に向けて使えば間違いなく大虐殺となり、現に使われた。

これが決め手となり貴族諸侯はアルビオン家にひれ伏し、アルビオン王国が生まれた。

だがそこで問題が起きた。

王家の人間が悪逆非道な行いをしていたとあれば、国民たちは王家を恐れ、憎むだろう。

だから『ヘヴィ・レイン』やそれに準ずる大量破壊魔法の記録を片っ端から消し去ったのだ。

文献や痕跡をすべて消し去ってしまえば、人々の記憶からもやがて忘れ去られるだろう。仮に言葉や伝承が残ったとしても、それは根拠のない噂話でしかなくなる。

その上でアルビオン王は子孫たちにこの教えを徹底して守らせた。

王族たるもの、清く、正しく、国民の模範とならねばならないのだ、と。

それを行動を示していれば、いつしか国民はアルビオン家が行ってきた非道な数々を忘れ去るからだ。

何十年もの月日がたち、その試みは実を結ぶことになった。貴族派にいたってはアルビオン家を無力な存在とまで誤解してしまった。

『ヘヴィ・レイン』はアルビオン王座に座る者のみに口頭で伝えられ、いまにいたる。

 

「……」

 

いま、ウェールズがその秘密を公開した。

アルビオン家に伝わる過去の暗い一面をさらけ出した。もう隠すことはできない。

噂話が事実だと認めた以上、もう後戻りはできない。

 

「……」

 

やがて、落雷に似た打撃体の着弾音が、断続的なものへと変わっていく。

ヘヴィ・レイン発動から十分も経っていないのだが……どうやら、終わったようだ。

 

「む……」

 

痛む体に鞭打って、ウェールズは身を起こした。

 

「殿下、無理をしてはいけませんわ」

 

ここぞとばかりにキュルケがすり寄ってきて、わざとらしく胸の谷間が見えるようにウェールズの体を支えた。

あわよくば王家の一員に、とでも考えているのだろうが、あいにくとウェールズには心に決めた女性がいる。

 

「いや、気にしないでくれ。バリー!」

 

船着場の隅で部下たちをねぎらうバリーを呼ぶと、すぐに駆けつけてきた。

 

「いかがなさいましたか?」

 

「外まで連れて行ってくれ。どうなっているのか自分の目で確認したい」

 

「しかしですな、まだ生き残りがいるやもーー」

 

「バリー、頼む」

 

これ以上言わせるなと、睨みつける目で言い放つ。バリーは一瞬たじろいで、すぐにウェールズの肩を支えた。

 

「わしも行くとしよう」

 

ウェールズの父、ジェームズもまた気になるようだった。足腰の弱ったジェームズは部下の二人に支えられて歩く。

 

「ミス・ツェルプストー。君たちここにいてくれ。それと何度も言うが、私が君たちにさせたことは、杖と家名に誓って他言無用だ」

 

させたことといっても、ギーシュには錬金を、キュルケは火を起こし、タバサは風を吹き起こす。ただそれだけなのだが、『ヘヴィ・レイン』を他国に再現される可能性は潰さなくてはならない。

本当なら頼みたくはなかったのだが、深刻な人手不足のため頼らざるをえなかったのだ。

 

「ええ、もちろんですわ」

 

キュルケの貴族式のお辞儀を見て、ウェールズはジェームズやバリーと数名の部下を連れて上階を目指した。

 

「……父上、僕は非情な男でしょうか?」

 

「非情は時に必要なのだ。温情なだけでは王は務まらん。清く、正しくあれ……それが理想だが、理想で国は動かんからな」

 

「……」

 

「わしはお前に伝えるものは伝えたつもりだ。王の罪、王の権利、王の責務。強大な力にはそれに見合う責任と枷がついてまわる。お前は『ヘヴィ・レイン』を使って何を為すつもりだ?」

 

「この国を取り戻します。必ず、どんな手を使ってでも。この両手を血で汚すしか方法がないなら、そうするまでのこと」

 

迷わず、力強い声で、ウェールズは宣言した。

 

「この世の不利益は当人の能力不足……僕が愚かで、力を使うことに躊躇っていたから、僕は……いえ、僕たちは国を奪われました。僕はもう躊躇わない。迷わない」

 

「そうか」

 

短く、ジェームズは言った。そこにあるのは安堵なのか、不安なのか、ウェールズにはわからなかった。

崩落した階段を錬金やエア・ハンマーで吹き飛ばし、フライを使って地上に出る。

 

「これは……」

 

ウェールズは呻く。

地面を埋めつくさんばかりの鉄塊の数々。あったはずの森はすべてなぎ倒され、立っている木は一つもない。

飛行船、なのだろうか? 何かの残骸が黒煙を上げてくすぶっていた。遠くのあの巨大なマストは、あれは『ロイヤル・ソヴリン号』なのだろうか?

離れたところに広がる赤と鈍色のグラデーションは死体だ。原形を保っているのはまだマシな方で、ほとんどが欠損が激しく、どの腕が誰のものかわかったものではない。

風にのって肉が焼ける嫌な臭いがする。これは熱せられた打撃体に押しつぶされた人間の臭いなのだろう。ウェールズには死神の吐息に感じた。

動くものは、何もなかった。

 

「これが……ヘヴィ・レインの威力か」

 

ウェールズは胸の内に沸き起こる感情に戸惑った。

なぜこの惨状を見て、大声で笑いたくなったのだろう?

ウェールズは口元を押さえた。そうしなければ吹き出してしまいそうだった。いまのウェールズの中にある感情は、明らかに歓喜だった。

無抵抗の存在を一方的になぶる黒い悦び。それがウェールズの内側に存在していた。

 

「ウェールズ」

 

ジェームズに話しかけられ、ウェールズはすぐに平常心を取り戻す。

 

「息子よ、嘆くな。仕方ないのだ」

 

どうやら笑いをこらえようと口元を押さえたのを見て、自分を責めているのだと勘違いしたらしい。

 

「い、いえ、その、大丈夫です、父上」

 

そういうのが精一杯だ。

 

「戻りましょう」

 

「うむ」

 

 

 

 

ラ・ロシェールへ向かったイーグル号が戻ってきて、ウェールズの部下たちは希少品の数々を入れた木箱を船に乗せる。

トリステインに亡命すると決めた以上、手土産なしというわけにもいかない。

 

「殿下」

 

ルイズがウェールズのもとにやってきた。この娘がリンを召喚していなければ、いまごろ嬉々として死んでいたことだろう。感謝の言葉もない。

 

「どうしたんだい?」

 

「申し訳ありません。手紙を奪われてしまいました。何度も申し上げようとしたのですが……」

 

「いやいいんだ、気にしないでくれ」

 

膝をつこうとするルイズを無理やり立たせた。頭を下げられることではない。

むしろ……奪われてよかったとさえ思っている。あの手紙のおかげてアンリエッタは嫁がずに済んだのだ。

 

「手紙って、そんなに気にするほどのことなの?」

 

目を覚ましたリンが問いかけてきた。ようやく傷が治ったらしい。

一晩の間に右上半身を削られ、脳を貫かれるような負傷を受けたのだ。むしろ半日で治ったことのほうが奇跡といえる。

 

「そんな手紙偽物だ、って言えばいいんじゃない?」

 

「そうもいかないよ。あれにはトリステイン王家の家紋が押されていてね、その家紋が正真正銘の本物だと証明してしまっている」

 

「あー、じゃあ僕がきっちり殺しとけば……」

 

「過ぎたことはどうにもならない。これからどうするかだ。ミス・ヴァリエール」

 

「はい」

 

「僕らはトリステインに亡命する。そのための橋渡しになってほしい」

 

それを聞いた時、ルイズの表情はパッと明るくなった。

 

「はい。喜んでお引き受けいたしますわ」

 

「感謝するよ。君にも、リンにも」

 

「どういたしまして」

 

そんなやり取りの中で、出港の準備ができた。

もやいを解かれ、船は船着場を離れていく。

遠ざかるアルビオンの大地をを見送り、気づいた。

 

「……父上はどこに?」

 

バリーに問うと、曇った表情を見せた。

 

「ジェームズ様は……まだアルビオンに残っております」

 

「なんだと? 船を戻せ!」

 

「なりません! ジェームズ様は自らの御意志で残ったのです!」

 

「なぜだ!?」

 

バリーは落ち着かせるために一呼吸の間をおいてから、言った。

 

「ジェームズ様より最後の伝言をお伝えします。ウェールズよ、お前は国王の義務を果たせ。わしは国王の責任をとる。愚かな父を許してほしい……以上です」

 

「許すなど……」

 

責めてなどいない。なぜ許す許さないの話になるんだ?

やるせない気持ちで、もう一度アルビオンに目を向けた。

船はアルビオンから離れていく。

その姿は雲の向こうへと消えていった。

 

「必ず戻ります。父上」

 

 

 

 

 

><><><><><><

 

 

 

 

 

 

地下の船着場にて、ジェームズは静かに安楽椅子に座っていた。もう間もなくやって来るだろう。

 

「この世の不利益は当人の能力不足、か」

 

ウェールズもすっかり変わってしまった。それが良いことなのだとブリミルに願うしかない。

静かに目を閉じて、茨の道を行くと決めたウェールズの幸せを祈った。

そして……来た。

 

「これはこれはジェームズ元国王。ごきげんうるわしゅう」

 

クロムウェルの口車に真っ先に乗った貴族、キース・ハウゼン公爵。

無能のくせに他人を蹴落とすことには長けている下衆野郎。それがジェームズの評価だ。

ずる賢さと姑息さを現したような顔の男を、ジェームズはジロリと睨む。

キースの背後には仮面と褐色のロープを身につけた者たち、喰種を二名控えていた。

 

「この様子ではウェールズはすでに脱出したようですな? どこに逃げたのです?」

 

「貴様に教えてやることなどなにもない。ここにあるのはなにも知らん、ただの老ぼれだけだ」

 

「んっふっふっふっふっ、そうご自分を卑下されるな、冠なき王様。少なくともあなた方のおかげて、目障りなホーキンスや目の上のこぶが死んでくれた。これで私もより高い椅子に座れるというもの。んっふっふっふっふっ」

 

「相変わらず考えることは卑しいな。まあいい。ここにクロムウェルは来ておらんのか?」

 

「皇帝でしたらあなたの城、おおっと失礼、あなたの以前の城で情報を整理しておりますよ。ここにいるのは私と部下たちだけです」

 

いちいちカンに障る言い方をするものだ。だがそれももういい。

この敷地内にいるのはキースの部下だけで、貴族派の本隊は来ていない。それが残念だ。

 

「やれやれ……貴様ではなくクロムウェルが直接やってきてくれればよかったのだがな……」

 

「ふむ? いったいなんの話です?」

 

「簡単な話だ。貴様はいま爆薬の上に立っている」

 

「ぬあっ!?」

 

「ウル・カーノ!」

 

ジェームズが唱えた “発火” の魔法によって、船着場の壁や床に埋められた爆薬が点火。

ニューカッスル城は跡形もなく完全に消し飛んだ。

 

 

 

 

 

王党派の戦力、およそ三〇〇。

 

消息不明。

 

 

 

貴族派の戦力、地上部隊およそ二万、中型飛行船五隻、飛行戦艦一隻(レキシントン号)。

 

全滅。









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いせかいげきじょー


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バリー「いやはや、ヘヴィ・レインとはすさまじいものですな」

ウェールズ「ああ。棺姫のチャイカを読んで僕も戦慄したよ」

バリー「チャイカ? それはなんですか?」

ウェールズ「知らないのか? 榊一郎先生が書くアニメにもなったライトノベルさ。完結したからお前も読んでみろ」

バリー「あにめ? らいとのべる? いったいなにを言っているのですか?」

ウェールズ「アニメをゲオに借りに行こうと思ったが置いてなくてね。早く並べてほしいよ。余談だが僕は紅チャイカが好きさ」

バリー「殿下、なにを言っているのかさっぱりですぞ。殿下? 殿下!?」

ウェールズ「うぃ、チャイカ!」

バリー「殿下ー!? おいリン! 貴様いったい殿下になにをした!?」
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